山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ

ネットブックでCore i7のパフォーマンスを「Live Sync」



 ベータ版がリリースされたWindows Live Essentialを構成するモジュールの1つ、Live Syncは、Windows 7 Home Premiumの弱点を解消する優れたソリューションだ。前回に引き続き、その目玉機能の1つであるリモートデスクトップの機能について見ていくことにしよう。

●インターネット越しにPCをリモートコントロール

 リモートデスクトップは、古くからあるWindowsの標準機能で、離れたところにあるPCを、ネットワーク経由で使うための機能だ。リモートで使われる側でサーバーサービスが稼働し、手元ではクライアントソフトを使う。クライアントソフトは、ネットワークの先にあるPCの画面出力、キーボード、マウスを横取りして、ウィンドウまたはフルスクリーンで表示する。Home Premium Editionにもアクセサリの中にクライアントだけは含まれているので、接続はできるが、サーバーにはなれないので、接続されることができない。

 離れたところにあるPCをリモートで使えると、さまざまな場面で重宝する。例えば、自宅に戻ってまでチマチマとしたモバイルノートPCの画面やキーボード、ポインティングデバイスを使う必要がなくなる。また、ヘルプに応えて、遠く離れたところにいる家族や知人、友人のPCをメンテナンスするにも便利だ。もちろん、外出中に自宅で稼働するPCに接続し、必要なファイルを手元に取り出したり、特定のアプリに仕事をさせたりするような用途にも使える。処理性能はリモートコントロールされる側のPCの能力に依存するので、手元では非力なネットブックなどを使っていても、相手側のPCが高性能であれば、その能力をフルに活用することができる。いわばパーソナルシンクライアントともいうべきで、Atom搭載ネットブックでCore i7の処理能力といった環境をもたらしてくれるわけだ。

 Live Syncがサポートするリモート接続は、リモートデスクトップに似た機能を提供するが完全に同じものではない。例えば本家のリモートデスクトップは、相手のデスクトップ解像度に依存せずに、自由な解像度を設定できるし、プリンターなど、各種のデバイス等のローカルデバイスを仮想的にリモートのコンピューターに接続することができるなど、高度な機能を備えているが、Live Syncのリモート接続にはそれがない。とにかく離れたところにあるPCをネットワーク経由で使えるというだけのものだが、相手のIPアドレスがわからなくても、インターネット経由でルータ越しに、経路を何も考えることなく使えてしまう点で、むしろ本家リモートデスクトップよりも便利な面もある。

●本家リモートデスクトップより便利な面も

 Live Syncクライアントを開くと、ウィンドウ上部に「リモート(R)」というコマンドボタンが見つかる。クリックすると、リモート接続の管理画面に遷移する。

 ここでまず、目の前にあるPCへのリモート接続を許可するかどうかを決めておく。といっても、「このコンピューターへのリモート接続を許可」のコマンドリンクをクリックするだけだ。クリックするとUACを経由して許可状態となり、このコマンドリンクは「リモート接続を禁止」に変わる。許可と禁止は、この操作で自由に切り替えができる。

接続前にはダイアログが表示される。リモートPCが使用中の場合は、相手画面にダイアログを出して30秒間待機する
リモート(R)のコマンドボタンをクリックすると、リモート接続の管理画面に遷移する

 一方、下方には同じアカウントでLive Syncを動かしているPCの一覧が表示される。もしリモート接続が許可されていれば「このコンピューターに接続」というコマンドリンクが表示され、禁止されている場合はアイコンがグレーアウトして「リモート接続を使用できません」と表示される。

 任意のコンピューターを選び、「このコンピューターに接続」をクリックすると接続のプロセスが始まる。このとき、先方のPCがログオン状態でデスクトップ等が表示されている場合には、即座の接続はせずに、先方に通知した上で30秒間待つ。

 接続が完了するとリモートPCの画面そのものがウィンドウとして表示される。また、接続された側の画面は真っ暗になる。向こう側にも人がいて、操作の様子を見せなければならない場合、これでは困ることがあるので、ウィンドウ上部のバーを使って「~の操作を表示する」をチェックすると、先方の画面にも操作の様子が表示されるようになる。しかも、マウスやキーボードまで使えるようになる。つまり、画面、キーボード、マウスが2台ずつつながっているような状況になるのだ。この機能は、リモートでメインテナンスするようなケースで便利だ。本家リモートデスクトップでは、強制的に相手方コンピューターはロック状態になるので、考えようによってはこちらの方が便利かもしれない。

接続前の確認ダイアログ

 ただ、難点もある。手元のコンピューターより相手のコンピューターの方がデスクトップ解像度が高い場合も、強引にデスクトップ全体を表示しようとする。デスクトップ全体が縮小表示されるので全体を見渡せるし、操作も可能だが、使い勝手は今ひとつだ。等倍でも表示はできるが、その場合はナビゲータを使って表示させたい部分を選択する必要がある。

 この不便は相手側がマルチディスプレイの場合に特に顕著で、例えば、手元の環境ではフルHDのディスプレイを3台(縦1台、横2台)接続しているが、ここにノートPCからリモート接続すると、もうわけがわからない。しかも、現段階ではベータのせいなのか、バギーで表示がうまくいかないことが多い。これは正式版までに何とかしてほしいものだ。

 リモート・ローカル間では、ドラッグ&ドロップのような操作はサポートされないが、クリップボードを共有することができる。したがってエクスプローラでファイルを右クリックして、ショートカットメニューからコピーして、ローカルフォルダーに貼り付ければ、結果としてリモートのコンピューターからファイルを転送することができる。もちろん、その逆にローカルのファイルをリモートに転送することもできる。ただし、サウンドイベントは転送されないので、音楽ファイルを再生させるといった操作をすると、音はリモート側で再生される。

●パーソナルシンクライアントに向けて

 リモート接続することによって離れたところにあるPCを自由に使えるのはとても便利だ。しかも、リモートコンピューターは電源さえ入っていれば、誰もログオンしていなくてもかまわない。管理画面には電源がオンになっているコンピューターが一覧表示され、それをクリックすれば正常に接続が行なわれる。緊急時には家族に電話をして、PCに電源を入れてもらうだけでいいというのはわかりやすい。Wake on LANで起こすようなテクニックも有効だろう。

 さらに、リモート接続は、LiveSyncクライアントをインストールしていないPCからでもできる。Internet Explorerさえあれば、ブラウザー経由で接続することもできる。

 ブラウザーでhttps://devices.live.com/を開いてLive IDでログオンすると、デバイスの一覧が表示されるので、その中から接続したいデバイス、つまりPCを選び、リモート接続ができる。この操作で、Active Xコントロールがダウンロードされ、Live Syncのブラウザーを経由したときと同様に、ブラウザー内にリモートのデスクトップが表示される。

IEのActive Xコントロールを使ってノートPCにリモート接続してみた。相手がノートPCの場合は、フルキーボードを接続したPCからの場合、NumLockのオン/オフに注意する必要がある
IEからの接続ができるので、必ずしもLiveSyncクライアントをインストールしていないPCでなくてもこの機能を利用できる
初回の接続時にはActiveXコントロールをインストールする必要がある
LiveSyncクライアントをインストール済みのリストをブラウザーを使って確認できる。許可しておけば任意のPCに接続ができる

 このように、Lyve Syncのリモート接続を使うことで、インターネットを経由して、先方のIPアドレス等をなんら気にすることなく、気軽にリモートから操作できる。テレビの録画を予約し忘れてしまったときにも重宝するかもしれない。使いようによっては本家のリモートデスクトップより便利なこの機能をぜひ試してみてほしい。