瀬文茶のヒートシンクグラフィック

ZALMAN「CNPS9900DF」
~放射状の放熱フィンを持つシリーズ最新モデル



 9月28日に発売されたZALMAN「CNPS9900DF」を紹介する。今回の購入金額は8,400円だった。


●ファンを追加したCNPS9900シリーズの最新モデル

 ZALMAN CNPS9900DFは、2010年に発売したCNPS9900 MAXの強化モデルにあたるCPUクーラーで、2008年末に登場したCNPS9900 LEDの登場から数えて、3年半に渡ってZALMANブランドのフラッグシップCPUクーラーとしてラインナップされてきたCNPS9900シリーズの最新製品だ。

 これまでに登場したCNPS9900シリーズ製品は、2ユニットの放熱ユニットの中心にファンを備えるミッドシップレイアウトを採用したサイドフロー型CPUクーラーで、円形に成形されたヒートパイプに放熱フィンを放射状に配置するという独特の形状が特徴的な製品だった。CNPS9900DFではこれらの特徴を踏襲しつつ、吸気側にファンを1基追加してデュアルファン構成での冷却を実現している。

 ヒートパイプを3本しか持たないCNPS9900DFのヒートシンクは、最近の大型サイドフロー型CPUクーラーと比較すると控えめなスペックなのだが、使用している部材に特徴がある。CNPS9900DFのヒートシンクは、従来のCNPS9900シリーズ同様、ベースプレートから放熱フィンまで銅を使用した全銅ヒートシンクである。また、CNPS9900DFのヒートパイプは、CNPS9900 MAXで採用されたコンポジットヒートパイプの採用している。これは従来型のヒートパイプに対して50%性能が向上しているという。ZALMANの部材へのこだわりが感じられる製品である。

 CNPS9900DFには2基のファンが搭載されているのだが、フロント側(吸気側)のファンとヒートシンクの中心に配置されているファンは、それぞれスペックが異なる。フロント側のファンは回転数が1,000rpm固定の120mm径ファンで、中心部のファンはPWM制御によって800~1,400rpmの範囲で制御可能な140mm径ファンだ。いずれも市販のケースファンのようにフレームを持たないCNPS9900DFオリジナル仕様のファンで、交換はできない。

 過去のCNPS9900シリーズは、ミッドシップレイアウトを採用するサイドフロー型ヒートシンクながらメモリとの干渉を避けるように設計されていた。しかし、CNPS9900DFに関してはフロント側のヒートシンクとファンが従来の製品よりもメモリスロット側に張り出しており、今回テストを行なったASUS MAXIMUS V GENEとの組み合わせでは、CPUスロットに近い側のメモリスロット上空にヒートシンクが被る形となった。テストでは約33mmと背の低いメモリを使っているが、ファンとのクリアランスはほとんどない状態だった。メモリの高さには十分注意が必要だろう。

 拡張スロットとの干渉は無く、高さも154mmと比較的低い部類に入り、メモリとの干渉を除けば物理的な干渉問題の起こりにくい形状ではある。ただ、これまでメモリとの干渉が起こりにくい製品であったCNPS9900シリーズの魅力の1つが失われているのは、残念なところである。


●冷却性能検証結果

 それでは、冷却性能検証の結果を紹介する。今回は搭載ファンをフル回転させた際の温度と、中心に配置されたファンを20%(PWM制御)で動作させた場合の温度を測定した。

テスト結果

 3.4GHz動作時の結果から見ていくと、CNPS9900DFはフル回転時に57℃、20%制御時に58℃をそれぞれ記録しており、CPU付属クーラーより27~28℃低い結果となっている。ファン全開時と20%制御時に温度差はほとんどついていないのが印象的だが、数値としては優秀な結果と言えるだろう。また、CNPS9900DFは4.4GHz動作時に69~71℃、4.6GHz動作時は78℃~81℃と、CPUの発熱量が増すオーバークロック動作時にも優れた結果を記録している。特徴的なのは、ファンの回転数を落としても温度が跳ね上がっていない点だ。

 動作音については、フル回転時には140mm径の大口径ファンが約1,400rpmで回転するため、流石に大きな風切り音が発生する。また、PWM制御により回転数を落としても、フロント側の120mmファンが約1,000rpm前後で動作していることもあり、やや動作音が気になる。ケースに収めて使用するのであれば、特に気にならない程度だろうが、静音性にはあまり期待できない。

●冷却性能は上々も、クリアランスやリテンションに難あり

 最近はほとんど見かけることのなくなった全銅ヒートシンクを採用しているだけあって、CNPS9900DFはなかなか優秀な冷却性能を発揮している。ファンの交換が行なえない点や、付属ファンの静音性に少々不満はあるものの、CPUを冷却するというCPUクーラー本来の目的を十分に果たせる優秀なヒートシンクと言える。

 ただ、CNPS9900シリーズの魅力であったメモリとのクリアランスが失われた点は非常に惜しい。優れた冷却性能を得るための対価とはいえ、マザーボードのレイアウト次第ではメモリを選ぶヒートシンクになってしまったのは残念だ。また、これはあくまで筆者の感想だが、CNPS9900DFのLGA1155リテンションについては非常に取り付けにくいものになっていると感じた。狭い隙間にヘックスキーを差し入れ少しずつ締めていく必要があるのだが、取り付け中に取り外す際の手間を考えて憂鬱になると言ったレベルの面倒さであった。過去に紹介したCNPS12Xのリテンションはここまで手間の掛かるリテンションでは無かっただけに、CNPS9900DFがこのようなリテンションを備えていることは残念だ。

 リテンションの出来やメモリとの干渉について注意が必要だが、取り付けてさえしまえば優秀なヒートシンクである。ファンが交換できない代わりに独特のデザインを採用したCNPS9900DFは、見た目的な要素でも選ぶ理由を見出せるCPUクーラーだ。魅力を感じるのであれば、チャレンジしてみるのも面白いだろう。

ZALMAN「CNPS9900DF」製品スペック
メーカーZALMAN
フロータイプサイドフロー型
ヒートパイプ6mm径×3本
サイズ140×100×154mm(幅×奥行き×高さ)
重量850g
付属ファン・120mm径ファン
- 電源:3pin
- 回転数:1000rpm±10%

・140mm径ファン
- 電源:4pin
- 回転数:900~1400rpm±10%

・ノイズ:19~27dBA
対応ソケットIntel:LGA 775/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1