Windows 10ユーザーズ・ワークベンチ
Windows 10のインターネット接続のバリエーション
(2016/1/14 11:20)
「モバイル」を名乗りながら通信をほかに頼らなければならないことが多いのがWindows PCの泣き所だ。簡単に繋がるWi-Fiに頼りたくなるが、実はそれ以外にもいろいろな通信手段が使える。今回は、Windows 10の通信について見ていこう。
iPhoneにBluetoothで繋ぐ
もし、スマートフォンをいつも携帯しているのなら、というか、そうでない方の方が少ないと思うが、Bluetoothによるテザリングを体験してみて欲しい。Windows 8の時代から少しずつ安定度が高まってきていて、Windows 10では実用域に達している。かつての接続がDUN(Dial Up Network)プロトコルに頼っていたのに対して、現在はPAN(Personal Area Network)プロトコルにおけるNAP(Network Access Point)サービス利用が主流となっている。Windows 10以降では、BluetoothスタックがMicrosoft純正のものに限定されているので、その挙動も把握しやすいからなのだろう。
Bluetoothでスマートフォンに接続することで、転送速度はWi-Fiに比べて多少は遅いかもしれないが、理論値としては24Mbpsある。ブラウザの日常利用やメールの送受信には十二分な速度だ。それでいて消費電力が低いためにバッテリに優しい。さらに、カバンやポケットの中のiPhoneに一切手を触れず、PC側からテザリングによる通信を開始できるというのも気軽でいい。Wi-Fiテザリングの場合は、インターネット共有設定画面を出しているときにしか接続の操作ができないので一手間余計にかかってしまう。
Bluetoothテザリングをサポートしていないスマートフォンは探すのが難しいくらいになってきている。当然、日本国内ではシェアがもっとも高いと思われるiPhoneだってサポートしている。
ご存じのように、Bluetooth接続では、前もってデバイス相互をペアリングしておく必要がある。
まず、iPhoneの「設定」にある「Bluetooth」をタップし、Bluetoothがオンになっていることを確認しよう。名前は「一般」の「情報」-「名前」で任意のものに設定できる。
この画面が出ている状態で、ほかの機器から検出が可能になっている。そのままの状態で、Windows 10側の「設定」-「デバイス」-「Bluetooth」を開くと、ペアリングできるデバイスの一覧に当該iPhoneの名前が表示され、「ペアリングの準備完了」となっているのが確認できる。
それをタップするとペアリングボタンが表示されるので、そこをタップすれば、Windows 10側でパスコードが表示される。その番号とiPhone側に表示されているものの一致を確認すればペアリングの作業は完了だ。ペアリングが完了したらiPhoneの「インターネット共有」をオンにしておく。
こうしてペアリングしたWindow 10 PCからiPhoneのインターネット共有機能を使うわけだが、接続を開始する最初の手順がちょっとややこしい。
まず、コントロールパネルを開き「デバイスとプリンター」アプレットを開く。一覧の中にペアリングしたiPhoneが見つかるので、それを右クリックして表示されるショートカットメニューから「接続方法」-「アクセスポイント」とたどれば接続が完了し、PCからiPhoneのLTE等を使っての通信ができるようになる。
このとき注意して欲しいのは、仮にiPhoneがWi-Fiでインターネットに接続されている場合でもLTE等の通信が経路となる点だ。Wi-Fiを使ってくれれば、Wi-Fiの中継器的に使えて便利なのだがそうは問屋が卸してくれないようだ。
接続操作を少しでも簡単に
さて、コントロールパネルから「デバイスとプリンター」を開き、iPhoneを見つけて右クリック、という手順を接続のたびに毎回繰り返すのはいささかめんどうだ。そこで、右クリックで表示される「ショートカット」を使ってデスクトップにショートカットを作っておくといい。さらに、デスクトップがアプリケーションのウィンドウでいっぱいになっていても操作できるように、タスクバーからアクセスできるようにしておくともっと便利だ。ところがここで作ったショートカットはタスクバーにピン留めすることができない。
そこで、タスクバーを右クリックし、ツールバーとして「リンク」を表示させ、そこにドロップする。これで、デスクトップがウィンドウでふさがっていても、タスクバーから簡単にショートカットにアクセスすることができる。ショートカットを右クリックして「接続方法」-「アクセスポイント」とたどる手順は同様だ。
Bluetoothの設定画面から接続の操作ができなかったり、ペアリングした相手機器の操作をコントロールパネル経由でしかできないなど、どうにもWindowsにおけるBluetoothの扱いは継子扱い的なムードが強いが、これでも、Windows 8の頃、「アクセスポイント接続」ができたりできなかったりと不安定だったことを思えば、ずいぶんまともになったという印象がある。
LTE内蔵機種が充実し始めた
さて、昨年(2015年)辺りからMVNOの価格競争が始まり、データ通信であれば3GB辺り月額1,000円程度の価格で維持できるようになっている。さらに、Windows 10 PCにもLTEモデムが内蔵されているものが増えてきている。今週発表になった新型LAVIE Hybrid ZEROにもSIMロックフリーLTEモデム内蔵モデルが用意されるようだ(別記事)。
国内で発売されているLTEモデム内蔵PCは、SIMロックフリーのものとドコモロックのものに大別できるが、現在のMVNOのほとんどがドコモネットワークに依存している以上、日本国内で使う限りはSIMロックフリーでなくても特に困らないだろう。
さて、LTEモデム内蔵機種では、Windows 10の設定で「ネットワークとインターネット」に「携帯電話」という項目が表示される。これをタップすると「携帯電話」が表示されるので「詳細オプション」をタップし、スマートフォンでの設定と同じように「インターネットAPN」を設定すればいい。
Windows 10のヘルプを見るとAPNの設定は自動的に設定されることになっているが、どうもここはうまく動いていないようだ。例えばMVNOのSIMを入れても、そのAPNが自動的に設定されることはない。今のところは手動で設定するしかなさそうだ。
なお最近サービスが開始された「VAIO オリジナルLTEデータ通信SIM」では、専用のユーティリティが提供され、ダウンロードして実行すれば、APNを自動設定でき、さらに高速通信モードのオン/オフを切り替えることができるようになっている。サポート外ではあるがVAIO S11以外のPCでも使える。手元ではレッツノートで確認したが問題はなさそうだ。
接続を意識しなくてよくなるまでもう一息
Windows 10 PC単体でLTE通信ができることで、モバイルノートPCの液晶を開いてスリープから復帰すれば、もう、インターネットに接続しているという環境が手に入る。かつてのWiMAX内蔵PCがそうだったのだが、悲しいことに、今はもうWiMAX内蔵PCが皆無という状態だ。WiMAX2+はTD-LTE互換なのだから積極的に各社に呼びかけてBand41をサポートしてもらい、かつての内蔵PCのような使い勝手を実現して欲しいものだが、これもなかなか叶わない。
さらに、いくつかのPCで試してみたところ、どうも、LTE内蔵PCでは、接続に多少の時間がかかり、スリープから復帰したらもう繋がっているというわけにはいかないようだ。
もちろん、Surface 3 のようなInstantGo対応機の場合は、そもそもスリープ時も通信を維持しているので繋がることを意識する必要はないが、バッテリ節約のためなどで、スリープ時の通信を切っているような場合はやはり時間がかかる。ほんの数秒のこととは言え、急いでブラウザを開いてネットワーク接続がないといった表示を見ると、ちょっとがっかりする。
それでもほかのデバイスに頼らずに、PCが単独でインターネット接続できるのは便利このうえない。ちなみにLTEモデム内蔵PCでは、Windows Connection Manager(WCM)が機能し、自動的に最適なネットワークが選択される。つまり、LTEとWi-Fiが両方繋がっている状態では、Wi-Fiが優先され、自宅のWi-Fiに繋がっているのにLTE経路が使われてパケットを浪費するというようなことはない。
その一方で、先頭に書いたBluetoothによるインターネット接続は、その経路が最優先されてしまう。しかも、従量制課金接続を設定できないため、後回しでかまわない優先度の低いデータ通信を除外するといったことができない点に注意が必要だ。
これらのことを回避するために、設定の「データ使用状況」で「上限を設定」しておくといったことも視野にいれた管理が必要になるだろう。