西川和久の不定期コラム

マイクロソフト「Surface Pro 2」

~Haswellになって大幅にバッテリ駆動時間が向上!

Surface Pro 2

 日本マイクロソフト株式会社は10月24日、Surface Pro 2とSurface 2、そしてその周辺機器を一斉に発表した。初代のSurface ProとSurface RTは、他国から随分遅れての国内投入だったが、今回はほぼ同時のタイミングとなる。編集部からSurface Pro 2が送られて来たので試用レポートをお届けする。

Haswellそしてメモリ8GB搭載モデルも用意されより実用的に

 初代Surface Proは、Core i5-3317U(2コア/4スレッド、クロック 1.6GHz/Turbo Boost:2.6GHz、キャッシュ 3MB、TDP 17W)と、Ivy Bridgeを搭載していたが、Surface Pro 2のプロセッサはCore i5-4200UとHaswell世代に切り替わった。これによってバッテリ駆動時間の向上が期待できる。数値の上では、2コア/4スレッドでクロックは1.6GHz。Turbo Boost時に2.6GHz、キャッシュは3MB、TDPは15W。TDP以外はCore i5-3317Uと変わらない。

 メモリは、下位モデルのSSD 128GBモデルは4GB、SSDが256/512GBの中位/上位モデルは8GB搭載している。タブレットはメモリ4GB固定が多い中、中位/上位の8GBは、よりメモリを必要とするユーザーにとって魅力的だろう。ただし増設は非対応。OSは64bit版のWindows 8.1 Proだ。

 グラフィックスは、正式な仕様表には公開されていないが、CPU内蔵のIntel HD Graphics 4400。Mini DisplayPortを搭載し、最大3,840×2,160ドットにまで対応している。

 ディスプレイは、10点タッチ対応IPS式の10.6型液晶ディスプレイ(光沢)。解像度は1,920×1,080ドット(フルHD)だ。1,024段階の筆圧対応デジタイザにも対応し、付属のペン(電磁誘導式)で手書き入力も可能だ。

 ネットワークは、IEEE 802.11a/b/g/n無線LAN、Bluetooth 4.0。その他インターフェイスは、USB 3.0×1、microSDカードスロット、マイク、ステレオミニジャック、ステレオスピーカー、前面/背面それぞれに720p HD LifeCam、カバー端子。Webカメラに関しては、Skypeなどでビデオチャットをする時、低照度でも綺麗に映るよう改善されている。センサーは、環境光センサー、加速度センサー、ジャイロ、地磁気センサー。

 サイズは275×173×13.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約907g(本体のみ)。Surface Proの高さが14mmだったので若干薄くなったものの、ほぼ同じだ。バッテリ駆動時間は、従来機より最大75%アップとされている。Surface Proは最大約4時間だったので、計算上は7時間へ伸び、大きなウィークポイントが改善されたことになる。この点については、後半のベンチマークテストで検証してみたい。

 価格は順に、99,800円(4GB/128GBモデル)、129,800円(8GB/256GBモデル)、179,800円(8GB/512GBモデル)。下位/中位モデルは10月25日発売、上位モデルのみ11月1日発売となる。

「Surface Pro 2」の仕様
プロセッサCore i5-4200U
(2コア/4スレッド、
クロック 1.6GHz/Turbo Boost:2.6GHz、
キャッシュ 3MB、TDP 15W)
メモリ4GB/8GB
ストレージ128GB/256GB/512GB
OSWindows 8.1 Pro(64bit)
グラフィックスCPU内蔵Intel HD Graphics 4400
ディスプレイIPS式10.6型液晶ディスプレイ(光沢)、
1,920×1,080ドット(フルHD/206ppi)、10点タッチ対応、
1,024段階の筆圧対応デジタイザ、
Mini DisplayPort
ネットワークIEEE 802.11a/b/g/n無線LAN、
Bluetooth 4.0
インターフェイスUSB 3.0×1、microSDカードスロット
、マイク、ステレオミニジャック、
ステレオスピーカー、720p HD LifeCam(前面/背面)、
カバー端子
センサー環境光センサー、加速度センサー、
ジャイロ、地磁気センサー
サイズ/重量275×173×13.5mm
(幅×奥行き×高さ)/
約907g(本体のみ)
バッテリ駆動時間従来機より最大75%アップ
その他Office Home and Business 2013標準搭載、
ペン(電磁誘導式)付属
価格99,800円(4GB/128GBモデル)
※129,800円(8GB/256GBモデル)、179,800円(8GB/512GBモデル)

 10月24日、周辺機器も一斉に発表された。まずキーボードバックライトを搭載した、「Touch Cover 2」(11,980円)と「Type Cover 2」(12,800円)。近づくと自動的にバックライトが光る仕掛けになっている。Touch Cover 2に関しては、前モデルが80個のセンサーだったのに対して、1,092個と大幅に増え、感知ミスがないように改善された。

 また前モデルではTouch Coverのみカラーバリエーションを用意したが、今回は逆となり、Touch Cover 2はブラックのみ、Type Cover 2はピンク/ブラック/パープル/シアンと4種類用意している。発表会での発言によると、Type Coverのカラーバリエーションが欲しいと言うユーザーの声に答えた結果だそうだ。

 そのほかには、USB 2.0×3、USB 3.0×1、Mini Display Port、Ethernet、オーディオ入出力、充電端子を備える「ドッキングステーション」(19,980円)、「カーチャージャー」(5,480円)、「Arc Touch Mouse Surface edition」(6,980円)、両Coverをワイヤレス対応(Bluetooth)にする「ワイヤレスアダプター」(4,980円)、そしてキーボード側にバッテリを搭載し最大50%アップする「パワーカバー」(価格未定)……と、Surfaceの用途が広がるアクセサリ群が追加された。初代モデルに関してもコネクタ部分は、新モデルと相互に互換性があり使用可能だ。

 ただし、ドッキングステーションはSurface Pro/Pro 2用。またUSB 3.0なら転送速度的にGigabit Ethernetも対応可能だが、有線LANが100BASE-TX止まりなのは残念なところ。

 なお、初代の「Surface RT」は「Surface」に名前が変更になった上で34,800円から。同じく初代の「Surface Pro」は12月末までの期間限定で79,800円からと併売される。

前面。中央上に720p HD LifeCam、中央下にWindowsボタン
右/下面。右側面にmicroSDカードスロット、電源コネクタ、Mini DisplayPort。下側面中央にカバー端子。スピーカーはこのスリット部分に埋め込まれている
左/上面。左側面にヘッドフォン出力、音量±ボタン、USB 3.0。上側面右側に電源ボタン
背面とキックスタンド(チルト24度時)。背面中央上に720p HD LifeCam。このチルト角度は従来機と同じ
キックスタンド(チルト40度時)。新たにチルト40度が加わり2段式となった。膝上などで扱うときに見やすい
ACアダプタ。約95×50×30mm(同)/207g。コネクタは一見メガネタイプに見えるが独自仕様。またケーブル側の側面に充電用のUSBポートを1つ備えている
Touch Cover 2。サイズ/重量は約188×280×2.5mm(同)/重量約190g。感圧式のためクリック感のないキーボード。従来モデルは80個のセンサーだったが、新型では1,092個のセンサーと大幅に増えた。実際入力すると驚くほど良くなっている
Touch Cover 2と合体。Type Coverはカラーバリエーションがあったが、Type Cover 2ではこのブラックのみ
Type Cover 2のバックライト。キーボードバックライトを搭載しているので暗い場所でも入力し易い。近づくと自動的に光る
Type Cover 2。サイズ/重量は約188×277×5.0mm(同)/重量約255g。メカニカル式のキーボードを搭載している。従来モデルと比較してクリック感などが良くなった
Type Cover 2と合体。厚みは若干薄くなり、またキーボードを両端で持って捻っても従来モデルより曲がらなく丈夫になった
ワイヤレスアダプタ。サイズ/重量は約227×20×13mm(同、突起部含む)/75g。Type Cover 2やTouch Cover 2に装着して、Bluetoothキーボードにするアダプタだ。従来モデルでも機能する。USB充電用のケーブルも付属

 筐体は初代Surface Pro同様、「VaporMg」が使われ、非常にソリッドで質感も良い。ただ重量約907gは、所有しているSurface(旧Surface RT)の680gと比較すると、ズッシリ重く感じる。

 各ポートの並びもSurface Proと全く同じで、右側面にmicroSDカードスロット、電源コネクタ、Mini DisplayPort。左側面にヘッドフォン出力、音量±ボタン、USB 3.0。本体下部中央にはカバー端子、本体上部右側に電源ボタンがある。

 変更があったのはキックスタンドだ。従来はチルト24度だけだったが、膝上などで見やすいようチルト40度も追加され2段階となった。ノートPCのように、液晶パネル部分とキーボード部分がヒンジでガッチリ固定されているわけではないので、薄いTouch CoverやType Coverと共に膝の上に乗せると、イマイチ安定感はないものの、それでもチルト40度が加わったのはポイントが高い。

 細かい点としては、Surface ProとSurfaceは、キックスタンドの部分に、Windowsロゴが描かれていたが、Surface Pro 2とSurface 2は、Surfaceロゴに変更されている。

 IPS式の10.6型液晶パネルのクオリティは非常に高く、明るさ、発色、コントラスト、全てにおいて良好だ。10点タッチの反応も良い。ただ個人差もあるだろうが、このサイズでフルHDとなると、Windowsストアアプリはいいのだが、デスクトップアプリは、若干細か過ぎる気がしないでもない(「画面の解像度/テキストやその他項目の大きさの変更」で調整可能。デフォルトは大)。付属のペン(電磁誘導式)はズレもなく快適だ。

 サウンドは、筐体のサイズを考えるとクオリティも高く、最大出力もそれなりにある。外付けのスピーカーなどがなくても音楽や動画を楽しむことが可能だろう。側面のスリット部分にスピーカーが仕込まれているので、音が前方に周り込み難い。オプションのドッキングステーションの左右が囲まれているのもこれが理由だと思われる。

 発熱は、ベンチマークテストなどCPUに負荷をかけると背面の右側が少し暖かくなるものの、ノイズは、振動も含め、さすがにHaswellそしてTDP 15Wだけあって、十分抑えられ、試用した範囲では全く気にならなかった。

Surface(旧Surface RT/下)との2ショット。フットプリントはほぼ同じでも高さ(厚み/4.5mm差)が結構違う
Type Coverの旧型(左)と新型(右)。旧型はパームレストなどがレザー調で、タッチパッドはメカニカルだが、新型はパームレストはマット調で、タッチパッドはマット調かつ感圧式なのが分かる
Type Cover 2へワイヤレスアダプターを付けたところ。カバー端子を使ってBluetooth接続にするアダプタ。磁石でTouch CoverやType Coverと固定する

BBenchでバッテリ駆動時間9時間越え

 OSは64bit版Windows 8.1 Pro。メモリは4GBだが、ストレージにSK Hynix製のSSD、「HFS128G3AMNB-2200A」(128GB)が使われていることもあり、体感的には結構高速に動作する。

 C:ドライブのみの1パーティションで約113GBが割り当てられ、空きは約96GB。あまり余裕がないものの、microSDカードやクラウドへデータを逃がすなど、運用面である程度はカバーできるだろう。

 スタート画面は2画面。「Fresh Paint」以降が、プリインストールアプリとなる。初期起動時のデスクトップは、素のWindows 8.1そのもの。

 Wi-FiとBluetoothモジュールは、どちらもMarvell「Avastar」が使われていた。またWindows UpdateではLANドライバとして、ASIX「AX88772 USB 2.0 to Fast Ethernet Adapater」が含まれていた。おそらくオプションの「イーサネット アダプター」や「ドッキングステーション」に使用していると思われる。

 残念な点としては、スリープ時にメールやWindows Updateの受信をしたり、時刻になったらアラームを鳴らすことができる「InstantGo」に非対応なことだ。ドライバなどかなり細かい部分をチューニングしないとできないこの機能、Surface/Surface 2は対応しているだけに、後からでもいいので実現して欲しいと思う。

スタート画面1。Windows 8.1標準
スタート画面2。「Fresh Paint」以降がプリインストールアプリ
起動時のデスクトップ。素のWindows 8.1そのもの
デバイスマネージャ/主要なデバイス。SSDはSK Hynix製のHFS128G3AMNB-2200A(128GB)。Wi-FiとBluetoothモジュールは、どちらもMarvell Avastar
HDDのパーティション。C:ドライブのみの1パーティション。約113GBが割り当てられている

 プリインストール済のソフトウェアは、Windowsストアアプリは「Fresh Paint」、「OneNote」(Windowsストアアプリ版)、「Skype WiFi」。

 Surface 2及びPro 2は、SkyDrive 200GBを2年間無料に加え、Skypeの世界61カ国固定電話かけ放題とSkype WiFiが1年間使い放題になっている。その関係もあり、WindowsストアアプリのSkype WiFiがプリインストールされている。

アプリ画面1
アプリ画面2
初期起動時のWindows Update(1/2)
初期起動時のWindows Update(2/2)
Bluetoothでワイヤレスアダプターをペアリング

 デスクトップアプリは、「Office Home and Business 2013」。ただし、Surfaceと違い、未セットアップ状態で、パッケージに同梱されているキーを使ってユーザーがインストールする必要がある。いずれにしても素のWindows 8.1にかなり近い構成だ。余計なもののは一切入っておらず、リソースをセーブできる。

画面の解像度/テキストやその他項目の大きさの変更。デフォルトは大
付属のペン(電磁誘導式)を使って「Fresh Paint」で色塗り
Surface/Surface 2のC:ドライブは、BitLocker有効だったが、Surface Pro 2は無効となっている

 ベンチマークテストはWindows 8.1からWindows エクスペリエンス インデックスがなくなったため同等の結果が得られる、「winsat formal」コマンドを実行後、C:\Windows\Performance\WinSAT\DataStoreの下に収納されているxxxx-xx-xx xx.xx.xx.xxx Formal.Assessment (Recent).WinSATの情報掲載する。

 PCMark 7は既にWindows 8.1にも対応したPCMark 8があるものの、スコアの互換性がないため、当面は7のまま様子をみたい。バッテリ駆動時間テストは従来通りとBBench。またCrystalMarkの結果も掲載した(今回は2コア/4スレッドと条件的には問題ない)。

 winsat formalの結果は、総合 5.3。プロセッサ 7.3、メモリ 5.9、グラフィックス 5.9、ゲーム用グラフィックス 5.3、プライマリハードディスク 8.15。PCMark 7は5041 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 37568、FPU 36385、MEM 41894、HDD 39513、GDI 15074、D2D 7373、OGL 11138。

 若干メモリのスコアが低いのは気になるものの、プロセッサとストレージが速く全体を引っ張っている。PCMark 7のスコアが高いのもストレージ性能からだ。

 BBenchはTouch Cover 2接続、省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残0%で36,361秒/10.1時間。

 バッテリの残10%でも35,608秒/9.9時間。何と9時間超えと予想時間の7時間を大きく上回った。キーボードにバッテリを内蔵したパワーカバーを使えば、さらにバッテリ駆動時間を延ばせる。ARMを搭載したタブレット並みだ。これなら1日持ち歩いても十分使うことが出来るだろう。

winsat formalコマンドの実行結果。プロセッサ 7.3、メモリ 5.9、グラフィックス 5.9、ゲーム用グラフィックス 5.3、プライマリハードディスク 8.15
PCMark 7の結果。5041 PCMarks
BBenchの結果。Touch Cover 2接続、省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残10%で35,608秒/9.9時間
CrystalMarkの結果。ALU 37568、FPU 36385、MEM 41894、HDD 39513、GDI 15074、D2D 7373、OGL 11138

 以上のようにMicrosoft Surface Pro 2は、一見、初代のSurface Proと変わらないものの、CPUがHaswellになり、大幅にバッテリ駆動時間が向上した。InstantGoに非対応なのは残念だが、角度が2段階になったキックスタンドはより便利に、バックライトを搭載したTouch Cover 2/Type Cover 2、そしてドッキングステーションなど周辺機も出揃い、欠点らしい欠点もなくなりこれからが本領発揮と言ったところか。

 さらにストレージが256GBと512GBモデルに関してはメモリ8GB搭載と、4GB固定のタブレットが多い中、よりメモリを必要とするアプリケーションを動かしたいユーザーにとっては魅力的な存在となる。

 発表会場で、タブレットを買うか、ノートPCを買うか「どちらか迷ったらSurfaceを」と、同社樋口社長の言葉通り、次のWindowsマシンをどうするか考え中の人にお勧めの1台と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/