西川和久の不定期コラム
マウス「MDV for Photo / MDV-QX7000S-DP-PP(セット内容編)」
~キャリブレーション対応液晶&広色域印刷対応プリンタを見る
(2015/4/14 06:00)
マウスコンピューターは2月10日、プロ写真家の利用を想定したデスクトップPC「MDV For Photo」を発表、2月23日から販売を開始した。前編は本体中心だったので、後編は、セット内容のキャリブレーション済みの液晶ディスプレイ、プリンタ、色評価用蛍光灯スタンドなどを中心にご紹介したい。
ディスプレイはEIZO「ColorEdge CX241-CNX」+CX241用遮光フード「CH7」
EIZOのColorEdge CX241は、「CX241」、「CX241-CN」、「CX241-CNX」の3モデルあり、順に「ColorNavigator Elements付属」、「ColorNavigator 6対応」、「ColorNavigator 6対応/専用センサー(EX2)付属」となる。
今回「MDV for Photo / MDV-QX7000S-DP-PP」に付属するのは、最上位の「EIZO CX241-CNX」。先に書いたように、ColorNavigator 6対応で専用センサー(EX2)も付属するモデルだ。主な仕様は以下の通り。
EIZO「CX241-CNX」の仕様 | |
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種類 | 24.1型IPS式/ノングレア(広色域LEDバックライト)/1,920×1,200ドット |
視野角 | 上下/左右ともに178度 |
輝度 | 350cd/平方m |
コントラスト比(標準値) | 1,000:1 |
応答速度 | 7.7ms(中間階調域) |
広色域表示 | 対応:Adobe RGBカバー率99%、NTSC比110% |
表示階調 | DisplayPort、HDMI:1,024階調(65,281階調中)、DVI:256階調(65,281階調中) |
表示色 | DisplayPort、HDMI:約10億7,374万色/10bit対応(約278兆色中/16 bit-LUT)、DVI:約1,677万色:8bit対応(約278兆色中/16 bit-LUT) |
キャリブレーション推奨輝度 | 120cd/平方m以下 |
入力端子 | DisplayPort×1(HDCP対応)、DVI-I 29ピン×1(HDCP対応)、HDMI×1(HDCP、Deep Color対応) |
インターフェイス | コントロール用USB×2ポート、USB Hub×2ポート |
昇降/チルト/スイベル/縦回転 | 128mm/上30度/左右344度/右回り90度 |
取付穴ピッチ(VESA規格) | 100×100mm |
外観寸法(横表示) | 575×245.5×417~545mm(幅×奥行き×高さ) |
外観寸法(縦表示) | 398×245.5×594.5~642.5mm(同) |
重量 | 約9.0kg |
主な付属品 | 信号ケーブル(DVI-D~DVI-D×1、Mini DisplayPort~DisplayPort×1)、2芯アダプタ付電源コード、USBケーブル、ユーティリティディスク(ColorNavigator 6、ColorNavigator Elements)、EX2センサー、調整データシートなど |
パネルは24.1型IPS式でノングレアで解像度は1,920×1,200ドット。視野角はIPS式なので、上下/左右ともに178度と広い。広色域表示はAdobe RGBカバー率99%、NTSC比110%。
インターフェイスは、DisplayPort×1(HDCP対応)、DVI-I×1(HDCP対応)、HDMI×1(HDCP、Deep Color対応)。DisplayPortとHDMIは10bit対応だ。もちろんPC側にあるQuadro K2200も10bit対応。
比較的安価なディスプレイは、DisplayPortありだとHDMIなし、HDMIありだとDisplayPortなしのパターンが多く、両方使えるのは便利。特にHDMIは8型~10型の小型タブレットに多く使われ、その出力を外部ディスプレイに表示したい用途が多と思われる。この製品でははDisplayPortを使った写真編集がメインだが、ちょっとした時にほかのデバイスを接続したいのはよくある話だ。
インターフェイスは、コントロール用USB×2ポート。PCからUSB接続した上で、付属のEX2センサーを接続する。USB Hub×2ポートもあるので、ほかのUSB機器も接続可能だ。余談になるが筆者のケースだと、両サイドにスピーカーがあり、それをドライブするアンプがUSB電源なので、一番近くにあるディスプレイのUSBポートから電源を取ったり、iPadをアプリを使ってセカンドディスプレイにする時もディスプレイのUSBポートへ接続するなど、何かとディスプレイのUSBポートは使うことが多い。
縦表示(右回り90度)にも対応し、昇降は128mm、チルトは上30度、スイベルは344度。これだけ対応していれば設置場所の柔軟性は高い。サイズは横表示時に575×245.5×417~545mm(幅×奥行き×高さ)、重量約9.0kg。オプションの遮光フードもセットに含まれている。
キャリブレーションセンサーのEX2は外付けだが、面白い機能としては「コレクションセンサーを内蔵」していることが挙げられる。サイトの説明によると、キャリブレーション後の調整結果をこのセンサーで記憶し、それに基づいて白色点・輝度を保持する定期的(調整タイミングを設定可能)な表示補正を自動で行なえる。外付けのキャリブレーションセンサーの場合、再測定するのは意外と手間なので、これを低減できるのはありがたい。
さらに上(CG247以上)のシリーズでは、キャリブレーションセンサー自体を内蔵しているため、キャリブレーションセンサーを取ったり付けたりする面倒は無いが、その分価格は跳ね上がる。外付けキャリブレーションセンサー+コレクションセンサー内蔵は、価格面でも性能面でも案外良い組み合わせかも知れない。単体の価格はAmazon.co.jpで103,662円だった。
筐体はマットブラック。フチはあまり狭くなく、厚みもあり、最近の流行である薄型にはなっていない。昔ながらの液晶ディスプレイのスタイルだが、この手のディスプレイは基本性能重視なので、気にならない部分だ。
操作系は右下に集中しており、左から順にSIGNAL/MODE/RETURN/△/▽/ENTER/電源ボタンがある。背面は左側に電源スイッチと電源コネクタ。右側にDVI、HDMI、DisplayPort、USB、USB 2.0×2を配置。またスタンド部分にケーブルマネージメントがある。オーソドックスなタイプなのでマニュアル不要で設置可能だ。また今回はCalibration(CAL)が主になり、ディスプレイ自体の設定を手動で操作することが無いため、OSDに関しては撮影しなかった。
搭載しているカラーモードはCustom、Paper、Adobe RGB、sRGB、Calibration(CAL)。今回主に使うのはCalibration(CAL)モードとなる。その他の機能として、黒レベル、色温度(4000K~10,000K/100K単位)、ガンマ、色の濃さ、色合い、ゲイン、6色調整、パワーセーブ、ランプ輝度、設置方向なども搭載している。十分な機能・性能であることは言うまでもない。
コントロールパネル/色の管理を見ると、CX241のicmと、後述するキヤノン「PIXUS Pro-10S」のicmが既にインストール済みになっている。ディスプレイは、輝度120cd/平方m、白色点5,000K、ガンマ2.2に設定されているのが分かる。ただ輝度120cd/平方mは写真以外の作業をするときはかなり明るい。筆者の場合、半分の60cd/平方mのプロファイルを1つ作って、通常はこちらで作業している。
元々カラーキャリブレーション済みで出荷されているので、すぐにColorNavigator 6を起動して再測定する必要は無いのだが、EX2を接続してキャリブレーションしている動画を掲載したので、興味のある方はご覧頂きたい。キャリブレーション後、コレクションセンサーが出て状態を記憶しているのが分かる。
CX241のicmをOSXのColorSyncユーティリティでAdobeRGBと比較した画面も掲載した。後ろのグレーの方がCX241だ。カバー率がかなり高いのがこのプロットからも見て取れる。
OSXのColorSyncユーティリティの左側に出ているが、筆者のメインディスプレイは少し古いモデル(2つ前?)のCG245W。キャリブレーションセンサー内蔵タイプだ。同様にicmを比較したところ……色域はCX241に負けてしまった(苦笑)。ただ普段はsRGBで使っている上、AdobeRGBにしてもカバーしていない部分はCX241とほぼ同じなので、再現できる色としては変わらず事実上困らないものの、少し悔しい感じだ。
1点謎なのは、付属のケーブルがMini DisplayPort~DisplayPort×1とDVI-D~DVI-D×1なこと。このケーブル自体は「CX241-CNX」の付属品なので、EIZO側の問題では無いが(Mini DisplayPort~DisplayPortはおそらくMac用)、Quadro K2200の出力は標準サイズのDisplayPort。別途DisplayPort~DisplayPortのケーブルを用意しなければならず、セットのままの状態だとDVI-D~DVI-Dケーブルで接続することになる。せっかくの10bit対応なので、標準でケーブルか変換アダプタを付属して欲しかった。
なお、CX241向けの簡易カラーマッチングソフトウェア「ColorNavigator Elements」は、EIZOのWebサイトからダウンロード可能なので、他の2モデルでも使用できるものの、そもそもColorNavigator 6に対応しているため、使う意味が無く今回は省略した。
プリンタはキヤノン「PIXUS Pro-10S」+純正専用光沢用紙 50枚セット「GL-101A450」
キヤノン「PIXUS Pro-10S」の最大の特徴は、A3ノビ対応で10色の顔料系インクを搭載していることだ。ここ数年、ビジネス用でインクが基本C/M/Y/Kの複合機ばかり評価してきた上、個人的にもプリントしなくなったので、フォトクオリティの上位モデルがここまで進化しているとは驚いた。
10色中C/M/Y/PC/PM/Rまでは普通(Redがある。これも凄そう)だが、3色がマットブラック(MBK)、フォトブラック(PBK)、グレー(GY)の黒系インクを搭載。特にモノクロプリントで威力を発揮する。加えて透明インク(CO)を使った「クロマオプティマイザー」で、暗部表現が向上。普通ならベタ塗りになりそうな暗部の表現が得意そうだ。
さらにに色を表現するのに最適な組み合わせを選択し、打ち出すインク滴の配置を決定する「OIG System」、インク吐出量を1/1,000秒単位でコントロールする「リアルタイム駆動制御」など、さまざまな技術を駆使してフォトクオリティを向上させている。
同クラスでは「PIXUS Pro-100S」があるが、こちらは全て染料系のインクだ。ただし10色ではなく、C/M/Y/PC/PM/BK/GY/LGYの8色となる。グレー系が3色になっているのが特徴的。
マウス「MDV for Photo / MDV-QX7000S-DP-PP」のセットになっている顔料系「PIXUS Pro-10S」の主な仕様は以下の通り。
キヤノン「PIXUS Pro-10S」の仕様 | |
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最高解像度(dpi) | 4,800×2,400dpi(横×縦) |
インク滴サイズ(最小) | 全弾4pl |
プリントヘッド | C/M/Y/PC/PM/R/MBK/PBK/GY/CO×各768ノズル、計7,680ノズル |
対応インクタンク | PGI-73C/PGI-73M/PGI-73Y/PGI-73PC/PGI-73PM/PGI-73R/PGI-73MBK/PGI-73PBK/PGI-73GY/PGI-73CO |
マージン | フチなし/上下左右:0mm。フチあり/上端:3mm、下端:5mm、左右:各3.4mm(レター/リーガルは左:6.4mm、右:6.3mm)。ファインアート紙は上/下端:各30mm |
給紙方式 | 後トレイ、手差しトレイ |
給紙可能枚数 | 普通紙150枚(後トレイ)、郵便はがき40枚(後トレイ) |
用紙サイズ | A3ノビ~A5、レター、リーガル、はがき(郵便はがき、インクジェット郵便はがき、当社純正はがき)、郵便往復はがき |
BD/DVD/CDレーベルプリント | 12cmメディア(プリンタブルディスク)対応 |
インターフェイス | IEEE 802.11b/g/n、100BASE-TX/10BASE-T(Wi-Fiと有線LANは同時使用不可)、USB 2.0 |
サイズ/重量 | 約689×385×215mm(同、トレイ類を含まず)/約20.0kg |
最高解像度は4,800×2,400dpi(横×縦)。最小インク滴サイズは全弾4pl。全弾と態々書いてあるのところからも気合が分かる。プリンタヘッドは、C/M/Y/PC/PM/R/MBK/PBK/GY/COで各768ノズルの計7,680ノズル。対応インクタンクはPGI-73C/PGI-73M/PGI-73Y/PGI-73PC/PGI-73PM/PGI-73R/PGI-73MBK/PGI-73PBK/PGI-73GY/PGI-73CO。先に書いたように全て顔料系だ。
給紙方式は後トレイと手差しトレイ。後ろトレイは普通紙で150枚、手差しトレイは郵便はがきで40枚給紙可能だ。用紙サイズは最大A3ノビ。12cmメディアのBD/DVD/CDレーベルプリントにも対応する。
インターフェイスはIEEE 802.11b/g/n、100BASE-TX/10BASE-T、USB 2.0。ただしWi-Fiと有線LANは同時使用できない。またメディアスロットなどはなく、複合機のように本体だけでプリントすることはできないが、カメラを接続して直接プリントできるPictBridgeには対応している。
サイズは約689×385×215mm(幅×奥行き×高さ、トレイ類を含まず)、重量約20.0kg。流石にA3ノビ対応機だけあってサイズも重量もかなりある。単体の価格はAmazon.co.jpで59,240円だった。
マットブラックの筐体は、見た目の印象こそPIXUSなのだが、A3ノビ対応なので、とにかく大きく加えて重量約20kgは重い。いつも物撮りに使っている撮影台の幅ギリギリで、台に上げたり下ろしたり、向きを変えたりするのは一苦労だった。とは言え、これはレビューの特殊事情。一度設置すると滅多に移動させないので問題にはならないだろう。
操作系はシンプルで、フロント右側に電源ボタン、インク交換/リセットの単、Wi-Fiボタン、PictBridgeが並んでいるだけ。背面は左側に凹んだ部分に、USBとEthernetコネクタ、逆側に電源コネクタがある。後ろトレイのさらに後ろ(背面)に手差しトレイがある。
今回接続はUSB接続で行なった。また経験上、有線のEthernetはいいが、Wi-Fi接続は、電波の状態でデータ転送が不安定になりプリントデータがなかなか送れないことがあるので、出来ればUSBにしてEthernetにしろ、有線接続をお勧めしたい。特にA3ノビともなると結構なデータ量なのでなおさらだ。
ドライバ関連はインストール済みなので設定自体は非常に簡単。ケーブルさえ接続すれば、自動的に認識され、READY状態となる。
このクラスの写真印刷は、キヤノンのユーティリティ系は使わないと思うので、ドライバのパネルだけを掲載した。キヤノン PRO-10S seriesプロパティ/クイック設定で写真印刷、フチの有無、用紙の種類、サイズ/向き、給紙方法を選べば設定は完了だ。
この時、基本設定の色/濃度は「マニュアル調整」にして、マッチングをICMにした方が良い。自動やドライバ補正では思わぬ補正がかかりイメージした色にならない場合があるからだ。
何枚かA4カラーでプリントしたが、フチありで給紙から排紙まで約4分。基本的にクオリティ優先なので、ビジネス用の複合機と比較するとそれなにり時間がかかる。画質はさすがと言ったところ。作動音は起動時だけ結構ガチャガチャ音がするものの、プリント自体は静かだった。
色評価用蛍光灯スタンド「Z-208-EIZO」
「Z-208-EIZO」は直管形蛍光灯FL20SN-EDLを使った色温度5,000Kで20W蛍光灯だ。普通の蛍光灯は色温度が違ったりグリーン被りする。また白熱灯だと色温度が極端に低く、色を評価(見る)するには向かない光源だが、これを使えばなかり正確に評価できる。ただ20Wなのであまり明るいわけではない。蛍光灯自体が少し特殊なだけで、スタンドなどは一般的なものと同じだ。
余談になるが筆者の作業場も一応同様の蛍光灯を天井に仕込み、それを光源にして、掲載している写真を撮影している。ただ喫煙するので、気を抜くと黄色くなってしまうのは仕方ないところ(笑)。
「Z-208-EIZO」の仕様 | |
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付属蛍光管 | 直管形蛍光灯FL20SN-EDL(20W/5,000K) |
カラー | ブラック |
重量 | 1.8 kg |
全光束 | 1587lm |
消費電力 | 19.5W(100V時) |
クランプ取付け可能厚 | 55mm |
蛍光管寿命 | 7,500時間(蛍光管の交換可能) |
以上のようにマウス「MDV for Photo / MDV-QX7000S-DP-PP」は、PC単独としてもかなり高性能なマシンであるが、セット内容もそれに相応しい構成になっている。加えて、全てのキャリブレーションが取れているので、ドライバなどのソフトウェアのインストールも不要で、設置した瞬間から気持ちよく使うことが可能だ。
トータル価格はそれなりになってしまうものの、本格的にそしてストレス無く、写真を扱いたいユーザーにお勧めのセットと言えよう。