Windows 10ユーザーズ・ワークベンチ

評価版ウォーターマークが消えたInsider PreviewでRS1完成間近

 一部の環境では、最新のInsider Preview Build 14383(執筆時点、現在は14385)の更新によって、デスクトップ右下に表示されていた「評価版」の表示が消えた。いよいよRTM(製品版)まで秒読み段階になっているのだろう。最終コードの準備にとりかかっているからだとされている。ただ、公式ブログでは、まだ、更新は何度かあるということが表明されている。

変わる体験は少ない方がいい

 7月7日(日本では7月8日になっていた)にリリースされた最新ビルドは、とりあえず、手元で5種類の環境を更新してみたが、そのうち2台には、なぜか評価版であることを示すウォータマークが表示されたままだ。同じメーカー製のノートPCなので、何か特別な原因があるのかもしれない。それ以外の環境のデスクトップには評価版の表示はなく、また、winverアプリによるバージョン情報でも正規ライセンスの製品版だと明記されている。それによれば、バージョンの詳細は、

  • バージョン1607(OS ビルド 14383.0)

となっている。

あるPCを最新ビルドに更新すると正規版のWindowsのように見える
別のPCを最新ビルドに更新すると評価版ですと表示される。有効期限は7月16日だ

 前回のRTMはTH2(Threshold2)で、バージョンとしては2015年11月を意味する1511(OSビルド10586)だったが、今回のRedStone1(RS1)は2016年7月のRS1としてのバージョン1607となり、このまま多少のビルドの更新を経て、8月2日に一般向けに公開されることになっている。実際、14383の3日後には、14385がリリースされた。

 いずれにしても、無償アップグレードの期限は7月29日だ。この日を境にWindows 10へのアップグレードは有償となる。現状の環境に不具合がないことが確認できるのなら、決断を急いだ方がいい。

 とは言え、Windows 10へのアップグレードをした場合、最初に適用されるのはバージョン1511だ。そして1カ月を待たずにバージョン1607となる。一度変わったものが、短期間でもう一度変わるというのは使う側にとってとても負担が大きいのも事実だ。それなら、7月29日ギリギリまで待ってアップグレードし、3日間だけ我慢して使い、公開された時点でもう一度バージョン1607にアップグレードするという方法をとった方がいいかもしれない。だが、それも綱渡りだ。

 RS1リリースの8月2日は、きっと7月29日期限が決まったあとで決定されたものだろうから、仕方がないこととは言え、「変わる」という心配を2度もさせ、ストレスを感じさせるというのは酷だ。正直なところ、せめて、8月2日から1週間後程度の余裕を持てるように無償アップグレード期限を延長するくらいの気配りは欲しかった。RS1の評判がよかった場合、駆け込みでアップグレードするユーザーもきっといるに違いないし、そういうユーザーを救ってこその無償アップグレードなんじゃないかと思う。

 もっとも、アップグレードにはとにかく時間がかかる。最新のSkylakeノートでも、ダウンロードの時間を含めれば30分では終わらない。古いPC、特に、HDD環境では3時間コースを覚悟しておいた方がいい。

 個人的にはWindows 8/8.1からならアップグレードしない手はないと思う。特に、Windows 8/8.1をそれほど好きではなかった方なら、逆にある程度満足できるだろう。

 一方、Windows 7からのユーザーは迷うところだ。特に、稼働しているPCが古いもので、ストレージ容量の余裕もなく、できればそのPCがライフサイクルを終えるまで、そっとしておいてやりたいと考えるユーザーも少なくないはずだ。PCをもうほとんど使わなくなっていて、ほとんどの用事はスマートフォンで事が足り、PCが欲しくなったら、新しいのを買うつもりということもありそうだ。そうした環境に、リスクを覚悟で手間暇をかけるのはできれば避けたいというのが本音ではないだろうか。

 そうした場合はこうすればいいという明確な解はないが、とにかく、異なる環境が混在することの方がややこしいという原則に従うのがいい。Windows 10環境が、身の回りに1台でもあるなら、それに揃える方があとあと混乱を招かない。

Edgeが実用域に入ってきた

 さて、昨年(2015年)秋のTH2と、今回のRS1ではさまざまな変化があり、手元でとりあえず残しているTH2環境と比べてみると、TH2に古くさささえ感じるくらいだ。

 標準ブラウザはEdgeになったが、このEdgeがTH2以後、今日に至るまで、いろいろな変化があったのが特徴的だ。例えば、TH2のEdgeでは、Webページを左右にフリックしても何も起こらなかったが、最新ビルドでは、左右の1本指フリックで戻る、進むを指示することができるようになっている。

最近のEdgeでは以前のモダンIEのように左右のフリックでページを戻ったり進んだりできるようになった

 実を言うと、Windows 8.1のモダン版InternetExplorerでは、これができていたので、Windows 10を使うようになってもっとも不便に感じていた。だからこそ、その機能の復活はうれしい。特に2in1 PCをタブレットとして指先だけで使っている時に、この機能はとても役に立つ。

 ちなみにWindows 10は、タブレットモードによって、キーボードを切り離したりすると、デフォルトではウィンドウは最大化され、タスクバーも最低限のボタンだけが表示されるなどの画面変化があるが、これらの機能はオフにすることもできる。いつものWindowsをいつものWindowsとしてタッチで使たいだけというならタブレットモードは余計なお世話に感じることもある。そのあたりの柔軟性、オプション設定の幅広さという点は高く評価できる。

タブレットモード時の振る舞いは細かく指定できる。この柔軟さはうれしい

 また、IEでできていたタスクバーへのサイトのピン留めも、Edgeになってできなくなってしまったことの1つだ。かろうじて、今のEdgeは、タブをピン留めすることができるようになったが、アドレスバーなどが表示されたままなので、サイトがアプリのようなイメージにはならず、あくまでもブラウザが開いているという域を出ない。

 Edgeは、現在、もっともバッテリに優しいブラウザになっているだけに、問題がないところでは積極的に使いたい。だが「便利」が追加されればされるほどバッテリにもインパクトを与えることになる。各種の拡張機能サポートはうれしいし、これらも進んで使いたいとは思うが、Chrome並みの環境が提供できるようになるまでは、もう少し時間がかかりそうだし、Chromeのバッテリ消費は半端ではない。どちらがいいのかは難しいところだが、そのテーマは今後のInsider Previewや来年(2017年)のRS2までお預けで、RS1ではここまでといったところだ。

ストアアプリはデバイス10台まで

 多くの人には関係のないことかもしれないが、ストアからアプリをダウンロードして入手しようとした時に困るのが、登録できるデバイスが10台に制限される点だ。Windows 10そのものは制限はないに等しいが、ストアアプリについては10台の上限がある。しかも、その中には、Windows 10 Mobileも含まれるのだ。

 複数のデバイスをあれこれ試していくのが仕事なので、この制限はつらい。今まで出たほとんど全てのビルドを試しているが、そうして稼働しているPCだけでも10台以上ある。

 Windows 8.1では81台だったので、特に問題を感じることはなかったが、10台ではしょっちゅう上限にひっかかり、その時使っていない環境をデバイスリストから削除するが、この数は、もうちょっとなんとかならないものかと思う。

 ちなみに、現在、ストアに関連付けられているデバイスは、ストアアプリの設定メニューにある「アカウント」→「デバイスを管理する」から確認できる。あるいは「設定」→「アカウント」→「Microsoftアカウントの管理」で、Webサイトを開き、デバイスタブを開くと、

  • デバイス
  • アプリとゲームデバイス
  • ミュージックデバイス
  • 映画とTVデバイス

 それぞれの登録状況を確認でき、その登録解除もここでできる。

ストアの設定で「アカウント」→「デバイスを管理する」を開く
Webページが開きデバイスの一覧が表示される。ストアと関連付けられるデバイスは10台までだ

 なお、ここで表示される名前はWindows 10 PCの名前でもある。ところが、インストールでは、自分で自分のPCに名前を付けるプロセスがなく、一意となるであろう適当な名前が付けられる。ノートPCであっても、「DESKTOP-xx6xx34」といった名前になり、さすがにこれでは、どのデバイスか分からない。この名前は、いろいろなところで参照されるので、Windows 10をインストールしたら早い段階で変更しておくことをお勧めする。

識別のための名前は勝手に付けられる。新品のメーカー製PCなどでも同様だ。ややこしいので早期に変更しておきたい

 PCの名前の変更は、システムのプロパティを開いて「コンピュータ名」タブを使って変更すればいい。これからRS1の更新を予定している場合も、先に分かりやすい名前を付けておくことで、それが引き継がれるので、確認して分かりにくいようなら今すぐ作業しておこう。

 こういうことを見るにつれ、Microsoftでの開発チームでは、1人せいぜい数台程度でしかテストをしていないように思えて仕方がない。それでは見付かるはずの不具合も見付からない。