バグは本当に虫だった - パーソナルコンピュータ91の話
第6章 AIの時代へ情報化社会の未来予想(4)
~最終回につき、セールを実施
2017年6月29日 06:00
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『バグは本当に虫だった - パーソナルコンピュータ91の話』の連載は今回で最終回となります。連載終了を記念して、本日よりAmazonKindleストアにて、本稿の元になった書籍『バグは本当に虫だった - パーソナルコンピュータ91の話』の電子書籍を、50% OFFセール価格にて販売いたします。本連載をお読みいただいて"もっと内容を知りたい!”という方、ぜひこの機会にお買い求めください!
フィンテックと税理士の未来 2016年
“2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今存在していない職業につくだろう”、デューク大学教授の予想が話題を集めました。確かにカリスマブロガーやユーチューバといった職業は私達の子供の頃にはありませんでした。ピコ太郎のように一気に全世界でブレークが可能な時代でもあります。
フィンテックという言葉をよく聞くようになりました。フィンテックとはファイナンスとテクノロジーの二つをあわせた造語です。
フィンテックの例としてモバイル決済があります。2016年10月からiPhoneに、おサイフケータイ機能(フェリカ)が導入され、ますますモバイル決済が広がっています。コンビニなど店舗でのモバイル決済が広がれば、お客さんとのお金のやり取り時間を短縮できます。店側のメリットも大きく、小銭の用意や夜間金庫に売上を入れにいく手間がなくなります。なにより店にお金という現物が少なくなりますので、防犯対策となります。
お手軽な家計簿アプリ
フィンテックの一例が会計です。便利なクレジットカードですが、支払が後払いになります。今月はこの金額までなら使えるという自己管理ができればよいのですが、欲しいものがあると衝動買いしてしまうと給与前は悲惨なことになります。お金がたまらない人の特徴は、クレジットカードで買うと自分の財布からお金が消えるわけではないため、支払を先送りしているという意識が働かないことにあります。
お金を貯められるようになるにはクレジットカードだけでなく、毎月の固定費(家賃、水道光熱費、ローン、保険代など)がいくらあり余裕がいくらあるのか、把握をするのが第一歩です。そこでおすすめなのが家計簿をつけること。ところが、レシートを見ながら家計簿に転記し、銀行通帳やクレジットカードの明細をいちいち家計簿につける面倒はとてもできないと思っている人がほとんど。エクセルで家計簿を作っても、入力する手間はかわりません。
今は手軽に始められる、とても便利な家計簿アプリが登場し、手間もほとんどかかりません。銀行口座やクレジットカードの明細は転記しなくても自動で取得して家計簿に落とし込んでくれます。しかも無料で使えます。なかにはスマホでレシートを撮影して送るだけでオペレーターがレシートの写真を見ながら、手作業で入れてくれる家計簿アプリもあります。家計簿を上手につければ、家計の余裕が把握できます。
中小企業では仕訳がわからないことが多い
創業者や小規模企業の多くは勘定科目についてよく理解できず、仕訳や決算・申告の仕方がわかりません。そこで登場したのがクラウド会計です。
手形取引がなければ、ほとんどの仕訳は現金と銀行口座の入出金となります。そこで会社の銀行口座とクラウド会計を連携させ取引情報を取り込んで、仕訳の自動化ができます。経費の支払いを現金でなくカードを使うようにすればカードの取引情報を取りこんで経費の仕訳をおこなってくれます。最初だけ○○電力からの引き落としは“水道光熱費”と登録が必要ですが、いったん登録すれば、○○電力からの引き落としは水道光熱費と自動で仕訳しますので、なにもしなくても面倒な会計処理ができます。月額料金も安く、会計だけでなく決算書作成までおこなってくれます。小規模事業者であればクラウド会計で十分でしょう。
さて、こうなると危なくなるのが記帳指導だけおこなっている税理士の存在です。会社をまわって領収書などを会社から預かり、仕訳入力し、試算表を作るだけしかしていない税理士であればクラウド会計に置き換えられてしまいます。
少し前にオックスフォード大学が十年先になくなる仕事を発表して話題になっていましたが、“税務申告書代行者”、“簿記・会計・監査の事務員”がリストにあがっていました。記帳指導だけでなく経営者の悩みにこたえられる税理士でないと将来的に生き残っていくのは大変なようです。将来消える仕事のリストには“銀行の融資担当者”も入っており、これからフィンテックが社会にさまざまな影響を与えていき、「昔、会社の会計を人がしていた時代があったなあ」という時がきそうです。
ポケモンGOとお遍路との関係 2016年
ポケモン、ゲットしていますか?
2016年7月22日から国内でポケモンGOの配信が始まりました。先行配信していた米国での大騒ぎの様子が連日、テレビ報道されていたこともあり、日本でも配信と共に社会現象になっています。位置を活用したゲーム・位置ゲーは以前からありましたが、ポケモンGOほど大ヒットしたものはありません。名古屋の鶴舞公園では噴水がモンスターボールにそっくりのため聖地となり、連日のように人が押し掛け、おかげで周辺の飲食店では売上が増え、ホクホク顔になっています。
ここで、ポケモンGOとお遍路との関係をみてみましょう。
お遍路とは
四国八十八箇所巡りともいい、四国にある空海(弘法大師)ゆかりの寺院八十八箇所を巡る旅です。車で巡礼する人が多いのですが、千二百キロをひたすら歩く“歩き遍路”もいます。自分が歩いた経路を日本地図で確認できるという、ふつうではできない体験ができます。
八十八箇所巡りはよく考えられていて、徳島にある第一番札所の霊山寺へ行くと、巡礼に必要なグッズが一通り揃い、必要なものをアドバイスしてくれます。まず買うのが朱印帳。八十八箇所巡って朱印を押してもらいますので、市販の朱印帳では枚数が足りません。まずお遍路用の朱印帳をゲットします。朱印帳を手にして歩き出すと、一番から十番切幡寺までは近接したところにあり、わりと簡単に朱印がたまります。
十一番藤井寺から十二番焼山寺までは約十三キロの山道で、「へんろ転がし」といわれる徳島での最大の難所が待っています。焼山寺の朱印をゲットできれば達成感にひたれます。十三番大日寺から十七番井戸寺まで、また近接していますから、十七番までの朱印を集めると八十八箇所の二十%が終了したことになります。
これが高知に入るといきなりハードになります。二十四番最御崎寺は室戸岬にあり、二十三番から歩くと、ふつうの人がたどりつくのに二日半かかります。しかし朱印が二十%集まっていますので、もうやめられません。また“お接待”という地元の人からの差し入れがあると、ますますお遍路ファンになり、ますますやめられません。お遍路が“お四国病”と呼ばれるゆえんです。
ポケモンGOとは
ポケモンGOを作ったのはナイアンティックという会社です。グーグルマップを作っていた仲間が2015年10月にグーグルから独立して作った会社です。グーグルには位置情報を利用し現実世界のスポットを奪い合う陣取りゲームがあり、全世界のプレイヤが街角の看板や史跡などを撮影し、五百四十万カ所以上ものポータルを登録していました。これがポケモンGOのポケストップになっています。ゲームプレイヤが少ない地域ではポータルの登録が少ないため、ポケモンGO過疎問題が起きています。
もともとエイプリール企画から始まった
グーグルでは毎年、エイプリールフール企画をしていますが2014年4月1日、「ユーチューブ」に流れた動画が「グーグルマップ:ポケモンチャレンジ」というタイトルの動画。スマホ片手に世界中のあらゆる場所でポケモンを捕まえる内容です。動画だけでなく、実際に遊べる簡単なゲームも用意されました。
モバイル版のグーグルマップで「ゲームをはじめる」を選択し、マップ上のどこかに潜む百五十一種類のポケモンを探すというもの。まずは図鑑を用意して、ポケモンを捕まえて図鑑を埋めていきます。ゲームは二日間の期間限定でした。
エイプリフール企画は地図上でしたが、ポケモンGOは実際に歩いて捕まえるAR(Augmented Reality 拡張現実)になっています。根底にある考え方は「子供が家に閉じこもってゲームばかりしているのを家の外にゲームを持ち出して、健康的に遊べるようなものにしたい」です。実際に配信されると子供以上におとながはまっています。
ポケモンGOでは、まずポケストップをまわってモンスターボールを用意します。そして図鑑のコンプリートを目指します。朱印帳をゲットして八十八箇所のスポットを歩いて朱印を集めないといけない点は、お遍路もポケモンGOとよく似ています。どこでレアポケモンが出やすいか、効果的なアイテムの使い方などの情報交換が必須で、これはお遍路も同じです。寺までのルート、どのあたりにトイレがあるか、ルート上の楽しみなどを情報交換します。そして経験値が上がるとレベルがあがり達成感が味わえるのも同じです。
ポケモンGOで新しいビジネスが生まれる
マクドナルドの店舗がジムやポケストップになっていることから集客効果が出ています。またルアーモジュールという仕組みがあり、対象のポケストップに三十分間、ポケモンの出現頻度が増すという課金アイテムがあります。商店街のお店がイベントなどの集客で活用できます。
イギリスではポケモンが頻出する場所に連れて行くポケタクシーが登場しています。ほかにもスマホの充電ができるモバイルバッテリーの販売額が三倍に伸びていて、歩きまわる人が増えるので靴の売上が増えるという予想も出ています。ポケモンGOから派生して新しいビジネスが生まれています。
お遍路代行ビジネスという本人に代わってお遍路の代行をするサービスと同じように、ポケモンGOの歩行代行ビジネスが新しく登場しました。これは果たしてゲームの意味があるのでしょうか。
バグ退散に効果がある寺社はどこ? 2016年
世界一の電気街・秋葉原が近く、パソコン関係の仕事に従事する氏子が多い神田明神。神田明神では、フリーズ、強制終了など人の力ではどうしようもないパソコンの不具合に対応するため、お守り「IT情報安全守護」を授与しています。パソコン用、携帯用などシールが三種類入っていて、このシールを貼っておくと霊験あらたかです。
バグ退散なら電電宮へ
京都・嵐山の渡月橋近くに法輪寺があります。十三歳になった子供の厄をはらい、知恵を授けてもらう十三参りで有名なお寺です。法輪寺境内には電気・電波を守護する鎮守社「電電宮」があり、電力、電気、電波、電子等あらゆる電気関係事業の発展と無事と安全を祈願しています。
もともと電電明神が祭られていたのですが、長州藩と幕府が戦った禁門の変で焼けてしまい、昭和になって再興されました。お世話をする会員には朝日放送、毎日放送など放送会社や電力会社、家電メーカーなどが名前を連ねています。お守りには「スマホ向けマイクロSD御守」があり、本体には梵字が印刷され、中には虚空蔵菩薩の画像データが入っています。昔は二ギガバイトでしたが現在は八ギガバイトになっています。車のお祓いは大概の神社でやっていますが、電気自動車やハイブリッド車のお祓いも大丈夫です。
電気・電波の神様ですがソフトウェア業界の参拝も多く、神様に細かな縦割りはないようです。そもそもコンピュータは電気がなければ動きませんので、電気の神様に祈願するのは妥当でしょう。発売前の携帯電話本体を持ち込んでヒット祈願することもおこなわれていました。境内には「不具合撲滅!バグ退散」、「システム安全運行」などソフトウェア業界のエンジニアが書いた祈願文などがぶらさがっています。
おそらく、考えられるバグはつぶしたが、まだプログラムにバグが残っているかもしれない。でも納期がせまっているなか、これ以上バグ探しをしている時間はない。人事は尽くしたので、あとは神様にすがるしかないと思って書いたのでしょう。
パソコン供養なら万松寺
名古屋の大須電気街にあるのが万松寺。織田信長のお父さんである信秀の葬儀がおこなわれた寺として有名です。厳粛に葬式がとりおこなわれるなか、茶せん巻きの髪に荒縄の帯を腰にまいた信長が、仏前に進むと抹香を大きく手づかみにするなり、信秀公の位牌に投げつけます。映画やドラマでよく出てくるシーンは、この万松寺でおこなわれました。信長が近江で狙撃された時、万松寺和尚にもらった餅が懐に入っていて、弾が餅に当たり難を逃れたという逸話もあります。
信長時代の万松寺は違う場所にありましたが、名古屋城築城にあたって、徳川家康が現在の大須に移転しました。この万松寺でおこなわれていたのが不要となったパソコンおよび周辺機器を供養する「パソコン供養」。ユーザの買い替えを促し、大須電気街の販促支援という意味もありました。江戸時代、広大だった万松寺の敷地にでき上がったのが大須電気街ですので、言わば大家による店子支援です。その後、資源有効利用促進法ができ、使用済みとなったパソコンを回収・リサイクルする仕組みができたので、このパソコン供養もなくなってしまいました。
情報化社会の未来予想 20XX年
人間に代わり地上を支配した人工知能が、人間を電池として管理し、エネルギーを得る世界を描いたのが映画「マトリックス」。映画の中で主人公ネオが、「これは現実なのか」と聞くシーンがでてきます。
リーダーであるモーフィアスは「現実とは何だ」とネオに問いかけます。「君はどうやって現実とそうでないものを見わけるのだ。君が感じるもの、匂うもの、味わうもの、見るもの、それを“現実”というなら、現実とは、君の脳から発せられた単純な電気信号に過ぎない。」
物事にはよい面と悪い面がある
ユーチューブに、スマホメーカーや家電メーカーが作成した近未来イメージがいくつかアップされています。
たとえば会議シーンでは世界各地から会議室に人が集まり打合せがおこなわれますが、実体は一人だけ。あとはアバター(分身)のように本人の姿が三次元であらわれているだけです。別のシーンでは瞬時に言葉が翻訳され、現地の日本人と会話しながら金沢の街を歩く外国人がいますが、こちらも実体ではありません。映像はすごいのですが、極端な話、家に寝転がりながら旅行できるので、結局は歩いておらず運動不足になるし、旅先のホテルや飲食店にとってはお金が落ちず、商売あがったりです。もちろん病院に長期入院している人にとっては、リフレッシュでき治療効果が高いという側面もあります。物事には常に両面があります。
トランプ氏がアメリカ製造業の雇用を増やすと宣言し大統領選に勝利、メキシコとの間に壁を作ると言っていますが、ハーバード大学のロバート・ローレンス教授の指摘によれば、十四年間で確かにアメリカ製造業の雇用が五百三十万人減りましたが、メキシコのアメリカ系工場の雇用者は五万二千人しか増えていませんでした。(日経新聞「トランプ次期政権を読む」 2016/12/30)
つまりテクノロジーによる失業時代の到来です。工場の生産ラインに産業ロボットが導入されオートメーション化されています。工員の数は減り、現有メンバーも生産現場から生産ラインの監視や品質管理へシフトしています。つまり生産工程の変化でブルカラーの雇用がなくなりましたが、今度はホワイトカラーで同じことが起こります。それが人工知能です。
アイビーエムが開発した人工知能ワトソンはアメリカのクイズ番組で優勝し、グーグルが開発したアルファー碁がプロ棋士を破りました。そしてシンギュラリティ(技術的特異点)が、いつ起きるのかが議論されるようになってきました。
シンギュラリティはいつ起きるのか
シンギュラリティ(技術的特異点)とは技術の進化によって、人間の生活が後戻りできないほど変わってしまうようになる点をいいます。たとえば人類が火の使用を始めた時がそうですし、蒸気機関の発明で、産業革命が起きた時もシンギュラリティ(技術的特異点)です。最近ならテレビ、電話、インターネットの登場もそうでしょう。人工知能が人間の能力を超えることもシンギュラリティ(技術的特異点)と呼んでいます。
既に銀行がコールセンターへアイビーエムの人工知能ワトソンの導入を始めており、コールセンターへ電話をするとコンピュータが会話の相手をする時代が到来しています。電話する側は相手がコンピュータだと認識していませんので、既にチューリング・テストによる人工知能判定は突破していることになります。
今は意識がない人工知能ですが、そろそろ心配を始めないといけないのが人工知能の暴走です。世界的に人工知能を安全性やセキュリティ面から評価して、公的認証する動きが出ていますが、どうしても出てくるのが管理からはずれるノラ人工知能です。管理からはずれた人工知能をどう見つけるのか、暴走するのをどう食い止めるのか考えないといけない時期にきているのかもしれません。
人工知能というとコンピュータというイメージが強いのですが、最終的には人を扱うものでもあり、心理学者や哲学者も参画しています。そこでわかってきたのは、逆説的ですが、いかに人がすごいことをやっているかということです。タヒチを愛したフランスの画家ゴーギャンには不思議なタイトルの絵があります。タイトルは「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」で人工知能の永遠の命題は、この絵のタイトルに答えることにあるのかもしれません。
映画「マトリックス」で描かれたような世界はすぐには到来しませんが、テクノロジーの発達によってホワイトカラーの失業は始まっています。産業革命の時には失業のおそれを感じた労働者が機械を壊すラッダイト運動が起きましたが、同じようにコンピュータを壊しても時代の動きには逆らえません。今やっている自分の仕事が人工知能に置き換わることはないか、置き換わりそうなら、どう付加価値をつけて防ぐか、思い切って新しい職種に変更すべきか、ぜひ考えましょう。
カイゼンで有名なトヨタ生産方式はもともとアメリカのスーパーマーケットから発想を得て生まれました。異業種の取組が意外に新しい発想を生み出すことがあります。ガセネタも多いネットの世界だけに頼らず、いろいろな人と出会って刺激を受けるようなことが人口知能失業時代を生き残るコツかもしれません。