Windows 10ユーザーズ・ワークベンチ

リリース直前、磨きがかかるRS1

 コードネーム“RedStone1(RS1)”で知られる「Windows 10 Anniversary Update」のリリース直前。Insider Previewの現在の最新ビルドは、7月19日にリリースされたBuild 14393で、その後、7月23日に再起動が必要な「x64 ベース システム用 Windows 10 Version 1607の累積的な更新プログラム」が、KB3176925として適用されてビルドは0.3進み、7月26日にやはり再起動が必要な「x64 ベース システム用 Windows 10 Version 1607 の累積的な更新プログラム」がKB3176927として適用されて、この原稿を書いている時点でのBuildは、さらに0.2進んだ14393.5となった。

小数点以下のビルドを刻むRS2

 Wiindows 10 Anniversary Updateのリリース日、8月2日が間近だ。残された時間はわずか。このあと、最終アップデートがあってRTMとなる可能性が高い。それともこのままRTMか。TH2の1511が、Build 10586.11と中途半端なビルド番号だったので、もしかしたらこれがRTMになる可能性もある。梅雨明けと同じで、後になって「実はこれがRTMでした」というパターンになるのは間違いないが、いくつビルドが進むかが興味深い。

 その日に備えて、システムの入れ替えなどの準備を進めている方も少なくないだろう。今、この原稿を書いている環境は、2013年の夏に組み上げたシステムで、ほぼ3年間を一緒に過ごしている。つまり、この環境に最初に入れたのはWindows 8で、8.1を経由、Technical Previewと呼ばれていたプレビュー版で更新しながらWindows 10に更新、さらにはInsider Previewと名前が変わったプレビュー版も、リリースされたものは全部適用して現在に至っている。Insider Previewの適用は再インストールに近いとは言え、よくまあ、大きな問題も起こさずに普通に使えている、と感心してしまう。さすがにブルースクリーンが頻発したビルドの使用期間、ほぼ1か月は泣きそうだったが、それでも耐えて、今はとても快適だ。

 どうせ新しくなるのなら、そろそろクリーンインストールして再スタートさせたいと思うのだが、システム丸ごと入れ替えるかどうか、はてさてどうしたものか。

7月19日のBuild 14393は、2度の累積的な更新プログラムを経てBuild 14393.5になっている
バージョンは1607で変わらない。このまま行くと思われる
システムの状態をタスクマネージャで見ると、メモリを消費するアプリケーションを動かしていても8GBを少し超える程度。16GBあれば困らない印象だ。

数々の新機能に期待

 Windows 10 RS1における大きな変更点については、実際にリリースされてから、この連載で順次お届けする予定だが、RS1リリースはRS2リリースへのマイルストーンであり、次のInsider Previewがすぐに始まることになるだろう。

 目新しいところでは、以前も紹介したように、モバイルホットスポットがWi-Fiによるインターネット接続を共有可能になったこと、Miracastの受信機能が付いたことは、かなり嬉しい新機能だ。この2つの機能によって、宿泊を伴う出張でも、モバイルルーターを持ち出す必要はなくなるし、タブレットPCやノートPCが都合2台あれば、マルチディスプレイ環境が簡単にできあがる。これでノートPCの付加価値は大きく拡大する。

 日本では後回しになっていたコルタナが、それなりにまともに動き始めているのもRS1の大きな特徴だ。PCを使っているどんな時でも「コルタナさん」と話しかければ、相手をしてくれる。話の内容が理解できないと、すぐにブラウザを開いて検索してしまったり、その検索エンジンに設定したデフォルトエンジンではなくBingを使ってしまうのはご愛敬といったところか。

 今後のコルタナは、どんどん外の世界と繋がり、Microsoftのボットのフレームワークを使ったデジタルアシスタントとして、有能な存在になっていくだろう。iOSのSiriや、AndroidのOK Googleとは多少異なる方向性だ。

 セキュリティ面では、赤外線カメラを使った廉価で小型化が可能なソリューションによって、Windows Hello認証が一般的になりつつある。指紋センサーを持つPC製品も目立ってきた。Windows Helloは生体認証とPINを組み合わせ、パスワードよりもずっと安全なWindowsへのサインインを可能にする。それまでは、IntelのRealSenseのように、スペース的にも価格的にも高コストなデバイスが必要だったが、これからは多少事情が変わっていく。指紋認証が当たり前になってきているスマホに続けと言わんばかりだ。

 また、ペンがクローズアップされた点もこの半年の大きな変化だ。個人的には、30年近く前からノートPCを持ち歩くようになって、紙の手帳を捨てることができたのに、何が悲しくてまたペンで手書きしなければならないんだろうと思わないでもないが、MicrosoftはPCへの入力のための主力デバイスに、ペンを強くプッシュしたいようだ。今の時点では、タッチのマンマシーンインターフェイスよりも、ペンの入力を優先して考えている雰囲気がある。

 OSレベルでのペンサポートでは、「Windows Inkワークスペース」の実装がある。所詮は標準アプリであり、メモ帳や電卓のようなもので、アプリとして大きな期待をしてはいけないが、ペンでできることの可能性と、それをMicrosoftがどのように考えているのか、を示唆するという点では重要な機能追加だ。

 キーボードが最も高速に文字入力ができるデバイスである点はこれまでと何も違いはないが、それは作業のためのちゃんとしたテーブルがある場合や、座って膝の上に作業スペースが確保できる場合に限られる。だが、立ったままの姿勢でPCに何かを入力しようという時にキーボードは無力で、そんな時にペンは重宝する。愛用の秀丸エディタに手書き入力で文字を入力したり、その認識にもどかしさを感じたら、OneNoteなどに手書きでメモを殴り書きしておき、後でそのインクをテキストに変換する、といった使い方もできる。これはこれで、PCが使われる場所のバリエーションが増えていることに、それなりに大きな貢献をするだろう。

コルタナはWindowsの将来を包含している
Windows Helloが一般的になり、セキュアは面倒という考え方にも変化が
Windows Ink ワークスペースに大きな期待をしてはいけないが、ペンの将来は理解できる

変わるピュアタブレットの立ち位置

 2in1 PCは、モバイルPCの1カテゴリとして市民権を得つつあるが、その本質は、ちょっと違うところにあると思っている。というのも、多くのユーザーは、万能のPCをいつでもどこでも使いたいと思うもので、だからこそ、1つのデバイスにノートPCとタブレットを同居させたいと思いがちなのだが、実は、タブレットはキーボードやマウスと同じような、コンピュータとの対話のためのデバイスなのではないかと考えることもできる。

 NECパーソナルコンピュータの「LaVie Zero」や、ファーウェイの「Matebook」などの軽量デバイスをピュアタブレットとして使ってみると、処理能力には大きな期待はできないが、タッチと手書き、音声認識による入力で、それなりのことができてしまうので、タブレットというデバイスそのものが、クラウドにあるコンピュータリソースと対話するための、キートップのないインテリジェントキーボードなのではないかと思ったりもする。

 そう考えると、なんとなく、この先のRS2に向けたWindowsの方向性も見えてくる。RS1がまだ出てもいないのに気が早い話だが、ここまで安定してきたWindowsだからこそ、期待も高まるというものだ。

 この連載では大きくクローズアップはしてこなかったが、MicrosoftはWindows 10をPC用とは別に、Mobile版についてもInsider Previewとして更新してきた。こちらもまた、RS1としてリリースされることになっていて、PC版のWindowsとは、通知の共有やコルタナ連携などの点で強化されていく。Windows 10 Mobileは、言わばARM版のWindowsといっても良い存在だ。Microsoftは、一旦Windows RTを引っ込めた経緯があるが、実はWindows 10 Mobileと名前を変えただけと考えることもできる。

 この連載の次の回は、Anniversary Updateのリリースされた直後に掲載される予定だ。引き続きご愛読をよろしくお願いしたい。変わり続けるWindowsに、ユーザーとしてどう付き合っていくかを探求していきたいと思う。