Windows 8カウントダウン

ついに完成したWindows 8



 Windows 8は、RTM(製品版完成)後、OEM向けの出荷に続き、8月15日の午前2時(太平洋夏時間)からMSDNやTechNetでダウンロード提供が始まった。これらのソースから入手したRTMを記事で紹介するのは規約違反になるが、今回は、特別に、日本マイクロソフトからRTMの提供を受けることができた。その概要について紹介することにしよう。

●Aeroがなくなった新生Windows

 CP(Consumer Preview)やRP(Release Preview)は、Windows 8の全貌を網羅していないと推測していた。だから、最終形がどのようなものになるのかは想像の域を出なかった。だが、実際に入手したRTMを見てみると、よくも悪くもCPやRPがかなり完成形に近かったことが分かる。このとこを見る限り、RTMが、本来Windows 8が目指してきた最終形なのか半信半疑になってしまいそうだ。PCベンダーの実装に依存するといわれているConnected Standbyについても、その最終形はベールに包まれたままだ。

デフォルトのデスクトップ。試しに時計を11月にずらしてみたが、花が変わるような仕掛けは実装されていなかった

 ルック&フィールで大きく変わったのは、やはり、クラシックデスクトップにおいて、AeroGlassの半透明効果がバッサリと切り捨てられたことだろうか。デスクトップを右クリックして「個人設定」からウィンドウの色とデザインを設定するダイアログを開いても、RPまでは健在だった「透明感を有効にする」が見当たらない。

 ただし、これまでAeroプレビューと呼ばれていたものは健在で、タスクバー上のタスクバーボタンにマウスポインタを重ねると、開いているウィンドウの縮小イメージが表示される。また、Windowsキーを押しながら方向キーを押すことで、デスクトップの左右にウィンドウを寄せるAeroスナップも使える。こうなると、MicrosoftがどこからどこまでをAeroと定義しているのか、よく分からなくなってしまうのだが、少なくともAeroの廃止と呼ばれているのはデザイン上だけで実用上の退化はなさそうだ。

 ただ、Microsfotが本気でWindowsのタッチスクリーン化を推進しようとしているのであれば、Aeroの廃止で見かけが変わることを機会に、タイトルバーの太さやその右端の3つのボタンのサイズ、スクロールバーの太さなどについて、ちょっとは見直してもよかったんじゃないかとも思う。できるとしたら今しかなかったのではないか。百歩譲ってWindows標準のテーマとして、これらをカスタマイズしたものを用意するべきだったのではなかったかと思う。

ウィンドウの色に半透明のAeroGlassは使われなくなった。ウィンドウ枠は少し太くなったほか、アクティブなウィンドウが判別しやすくなっている

●散見する不具合

 RTMには誰でも試せるバージョンとして、Windows 8 evaluation for developersも用意されている。こちらは、MSDNやTechNetの会員でなくても、Windows LiveやHotmailなどのMicrosoft IDさえあればダウンロードして試せるというものだ。ただし、90日間の体験版で、製品版へのアップグレードはできない。

 RTMをインストールしてみての印象だが、もっとも気になる積み残し点として、日本語109キーボードをUS配列として認識してしまう点がある。後でUSBレシーバーを使って接続した日本語キーボードでも現象を確認した。デバイスマネージャーで設定を確認するとキーボードのないタブレットでも標準PS/2キーボードが表示される。そして、新たにUSBキーボードを接続するとHIDキーボードデバイスが追加される。どちらもUS配列に定義されているようだ。

 しかたがないので、ドライバソフトウェアの更新で、日本語PS/2キーボード(106/109キー)を指定して更新すると、今度は、キーボードを認識しなくなってしまう。そして、デバイスマネージャーでいったんキーボードデバイスを削除すると、何ごともなかったかのように日本語キーボードを認識するのだ。まるで、インストールプロセスの際に、クリーンインストールでは英語配列を決め打ちしているかのようだ。ただ、ノートPCで、最初はUSキーボードとして認識していても、再起動を繰り返しているうちに、いつのまにか日本語レイアウトになっているケースも体験した。どうも、このあたりのメカニズムがよく分からない。

インストール時には、キーボードの誤認識が起こりやすい。もし、遭遇した場合は、デバイスマネージャーで適切なドライバに更新しよう

 おそらくはWindows 7からのアップグレードインストールなどではこの問題は起こらないだろうし、PCメーカーから出荷されるWindows 8プリインストールPCでも、メーカー出荷の時点できちんと設定が行なわれるだろうから大きな問題にはならないと思うのだが、ここの部分は、相当古くからある問題なので、もうそろそろ異なるレイアウトのキーボードを混在して使える環境を提供してもいいんじゃないかと思う。

●Windows 8とインボックスドライバ

 Windows 7からのアップグレードインストールは真っ先に試してみた。対象はLet'snote J9だ。ところが、これは成功しなかった。インストールプロセスを開始しようとすると、元環境のチェックが行なわれ、Windows 8と互換性のない要素がある場合は、それらを解消しない限り、次に進めない。この環境では、Microsoft Security Essentialsをアンインストールする指示が出たのに加え、Intel Dynamic Power Performance Managementに互換性がないと指摘され、手動でのアンインストールを促される。指示通り、コントロールパネルの「プログラムと機能」でアンインストールをして、それが成功しているにもかかわらず、何度インストールしようとしても、その存在を指摘され、先に進めなかった。

 アップグレードの場合は環境を引き継ごうとするので、こうなってしまうのだが、環境等を引き継がない選択であればインストールはスンナリと進む。その場合、以前のWindows環境は、システムドライブのルートにWindows.oldという名前で保存される。

 結果として、この環境では、クリーンインストールと同じ状態でのインストールになってしまったわけだが、たとえば、IntelのWiMAXモジュールであるAdvanced-N + WiMAX 6250はインボックスのデバイスドライバを持たず、手動でドライバと接続ユーティリティを導入する必要があった。そのインストーラは.NET Framework3.5が必要なので、まずは、そこからインストールと、けっこうな手間がかかる。

 なお、WiMAXについては、RPまでは、かつてMetroスタイルと呼ばれていたGUIからは、その接続を利用できなかったのだが、RTMではきちんと有効な接続先として認識されるようになったようだ。これについては確認できてホッとしている。

●かつてMetroスタイルと呼ばれていたGUI

 Metroの環境が洗練されていくのはこれからだ。Windows 8を使うということは、かつてMetroスタイルと呼ばれていたGUI用のアプリケーションがどんどん出てきて、少なくとも今のAndroid程度に成長するまでの間、表面的には単に使いにくいWindows 7とつきあうということでもある。

 そうはいっても、Windows 7よりも安定し、キビキビと動く環境は魅力的であり、あえて、Windows 7を使い続けるよりは、知恵と工夫でWindows 8を使おうと努力した方が結果としては幸せになれるだろう。ノートンやトレンドマイクロなどの有名どころは、Windows 8対応のセキュリティソフトのベータ版を提供しているので、保護の点でも対処はできる。

【15時30分追記】Windows DefenderにSecurity Essentials相当の機能が含まれる旨の問い合わせをいただきました。詳細は調査中ですが、記事に修正を加えました。

 ただ、MicrosoftがSecurity Essentialsをこの時点までとうとう対応させなかったことの真意は分からない。もしかしたら、何か問題が起こる可能性が残されているのかもしれない。たとえば、ネットワーク接続を束ねてスリープ中に通信を行なうような環境への対処はまだできないかもしれない。Windows Defenderの機能がSecurityEssentials相当に拡張されているようだが本当にそれで安心していていいのだろうか。

 Microsoftでは、Windows 7のユーザーがWindows 8を手に入れたとき、失うものは何もないと宣言していた。それでもこうして完成したWindows 8を、ちょっとさわってみる限り、いろいろな不具合を体験してしまう。最後の最後まで気にしていたWi-Fi接続先エントリの優先順位を指定する機能もついに用意されなかった。

 でも、Vistaや7の時と比べれば、インストールプロセスはずいぶん進化したように感じる。使っているPCに装備された各種のデバイスについて、各社の対応ドライバの供給待ちということはあまり気にしなくてもよさそうだ。

 いずれにしても、今まではマウスでクリックできたスタートボタンはもうない。誰かが同じ機能を実現したシェルを作ってくれるのを期待するか、キーボードのWindowsキーをスタートボタンとして使うことに慣れるように努力するか。そして、スタートスクリーンをとにかく使いやすくするためにカスタマイズするかだ。

 Windows 8は、さまざまな不安と希望をのせてついに出航した。そして、世の中には、2年後とも言われている次期バージョン、Windows Blueのウワサが出回りはじめてもいる。

デフォルトのスタートスクリーン。マウスポインタを左右端につきあてると横方向にスクロールする
ポインタを画面下に移動するとスクロールバーが表示される。右下の…ボタンをクリックするとチャームが表示される。チャームは背景となるスタートスクリーンの要素によっては判別しにくい