瀬文茶のヒートシンクグラフィック

Thermalright「TRUE Spirit 90M Rev.A」

~Thermalrightブランドの92mmファン・サイドフロー

Thermalright「TRUE Spirit 90M Rev.A」

 今回は、92mm角の冷却ファンを採用した、Thermalright製のサイドフロー型CPUクーラー「TRUE Spirit 90M Rev.A」を紹介する。購入金額は3,780円だった。

銀と黒のツートンカラーを採用したTRUE Spirit 90Mの派生モデル

 TRUE Spirit 90M Rev.Aは、「TRUE Spirit 90M」の派生モデル。冷却ファンに92mm角ファンを採用し、全高を125mmに抑えたコンパクトなサイドフローCPUクーラーである。対応CPUソケットは、IntelのLGA 775/115x/1366と、AMDのSocket AMDのSocket AM2(+)/AM3(+)/FM1/FM2(+)。

 ヒートシンクは、熱輸送用の6mm径ヒートパイプ3本、接地面に純銅(C1100)板を用いたベースユニット、43枚のアルミニウム製フィンからなる放熱ユニット、これら3つのコンポーネントにより構成されている。ヒートシンクの形状は、ベースとなったTRUE Spirit 90Mから特に変更されておらず、放熱ユニットを排気側へオフセットすることで、冷却ファンとメモリスロットの干渉を回避するデザインを採用している。

 TRUE Spirit 90Mとの明確な違いは、ヒートシンクのカラーリングにある。TRUE Spirit 90Mは、ベースユニット以外にめっき処理を行なっていなかったが、TRUE Spirit 90M Rev.Aでは、ヒートパイプとベースユニットに銀色のニッケルめっき処理、ヒートシンク最上部の放熱フィンには黒色のめっき処理をそれぞれ施した。これにより、TRUE Spirit 90M Rev.Aのヒートシンクは、銀と黒のツートンカラーに仕上がっている。

 標準で備える冷却ファンは、Thermalrightブランドの92mm角25mm厚ファン「TR-9225 BW」。黒いフレームに白いファンブレードが特徴的なこのファンは、PWM制御に対応しており、回転数を800~2,000rpmの範囲で調整できる。

 冷却ファンのヒートシンクへの取り付けには、専用の金属製ファンクリップを用いる。このファンクリップは、リブ無しタイプの92mm角ファンであれば、TR-9225 BWに限らず取り付けることができる。なお、ヒートシンク側にはファンクリップの取り付け箇所が2カ所用意されているが、同梱されているファンクリップは一対のみ。ファンを買い足すだけでは、デュアルファンでの運用は行なえない。

TRUE Spirit 90M Rev.A CPUクーラー本体
リテンションキット
メモリとファンの干渉を回避するため、放熱ユニットをオフセットして配置している
冷却ファン「TR-9225 BW」。PWM制御対応の92mm角25mm厚ファン
ファンクリップ、防振ゴム、サーマルグリス。ファンクリップは、Thermalrightの製品ページの写真と異なる形状のものが採用されている
冷却ファン取り付け時。リブ無しタイプの92mm角25mm厚ファンであれば、厚みを問わず取り付け可能
メモリスロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE取り付け時)
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE取り付け時)

 ヒートシンクのサイズが小さいため、周辺パーツとのクリアランスにはかなり余裕がある。今回テストに利用したASUS MAXIMUS V GENEでは、メモリスロット、拡張スロットとも干渉することは無かった。また、全高125mmという背の低さにより、組み込み可能なPCケースが多いこともポイントだ。

 リテンションキットは、Thermalrightブランド製品で広く採用されているブリッジ式リテンションキットを採用。ただし、TRUE Spirit 90Mでは用意されていた、マザーボード裏面に取り付ける金属製バックプレートと、IntelのLGA2011ソケット取り付け用のスクリューナットが省略された。

 バックプレートについては、以前本連載で紹介したTRUE Spirit 120M(BW) Rev.Aでも、同じようにバックプレートが省略されており、この重量の製品にバックプレートは不要という判断なのだろう。なお、このタイプのリテンションキットは、バックプレートと基板実装部品の干渉が発生した際に備え、バックプレートを省略しても取り付け可能なよう設計されている。バックプレートの有無で、取り付け作業の難易度が変わることはない。

冷却性能テスト

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定。それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。

 TRUE Spirit 90M Rev.Aは、3.4GHz動作時に57~67℃を記録している。これはCPUに付属する純正クーラーより18~28℃低い結果であり、純正クーラーとは一線を画す冷却性能を持っていることが確認できる。

 オーバークロック動作時のテストでは、4.4GHz動作時には75~85℃を記録。4.6GHz動作時は、PWM制御 20%と50%の設定で過昇温のためテスト中止となったものの、ファン全開時には88℃を記録している。搭載ファン1基のみのコンパクトなヒートシンクとしては、なかなか優秀な結果である。

 スペック上、ファンを全開動作させた際のノイズレベルは27dBAとされている。実際、ファン全開時はそこそこの動作音が発生するのだが、回転数を1,600rpm未満に絞れば、風切り音も軸音もそれほど気に程度に大人しくなる。冷却性能テストでは、ファンを多少絞っても十分な冷却性能を発揮しており、回転数1,600rpm以下での運用は実用的だ。TRUE Spirit 90M Rev.Aは、静粛性の向上を目指して、純正CPUクーラーの交換を狙うユーザーの要求にも応えられる製品であると言える。

純正クーラーからのアップグレードに適した小型サイドフロー

 ここ最近、92mmファンを備えるサイドフロー型CPUクーラーが各社から発売されており、本連載でもCooler Master「Hyper D92」や、Noctua「NH-D9L」を取り上げてきた。TRUE Spirit 90M Rev.Aをこれらの製品と比較すると、2基の92mmファンを備えた冷却志向のCooler Master Hyper D92には及ばないものの、純正CPUクーラーを確実に上回る冷却性能を持ちつつ、4,000円以下で購入できるという費用対効果の高さが際立つ。

 92mmファンを搭載したサイドフローCPUクーラーの利点は、CPUソケット周辺のパーツと干渉せず、横幅の狭いタワー型PCケースへの取り付けを可能にする、そのコンパクトなサイズにある。TRUE Spirit 90M Rev.Aも例に漏れず、メモリスロットや拡張スロットとの干渉を上手く回避している。

 そこそこの冷却性能と、干渉問題の起こりにくい92mmファン搭載サイドフローの特性を持ち、4,000円以下という比較的安い価格で入手できるTRUE Spirit 90M Rev.Aは、純正クーラーからのアップグレードを考える多くの自作PCユーザーに推奨できるCPUクーラーである。

 また、ややマニアックな筆者の観点で言えば、コンパクトなヒートシンクに43枚もの放熱フィンを整然と並べ、めっき処理によってツートンカラーに仕上げられたこのヒートシンクは、ほかのThermalright製品以上に精緻な作りが際立つ逸品だ。空冷ヒートシンクの造形に少しでも心惹かれるなら、ぜひともコレクションしておきたい。

【表】Thermalright「TRUE Spirit 90M Rev.A」製品スペック
メーカーThermalright
フロータイプサイドフロー
ヒートパイプ6mm径3本
放熱フィン43枚
サイズ(ヒートシンクのみ)55×102×125mm (幅×奥行き×高さ)
重量(ヒートシンクのみ)285g
付属ファン90mm角25mm厚ファン ×1基
電源: 4ピン
回転数: 800~2,000rpm
風量(最大): 39.36CFM
ノイズ(最大): 27dBA
サイズ: 90×90×25mm
対応ソケットIntel: LGA 775/1150/1155/1156/1366
AMD: Socket AM2/AM2+/AM3/AM3+/FM1/FM2/FM2+

(瀬文茶)