ニュース

「現代版ミケランジェロやダ・ヴィンチのような才能」が羽ばたいていく大会に

~第1回「全国小中学生プログラミング大会」授賞式

第1回 全国小中学生プログラミング大会

 10月22日、都内にて「第1回 全国小中学生プログラミング大会 (Japan Junior Programming Challenge: JJPC)」の最終審査会および表彰式が開催された。

 本大会は、株式会社角川アスキー総合研究所、株式会社UEI、NPO法人CANVASなどからなる実行委員会により開催され、総務省と朝日新聞社、秋葉原タウンマネジメント株式会社が後援となった。

 8月20日~9月15日の期間で作品を募集し、大会名の通り、全国の小中学生からの作品を受け付けた。「ロボットとわたしたち」をテーマに、開発言語やツールは問わず、PC/スマートフォン/タブレットで動作する、オリジナルのプログラムを募集した。

 最終審査会/表彰式では、1次審査、2次審査を通過した入賞作品10作品の中から、グランプリ(総務大臣賞)、準グランプリ(朝日新聞社賞)など各賞の受賞作品が発表された。

 開会の挨拶には、実行委員長を務める東京大学先端科学技術研究センターの稲見晶彦教授が登壇。全国から130件近くの応募があったことを明かし、今回最終選考に残った10作品について、バリエーションに溢れるユニークな作品が集まったと述べた。

 元々ゲームがきっかけでプログラミングに触れたという稲見氏は、今実際にプレイして熱中しているという「Pokémon GO」について触れ、キャンパス付近の不忍池で、多くの人が(ミニリュウのために)集まっているのを見た時、プログラムによって人間が動いている、つまり“人の動きもプログラムできる”という未来がやってきたと感じたという。

 「PCの父」とも呼ばれるアラン・ケイ氏が語った『未来を予測する一番良い方法は、それ(未来)を発明する(作る)事だ』という言葉を挙げ、そういった考え方が大切で、こういったプログラミングのコンテストで、そのためのスキルを磨いて欲しいとした。また、アラン・ケイ氏の『コンピュータはアイデアを奏でる楽器である』という言葉にも触れ、「プログラミングと楽器は、自分が演奏しても楽しい上に、その演奏を聴いた人も楽しませることができるという共通点がある」と述べ、自分を含めて多くの人たちを笑顔にするプログラミング活動を、今大会をきっかけとしてさまざまな取り組みを行なって欲しいとして締めた。

 来賓挨拶では、総務省 情報流通行政局 情報通信利用促進課長の御厩裕司氏が登壇。2020年以降のプログラミング義務教育化について、日本のプログラミング教育では、教師が今まで学んでいない内容を教える形になるなどの「指導者や支援者の問題」、ネットワーク環境や端末の不足といった「物の不足」、学外での学習環境などの「場の不足」という、大きく3つの課題があるが、その課題の解決にも、プログラミング教育によってどういった成果が得られるのか、親や国民の理解を得ることが必要であり、こういった大会はそれを示せる場かつ、子供たちにとっても、学習したものを披露できる場であり、今大会を大きく育てていきたいと述べた。

東京大学先端科学技術研究センター 稲見晶彦教授
総務省 情報流通行政局 情報通信利用促進課長 御厩裕司氏

 審査委員による最終審査が行なわれる間には、実行委員会を務める株式会社角川アスキー総合研究所の遠藤諭氏、株式会社UEI 代表取締役社長兼CEOの清水亮氏、NPO法人 CANVAS理事長の石戸奈々子氏による鼎談が行なわれた。

 石戸氏によると、子供を対象としたワークショップでは、以前はプログラミングは人気がなかったが、ここ数年で多くの人が参加するようになり、コンピュータが遠い存在だった時代から、スマートフォンやタブレットの普及や、IoTによってコンピュータが“コンピュータの形”でなく身の回りに存在するようになったことで身近なものとなり、またそれらを「理解して使うための基礎教養」という認識が生まれたのではないかと語っていた。また、男女比も同程度とのことで、清水氏が開催した教室などでは、「むしろ女の子の(参加者の)方が多かった」(清水氏)という。

 今大会を始めとするコンテストの今後ついては、清水氏は「プログラミング技術の戦いの場にはしたくない」と述べ、表現手段としてプログラミングが発展していって欲しいという考えを示していた。

株式会社角川アスキー総合研究所 遠藤諭氏
NPO法人 CANVAS理事長 石戸奈々子氏(左)、株式会社UEI 代表取締役社長兼CEO 清水亮氏(右)

 表彰式では、グランプリ/総務大臣賞、準グランプリ/朝日新聞社賞のほか、小学校低学年/小学校高学年/中学校部門優秀賞、Unity賞、NECパーソナルコンピュータ賞、入選作品の発表が行なわれた。

 最終選考に残った10作品を見ると、自作のゲーム、外部サービスであるツイッターと連携したもの、家電の遠隔操作など既存の製品と組み合わせたもの、ロボットを組み合わせたもの、機械学習を利用して落ちた音から硬貨を判別するといったものまで、多岐に渡っていたのが印象的だった。

 表彰式後、審査委員長を務めた、CGアーティストで東京大学大学院情報学環教授の河口洋一郎氏は、「今回“ロボットとわたしたち”というテーマだったが、応募作がバリエーション豊かで非常に選ぶのが難しく、現代版ミケランジェロや、レオナルド・ダ・ヴィンチの世界に突入するための人材が育成されているように感じた」と述べ、「論理や個性などを含め、理解しがたいくらいブッ飛んだ才能がここから生まれて欲しい」として締めた。

審査委員
※以下敬称略
Unity賞「ツイッターロボ」作: 水野優希 (小6)
NECパーソナルコンピュータ賞「おでかけリモコン」作者:三木健太郎(中3)
小学校低学年部門優秀賞「大きくなあ~れ」作者: パッションにも(小3)
グランプリ/総務大臣賞「ママロボ ハートちゃん」作者: kohacraft.com(小5)
入選「お金判別プログラム」作者: 清水大瑚(中3)
小学校高学年部門優秀賞「人工知能でアート?」作者: 蓼沼諒也(小4)
入選「KX_NET」作者: 寺尾魁航(中2)
準グランプリ/朝日新聞社賞「暗算自動はんばいき」作者: TEAM MOMORIRI(小3/小1)
中学校部門優秀賞「走れ!ゴミ箱ロボット」作者: 真家彩人(中1)