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Adobeの「Illustrator」が快適に動くPC

~Adobe担当者、日清食品のトップデザイナーとともにスペックを検討する

 特定用途において、コストパフォーマンスに優れたPCとはどのようなものか、そしてそれを取り巻く周辺機器の必要性を、専門家やライター、および実際にPCを製造するパソコン工房、PC Watchがともに検討。実際にPCを製品化していくとともに、周辺機器およびその活用を幅広く紹介するこのコーナー。第2回目は、Adobeのグラフィックデザインソフト「Adobe Illustrator CC」(以下:Illustrator)が快適に動作するPCおよび周辺機器を考えていく。

 今回の企画に協力してくれたのは、日清食品ホールディングスで、ほぼ全てのデザインを手がける部門、デザインルーム 主任 デザイナーの山本宏紀氏と、アドビ システムズ株式会社でIllustratorを担当する、マーケティング本部 デジタルメディア マネージャーの岩本崇氏のお二方だ。

 ドローソフトはベクターデータを扱うため、ファイルサイズが軽量、かつ非常に高い自由度を誇るのが特徴だ。このため、Photoshopと言ったフォトレタッチソフトよりも処理が軽いハズである。しかし今回の検討の段階で、Illustratorの意外な一面が浮き彫りになった。

普段Mac Proで仕事されている日清食品のデザイナー、山本宏紀氏

【司会】今回、Illustratorを快適に使う上でのPC構成について議論しようと思いますが、今回はアドビでIllustratorを担当されています岩本崇マネージャーと、日清食品のデザイナーで、実際にIllustratorのユーザーでもある山本さんからアドバイスをしていただこうと思います。

【パソコン工房】まずはパソコン工房がこの企画で目指しているPCについて紹介させてください。パソコン工房というブランドでは、PC初心者や若い層に展開しようと思っております。高校生が頑張ってバイトして買える価格、おじいちゃんおばあちゃんが孫向けの支援としても買いやすい価格を実現したいと思っております。つまり、より広い層に使ってもらいたいという思いがあります。

 アドビさんのソフトは、私どもが伺っているさまざま専門学校などで使われており、ワークフローの中で使われ作品を作っていくという姿を見ています。アドビソフト用には必ずしも高スペックなPCが必要というわけではなく、まずは皆さんに使ってもらえるようなPCを作っていきたいと思っています。

【岩本】分かりました。私からは今回山本さんをアサインさせていただいた理由について紹介させてください。まずIllustratorを使っていて重たく感じていらっしゃる方はいないかという相談をPC Watchさんから受けた時、ちょうど日清を訪問しておりました。一般的にデザイナーはMacを使う方が多いのですが、山本さんはちょうどMacもWindowsも両方お使いいただいており、「今回の企画で普段の作業が速くなるヒントが聞けるかも……?」と声をかけてみたところ、この企画に賛同していただけました。

【司会】山本さんの自己紹介と、業務の中で実際にどのようにIllustratorを使われているか教えてください。

【山本】はい、私は日清食品ホールディングスでデザインをしておりまして、日清食品などの子会社のパッケージデザインを全て手がけています。それ以外にも名刺、社員証、ポスターなどのコミュニケーションツール全般を、私達の手、もしくはディレクションで作ってます。ほぼ毎日Illustratorを触って作業しています。その中でやはり遅く感じる作業があり、速くなって欲しいなと思う部分があります。

【司会】何年ぐらいIllustratorを使われていますか。

【山本】大学からなので、12年ぐらい使っています。

【司会】ちなみにMacとWindows両方お使いということですが、どちらをメインにされていますか。

【山本】Mac Proですね。新しい円形のものです。メモリは16GBです。

日清食品ホールディングスの山本氏(写真左)とアドビ システムズの岩本氏(右)

軽く使えるはずなのに重いIllustrator

【司会】この記事を読んでいただいている読者には釈迦に説法かもしれませんが、岩本さんにIllustratorの概要と特徴、直近のアップデートといったあまり知られていないアップデートなどがあれば、ご紹介頂ければと思います。

【岩本】はい、Illustratorは30年の歴史を誇るイラストレーションソフトであり、アドビの中でも由緒正しいアドビ純正のアプリケーションです(編集部注:PhotoshopやDreamweaver、Flashなどは、もともとアドビが買収した企業が開発したもの、という意味を踏まえた上での意味です)。ポスターや新聞の折込みチラシなどの大半はIllustratorで作成されています。

 また、パッケージデザイン業界のスタンダードであります。例えばコンビニで皆さんが手に取られるお菓子のパッケージや、今回の日清さんのカップヌードルなどでも使われています。アドビを代表するPhotoshopとIllustratorという2大製品は、デザインにおけるスタート地点と言っても過言ではないでしょう。Windows版とMac版両方で用意されていますし、我々が月額サービスとして提供しているAdobe Creative Cloudの中核製品でもあります。

 最近入ったアップデートですと、「自動保存」が挙げられます。Illustratorを使っていて、何かの拍子にアプリやPCが終了してしまっても、自動バックアップによってデータの損失を防ぐわけです。これはユーザーからのリクエストで実装した機能で、Photoshopには既に入っています。

【司会】余談になると思いますが、最近Photoshopはモバイル化していますが、Illustratorのモバイル版はありますか?

【岩本】はい、「Illustrator Draw」という製品はありますが、ベクタデータに変換できるスケッチアプリであり、デスクトップのIllustratorに搭載されている、本格的な機能は搭載されていません。

 今回は初心者向けの話なので申し上げておきますと、Illustratorの最大の特徴は「ベジェ」です。ベジェを使って自由に自分の思い通りのパスを描くにはかなりの慣れが必要だと思うので、その点モバイル版はベジェをあえて排除し、スケッチからパスを生成し、デスクトップに移します。

【司会】Illustratorはそもそも重いソフトなのでしょうか。

【岩本】Illustratorはある意味Photoshopより軽く使えるソフトであると思います。しかし配置画像や取り扱うファイルによっては重くなります。それからイメージをパス化するアウトラインの作業がありますが、これを行なうとパスの数が尋常じゃない数になりますので、そこで性能が必要とされますね。

 それから先ほども述べた通り、Illustratorは30年の歴史を持つ製品で、そのため古いコードも残っており、なかなか性能が上げにくい側面があります。新しい機能を入れることによって互換性を失ってしまってはユーザーからの支持が得られませんので、30年、進化とともにチューニングもしておりますが、スピードを上げにくい製品であるのも事実です。

【司会】データサイズはどのぐらいですか。

【岩本】一概には言えませんが、配置画像がよほど無駄に多くない限りは、数GBになったりはしないと思います。それから必要な解像度にもよると思いますが、例えば300dpiで十分なところ、600dpiの画像を置いたり、それを縮小して使ったりすると重くなります。

 データの最適化は本来なら必要ですが、最近のPCはスペックが上がってきたこともあり、アプリケーションがそのまま走ってしまいますので、そのまま作業される方の方が多いです。

【司会】では数GBに行かなくとも、数百MBのデータを扱うにしても重いというのは、描画処理が重いとか、データの読み書きが遅い点がボトルネックになるということですね。

【岩本】そうですね。ちなみに画面を描画するという意味では、今はGPUを使うオプションがあり、描画に関してはGPUのパワーを駆使することで性能を上げるような仕組みを取り入れています。イメージをパス化するところでも効果が得られます。

Illustratorの動作スペックは意外と低い!?

【司会】Illustratorを使っているユーザー層はどうでしょう。やはり仕事で使う方が多いですか、それとも趣味、例えば高校生や大学生ぐらいで、これからデザインの道に進もうと考えている方も触れるような製品ですか。

【岩本】我々の製品のメイン顧客はやはり仕事として使うデザイナーの方が大半です。しかし趣味とまでは行かなくとも、例えば美術系の大学生などにも使われています。

【司会】では、価格よりも仕事の生産性の方が求められているということですかね。

【岩本】各市場で要求される機能が少しずつ異なります。例えばパッケージデザインでは色んな角度からデザインを確認したいということで、展開図的な機能はないですかといった要望がありますし、グラフィックのユーザーであれば、以前のデータを扱いたいという互換性へのニーズ、一方学生ではより簡単に操作ができると言ったニーズがあります。

 我々の製品は「多機能」ではありますが、一部ユーザーには物足りないと言われますし、逆に学生さんからは「いきなりこんなたくさんの機能を用意されても使えない」と言った声もあります。

 また、IllustratorはPhotoshopよりも求められている“幅”がある製品だと言えます。Photoshopは“写真”という共通のデータを扱いますが、Illustratorは画面上で見るためのWebのバナーから、数百mにも及ぶ印刷物のデザインを行なうこともあります。

【司会】では、Illustratorを使う時にほかのソフトと併用するユーザーも多いのですか。

【岩本】圧倒的にPhotoshopが多いですね。山本さんもそうですね。そういう意味では、IllustratorとともにPhotoshopも同時に動かしていることを想定した方がいいです。大丈夫ですか、なんかいきなりハードルが上がってる気がしますけど(笑)。

【司会】さすがに今回の企画で上から下まで全ラインナップでマルチタスクを想定するのは難しいですが、エントリーモデルではIllustrator単体が快適に動く、ハイエンドモデルではPhotoshopとのマルチタスクも視野に入れたものにしたいと思います。

【パソコン工房】過去にPC Watchとコラボレーションしたモデルに関して言えば、下位モデルに関してはもちろんそのソフトが快適に動くことを前提とし、上位モデルはそのソフトを使った全てのワークフローをカバーしつつ、今後もリリースされる新バージョンでも使い続けられるようなものを想定しています。

【岩本】では下位モデルに関してはどのぐらいのイメージでしょうか?

【パソコン工房】これからIllustratorを始めようという学生さんに対して、いきなり実業務でも使うような20万円クラスのPCはハードルが高いと思います。なので、10万円が1つの目安ではないかと考えています。10万円で実現できるスペックとしては、CPUはCore i7、SSDは240GB程度、ビデオカードぐらいはボトムラインであれば搭載できるものと思います。

【岩本】超十分だと思うんですけど(笑)。

【パソコン工房】一方、PhotoshopとIllustratorを同時に走らせようと言った上位モデルでは、6コアや8コアのCore i7なども視野に入れていいと思います。過去にやった一番高い4K映像処理用のモデルは、100万円を超えていましたね。よって、価格に制限をかけるつもりはなく、あくまでも専門家の方や実際のユーザーがPCを使っていただいて、「これなら使えるね」という声のものを作ろうと思ってます。

 実は4K映像処理用のモデルは、100万円のマシンでも快適に動きませんでした。ただしSNSなどの反応を見ますと、PCに対してのネガティブな意見はなく、「これでも4Kを扱えないんだ」という驚きの声が多く見受けられました。そこは正直にスペックを詰めて行ければと思います。

【岩本】もしそういったハイスペックのものを今後やられるのでしたら、今アドビのビデオ製品では8K対応の製品もありますので、リベンジをお願いします(笑)。

【パソコン工房】実は今回の企画の中で8Kも上がっていましたが、機材などが一般でまだ手にはいらないので、もう少し先だと思います。

【岩本】話をIllustratorに戻しましょう。Illustratorの最小動作スペックを確認してみますと分かりますが、実は何年も変わってないんじゃないかと思います。もうないですよね、Pentium 4って(笑)。このスペック以上であれば、問題なく動作します。後は重たいファイルをどれだけ速くとか、ビデオカードを搭載して処理速度を向上させるとか、そういった話になると思います。

Illustratorの最小動作スペックはPentium 4からとなっている

50MBのファイルでもパスが多ければ重い

【司会】ここからはパーツレベルの細かい話をしようと思います。CPUはクロックとマルチコア、どちらが速度向上に結びつくのでしょうか。

【岩本】私個人の感想ではクロックです。冒頭で述べた通り、古いコードが残っている製品なので、クロックが速い方が効くと思います。ただ本国のエンジニアとやり取りしてみましたが、マルチスレッドにも対応はしているとのことなので、マルチコアの方がいいのかクロックが高い方がいいのか、一概には言えないということでした。一度パソコン工房さんの方で検証していただきたい点ではあります。

 Phothoshopの場合は点の集合体なので、マルチスレッド化しやすいのですが、Illustratorは画面の要素分解が単純に行なえないものが多く、おそらくシングルスレッドが速い方が効果は出ると思います。

【司会】メモリの容量は結構必要ですか。

【岩本】メモリも結構必要だと思いますが、私が見た中では、山本さんが使われているMac Proの16GBが最上位だったりします。ただしPhotoshopほどは必要ないと思われます。

【パソコン工房】山本さんは実際どのぐらい利用しているのか確認されたことはありますか。

【山本】ごめんなさい、気にしたことはないですね。

【岩本】デザイナーの方々は五感で仕事されてますから、タスクマネージャーで確認したりしないですよ(笑)。

【司会】それではストレージの方はどうでしょう。容量や速度は、Photoshopほど必要としないという認識で大丈夫ですか。

【岩本】ファイルの読み込みや書き出しという意味では大して負荷はないと思います。一方でメモリ消費が多く仮想記憶にまで溢れ出した場合、ストレージの速度が必要になります。MacBookの場合ディスクが1本しかないので、仮想記憶はそちらを使いますね。とは言え今メモリは大容量化していますので、どちらかと言えばPhotoshopとの併用でメモリがいっぱいになり、仮想記憶を使うことがあるかも知れません。今ほとんどがSSDですよね。

【パソコン工房】そうですね、例えばゲーミングPCでは8割以上のお客様がSSDを選ばれています。また、クリエイター向けPCで言うと9割以上の方がSSDを選んでいます。SSDを具体的に知らなくとも、“SSDを使えば作業効率が上がる”という認識はクリエイターの中で既成の事実になっていると思います。

【司会】クリエイターの方の多くはSSDで作業をして、作業が終わったらそのデータをHDDに移すと言った使い方がメインになっていますね。最近はノートPCでもSSDとHDDを両方搭載することが可能になっていますので、システム起動+作業用の空間としては200GB以上のSSD、アーカイブ用には1TBのHDDを選ばれていますね。

【岩本】我々の顧客を見てますと、とにかく日々の作業が忙しく、山本さんの例を挙げますと、デザイン部門の方が9人おりますが、1人当り年間100個ものパッケージデザインを作らなければなりません。つまり日々デザインの作業に追われており、アーカイブをどうしようと言った整理になかなか手が回らず、デスクトップが作業ファイルでいっぱいになっていますね。

【司会】ではGPUですが、これはIntelの内蔵グラフィックスでもアクセラレーションが効きますか? また、GeForce GTX 1080やTITAN Xと言ったハイエンドGPUはIllustratorにとって過剰なのでしょうか。

【岩本】はい、Intel内蔵グラフィックスでもOpenGLを使ったアクセラレーションが働いています。描画をGPUが肩代わりし、全体のパフォーマンス向上に寄与していると思います。ゲーミング向けGPUは、Illustratorにとって過剰だと思います。今回、描画処理が重いファイルをお持ちしましたが、見て頂ければ分かりますように、画面描画の部分というよりアウトラインの処理で時間が掛かっている感じです。今回このデータをお預けできますので、検証していただきたいですね。

 Illustratorの最新バージョンでは、最大64,000%まで拡大できるようになりました。ちょっと前までは6,400%だったので、その10倍です。これは、ものすごく大きなサインディスプレイを作られているユーザーのニーズを反映したものです。

【司会】このような重たいファイルはデータサイズはそれほど大きくないですか?

【岩本】そうなんです、データサイズとしてはさほど大きくはないんです。例えばこの例だと50MB程度です。それでもパスの数が数万、多い場合は数十万になります。ユーザーさんによってイメージをパス化する作業をしますが、それをやった途端にパスの数が増えます。

とてもIllustratorだけで作られたとは思えない作品
ファイル容量こそ50MB程度だが、パスがとてつもない量になっており、これが重い原因である
こちらもIllustratorを使った作品例

ディスプレイやマウスは好みで

【司会】それではディスプレイの話に移りますが、山本さんが現在お使いのディスプレイはどのぐらいの解像度のものですか。

【山本】AppleのCinema Displayです。解像度は1,920×1,200ドットですね。

【司会】それぐらいの解像度は通常の作業には十分なのですか?

【山本】そうですね。

【岩本】我々のソフトは、ユーザーインターフェイスのパネルなどで結構場所を取っていて、人にもよりますが、デュアルディスプレイを使っていらっしゃるユーザーが多いです。また、作業しながら音楽を聴いたりメールを確認したりというユーザーもいらっしゃるのですが、基本的にシングルディスプレイで十分だと思います。

【司会】なるほど。それではディスプレイの色域についてはどうでしょう。例えば写真の場合ですとAdobe RGBに対応していた方が望ましかったり、映像の場合でもDCI-P3と言った規格があったりしますが、そういったことは意識されていますか。

【山本】うちの場合、最終的には印刷されるものが多いので、画面の色域が広ければ広いほどいいというわけではありません。ディスプレイで見ているものと最終出力がマッチングしていることに越したことはないのですが、最後は印刷物として出てきたもので判断します。最終データになる前は、私の近くにあるプリンタで印刷して校正を取ってますが、そんなに大きなブレはないと感じています。もちろん、ディスプレイでマッチングしていた方がやり直しが少なくなります。

【司会】では、マウスといった周辺機器はどうでしょう。例えば解像度が高いマウスの方がいいと言ったこだわりはありますか。

【山本】実は私はマウスに関してはまったくこだわりがなくて、それこそ10年以上前のMicrosoftのマウスを使っています。この辺りは好みですね。

【岩本】もうそのロゴ消えかかってますけど(笑)。でも同じ部門の方ではワコムさんのペンタブレットを使ってる方はいらっしゃいましたね。私もマウス派ですが。

【パソコン工房】Illustratorというと1ドットずつマウスを動かしたりする操作のイメージがあるのですが、高精度なゲーミングマウスでは精度が高く、そういった操作がやりやすい部分はあると思いますが、試して見たことはありますか。

【山本】私は特に毛嫌いをしているわけではないのですが、今使っているマウスで不便を感じていないので、そのまま使い続けちゃってますね。MicrosoftのLEDマウスを使っています。

【パソコン工房】ちなみにそれは有線タイプですか? 1ドットずつの操作をするのに、ケーブルが邪魔になることも考えられますので、無線の方が良いというユーザーもおりますが。

【山本】有線ですね。ただあまり気にはしていないです。

複数のデザイン案を1つのファイルの中に

【司会】ちなみにパッケージデザインの作業はどのぐらいの期間かかりますか。

【山本】期間は製品によってマチマチです。ゼロから作る際は3~4カ月ぐらいかかるものもありますが、既にあるデザインを流用するようなものではより早く仕上がります。

 ちなみに1つのデザインになるまでに、15個ぐらいのデザイン案を作る場合もあります。この15案はベースの色が違うだけでなく、イラストや配置なども異なります。初回案から、社内でブラッシュアップさせていく過程に時間がかかります。ゴールが決まっていてそれを作るだけなら、そんなに時間はかかりません。

【司会】では話をまとめますと、全般的にはPhotoshopで必要とされているスペックよりはやや下で良さそうということで、その上でどこに投資をし、どこを切るか、パソコン工房さんにご検証していただきたいですね。

【パソコン工房】そうですね、それでは検証の部分ですが、具体的にワークフローの中のどの部分が重く感じられるのか教えて頂きたいと思います。

【山本】Illustratorを使ってデザイン制作をする中で「アートボード」をいくつか増やして、さまざまなデザインを検証します。そのアートボードを増やす段階で重くなっていきます。あまり重くなると、別のファイルに分けて作業しています。

 同じファイルに複数の案を入れているのは、どのデザインがいいか俯瞰で見て検討したいからです。また、ほかの商品を同じアートボードに入れて、それを参考にしながら見れるといいと思っています。私の場合プロジェクトの中で後期よりも初期の方が重くなりがちです。案の幅は広い方がいいと思いますので。

【パソコン工房】では重くなるシーンというのは、操作をしていてなるものですか、それとも具体的に何か処理を実行している時に重くなるのですか。

【山本】画像を複数配置したりする時に、ファイルを開くのが遅かったり保存するのが遅かったりする場合があります。それからファイルを複数同時に開いている時に重く感じられます。加えて、例えばドロップシャドウといった軽いファンクションを実行した時でも重いと感じることがあります。

山本氏が手がけたデザインの例
アートボードを増やし、デザインを俯瞰して比較できるようにしているため重くなる

【岩本】Photoshopは点の集合体ですが、Illustratorは複合処理であって、同時に処理してますから、ファイルにもよると思いますが、どうしても時間がかかりますね。昔のIllustratorは基本的に1ページだったのですが、今のIllustratorでは複数のデザインを検討する際に、複数のアートボードを作成することができます。それぞれのアートボードにイメージを貼るといった使い方ですと、また、アートボードの大きさやページ数も自由に変更できますので、どうしても処理が重くなります。

 ベクターデータというのは本来「軽い」という印象を持たれると思いますが、それが幾重にも重なっているので重くなります。ベクターデータだから自由に変更できるというのが良さでもありますが、例えばパスを摘んで移動する作業1つ取っても重たくなる場合がありますね。

 今回パソコン工房さんにご検証いただくデータはソフトウェアの性能を示すもので、とびっきり重いものを4つほど用意しました。これが快適に動けば十分だと思います。私がさまざまなところでデモする際はMacBookを使っていますが、Photoshopなどと併用するととても重くなりますので、一旦それらを閉じてからIllustratorでこのデータを開くといった工夫もしてます(笑)。

【パソコン工房】それではこのデータが快適に動けば、実際の業務の中でも快適に操作できる可能性が高いということですね。

【岩本】はい、そうだと思います。

【山本】私もデータを持ってきてますので、そちらも見て頂ければと思います(ファイルを開いて操作する)。

【岩本】はい、このように掴んでスクロール操作するだけでも処理に時間がかかってますね。1世代ぐらい前のMacBook Pro 13インチですけど。実際こういう風に使われていますね。アートボードが20個もありますね。

【山本】先ほど岩本さんが仰られてたように、この段階でイメージを縮小するなど最適化を進めて行けば軽くなると思いますが、このデータを拡大して使うといった可能性を秘めている段階でもありますので、ついつい大きいサイズで配置してしまいますね。ちょっとずつ文字や色が違うデザインも、アートボードを増やして比較したいので、余計重くなります。このファイルは重めのを選んだつもりですが、それでもファイルサイズは130MBしかないですね。

【岩本】デザイナーによってはアートボードの欄外にさまざまなパーツを置いて作業しますね、それをデザインの中に1つずつ入れて検討したり。デザインはやはりトライ・アンド・エラーですので、皆さん色々試してデザインを追い込んで行くため、アートボードを増やして比較されたりしますね。

【パソコン工房】Photoshopとの併用ですが、Photoshopはどのようなフローの中でどのような場所で使われていますか? 例えばデザイン内の写真の調整とか、最終的なデザインの調整とか。

【山本】はい、いくつか作業の中で使うことがありますね、素材作りだったり、3Dダミーを擬似的に作る、商品の色味を調整したりと言ったシーンです。バリバリ使ったりはしていませんね。

感性で仕事するからこそあまりカスタマイズされないIllustrator

【パソコン工房】ちなみにメモリを消費する理由の1つにアンドゥの回数制限などもあると思いますが、その辺り調整したりしていますか。

【山本】デフォルトの設定のままですね。

【岩本】デザイナーの方々は“感覚”で仕事されてますので、ほとんどの方がデフォルトで使われているんですよね。実際我々のソフトには、ソフトを使いやすくするためのカスタマイズが搭載されています。例えばワークスペースやパネルの設定など、さまざまな要望に応えられるようになってます。

 さらに、ツールバーのツールに関しても機能を追加したりできます。例えば文字を多用する方であればそのツールを追加できますし、ツールバーを1列にしてワークスペースを稼ぐと言ったこともできます。また、ショートカットもオリジナルで割り当てできるようになってます。ソフトウェア側ではやれることを提供していますが、多くの方はこれをお使い頂いてないと思います。

 それから最近スペックが高いのでネックになることはあまりないと思いますが、フォントも重要です。デザイナーの方々はものすごい量のフォントを入れていらっしゃいます。例えばモリサワさんではサブスクリプションモデルなので、900ほどのフォントが使えるのですが、デザイナーによってはかなり多くインストールしてしまっており、スペック上必要になっているのかもしれません。私は少ないのですが、それでも300ほどですね。

【山本】僕も減らした方が良いと思いつつも、インストールしてますね。

【パソコン工房】なるほど、だいたい理解しました。本日預からせていただきますデータをもとに検証をし、Illustratorが快適に動作するPCのスペックを探っていこうと思います。

【司会】本日は皆さんありがとうございました。