■Windows 8カウントダウン■
Windows 8のRTMに伴い、PCベンダー各社が発売済みの自社製PCでWindows 8が正常に稼働するかどうかなどを検証する作業が始まっている。今回は、その状況と、実際にWindows 8を導入する際に決断することになるアップグレードとクリーンインストールについて考えてみよう。
●Windows 8、ただいま準備中各社の発表によると国内の主なベンダーは、まだ、検証の作業中で、準備ができ次第、詳細情報を用意するとしている。一般のユーザーがWindows 8のパッケージを入手できるのは、10月26日以降になるのだから、まだ大丈夫ではあるが、すでに秒読み段階に来ているといってもいい。自分の使っているPCのメーカーのサイトはこまめにチェックした方がよさそうだ。
主立ったところをチェックしてみると、NECパーソナルコンピューター、東芝、レノボ、ソニー、パナソニック、富士通など、ほとんどが専用のページを用意して情報を提供する姿勢を見せている。
各社ともに、おおむね2011年の秋以降に発売されたモデルについては、Windows 8の稼働をサポートするようだ。各社のページを確認すると、アップグレードとクリーンインストールの解説が掲載されているのだが、これが、判で押したように同じようなもので、まるで日本マイクロソフトが作ったテンプレート的なものをそのまま掲載しているんじゃないかとさえ思えてしまう。
日本マイクロソフトでは、すべてのWindows 7 PCのユーザーは、Windows 8の恩恵を受けられる的なことをアピールしていたが、全部のメーカー製Windows 7 PCがサポートされるわけではないところを見ると、決して一筋縄ではいかないようだ。
メーカー製のPCにWindows 8を入れる場合、アップグレードするにしろ、クリーンインストールをするにしろ、留意しておかなければならないのは、仕様上失われる機能がないわけではないということだ。
たとえば、NECのページには、
Windows 8 へのアップグレード後、VALUESTAR N(VN370、VN470)にて、TV機能をご利用になられる場合、日本マイクロソフトが別途提供する「Windows Media Center Pack」をご購入いただく必要があります。詳細は、日本マイクロソフトからのアナウンスを参照願います。
と記載されている。
これは、Windows 8では、Media Centerが別売りパッケージになるからだ。こうして何らかの形で継続的に利用できることがわかっている場合は、すべての要素が揃ってから移行を考えた方がよさそうだ。
この例のように、解決策がわかっている場合はまだいいが、アプリケーションやサードパーティ製の周辺機器などで、ドライバ等が提供されるかどうかは現時点で未知の領域だ。このあたりは、手持ちの機器やアプリのベンダーのアナウンスをよく調べ、必要な情報を収集するようにしたい。
●手厚いサポートが魅力のパナソニックこの原稿を書いている時点で、意外なことに、というのは失礼かもしれないが、もっともきちんと検証状況をまとめて公開しているのはパナソニックだ。サポート評価情報がきちんと公開されている。この時点で、アップグレード、クリーンインストール用に各種のドライバが提供されているのは心強い。
実は、手元のLet'snote SX1も、RTMが出て早々にアップグレードにチャレンジしてみたのだが、セットアップ時に、Intel Dynamic Power Performance Managementがあるとインストールができない旨、警告が出るので、コントロールパネルの「プログラムの機能」でアンインストールするのだが、それでもまだ残っている旨の表示が出て先に進めなかった。これについても、対応策が公開された。このモジュールは、Intel Dynamic Platform & Thermal Frameworkという名前に変わるそうだが、バッチファイル等が用意されて、確実に新しい版の利用ができるようになっている。
メーカー製のPCを使っている場合は、そのPCで使われているドライバやアプリケーションが、システムのCドライブに格納されていることが多い。パナソニックであれば、c:\util、c:\util2がそうだ。アップグレードにしても、クリーンインストールにしても、これらのフォルダだけは、別のメディアにコピーしておいた方がよさそうだ。メーカーのサイトで別途入手ができる場合もあるが、用意は万全にしておいたほうがいいのはいうまでもない。
●問題を起こすドライバ等はないかを確認するいくつかのメーカー製PCでの経験では、各機種について問題が起こりそうなものとして、SynapticsのタッチパッドドライバとルネサスのUSB 3.0ホストコントローラがある。
SynapticsのタッチパッドドライバとルネサスのUSB 3.0ホストコントローラは、使用しているメーカー製PCが少なくないだけに、なんとかインボックスドライバで対応できなかったものだろうか。インテル製のデバイスドライバについても同じことがいえる |
パナソニックのサイトでは双方共に対応版が公開されているが、他社製PCの場合はこれらドライバの公開を待たないとやっかいなことになる。
ちなみにUSB 3.0ドライバについては、Windows 8のアップグレードが完了するまではポートそのものが使えなくなってしまうので、たとえば、外付けUSBメモリーや外部光学ドライブをUSB 3.0ポートにつないでいる場合は、USB 2.0ポートに接続してインストールしなければならない。
このほか、インテルのラピッド・ストレージ・テクノロジーや、指紋認証関連、TPM、東芝のBluetoothスタックなどがインストールプロセスを妨げる可能性があることがわかる。
パナソニックのアップグレード手順書では、プリインストールアプリのうち、
・緑のgoo スティック(インストールしている場合のみ)
・i-Filter 期間限定版
・ATOK 試用版
・KingSoft 辞書
・WinZip 試用版
・VirusScan 期間限定版
・Roxio Creator
・Wireless Manager
・OneTimePassward
以上のアプリをアンインストールするように指示されている。ただし、なぜ、これらのアプリがNGなのか、理由は記載されていない。なくては困るものばかりではなさそうだが、サードパーティ製アプリをプリンストールしているベンダーとして、開発元がWindows 8での稼働を保証していない段階では、何が起こるかわからないので、念のためといったところなのだろう。
パナソニックが公開しているアップグレード手順書の目次。詳細な手順が記載されている。プリントアウトしてから作業に入ると心強い |
コントロールパネルの「プログラムと機能」でアプリを削除しておこう。パナソニック機のように、削除しても削除したことにならないものもあった |
●素性がわかっているPCならクリーンインストールがお勧め
今、揃っている情報を見る限り、メーカー製PCの場合は、各種のドライバが揃っている限りは、アップグレードするよりも、クリーンインストールを試みた方が、結果的に要する時間は少なくてすみそうだ。
アップグレードでは、以前の環境を、ほぼそのまま残せるというメリットがあるが、プログラムやドライバのアンインストールなどにかかる手間を考えると、最初からやったほうが手っ取り早いと思う。アップグレードそのものにかかる時間も、クリーンインストールよりは倍以上かかると思った方がいい。
データについては、別のメディアにコピーしておいて、あとで書き戻せばいいし、クラウドに依存しているのなら、放置しておくだけで同期して元通りになるだろう。そういうことを考えるとクリーンインストールがよさそうだ。
ただ、クリーンインストールをお勧めできるのは、パナソニックのように、詳細な手順書が用意されている場合だけで、TV機能など複雑な機能が含まれる場合は、メーカーの推奨通り、アップグレードするのが無難だ。
ちなみに、Windows 8には、リカバリ機能も搭載されている。今後、Windows 7に戻す必要がないのなら、リカバリディスクなどを作成した上で、パーティションを切り直し、メーカーが用意しているリカバリ領域は削除してしまってもいいかもしれない。