山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ

Live SyncでHome Premium エディションの弱点を克服



 Windows Live Essentialsのベータ版が公開され、マイクロソフトのクラウドサービスであるWindows Liveに関連する各種のアプリケーションがアップデートされた。今回は、その中から、PC間でファイルを同期するLive Syncアプリを紹介しよう。

●Home Premiumの弱点をカバーするLive Syncサービス

 コンシューマー向けPCにプリインストールされているWindows 7は、そのほとんどがHome Premiumエディションだ。このエディションは、ProfessionalやUltimateなどの上位エディションと比較したときに、ドメインログオンはともかく、オフラインファイルが使えないことや、リモートデスクトップで使えないことを熟考してエディションを選ぼうということを以前書いた。

 今回紹介するLive Syncサービスは、Home Premiumが備えていないオフラインファイルとリモートデスクトップの機能をある程度カバーし、複数台のPCの使い勝手を向上させる便利なソリューションだ。

 ただ、Windows 7では、エディションをアップグレードするために、Windows Anytime Upgradeと呼ばれるパッケージが用意されている。このパッケージを購入すれば、プロダクトキーを入力するだけで、再インストール等のめんどうな作業をすることなく、簡単に上位のエディションを移行することができる。もちろん、メーカー製のPCにプリインストールされているWindows 7のアップグレードにも対応する。ちなみに、この原稿を書いている時点で、Home PremiumからProfessionalへのアップグレードパックは、アマゾンなどでも9,000円を切っている。今回紹介するようなフリーのソリューションで満足できない場合は、最終手段として、こうした手もあることを、あらかじめ知っておきたい。

●P2Pを使ってフォルダ単位の同期を実現

 さて、Live Syncは、かつて「おすすめパック」と呼ばれていたWindows Live関連無償アプリケーションパックが「Windows Live Essentials」という名前になり、そのベータ版の一部として提供される。

 このパックには、「フォトギャラリー」「メール」「ムービーメーカー」「Messenger」などのアプリケーションが含まれ、ダウンロードして任意のアプリケーションをインストールすることができる。Syncだけをインストールしたい場合は、ダウンロードした統合インストーラが起動したところで、他のアプリケーションのチェックを外しておけばいい。また、英語版だけだがMac用も用意されている。ちなみに、Syncのサービスは、以前、Live Meshと呼ばれる実験的なサービスだったが、今回からLive Essentialに統合され、メインストリームに昇格することになったようだ。

 Live Syncは複数台のPC間でフォルダ単位での同期を実現するサービスだ。同期サービスというとSugarSyncやDropboxといった既存の優れたソリューションを思いつくが、これらのサービスが基本的にフリーミアムのビジネスモデルで、ある程度実用的に使うためには、有料サービスに移行しなければならないのに対して、LiveSyncは完全に無料の枠内でサービスが完結している。

 無料の枠内でできる同期機能には、特に制限らしい制限はない。強いていえば次のような要素が並ぶ。

・次のファイルは同期できない

  • Office Outlookが使うPSTファイル
  • ショートカット
  • 一時ファイル
  • 隠しファイル
  • システムファイル

・2万個以内のファイルが保存されたフォルダを最大20個まで(つまり最大40万ファイル)

・1個あたり4GBを超えるファイルは同期できない

・ネットワークフォルダは同期対象として保証外とされているが、設定しようとしても設定自体ができない

 つまり、ローカルのHDD内にある一般的なデータファイルなら特に困ることはないだろうし、合計容量やファイル数、フォルダ数についても不満はない。

 こうしたことができるのは、このサービスがクラウドサービスでありながら、原則としてクラウド側には同期対象のファイルを預からないからだ。つまり、ファイルの転送はPC間のピア・ツー・ピアで行なわれる。したがって、少なくとも2台のPCが稼働状態になければ、相互の同期は実行されないことになる。

●フォルダやIEのお気に入り、Outlookなどの指定が可能

 Syncでは、同期対象ファイルの保存されているPCを「デバイス」と呼ぶ。各デバイスには、Syncクライアントをインストールしておき、それぞれのデバイスで同期したいファイルを格納したフォルダを指定しておく。

「デバイス」と呼ぶPCの同期選択

 Syncクライアントのインストール後、初回はスタートメニューから起動する必要があるが、以降はタスクバーの通知領域に常駐するようになり、特定のWindows Live IDと関連づけられてサービスを利用できるようになる。通知領域のアイコンをダブルクリックすると、UIが開き、各種の設定ができる。まだベータだからか、お世辞にもクールなGUIとはいえないのはご愛敬といったところか。

 このクライアントで設定できる同期関連機能は、同期対象のフォルダの指定のほか、Internet Explorerのお気に入りを同期するかどうか、Microsoft Office Outlookの署名データなどを同期するかどうかを指定することができる。

同期対象のフォルダ、IEのお気に入り、Outlookの署名データなどを指定できる

 最初のPCで同期対象フォルダを設定する。この段階では、ファイルはどこにも転送されないが、サービス側には同期対象となっていることが伝わる。

 2台目以降のPCにクライアントをインストールして開くと、同期が設定されたフォルダが一覧表示されるので、それらのフォルダを同期させたいローカルのフォルダを指定していけばいい。

フォルダの場所とファイルの同期先を指定

 また、これらの同期先設定作業は、ブラウザを使ってhttps://devices.live.com/を開くと、LiveSyncクライアントがインストールされたPCが一覧表示されるので、そこで行なうこともできる。ブラウザ経由の場合は、先に同期対象フォルダを指定したPCをダブルクリックして開くと、そのフォルダが表示されるので、そこでさらに別のPCを同期先に指定しておく。

Webブラウザからも同期先を設定できる

 Syncクライアントでの同期設定では、同期先のフォルダを自由に指定できるが、ブラウザ経由では、強制的に個人用フォルダ下に同名のフォルダが作成され、そこに対して同期されるようになるようだ。

●クラウド側に保存するSkyDrive同期ストレージ

 原則として同期対象のファイルをクラウド側には預からないと書いたが、唯一の例外として、同じLiveのストレージサービスであるSkyDriveによって、「SkyDrive同期ストレージ」と呼ばれる2GB分のストレージが提供される。同期先をこのストレージに指定することで、2GB以内という制限つきながら、ファイルをクラウド側に預かってもらえる。

 ファイルをクラウド側に預かってもらうことで、SyncクライアントをインストールしていないPCからも自由にファイルを参照することができるようになる。

WebブラウザでアクセスできるSkyDrive同期ストレージ

 仕様上は、そのときにLiveサービスに接続されていれば、ブラウザを介して同期対象フォルダにアクセスしてファイルを参照できるはずなのだが、この部分はまだうまく動いていないようだ。現段階での振る舞いとしては、Syncクライアントのインストールこそ必要ないが、特定デバイスの同期対象フォルダを、いったんSkyDrive同期ストレージに同期させ、その内容を参照するという流れになっている。これではちょっと不便だ。

 いずれにしても、Windows標準のオフラインファイル機能とほぼ同等のことが、結果としてできる点では、このサービスは使い方次第でかなり役に立つはずだ。複数台のPCで容量等を気にしないでフォルダ内のファイルを同一に保ちたいなら、ぜひ、試してみてほしい。競合の管理もきちんとされているので、オフライン時に同じファイルに異なる変更を加えてしまった場合も安心だ。

 次回は、Home Premiumでは省略されているリモートデスクトップに代替する機能について紹介することにしよう。