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意外と奥が深かったOfficeの動作環境【前編】

~日本マイクロソフトとOfficeを快適に動かすためのPC仕様を探る

 PCは、何でもできる汎用性が最大の魅力であり、特に文章や写真、動画などのオリジナルコンテンツを自分で作成・編集するには、やはりPCが最適である。ただし、何でもでいるといっても、実際には予算上限が決まっているので、いくらでも高性能なパーツを使えるわけではないし、1人が使うPCでは用途もある程度限られてくる。

 そこで、本コーナーでは、特定の用途においてコストパフォーマンスの面で最適なPCとはどのようなものかを、その分野に造詣の深い専門家やライターの方、および実際にPCを製造するパソコン工房、PC Watchの三者が一緒に議論、検討していく。これまで、「メーカーさん、こんなPC作ってください!」という名称の企画だったが、今回より、パソコン実験工房のPC Watch出張所工房という形でお届けする。特定の目的に最適化したPCのスペックを考えるという点は変わっていないが、周辺機器も含めた総合的な利用環境について考えていく。

 今回のテーマは、「Officeが快適に動作するPC」である。Officeは、WordやExcel、PowerPointなどから構成されるビジネス向けスイート製品である。仕事はもちろん、プライベートでも文書や資料などを作成したいというニーズは多いことだろう。Officeがあれば、プライベートからビジネスまで、さまざまな用途に対応できる。大手メーカー製PCでは、Officeがプリインストールされているものも多く、それほど高いスペックは必要ではないと思われるが、実際のところはどうなのだろうか。そこで今回は、日本マイクロソフトのプリンシパル テクニカル エバンジェリストの高橋忍氏(以下敬称略)を交えて、ミーティングを行なった。

日本マイクロソフト株式会社 デベロッパー エバンジェリズム統括本部 プリンシパル テクニカル エバンジェリストの高橋忍氏

スタンドアローンのOfficeとクラウドベースのOffice 365の2つのスタイルが考えられる

【司会】Officeが快適に動くPCのスペックについてお伺いしたいのですが、現状のOfficeはどのような使われ方をしているのでしょうか?

【高橋】Officeのアプリケーションとしては、まずWordとExcelがあります。業務ではExcelを使うことが大半でしょう。それから、PowerPointとメールとスケジュール管理アプリのOutlook、それからOneNote。それが今だと、Home & Businessに含まれているアプリケーションですね。

 それから、サブスクリプションモデルのOffice 365 Business Premiumでは、OneDrive for BusinessとSkype for Businessというビジネス版のOneDriveやSkypeが入っているところが大きい違いですね。

 Skype for Businessで何をやるかというと、例えばオンライン会議です。マイクロソフトの社内会議はほとんどSkype for Businessを併用してやっています。誰かの画面をミーティング参加者全員で共有して、誰かはオンライン、誰かはミーティングルームにいてという形でのミーティングが普通に行なわれています。僕らエバンジェリストはミーティングを毎週行なっていますが、完全にオンライン会議なので、僕らも家からSkype for Businessで入って、担当者の画面を見ながら参加しています。これからは、そうした使い方を、いかに快適にするかというのもポイントになります。

 このように、従来からのアプリとしてのスタイルと、Skype for Businessを使ったような、ワークスタイルが絡んだOfficeの使い方が出てくると思うんです。マイクロソフトでは国と一緒になって、ワークスタイルの変革を推進しています。要はテレワークとか在宅勤務とか、カフェで仕事しようとか、そういうことを奨励をしています。実際マイクロソフトでは、在宅勤務は普通です。家で資料つくりたいから在宅で仕事しますってメールを送るだけで、もうそれで在宅勤務できるんです。そうなると、どこからでも働ける形になるので、自宅のマシンを使って自宅から会議に入ったりすることもあります。

 今後は、そういう働き方が一般的になり、自宅でOfficeを使って仕事をするとか、Skype for Businessを使ってミーティングをするということが想定されてくると思います。ですから、そういう今後の働き方を想定したときに必要なマシンスペックというのも、1つ考えたいと思います。Officeなんですけど、そこまで行くとヘッドフォンやマイクなどの周辺機器もけっこう大事になってきますので、通常のOfficeアプリケーションとしての必要環境と、Office 365を核としたテレワークを前提とした時の必要環境。その2つをイメージしています。

OutlookとPowerPointにフォーカスしてスペックを考える

【司会】それではまず、アプリケーションとして見たときのOfficeの方について、どういうスペックのPCが必要なのでしょうか? 今のAtomのようなエントリーレベルのCPUでも問題なくOfficeは動作するということは承知していますが、ビジネスでの利用も踏まえて、快適に動かすという意味では、どういうところに気を配ったらいいのでしょうか?

【高橋】まず、どのアプリケーションにフォーカスするかを考えてみますと、Excelでものすごいページ数とかものすごいカラム数のワークシートを扱うというのはそうそういないのかなという気がします。最近はクラウド側で処理する形になってるので、Excel側ですごく重い計算をするというよりは、クラウドで処理した結果をExcelで見るというケースが多いので、Excelにフォーカスすると、ハイスペックが必要なシチュエーションというのが、昔よりもなくなったのかなという気がするんですね。

 一方でパワーがほしいと思うのが、1つはOutlookですね。Outlook自体は重いわけではないのですが、問題はメールのサイズです。会社の設定やメールサーバーにもよりますが、添付ファイルの上限が緩くなってきています。最近は画像ファイルをスマートフォンやデジカメで撮って送るじゃないですか。JPEGでも平気で1枚が4MBや5MBになりますし、1つのメールファイルがどんどん大きくなってくるんです。そうすると、Outlookのメールの総量が肥大化します。数年前に比べると、桁違いに大きくなっています。

 Outlookって、PC内ではOSTファイルという1つのファイルの中にすべてのメールが固まりになって保存されていますが、それが巨大になってくるんです。すると、起動時の読み込みに時間がかかるようになるんですね。ですから、メールを大量にPC上に保存しているなら、CドライブはSSD以外は考えられないです(笑)。

【司会】今の主流は、サーバーがIMAP4ですが、それでも基本的にローカルにコピーするんですか?

【高橋】Outlookは設定した期間分はキャッシュ的に持っています。キャッシュの保存は1カ月以内までという設定はできますし、基本的に同期型でローカルには置かない使い方が主流です。ただ、業務でOutlookを使ってる方が効率的に利用しようとすると、ある程度ストレージに余裕があったら、ローカルにコピーを置いておいた方が速いことは速いんです。そこはストレージ軽量化でいくのか、性能最重視でローカルにもある程度置きたい。また、万が一オフラインになっている状態でもすぐに確認できるという意味では、ローカルに置きたいという方もまだまだいると思いますので、その辺もスペックを考える1つポイントかなと。

 それから、もう1つはPowerPointですね。今我々は仕事ではこちらが主戦場となっています。マイクロソフト社員でも多分一番使っているOfficeのアプリがPowerPointでしょう。会議資料はもちろん、Excelでデータの集計しても、それをPowerPointに貼る感じなので。普通に資料をまとめるときもPowerPointを使います。ユーザー勉強会やお客様の資料でもPowerPointを使うところは非常に多いですね。

 ちなみに、最近ですと、PowerPointのファイルサイズはどれくらいだと思います?

【司会】プレゼン資料ですか? 数十MBとかですか?

【高橋】大体一般的にはそれくらいですね。

【司会】私は今までで一番大きいので、二十数MBとかそれくらいですね。

【高橋】ですよね。普通に考えたら。先日イベントがあったんですが、その時の僕のセッションで使ったPowerPointの資料が312MBです。300MBいきました(笑)。なぜかというと、動画がいっぱい貼り込んであるんです。YouTubeのリンクを貼るケースもあるんですが、本番用には動画そのものを入れています。枚数自体は40枚くらいですが、結局このサイズになってしまいました(笑)。

 今は、PowerPointのエフェクトの機能が非常に良くなってきているのと、画像も高画質になり、画像サイズがどんどん大きくなっています。凝ったプレゼン資料だと、数十MBまで一気にいく。動画を入れようとすると、数百MBの単位です。そうすると、処理負荷がかなりかかるので、ファイルを開くまでに時間かかることがあります。もちろん最小と最大がありますが、今後はプレゼン資料もかなりヘビーになってくると思いますので、ストレージ速度とメモリ容量は重要ですね。

 実際、PowerPointに動画を埋め込もうとすると、場合によっては同時に動画編集ソフトを立ち上げて編集したりします。PowerPoint自身でも、動画のトリミングぐらいはできるんですが、凝った編集はできないので。画像も貼り込む前に編集したりしますし、PowerPointで作業をする時は横にExcelも開いて、Excelの表をそのまま貼り込んだりします。後はWebサイトの情報とかをリンクで貼ったりと、PowerPointで作業をしている時は、同時に複数のファイルを起動しているケースは非常に多いんです。

PowerPointに動画を埋め込むとファイルが肥大化する

 さらに我々がよくやるのが、PowerPointを複数開いて、前に作った自分の資料とか、本社の資料なんかを、いろいろ切り貼りしながらやる方法です。PowerPointを複数開くには、ある程度のスペック、メモリが潤沢にあった方が作業的な負荷が減るかと。例えば自分で家のマシンでやろうとすると、ミニマムで8GBは欲しいかな。家で自作でマシンを作るなら16GBは欲しいかなと思います。PowerPointだけじゃなくて、別アプリを立ち上げながら、作業する、そういう環境を見据えた性能が欲しいな、というところがあります。

同時にアプリケーションを利用するにはディスプレイサイズや解像度が重要に

【高橋】同時に複数のアプリケーションを利用するとなると、今度重要になってくるのがディスプレイ環境なんですね。

【司会】それは解像度が欲しいということですか?

【高橋】1つ、解像度が欲しいというのはあります。解像度もそうなんですけど、物理的にアプリを複数立ち上げるじゃないですか。そうすると、物理的な画面サイズもどうしても欲しくなるんですよね。その場合の選択肢は2つ。大きな画面を使うか、マルチディスプレイを使うかというところにいくじゃないですか。どっちを選ぶかですね。マルチディスプレイって使われてます?

【司会】私のノートの解像度は4Kでして、15型の4Kだとさすがにスケーリング100%だと、ギリギリ読めるくらいなんですが、会社だとこれを奥に置いちゃうと、さすがに字が小さくてきついので、ノートの液晶は200%にして、もう1つ27型の4Kディスプレイに繋いで、そちらはスケーリング100%にして4つに分割して、フルHD 4つ分としてそれを使って、ノートと合わせて5枚分みたいな感じでやってますね。

【高橋】ディスプレイは横置きですか?

【司会】はい。

【高橋】ノートを軸にしてそのパターンはありますよね。デスクトップPCだと、ディスプレイ何枚が多いんでしょうね。1枚が圧倒的に多いんでしょうけど。マルチディスプレイだと。

【司会】弊社は編集作業とかなので、どれくらい一般的と言えるか分からないんですけども、デスクトップPCじゃなくてノートの人も多いけど、デュアルディスプレイで使ってる人は多いですね。

【高橋】トリプルディスプレイにしようとすると、設置場所の問題が出てくるんですよね。ただ、デュアルディスプレイだと使い方にもよりますが、同じサイズの画面を、例えば23~24型のディスプレイを2枚並べると、真ん中に額縁ができますよね。そうすると、ものすごく作業がしにくい状況になると思います。結局、メインとサブという形の方が使いやすい。ただ僕は境界をまたぐと頭の中にものすごいノイズが入るので、業の妨げになっちゃうんですよね。

【司会】僕も実際、27型ディスプレイは正面に置いてて、基本的にはこれで作業をしています。ノートPC単体のときはもちろんノートの液晶ですけれども、2台ある時はノートPCは脇に置いて、例えばTwitterのストリームとかが出てて、作業用ではなくて何かをちょっと見たりする時に使う感じです。

【高橋】そうですね。デュアルだったらメインとサブみたいな使い方ですよね。そうすると、3画面でやるという時に、例えば横幅が120cmの机だとすると、最近のディスプレイはアスペクト比が4:3から16:9になってしまったので、余計に横並びがしにくくなってますよね。それで、縦画面にして3つ並べるとパターンというのがあります。こうすると、3枚の方がメインとサブ/サブという形で、メインがしっかり使えるので、実は作業としてはやりやすい。2画面だとメインが大きく、サブが小さくという感じになって、意外とサブはそれ使えなかったりするんですね。使えないから、Twitterみたいな本業とは関係ないことやって、実は結局のところメイン1枚で使っている感じですよね。

 後、3画面でやる場合は、大きなやつを横画面でメインにして、縦画面にすると縦のサイズが合うディスプレイ2枚を縦にしてやるという方法もあります。例えば、メインが28型や30型くらいで、サブは21型くらいのワイドディスプレイを縦にして使って、縦のサイズを揃えて使うみたいな方法です。ただ、まあこれはそんなに一般的な使い方ではないというか、結論としては大きい1画面でやったほうが一番効率的だったりするんですよね。

Windows 10には仮想デスクトップ機能が標準搭載されている

【司会】実際、Office向けに環境を整える方で、新規に全部揃えるというのはちょっと少ないと思うんですね。既にPCがある、ディスプレイがある状況でPCを追加購入するとなると、例えばディスプレイをデュアルにしたいんだけど、全く同じものにするのは難しかったりするじゃないですか。もう売られてなかったり。

【高橋】そうですね。今ディスプレイがあるんだったら、それをサブにしてもう1つメインディスプレイを買うという方が現実的なのかな。メインのディスプレイを大きなものに変えるというのが、個人的には一番いい解決方法かなと思います。もちろん家庭環境とか、いろんな事情があると思うんですが、最小でも28型のディスプレイがお勧めですね。28型になると正直フルHDじゃもったいので、2,560×1,440ドット以上ということになると思うので。

 あくまで僕自身のお勧めというか、自分が気に入ってる使い方なんですが、40型4Kディスプレイを使ってます。最近は4Kディスプレイも安くなりましたし。

【司会】それは普通にデスクトップとして、作業机の環境で40型を置かれてるということですよね。

【高橋】はい。この話がどこまで行くかというと、周辺機器から机のサイズの話にいくんですよ(笑)。机のサイズはどれくらい必要か。奥行きが何cm必要かみたいな。

【司会】40型になると、けっこう幅を取りますよね。

【高橋】足がすごい幅を取るんですよね。最初は奥行きが80cmくらいある大きな机で使っていたんですが、手狭だったので40型をディスプレイアームでなんとか吊ってました。最終的にどうしたかというと、壁側に机をつけて、ディスプレイを壁面に固定しました。自由度は減りますが、意外と快適なんです。

【司会】今、ディスプレイから自分の目までは1mくらい離れている感じですか?

【高橋】机自体の奥行きは60cmくらいですね。4Kで40型だと、ドットバイドットの100%でいけるんですけど、離れちゃうとまた見えなくなるので、40型と言っても一覧で見るというよりは、4分割でそれぞれ使うとか、半分半分にして、自分の視界をエリアとして使うのが自然ですね。さすがに40型は極端なので、一般的には28型の4Kとか2,560×1,440ドットくらいが使いやすいと思います。Windows 10には、画面を4分割して使う機能がありますし使いやすいと思います。こんな感じに、ディスプレイに1つ投資していただくのがいいのかな、という気がしますね。

【司会】お勧めは4KとかWQHDとか、なるべく高解像度ということですね。

【高橋】そうですね。Windows 10で、ようやくDPIスケーリングがきちんと整理されてきたので、高解像ディスプレイを100%で使わなくても、DPIスケーリングによってフォントなどもものすごく綺麗に表示されます。40型だと、横画面でもA4縦がそのまま同じサイズでできるんですよね。そうすると、フォントのディテールまでしっかりプレビューができるので。大きいディスプレイを買うんだったら、それに合わせて解像度をきちんと上げてったほうがいいと思いますね。デスクトップPCを作ってそれをメインで使うシチュエーションになった場合はやはりそこはこだわりたいかなと。

WindowsやOfficeの将来を考えるとGPUも欲しい

【司会】Officeをターゲットにした場合だと、グラフィックスは外付けのGPUがいるという感じではないですよね。

【高橋】はい。Office単体ではそれほど必要性はないないと思います。ただ、先ほど言ったように、ビデオ編集までやることを考えると、GPUを使う場面でもでてきます。例えば、Officeからだいぶ逸脱しちゃうんですけど、Adobe Premiereまで使おうとすると、レンダリングでGPUを使うので。僕は自分で動画を撮って、自分でPremiereで編集して、それをPowerPointに貼り付けたりしてますので、そういう意味ではビデオカードも必要になります。

 もう1つは、今週出たWindows 10の最新ビルドですね。Insider Previewで出てるやつですが、ペイントで3Dが使えるようになったんですよ。やはり3Dがこれだけ身近になってきています。

 VR、ARが今年(2016年)はものすごく出てきて、HMDも各メーカーから今後出てきます。そうすると、3Dコンテンツも今後はユーザーが作れるようになるでしょう。これが標準になってくると、やはりグラフィックスの性能は当然必要になってきます。

 この間、Surface Studioの発表の時に、一緒に発表してましたけど、PowerPointも3Dオブジェクトに対応していくことになりますので、次のWindows 10のアップデート(Creators Update)では、やはり3Dの取り扱いがかなり進んでくると思うんですね。

PowerPointでは今でも描画機能を使った3Dオブジェクトを扱えるが、将来的にはさらにスムーズな3Dアニメーションが再生できる

 今後は、VR、ARや3Dが特別なものじゃなくてユーザーも手軽に扱えるものになるという方向性になってくると、2年後、3年後というストーリーを考えると、それがPCの機能として普通に入ってきます。子どもが作った3DオブジェクトをVR HMDで見るというのが半年後は簡単にできるようになってくると思うので、それを考えると、やっぱりビデオカードは乗せられるんだったら、乗せといた方がいいのかな、という気はします。

 もちろん、ハイエンドのビデオカードを乗せろとは言わないですけど、ミドルクラスのビデオカードなら小さいケースに入れることもできるので、1万円から3万円くらいのところのビデオカードを入れてやってもいいという気はしますね。今は、CPU統合グラフィックスの性能もかなり上がっていますので、1画面だけなら十分なんですが、高解像度ディスプレイを複数使うことや、今後3Dが出るのを考えてくると、ビデオカードはフォーカスに入れといてもいい気はします。

【司会】そうすると、今回の企画で考えてるマシンの中で、例えば下位モデルと上位モデルがあったとすると、下位モデルはとりあえず内蔵ビデオ機能で。ユーザーの用途としても、動画の編集もちょっとやるかもしれないけど、すぐにたくさんやることは想定していないというんだったら。上位モデルは、最初からビデオカードを付けるか、オプションで後からつけれるようにという感じでしょうか。

【高橋】筐体とかも、スリムだけど、一応ビデオカードが載せられるものにするのがありかなという気はしますね。自分のスキルも上がっていくので、自分がいろんなものをつくるようになった場合には、そういう拡張性も欲しいですよね。ゲームやらないから特に拡張しないしではないんですけど、クリエイターじゃなくても3Dも簡単にできるようになったら、ちょっとやってみようかと。やってみたら意外と、ペイント3Dを使ってもらえば分かるんですが、この感覚で3Dできるんだったら面白いじゃんと。OSやアプリが使いやすくなると、高度なことをみんなやりだすんですよね。それはスマートフォンで証明されてるじゃないですか。あれと同じことがPCにもまた今後どんどん出てくるので。

【司会】こういう3D機能とかプラスアルファの機能って、Office 365とかOffice Premiumではどんどん入ってくるのでしょうか?

【高橋】まだ分からないですけどね。この間の発表では、PowerPointもそういう3Dオブジェクトを貼り付けて、エフェクトとかで使えるみたいなところでしたので、まだこれからですね。まず、OSとしての対応から始まっているので、アプリは今後どうなるか分からないんですけども。ただ、アプリの中で3Dオブジェクトが扱いやすくなると、画像と同じ感覚で3Dオブジェクトをインポートできるようなことも、今後は出てくるでしょうね。Windows 10 Mobileでも、実際の物をあらゆる角度から撮ると、3Dモデルができあがるみたいなデモをやっていたので、今後はOfficeでも扱えるオブジェクトとして3Dが入ってくる可能性は非常に高いと思いますね。

細かい作業をするには独自方式のワイヤレスマウスがお勧め

【司会】そのほかのデバイスについてはいかがですか? マウスやキーボードなどについてもお話いただいていいですか?

【高橋】実は、ExcelやWord、PowerPointを使う人って、ものすごくこまかい調整をやるんですね。例えばExcelだったらセル幅の調整とかをものすごい細かくやってる。いわゆるExcel方眼紙ですね(笑)。

 PowerPointでも、結構自分自身は気づかないんですけど、ドット単位の処理をマウスの微妙な操作でやってるんですよね。そういう方は普通に自分のこだわりのマウスを使ってるわけですが、手首の微妙な動きにきちんと追従して欲しいですし、そうすると、マウスの分解能やレスポンスの問題ですよね。

PowerPointの描画機能を使って描かれた藍澤光ちゃん(台湾MicrosoftがSilverlightのプロモーションのために作ったキャラクター)

 こういったマウス論になると完全に好みの世界なので、選択肢もいっぱいあります。ワイヤレスでも、BluetoothにするかUSBドングルの独自方式にするかという選択があるんですね。モバイルだと、もう完全にBluetooth一択だと思いますが、家のデスクトップPCなら、USBドングルを挿しっぱなしでもかまわないので、どっちかなというところなんですが。

 まだBluetoothってCPUの処理負荷に引っ張られるような時が絶対あると思うんですね。(個人的な感想なのでマイクロソフトの公式な見解ではないんですが)そういうマウスとか入力装置って、自分の頭の中で考えたものを落とし込むための大事なインターフェイスなので、レスポンスが悪いと、一番能率に関わってくるところです。そういった時に、独自方式のワイヤレスマウスのほうがまだ優れている気はしますね。Bluetoothマウスでもいいんですけど、Bluetoothマウスにするなら、新しい製品を買ってください。通信方式がBluetooth 4.0、4.1とかだと、センサーの測距分解能の性能も上がっています。

 キーボードは逆にこだわりある方にお話を聞きたいくらいです(笑)。茶軸だわ青軸だわとか、HHKBしか使わない方とか。でもこれは好みの問題ですけどね。やっぱり自分に合ったものを選んで下さいとしか。ただ、家でデスクトップPCで使うんだったら、当然キーピッチも十分確保されているキーボードを選びたいですよね。

【司会】テンキーはあった方がいいですかね。主用途がExcelなのかPowerPointなのかでも違うと思うんですけど。

【高橋】テンキーはその人が使う使わないによると思います。ただ個人的には、テンキーはあった方がいいかなと思います。というのは、時々カーソルキーとしてテンキーを使ったりするんです。特にExcelを多く人はテンキー必要だと思うんですよね。ただ、テンキーを何かの操作のときにカーソルキー的に使う時があります。実は僕はマイクロソフトのエルゴノミクスキーボード、真ん中が割れてるキーボードを使ってるんですけど、あのキーボードの面白いところは、テンキーが分かれて独立しているんですね。テンキーを左置きにしたり右置きにできるんですよ。右手でマウスを使って、左手にテンキーを置いて、テンキーのNumLockを外して、カーソルキーとして使えたりするので、このカーソルキーとマウスの両手持ちって結構便利です。

【司会】では、スタンドアローンとしてのOfficeを利用する場合の基本スペックについてもう一度整理したいと思います。

【高橋】デスクトップPCの基本パターンで考えると、CPUは当然ながらそんなに高性能なものは不要です。ただ、さっきみたいにPowerPointと動画編集を一緒にやろうとすると、やはりそれなりのスペックが必要になります。メモリとストレージだけ速くてCPUが遅いのではしょうがないので。そういうところまでゆくゆくは自分もやりたいなというところであれば、Core i5とかCore i7があった方がいいのかな。バランスなのかな、という気がします。

 イメージとしては、マックスまでのものはいらないんだけども、CPUとメモリの量とSSDはバランスを見て、中くらいというか。上はCore i5かi7、メモリ16GB、SSD 512GBとか、下はCore i5でメモリ8GBで、SSD 256GBとか。当然、保存するファイルが動画だったりすると、ストレージ容量が必要になってくるので、もちろんOneDriveとかのクラウドストレージもありますが、ローカルストレージとしてSSDをメインドライブにして、HDDの1TBや3TBもローカルに持つというのが、理想的な構成なのかなと思います。

 OneDriveって今、ローカルと同期できるので、Office 365とか使うと、1TBとかOneDriveで確保できるんですよね。そうすると、ローカルに1TBはないと全て同期できなくなりますよね。

Windows Hello対応デバイスも欲しい

【高橋】もう1つ、スピードとセキュリティという意味で、Windows Helloはぜひ欲しいですね。一度体験すれば、二度とHelloなしには戻れなくなるので。最近マウスさんからWindows Hello対応デバイスが出ましたよね。やっぱり、帰ってきてすぐに、「ああ、あのファイルの続きをやらなきゃ」といったときのログインのスピードは大事ですね。せっかくSSDで高速化されても、ログインにパスワードを入れるのは面倒です。顔認証でログインというのは非常に便利なので、ここは入れて欲しい。

 Yahoo! さんのWebサイトでも今後Windows Helloに対応すると発表されました。Helloの認証技術って、標準化されてる技術なんです。なので、今後Webサイトとかアプリとか対応してくるので、Webショッピングで決済の時にパスワードを入れますが、それが顔認証でできるようになったり。ああいう一手間がユーザーにとってはすごく楽になってくるので。セキュリティの意味でも安心ですから。

 今は顔認証と指紋認証の2タイプのデバイスがあるので、自分のやりやすい方とかでやっていただくのがいいと思います。

Windows Helloに対応したマウスコンピューターの赤外線カメラ

Skype for Businessならヘッドセットが必須

【司会】では、Skype for BusinessなどのクラウドベースのOffice 365を念頭においた場合はいかがでしょうか? CPUなどの基本スペックにはそれほど違いは出てきませんよね?

【高橋】それはないですね。ただ、やはりオンラインチャットとか会議は、マイク付きのヘッドセットが必須だと思います。今は選択肢が非常に潤沢になってきたので。重要なのはヘッドセットの性能というか、音質だったりします。例えば、Bluetoothでやり取りしていると、BluetoothはCPUの性能に影響するので、実は非力なPCだとCPUの負荷が上がりすぎるとBluetoothの通信とかが引っ張られるケースがあるんです。なので、実は音声が途切れ途切れになったりとか、マイクの音声が欠けたりすることが実際にあったりするので、その辺は注意が必要ですね。

 最後にOffice 2016について少し宣伝したいのですが、Officeはもう十分高機能だし、バージョンアップしなくてもいいだろうと思っている人もいるとは思いますが、最新の2016では、データを分かりやすく可視化する機能が大きく強化されてます。例えば、地域とデータがあった場合、それを日本地図に合わせて出すとかですね。昔だったら、1個1個のグラフをユーザーが手で作る必要があったことも、かなりOfficeのアプリ側で自動的にやってくれるようになりました。標準機能だけでよりリッチなグラフがつくれるようになったので。もちろん、必要ない人にとっては必要ないんですが、実は業務をやってて、自分たちがやりたくてもできなかった部分、表現力といったとこで、Officeの新しいバージョンで強化されているので、そこをうまく使っていただきたいところがありますね。

 今面白いのは、Office単体でも機能は強化されてますが、いろんなサービスとの連携ができるようになっています。クラウドサービスをOfficeから呼び出して使うとか、もちろんOffice側でのプログラミングとかは必要なんですが、今後はOfficeの単体機能としてマイクロソフトが機能強化する部分と、サードパーティがOffice連携対応をした自社のサービスを展開するというのも増えてくるので、そういった意味ではマイクロソフトが考えていないような使い方もいろんな方が提案していただける気がするんです。そこは楽しみにしてます。

【パソコン工房】大変参考になるお話をお聞かせいただきありがとうございました。今回お伺いしました内容から最適なスペックのPCとしてデスクトップPCおよびノートPCから2、3機種ピックアップしたいと思います。

 加えて、Officeに合わせて使える周辺機器として、大型の4Kディスプレイや、無線式のキーボード、マウス、ヘッドセット、そしてWindows Hello対応ディバイスも合わせて使い方の紹介をしたいと思います。さらに、マクロを登録して使えるキーボードやマウス、キーコントローラなども、Office向けに提案したいと思います。

【司会】ありがとうございました。