福田昭のセミコン業界最前線

ルネサス、四半期最終黒字を初めて達成

 国内最大の半導体専業メーカー、ルネサス エレクトロニクス(以下は「ルネサス」)が初めて、四半期の業績で最終黒字を達成した。2014年2月6日にルネサスが公表した四半期業績によると、2013会計年度第3四半期(2013年10月〜12月期)の収支は営業損益が300億円の黒字、純損益(最終損益)が230億円の黒字となった。四半期業績が最終黒字を計上するのは、2010年4月1日にルネサスが発足して以降、初めてのことだ。

 営業損益はすでに、4四半期連続で黒字になっている。黒字転換した2012会計年度第4四半期(2013年1月〜3月期)が営業利益80億円、続く2013会計年度第1四半期(2013年4月〜6月期)が営業利益98億円、そして同第2四半期(2013年7月〜9月期)が営業利益109億円と推移した。

 2013会計年度第3四半期で注目すべきは、売上高が前期(同第2四半期)とほぼ同じであるにも関わらず、営業利益が3倍近い伸びを見せたことだろう。売上高営業利益率(営業利益/売上高)は第2四半期が5%であったのに対し、第3四半期は13.9%と向上した。固定費の削減を中心とした構造改革による経費削減が、かなり進んだことが分かる。

2013会計年度第3四半期(2013年10月〜12月期)の業績。2014年2月6日にルネサスが開催した業績説明会の資料から
ルネサスの四半期営業損益と四半期純損益の推移。ルネサスの公表資料を基に作成
過去3回の早期退職制度による費用の削減
ルネサスの四半期売上高と四半期営業損益の推移。ルネサスの公表資料を基に作成

マイコン事業とアナログ&パワー事業が回復を見せる

 ルネサスは事業分野別の売上高をマイコン事業、アナログ&パワー半導体(A&P)事業、SoC(System on a Chip)事業の3つの分野に分けて公表してきた。2013会計年度第3四半期の売上高はマイコン事業が前四半期比1.1%増、前年同期比26.2%増の899億円である。マイコン事業は4四半期連続で前の四半期に比べて売上高を拡大してきた。マイコン事業はルネサスの設立以来ほぼすべての四半期で営業収支が黒字という稼ぎ頭だ。マイコン事業の増収が営業利益の増加に大きく寄与しているとみられる。

 アナログ&パワー半導体(A&P)事業の売上高は前四半期比0.1%増、前年同期比25.2%増の724億円である。こちらは3四半期連続で前四半期に比べて売上高を拡大してきた。SoC事業の売上高は前四半期比3.3%減、前年同期比2.9%減の438億円である。SoC事業は低空飛行が続く。

マイコン事業の四半期売上高の推移。ルネサスの公表資料を基に作成
アナログ&パワー半導体(A&P)事業の四半期売上高の推移。ルネサスの公表資料を基に作成
SoC(System on a Chip)事業の四半期売上高の推移。ルネサスの公表資料を基に作成

1月〜3月の第4四半期は減収減益を予想、最終損益は赤字に

 2月6日には、2013会計年度第4四半期(2014年1月〜3月期)の業績見通しも発表された。売上高の予測値は前四半期比12%減、前年同期比2.5%増の1,900億円である。営業利益は前の四半期に比べて260億円と大幅に減少し、40億円になると予想する。

 純損益は320億円の赤字となる見込み。特別損失として290億円を計上する予定であることが大きい。内訳を見ると、企業年金基金を統合するための費用が特別損失のおよそ3分の1を占める。残りの3分の2は、事業再構築(生産拠点の移転にかかる費用や生産拠点の閉鎖による減損処理など)のための費用計上となる。このほか営業外損失30億円と法人税等・少数株主損益の損失40億円を第4四半期に計上する。

2013会計年度第4四半期(2014年1月〜3月期)の業績見通し。2014年2月6日にルネサスが開催した業績説明会の資料から

2013会計年度は営業利益率が3年前の3倍に向上

 2013会計年度第4四半期の業績見通しが発表されたことに伴い、2013会計年度(2014年3月期)を通した1年間の業績見通しも公表された。売上高の見通しは8,225億円で、前年度に比べて4.7%の増加である。そのほとんどを占める半導体売上高の見通しは7,900億円で、前年比9%増となる。ただし売り上げ増の多くは為替交換レートの変動(円安)によるもので、為替変動による上乗せを差し引くと、実質的な売り上げは前年度に比べて減っているとする。

 営業損益の見通しは547億円の黒字である。通年で営業損益が黒字になるのは設立年度の2010会計年度(2011年3月期)以来のことで、営業黒字の金額は過去最高になる。ちなみに2010会計年度の営業利益は145億円である。同年度の売上高が1兆1,379億円だったので、売上高は3,145億円も減少するにも関わらず、営業利益は402億円も増えることになる。売上高営業利益率でみると、2010会計年度はわずか1.3%であったのに対し、2013会計年度は6.6%と大幅に向上する。

 純損益の見通しは218億円の赤字である。1,676億円の純損失を計上した前年度に比べると赤字の金額は大幅に減るものの、特別損失748億円を計上することが響き、最終赤字が続く。特別損失の内訳は早期退職制度実施に伴う費用や生産拠点の再構築に伴う費用、モバイル事業の構造改革費用などである。

2013会計年度通年の半導体売上高見通し。2014年2月6日にルネサスが開催した業績説明会の資料から
2013会計年度通年の純損益見通し。2014年2月6日にルネサスが開催した業績説明会の資料から

「1足す1足す1は、1」の先にあるもの

 ルネサス エレクトロニクスの前身は、国内の大手半導体メーカーであるNECエレクトロニクスとルネサス テクノロジである。両社が合併することで2010年4月1日にルネサス エレクトロニクスが誕生した。母体の1つであるルネサス テクノロジは、2003年4月1日に日立製作所と三菱電機の半導体事業部門が分離・統合して設立した企業である。2003年当時のNECエレクトロニクスの年間売上高は約7,000億円、ルネサス テクノロジの年間売上高は約1兆億円で、単純合計すると約1兆7,000億円に達していた。実質的には売上高が5,000億円〜6,000億円の大手半導体メーカーが3社、存在していたことに等しい。

 7年後の2010年4月にルネサス エレクトロニクスが発足した当時、年間売上高は約1兆1,000億円に減少していた。売り上げの規模で見ると、大手半導体メーカー1社が消滅したことに相当する。それから3年。年間売上高は8,000億円強にまで減少した。売り上げの規模は、大手半導体メーカー1.5社分に縮小したことになる。

 2014年以降に予定されているのは、生産拠点の集約と設計・開発拠点の集約である。このことは営業収支の改善には結びつくだろう。しかし売り上げのさらなる減少を招く恐れが少なくない。

 ルネサスは、2014会計年度には年間売上高が6,000億円〜7,000億円の半導体メーカーとなる可能性が高い。問題はその先である。従業員1人1人が夢や未来などを描ける企業になれるのかどうか。経営幹部は未来への展望を明確に提示できるのか。「縮小均衡の先」が問われている。

ルネサス エレクトロニクスの会計年度別売上高推移。2003会計年度〜2009会計年度はNECエレクトロニクスとルネサス テクノロジの単純合計値。各社の公表資料からまとめたもの
ルネサス エレクトロニクスの営業損益と純損益の年度別推移。2003会計年度〜2009会計年度はNECエレクトロニクスとルネサス テクノロジの単純合計値。各社の公表資料からまとめたもの

(福田 昭)