西川和久の不定期コラム
マウス「MDV for Photo/MDV-QX7000S-DP-PP(本体編)」
~キャリブレーション対応液晶&広色域印刷対応プリンタセットの写真家向け機
(2015/4/1 06:00)
マウスコンピューターは2月10日、プロ写真家の利用を想定したデスクトップPC「MDV For Photo」を発表、2月23日から販売を開始した。
Lightroom 5をプリインストールした上で、プロセッサやメモリなどの違いで3モデル、さらにキャリブレーション済みの液晶ディスプレイ、プリンタ、色評価用蛍光灯スタンドなどを含むセットモデルが各々用意されている。今回は最上位モデル一式が送られてきたので、本体編とセット内容編、2回に分けてご紹介したい。
プロ写真家の利用を想定したデスクトップPC
発表があったのは、Core i5-4460搭載モデル(129,000円~)、Core i7-4790K+Geforce GTX 750(179,000円~)、Core i7-5820K+Quadro K620(269,000円~)の3モデル(税別)。またそれぞれのモデルにランクがあり、メモリやストレージなどが異なっている。カスタマイズはプロセッサ、メモリ、ストレージ、GPUなど、ほぼ全て可能だ。
PC単体での購入もできるが、セットの場合、その内容が凄まじく、EIZOのキャリブレーション対応液晶ディスプレイ「CX241-CNX」、CX241用遮光フード「CH7」、色評価用蛍光灯スタンド「Z-208-EIZO」、広色域印刷対応プリンタ「Canon Pro-10S」、キヤノン純正専用光沢用紙 50枚セット「GL-101A450」。加えてそれぞれのハードがカラーキャリブレーションを施した状態で出荷される。
コンセプト的には「プロ写真家の利用を想定」となっているが、キャリブレーションも含め、プロなら自分で機材を選び、設定もするので、どちらかと言うと、ハイアマ層をターゲットにしているように思えなくもない。
今回届いたのは、その中でもハイエンド、Core i7-5820K、メモリ64GB、Quadro K2200D(4GB)、SSD+HDDのモデル「MDV-QX7000S-DP」にセットが加わった「MDV-QX7000S-DP-PP」となる。主な仕様は以下の通り。
【表】「MDV for Photo / MDV-QX7000S-DP-PP」の仕様 | |
---|---|
CPU | Core i7-5820K(6コア12スレッド、3.3GHz、Turbo Boost:3.6GHz、15MB、TDP 140W) |
チップセット | Intel X99 |
メモリ | 64GB PC4-17000(8GB×8/クアッドチャネル、空き0) |
ストレージ | SSD 480GB(Intel 530シリーズ)、HDD 3TB(7,200rpm) |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
OS | Windows 8.1 Pro Update(64bit) |
グラフィックス | Quadro K2200(4GB)、DisplayPort×2、DVI×1 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet |
その他 | PS2×2、USB 2.0(背面×2)、USB 3.0(背面×8、前面×2)、音声入出力、S/PDIF出力(オプティカル/角形)×1、マルチカードリーダ、USB 3.0接続高速カードリーダ |
拡張スロット | PCI Express x16×2(空き1)、同x8×2(空き2)、同x1×2(空き1) |
ストレージベイ | 5インチオープンベイ×3(空き0)、3.5インチシャドウ×6(空き4)、3.5インチHDD用リムーバブルベイ×1 |
電源 | 700W(80PLUS GOLD) |
その他 | Adobe Photoshop Lightroom 5(64bit版)プリインストール |
サイズ/重量 | 190×490×410mm(幅×奥行き×高さ)/約12.5kg |
価格(本体のみ) | 379,000円(税別) |
価格(セット) | 589,000円(税別) ※キャリブレーション対応液晶ディスプレイ「EIZO CX241-CNX」、CX241用遮光フード「CH7」、色評価用蛍光灯スタンド「Z-208-EIZO」、広色域印刷対応プリンタ「Canon Pro-10S」、キヤノン純正専用光沢用紙 50枚セット「GL-101A450」込み |
プロセッサはCore i7-5820K。6コア12スレッドでクロックは3.3GHzから最大3.6GHz。キャッシュは15MB、TDPは140Wだ。末尾がKなのでオーバークロック対応のSKUだが、本機はオーバークロック自体は売りにしていない。チップセットはIntel X99。メモリはクアッドチャネルでPC4-17000の8GBを8枚、計64GB搭載している。OSは64bit版のWindows 8.1 Pro Update。
少し前に発表があった、キヤノンの「EOS 5Ds(R)」の約5,060万画素クラスのRAW現像をバッチ処理するのであれば、ハイエンドのプロセッサにメモリは大量………と言うのも分からなくもないが、一般的(?)な2,000万画素クラスだと、少し大げさなような気もするスペックだ。もちろん速いは正義だが、ハイアマ層なら同シリーズの中位/下位モデルも十分視野に入ると思われる。
ストレージはSSD 480GB(Intel 530シリーズ)とHDD 3TB(7,200rpm)。ただしHDDは前面にある着脱式リムーバブルベイではなく、本体内のドライブベイに入っている。SSDはOSとソフトウェア中心となるが、480GBもあればおそらく余るので、HDDの3TBはデータ専用。そうなるとはじめから前面の着脱式リムーバブルベイにあっても良さそうだ。
光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブ。逆にここは書き込み容量を考えるとBDドライブが欲しいところか。
プロセッサにグラフィックスを内蔵していないため何らかのGPUが必要。本機ではQuadro K2200(4GB)を搭載している。Quadroとしてはミドルレンジになるが、単体で最大4画面出力及びQFHD(3,840×2,160ドット)超高解像度出力に対応、30bitカラー出力対応など、写真用としては十分な性能を持っている。出力ポートはDisplayProt×2、DVI×1。
インターフェイスは、Gigabit Ethernet、PS2×2、USB 2.0(背面×2)、USB 3.0(背面×8、前面×2)、音声入出力、S/PDIF出力(オプティカル/角形)×1、マルチカードリーダ、USB 3.0接続高速カードリーダ。標準のマルチカードリーダに加え、USB 3.0接続高速カードリーダを搭載しているのはありがたい。
拡張スロットは、PCI Express x16×2(空き1)、同x8×2(空き2)、同x1×2(空き1)。ストレージベイは、5インチオープンベイ×3(空き0)、3.5インチシャドウ×6(空き4)、前面3.5インチHDD用リムーバブルベイ×1。先に書いたように、データ用として、前面3.5インチHDD用リムーバブルベイがあるのが特徴的だ。ただし、標準ではHDDがセットされておらず別途用意する必要がある。またホットプラグには非対応だ。
電源は80PLUS GOLDの700W。サイズは190×490×410mm(幅×奥行き×高さ)、重量約12.5kg。この辺りは割とクラスとしては平均的だろうか。
価格はこの構成で379,000円(税別)。Core i7-5820K、64GB、Quadro K2200、SSD 480GB+HDD 3TBなのだから、驚くほど高価でもない。
筐体はある意味普通のタワー型。ほぼ黒一色で机の上に置くにしても、下に置くにしても気にならないデザインだ。
前面にはコネクタなどを隠すパネルはなく、上からDVDスーパーマルチドライブ、3.5インチHDD用リムーバブルベイ、USB 3.0接続高速カードリーダ、音声入出力、USB 3.0×2、マルチカードリーダと並んでいる。背面は、USB 2.0×2、PS2×1、USB 3.0×8、Gigabit Ethernet、音声入出力と、Quadro K2200のDisplayProt×2、DVI×1、そして電源コネクタ。
特徴的なのは既にご紹介した通り、前面に3.5インチHDD用リムーバブルベイとUSB 3.0接続高速カードリーダがあること。RAWデータが巨大化している昨今、読み込みが速く、多くのデータを保管、いっぱいになったら簡単にドライブ交換できるのは非常に便利だ。
余談になるが筆者のシステムも昔からデータ保存用のドライブは着脱可能な外付けHDDで、IEEE 1394接続を経て今はUSB 3.0接続となっている(途中ドライブもIDEからSATAに変わった)。交換するドライブはその時点で1万円ほどのHDDを選んでいる関係もあり、年を増すごとに大容量化している。こうしてもう10年以上になるが、基本的に納品後の写真は、二度と開かないため、何十台ものドライブが眠ったままだ(笑)。
内部はQuadro K2200が薄型で1レーンしか占有しないため、意外とスッキリしている。CPUクーラーには「Cooler Master」が使われていた。左右にメモリスロットが4本ずつあり、8GB×8枚が装着済み。ドライブベイも一番下4つに関しては、サイドから簡単にアクセスできるタイプなので、メンテナンスも容易だ。
発熱と振動に関しては気にならなかったが、ノイズはファンの音がそれなりにする。机の上に置くと少し耳に付くレベルだ。この手の作業は夜中することも多いので、できれば標準で静音になっていれば嬉しかった(カスタマイズで水冷CPUクーラーを選択可能)。
写真処理用だけではあり余る超高性能
OSは64bit版のWindows 8.1 Pro Update。スタート画面は楽天Gateway以降がプリインストールとなる。デスクトップは、セットモデルなので、ディスプレイやプリンタなど、関連ドライバやツールがインストール済みの状態で結構賑やかだ。高速なプロセッサ、大量なメモリ、そしてSSDと言うゴージャスな構成なので、何をしても呆れるほど速い。
SSDは基本的に1パーティションでC:ドライブに約431GBが割当てられ空きは352GB。L:ドライブは3TBのHDDで約2,794GBが未使用の状態になっている。SSDは「Intel 530シリーズ」、HDDは3TB/7,200rpmの「ST3000DM001」が使われていた。DVDスーパーマルチドライブは「HL-DT-ST DVDRAM GH24NSC0」。
Gigabit EthernetはIntel製、Wi-FiやBluetoothは非搭載。そのほかのデバイスも含め、スペックから分からないものは特に搭載していない。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリが、「Fresh Paint」、「Hulu」、「LINE」、「NAVITIME」、「R25 for Windows8」、「Yahoo!天気・災害」、「じゃらん」、「ホットペッパーグルメ」、「ムビチケ」、「楽天gateway」など、本機固有のものはなく、同社いつものパターンとなっている。
デスクトップアプリは、「Adobe Photoshop Lightroom 5」、「AOSBOX for mouse」、「CANON iMAGE GATEWAY」、「Canon PRO-10S series」、「Canon Utilities」、「CyberLink Media Suite」、「CyberLink PhotoDirector 4」、「EIZO ColorNavigator 6」、Intel系ツール、NVIDIA系ツール、「マカフィーインターネットセキュリティ」など。
Adobe Photoshop Lightroom 5と、セットのCanon系とEIZO系のソフトウェアがインストール済みとなっている。これらの詳細は後編で掲載する予定だ。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、ディスクリートGPU搭載機なので3DMarkの結果を見たい。CrystalMark(6コア12スレッドなので条件的には問題があり参考まで)の値も掲載した。
winsat formalの結果は、総合 7.8。プロセッサ 8.7、メモリ 8.7、グラフィックス 7.8、ゲーム用グラフィックス 7.8、プライマリハードディスク 8.1。PCMark 8 バージョン2は4052。3DMarkはIce Storm 132891、Cloud Gate 19367、Fire Strike 3937。CrystalMarkは、ALU 81511、FPU 74209、MEM 132726、HDD 42621、GDI 20176、D2D 17319、OGL 118126。
ご覧のようにかなりの高性能だ。本来Quadro K2200はゲーム用ではないものの、それでも3DMarkの結果はなかなか。しかしQuadro K2200をもってしてもグラフィックスは8に届かない。winsat formalの結果全て8以上にするにはGPUを何にすればいいのだろうか(笑)。
以上のようにマウス「MDV for Photo / MDV-QX7000S-DP-PP」は、PC単独(MDV-QX7000S-DPと同じ)として見た場合も、Core i7-5820K、メモリ64GB、Quadro K2200D(4GB)、SSD 480GB+HDD 3TBと、RAW現像中心で写真を扱うにしても「やり過ぎでは!?」感がある超高性能モデルだ。3モデル間の性能や価格の幅が広く、具体的な用途や予算に応じて選べば良いだろう。
後編で紹介するセット内容物は、それぞれ単独レビューできるほどの機種だが、使い勝手など運用面を中心にご紹介したい。