米AMDは23日(現地時間)、業界で初めてDirectX 11に対応したGPU「Radeon HD 5870」および「同5850」(コードネームCypress:糸杉)を発表した。即日出荷開始予定で、米国での実売価格は順に400ドル以下、300ドル以下となる見込み。
基本アーキテクチャはRadeon HD 4870を踏襲しつつ、製造プロセスの微細化とトランジスタの倍増により、消費電力の増加を抑えつつ、機能追加し、馬力を倍増させるという正統的な進化を果たした製品。
Radeon HD 5800の概要 |
具体的には、プロセスルールが55nmから40nmへと微細化。これにより、Radeon HD 5870では、トランジスタ数が9億5,600万から21億5千万へと2.25倍に増えたが、最大消費電力は188Wと28Wの増加に抑え、アイドル時の消費電力に至っては90Wから27Wへと大幅に削減されている。また、ダイサイズも263平方mmから334平方mmと27%増に留まっている。
SP数、テクスチャユニット数、ROP数は、それぞれ800基から1,600基、40基から80基、16基から32基へと文字通り倍増。エンジンクロックは750MHzから850MHzへ高速化。メモリはGDDR5を引き続き採用するが、クロックが3,600MHzから4,800MHzへと向上したことで、バンド幅は115.2GB/secから153.6GB/secへ向上。これらにより、ピーク性能は1.2TFLOPSから2.72TFLOSPへと2倍以上に引き上げられた。また、命令セットなどの改善も施され、OpenCLやDirect Computeのシェーダあたりの性能も向上しているという。
Radeon HD 5850は、5870のコアを部分的に無効にし、クロックを引き下げており、SP数は1,440、テクスチャユニット数は72、ROP数は32、エンジンクロックは725MHz、メモリクロックは4,000MHzで、ピーク性能は2.09TFLOPS。最大消費電力は170W、アイドル時の消費電力は27W。
Radeon HD 4870/5850/5870の比較 |
機能面では、業界に先駆けDirectX 11に対応。Windows 7では、DirectX 11を標準搭載し、DirectX 9/10のGPU利用時は、DirectX 11の固有機能はソフトウェア動作となるが、Radeon HD 5800シリーズでは、テッセレーション、マルチスレッド、テクスチャ圧縮、Shader Model 5.0などの新機能を含め、ハードウェアで動作させることができる。
なお、Windows 7はWindows Vistaよりも表示性能が向上しており、Radeon 5870ではゲーム性能が1~2割前後、CrossFireX構成では最大7割も向上するという。
同社によると、DirectX 11に対応したゲームタイトルとしては、「ALIENS vs PREDATOR」、「S.T.A.L.K.E.R CALL OF PRIPYAT」、「COLIN McRAE DiRT 2」、「BattleForge」といったものが、Windows 7と同時期に発売予定だという。これらタイトルの一部では、Direct Computeを使った物理演算やAI計算などが実装されている。
ディスプレイインターフェイスは、DVI×2、HDMI、DisplayPortの4つを装備。先だって発表された通り、独自のマルチディスプレイ技術「ATI Eyefinity」に対応。DVI×2+HDMIあるいはDisplayPortの組み合わせによる、3ディスプレイ同時出力が可能。また、DisplayPort×6を装備したモデルも予定されている。
従来通り、動画再生支援エンジン「UVD」や、マルチビデオカード技術CrossFireXに対応。CrossFireXについては、アイドル時に2枚目のカードの電力供給を切断する省電力機能が追加された。
なお、第4四半期中に、Cypressの縮小版である「Juniper(ねず松)」とCypressを2基搭載する「Hemlock(カナダツガ)」が、2010年第1四半期には、Juniperのさらに下位となる「Redwood(アメリカスギ)」、「Cedar(西洋杉)」(いずれもコードネーム)といったGPUが予定されている。
(2009年 9月 23日)
[Reported by 若杉 紀彦]