■瀬文茶のヒートシンクグラフィック■
今回はPHANTEKSブランドのトップフロー型CPUクーラー「PH-TC14CS」を紹介する。購入金額は11,480円だった。
●珍しいデュアルファン仕様のハイエンドトップフロー
今回紹介するPH-TC14CSは、新興ブランドのPHANTEKSが「PH-TC14PE」に続くCPUクーラー第2弾として投入した製品だ。第1弾製品のPH-TC14PEが、ミッドシップレイアウトを採用した大型ハイエンドサイドフローモデルであったのに対し、PH-TC14CSはトップフロータイプのヒートシンクを採用したハイエンドCPUクーラーとなっている。
PH-TC14CSは、最近では珍しくなったトップフロータイプのハイエンドCPUクーラーであるだけでなく、放熱ユニットを2基のファンでサンドするデュアルファン仕様を採用した珍しいトップフロー型CPUクーラーだ。ヒートシンク自体のスペックとしては、5本の8mm径ヒートパイプと、2枚1組でヒートパイプを挟み込むように配置された86枚の放熱フィンを備える。PH-TC14CSは、赤/青/白/黒のカラーバリエーションモデルが展開されており、今回紹介する無印PH-TC14CSのアルミ製の放熱フィンは白く色づけされている。
デュアルファン仕様のPH-TC14CSに標準で同梱されているのは、PHANTEKSオリジナルの140mm径ファン「PH-F140」だ。このファンは単体では回転数固定タイプ(1,300rpm±10%)のファンだが、付属のPWM制御有効化ケーブルを利用することにより、回転数を700~1,200rpm±10%の範囲で調整可能となる。なお、ファンの固定は金属製のファンクリップを用いて行なうため、リブ無しタイプの120mm角ファン、または120mm角ファンと取り付け穴位置の互換性を持つ140mm径ファンへの交換が可能だ。
放熱フィンをサンドする形で2基のファンを搭載するPH-TC14CSは、上部のファンを外せば高さを112mmに抑えることが可能な一方、下部のファンを外せばメモリのヒートシンクやCPUソケット周辺パーツの突起と干渉することなく運用が可能だ。ヒートシンク下部にファンを取り付けるとメモリとのクリアランスは厳しくなるが、このあたりの干渉問題は運用方法を変えることで回避ができる。
また、拡張スロットとの干渉に関しては、MAXIMUS V GENEとの組み合わせでは最上段のPCI Expressスロットにファンクリップが若干被る形となった。ヒートシンク自体は被っているわけではないため、この程度であればクリップに絶縁テープを巻くなどの対応で回避が可能だが、CPUソケットと拡張スロットの位置が近いマザーボードで使う場合には注意したい。
●冷却性能テスト
それでは冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、PWM制御有効化アダプタを利用し、付属ファンをフル回転(約1,180rpm)で動作させた際と、20%のPWM制御を行なった際(約550rpm)の温度を測定した。
テスト結果 |
テストの結果を見ていくと、3.4GHz動作時はフル回転時に57℃、20%制御時に63℃という結果を記録しており、85℃を記録したCPU付属クーラーより22~28℃低い温度となっている。PH-TC14CSはオーバークロック時にも良好なパフォーマンスを発揮しており、4.4GHz時にはフル回転時70℃、20%制御で77℃。4.6GHz時にはそれぞれ79℃と88℃を記録した。サイドフロー型CPUクーラーに比べ、CPUの冷却性能に関しては劣る傾向のあるトップフロー型のCPUクーラーでありながら、サイドフロー型CPUクーラーの上級製品に匹敵するPH-TC14CSのパフォーマンスは強力だ。
動作音については、140mm径の大口径であるため、約1,150rpm動作(フル回転時)でもそれなりに風切り音は発生する。一方、20%制御時は約550rpmという低速動作になるため風切り音は気にならなくなるのだが、かすれるような軸音が発生している点が少々気になった。個体差の範疇である可能性はあるが、筆者の個体では2基とも同様の軸音が発生していた。それほど大きな音ではないものの、これが仕様であるのなら少々残念なところだ。
●トップフロー最上級の性能と1万円超えの価格が釣りあうか否か以前紹介したPH-TC14PEが優れた冷却性能を持った製品であったため、PHANTEKSの第2弾製品であるPH-TC14CSにも期待していたのだが、今回のテスト結果はその期待に応えるものだった。特に、ファンの回転数を絞っても4.6GHz動作時の発熱を処理できていたことは評価したい。
性能に不満がない分惜しいのは、ファンの軸音とリテンションの固定にヘックスキーレンチを使用しなければならない点だ。リテンションについては、前回のCNPS9900DFとは違い、2カ所のみの固定なのでそこまで手間はかからないのだが、レンチを回すスペースが必要となるため、ケース内に収めたマザーボードに対して取り付けを行なうのは困難だ。致命的な欠点ではないものの、欲を言えばもう一工夫欲しかったところである。
近年はノースブリッジの機能がCPUに統合されるなど、マザーボード上の発熱源は減少傾向にあるが、依然として電源回路やメモリなどの発熱源は残っている。これらの冷却をサポートしつつ、CPUの冷却もしっかりと行ないたいユーザーにとって、PH-TC14CSの導入は有効だ。あとは、それが1万円を超える価格に見合う魅力であると感じるかどうかだ。
PHANTEKS「PH-TC14CS」製品スペック | ||
メーカー | PHANTEKS | |
フロータイプ | トップフロー型 | |
ヒートパイプ | 8mm径×5本 | |
放熱フィン | 86枚(43組)+装飾プレート×1 | |
サイズ | シングルファン時:160mm×151mm×112mm (幅×奥行き×高さ) デュアルファン時:160mm×151mm×140.5mm (幅×奥行き×高さ) | |
重量 | 750/900g (シングルファン/デュアルファン) | |
付属ファン | 140mm径ファン ×2(かっこ内はPWM有効化アダプタ使用時) 電源:3pin 回転数:1,300rpm±10%(700~1,200rpm±10%) 風量:88.6CFM(45.1~78.1CFM) ノイズ:19.6dBA(13.4~19dBA) サイズ:140×140×25mm | |
対応ソケット | Intel:LGA775/1155/1156/1366/2011 AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1 |