パソコン実験工房PC Watch出張所 - Supported by パソコン工房
意外と奥が深かったOfficeの動作環境【後編】
~ノートPCとデスクトップPCを作成、より便利に使える周辺機器も
2017年1月13日 06:00
PCは、何でもできる汎用性が最大の魅力であり、特に文章や写真、動画などのオリジナルコンテンツを自分で作成・編集するには、やはりPCが最適である。ただし、何でもでいるといっても、実際には予算上限が決まっているので、いくらでも高性能なパーツを使えるわけではないし、1人が使うPCでは用途もある程度限られてくる。
そこで、本コーナーでは、特定の用途においてコストパフォーマンスの面で最適なPCとはどのようなものかを、その分野に造詣の深い専門家やライターの方、および実際にPCを製造するパソコン工房、PC Watchの三者が一緒に議論、検討していく。これまで、「メーカーさん、こんなPC作ってください!」という名称の企画だったが、12月よりパソコン実験工房のPC Watch出張所工房という形でお届けしている。特定の目的に最適化したPCのスペックを考えるという点は変わっていないが、周辺機器も含めた総合的な利用環境について考えていく。
今回のテーマは、「Officeが快適に動作するPC」である。Officeは、WordやExcel、PowerPointなどから構成されるビジネス向けスイート製品である。仕事はもちろん、プライベートでも文書や資料などを作成したいというニーズは多いことだろう。Officeがあれば、プライベートからビジネスまで、さまざまな用途に対応できる。大手メーカー製PCでは、Officeがプリインストールされているものも多く、それほど高いスペックは必要ではないと思われるが、実際のところはどうなのだろうか。前編では、日本マイクロソフトのプリンシパル テクニカル エバンジェリストの高橋忍氏(以下敬称略)を交えて、ミーティングを行なった。
後編では、そのミーティングを基に、パソコン工房がOfficeが快適に動作するPCを2台作成。さらに、Officeをより快適に使うためにお勧めの周辺機器もチョイスしてもらったので、そのPCでのOfficeの使用感などをレビューする。
Celeron搭載ノートPCとCore i5搭載デスクトップPCを用意
今回、パソコン工房がOfficeのために作成したPCは、ノートPC 1台とデスクトップPC 1台の計2台である。スペックから言うと、ノートPCが下位モデル、デスクトップPCが上位モデルだ。
ノートPCは、iiyama STYLE∞「Stl-15HP034-C-EES」という型番で、CPUとしてCeleron N3160を、メモリは8GB、ストレージは240GB SSDを搭載する。Celeron N3160はクアッドコアCPUで、動作クロックは1.6GHzだが、Burstテクノロジーにより最大2.24GHzまで向上する。同時実行可能なスレッド数は4だが、Officeを快適に使うには十分な性能である。液晶ディスプレイは15.6型で、解像度は1,366×768ドットである。液晶はノングレア仕様で、外光の映り込みが抑えられており、長時間使っていても目の疲れが少ない。Officeの利用には最適な液晶である。
デスクトップPCは、iiyama STYLE∞「Stl-M012-i5-HF-S」をベースに240GB SSDを追加したもので、CPUとしてCore i5-6400を搭載、メモリは8GB、ストレージは1TB HDDと240GB SSDのツインドライブ構成となる。Core i5-6400は、クアッドコアCPUで、動作クロックは2.7GHzだが、TurboBoostテクノロジーにより最大3.3GHzまで向上する。同時実行可能なスレッド数は4だが、動作クロックが高く、複数のアプリケーションを動かしても快適に動作する。
どちらのPCも単体GPUは搭載してないが、Officeを快適に使うだけなら、CPU統合グラフィックス機能で十分だ。その分、ストレージをSSDにして、実際の体感速度の向上を図った構成だ。とはいえ、Officeを使うにあたってSSDをの速さが大きく貢献するのはアプリケーションの“初回起動時”だけで、2回目以降の起動はキャッシュが効いてHDDでもそこまで遅くはない。
ここさえ耐えてしまえばHDDでも使用感にあまり問題はないため、例えば事務端末のように一度立ち上げたら終業までPCの電源を落とさないような使い方であれば、SSDの搭載はコスト面で余裕があれば検討するといった程度の認識でも良いだろう。
両PCともOfficeの利用は快適
まず、それぞれのPCでのOffice 2016の使用感をチェックしてみた。WordとExcel、PowerPointを同時に起動して、文書の作成や編集などを行なってみたが、動作は軽快であり、ストレスを感じるようなことはなかった。メモリを8GB搭載していることと、システムドライブとしてSSDを採用していることが貢献しているのであろう。
また、ベンチマークソフトのPCMark 8には、Officeの実アプリを利用して、Office実行時の性能を計測するApplicationsテストが含まれている。このテストは、Office本体を利用して行なわれているため、Officeがインストールされていないと実行できない。参考のために、やや古い製品だが、Core i7-2640Mとメモリ8GB、512GB SSDを搭載したノートPCでも同じテストを行なった。
結果は下の表に示した通りで、Office向けノートPCのスコアは1156、Office向けデスクトップPCのスコアは3034、参考用のノートPCのスコアは1377となった。スコアだけ見ると、ノートPCとデスクトップPCの差はかなりあるが、実際の使用感ではそこまでの差はない。また、Office向けノートPCは、5万円台という低価格ながら、当時としてはハイエンドであったCore i7-2640MとSSDを組み合わせたノートPCに迫る性能を実現していることが分かる。
PCMark8のApplications Officeのテスト内容は、ソフトウェアの起動、ファイルの新規作成および開く、編集内容の保存、ウィンドウサイズの変更、コピー&ペーストと言った、一般的に行なわれるような操作が中心となっている。テストの内容から推測すると、ほとんどがCPUの動作クロックとストレージの速度に依存しており、今回の2モデルがSSDを搭載していることから、このスコア差は動作クロック差の分と考えられる。
今回参考に掲載したCore i7-2640M搭載機は、現在の最新世代のCPUと比較すると4世代も昔のものだが、動作クロックは2.8GHz~3.5GHzと高く、十分健闘している結果となったようだ。
ピボット可能なディスプレイもお勧め
Officeを快適に使うには、本体だけでなく、ディスプレイも重要だ。Officeを快適に使うには、本体のみならずディスプレイも重要である。特にピボット機能に対応するディスプレイは、Officeの作業効率を格段に上げるだろう。そのピボット機能に対応し、一般家庭やオフィスでも気軽に導入できるサイズのiiyama「ProLite XB2485WSU-B2」をチョイスした。
ProLite XB2485WSU-B2は、1,920×1,200ドットの24.1型液晶ディスプレイであり、視野角の広いAH-IPS方式の液晶パネルを採用。さらに、画面のピボット(回転)に対応しており、縦画面でも利用できる。入力端子は、DisplayPort、DVI-D、ミニD-Sub15ピンの3系統で、機器を問わず接続できる。応答速度は5msと高速で、表面がノングレア仕様になっているため、外光の映り込みが少なく、長時間使っていても目への負担が小さい。ディスプレイを縦にして使うことで、縦長の文書も一画面で表示できるようになり、作業効率が向上する。また、画面の高さやチルト、スイベルの調整も可能なので便利だ。
話題の50型4Kディスプレイもテスト
高橋忍氏は、40型4Kディスプレイをオフィスで使っているということだったので、それに近い環境を実現するために、65,000円を切る価格で注目を集めたDMM.make DISPLAYの50型4Kディスプレイ「DME-4K50D」も用意して、テストを行なってみた。DME-4K50Dは、フルHDの縦横2倍となる3,840×2,160ドット表示に対応した4Kディスプレイであり、入力端子としてHDMI端子を4系統備えている。
今回用意したOffice向けノートPCは、HDMI端子を備えているので、そのままHDMIケーブルで接続でき、本体の1,366×768ドット液晶と同時に4K出力を行なうことができる。実際に試したところ、拡大率100%では、ディスプレイから60cm程度の距離なら小さい文字も十分見えるが、1m程度離れてしまうとかなり厳しいといった感じだ。その場合は、Windows 10の機能で、表示倍率を拡大してやれば良いだろう。200%まで上げれば、フルHD相当の大きさになる。
Windows 10には画面を分割して利用するスナップ機能がある。最大4分割が可能なので、4つに分割するとそれぞれがフルHD相当となる。特にキーボードショートカットで操作すると便利であった。デスクトップPCの場合は、HDMI端子を備えていないので、DisplayPort-HDMI変換アダプタを使うことで、DME-4K50Dへの出力が可能であった。
24型ディスプレイを2画面横に並べた程度の設置面積に加え、縦方向にもスペースは必要となるが、やはり複数ディスプレイを設置して作業する場合よりも、フレームがない分、格段に作業に集中しやすくなる。広大な1つのデスクトップは、仕事のできる人になった気分にもさせてくれる。これはこれで良いのではないだろうか。
また、先に紹介したピボット対応ディスプレイのように、余ったディスプレイは縦表示に、サブディスプレイとして情報を表示するだけのディスプレイとして再利用すれば、より快適な作業環境となるだろう。
Officeをより便利に使うためのお勧め周辺機器
高橋忍氏を交えたミーティングでは、PC本体だけでなく、マウスやキーボードなどの周辺機器についても、いくつかアドバイスをいただいた。そのアドバイスを踏まえて、パソコン工房がチョイスした周辺機器を紹介する。
まずは、ロジクールのワイヤレスキーボードとワイヤレスマウスのセット「Wireless Combo mk270」である。mk270は、Bluetoothではなく、2.4GHz帯を利用する独自方式「ロジクールアドバンス2.4GHzワイヤレス接続」に対応した製品であり、超小型USBレシーバーとUSB延長用のエクステンダーが付属する。ワイヤレスであるため、ケーブルによる動作の制限がなく、快適な作業環境の一助となるだろう。
キーボードは、テンキーやメディアコントロールキーも備えたフルキーボードであり、キーピッチやキーストロークも十分に確保されており、快適なタイピングが可能だ。マウスは、スクロールホイール付きの光学式マウスで、こちらも手に馴染む形状で使いやすい。
また、ロジクールのキーパッド「G13アドバンス ゲームボード」もお勧めだ。本来は、ゲーム向けの製品であるが、25個のプログラマブルキーやミニジョイスティックを備えており、Officeでのショートカット操作やキーマクロを割り当てることで、より効率良く作業が行なえる。
特に繰り返し押されることの多いコピー、カット、ペーストや、Excelのシートタブの切り替えなどのショートカットを登録しておくだけで、格段に操作性が高まる。また、よく使う長いExcel関数も途中まで入力しておけば、文字数を入力する手間が省け、作業が一段と速まる。特にG13rは、スティックの部分にスクロールを割り当てられ、広大なExcelシートの閲覧もスムーズに行なえ便利だ。
ミーティングで、「一度体験すれば、二度とHelloなしには戻れなくなる」と高橋忍氏が強く推薦していたのが、Windows Hello対応デバイスである。そこで、マウスのWindows Hello対応デバイス2製品を用意した。指紋認証リーダー「FP01」は、USBポートに取り付けるだけで指紋認証が可能になる製品である。センサー部分にタッチするだけでWindows 10へのログインなどが行なえ、セキュリティと利便性を両立できる。
実際に試してみたが、認識速度、精度ともに予想以上で、非常に快適であった。特に、側面にUSBポートを備えたノートPCに向いた製品だ。顔認証カメラ「CM01」は、USB経由で接続するだけで顔認証が可能になる製品で、赤外線カメラを搭載し、顔を3次元的に識別するため、写真や映像によるなりすましを防ぐことができる。
こちらも認識は非常に高速で、ほとんど意識せずにWindows 10へログインが可能であった。CM01は、液晶ディスプレイの上部に取り付けて使えるようになっているので、こちらはデスクトップPCに向いている。
最後に紹介するのが、ロジクールのワイヤレスヘッドセット「Wireless Headset H600」だ。独自無線方式を採用しており、超小型USBレシーバーが付属する。マイクブームは回転式で最適な位置に調整でき、折りたたみも可能なので携帯にも便利だ。マイクはノイズキャンセリング機能付きで、レーザー チューニングドライバーによって歪みを最小限に抑えたクリアな通話を実現できる。Skype for Businessを利用してオンライン会議を行なうことが多いのなら、是非、ワイヤレスヘッドセットを用意することをお勧めする。
用途に応じてこれらの周辺機器を追加することで、さらに快適にOfficeを利用できるようになるので、Office向けとしてPCを新たに購入するのなら、あわせて購入することを検討してみてはいかだろうか。