西川和久の不定期コラム

アップル「iOS 5.1」
~目玉は、Siriの日本語対応とバッテリ駆動時間の向上



 3月はWindows 8 Consumer Previewや新型iPadなど、大物の登場が多く、ちょっと遅くなってしまったが、日本時間の3月8日にリリースされたiOS 5.1の新機能などをまとめてみたい。


●iOS 5.1の新機能

 既にリリースされてからそれなりの日数が経っているので、アップデートされた方も多いのではないだろうか。当初、OTAによるアップデートを行なうと、場合によってはループになってしまう(起動を繰り返す)バグがあり、友人も運悪くこれに当たってしまったようだが、筆者は問題無くiPhone 4/4S、iPad 2全てアップデートできた。

 ただリリースされてから時間が経てば経つほど、アクセスが集中してダウンロードが遅くなり、加えてアプリも一斉にiOS 5.1対応をはじめ、無事アップデートが終わっても次はアプリ更新の連打。こちらもかなり遅く、結局早朝から始めた作業が3台分全て終わったのは昼過ぎとなってしまった。

 さて、今回のアップデートは大きく分けて、カメラ関係、音関連、バッテリ、まだ日本では始まっていないiTunes Match関係、KDDI固有、そしてSiriの日本語対応となる。アップデート時に表示された内容は以下の通り。

・Siriの日本語サポート
・フォトストリームからの写真削除が可能
・ロック画面にカメラのショートカットが常時表示
・カメラの顔検出機能で検出されたすべての人がハイライト
・iPad用のカメラAppの再設計
・iTunes Match登録者用のGenius MixとGeniusプレイリスト
・iPadのテレビ番組と映画のオーディオがより大きく明瞭に聴こえるように最適化
・再生速度の変更と30秒の巻き戻しが可能なiPad用のPodcastコントロール
・KDDI登録者向けのFaceTimeおよびiMessageのサポート
・バッテリの寿命に影響するバグを解決
・発信側の音声が途切れることがある問題を修正

 カメラ関係は随分良くなった。まずロック画面にカメラのショートカットが表示され、上にスライドすると即カメラが起動する。以前からロック画面中、ホームボタンを2回押しして起動、[+]ボリュームでシャッターが切れるようになっていたこともあり、これによってワンアクション減り、ほとんどコンパクトカメラの電源ON→シャッターを切る動作と変わらなくなった。

 実際筆者は、仕事で一眼レフを使う以外、普段のスナップは全てiPhoneで済ませている。iPhone 4以降はカメラの画質も向上し、普段使いには十分な上、アプリやWebサービスを使って写真を加工、即Facebookなどへアップロードもできるので、ネットに接続出来ない一般的なコンパクトカメラより便利なケースが多い。

 さらにWi-Fi接続時、自動的に撮った写真をアップロードそして同期するフォトストリームも便利だったが、撮った写真は、失敗したカット、HDR ONの時、オリジナルそしてHDR処理画像など、何でも全てアップロードされ、ユーザーからは削除することが出来なかった。以前指摘したように、これが唯一の欠点だったが、今回iOS 5.1で削除可能となり、一気に実用性が高くなったと言えるだろう。

 顔認識については、筆者の場合は指でタップした方が速いので、使ったことが無いものの、あれば便利な機能。今回のアップデートで、顔として認識している部分全てにグリーンの枠が表示されるようになった。

ロック画面にあるカメラへのショートカット。上にスライドするとカメラアプリが即起動するフォトストリームから写真を削除可能に。失敗カットやHDR ONで撮った場合、どちらかを削除できるなど便利になった顔検出機能。一応写真でも認識し、ご覧のように2箇所にグリーンの枠が表示される

 次はバッテリ駆動時間が確実に延びたことだ。筆者が試した範囲では「使用時間2時間30分/起動時間2日10時間」(バッテリ残30%)。以前iOS 5.0.1のレポートした時は「使用時間5時間11分/起動時間2日8時間」(バッテリ残1%)だった。

 逆に短くなっているのでは、と思われるかも知れないが、条件がやや異なっている。前者はSiriやGPSなどバッテリを消費しそうな機能を全てONの状態でバッテリ残30%(この時、外出する用事がありどうしても途中充電が必要だった関係で、その後1%になるまでは計っていない。少しだけチャージし、残り6%で9時間/3日だった)。

 後者はほぼ全機能をOFFにしてバッテリ残1%の結果だ。つまりフルファンクションONにした状態でも起動時間=待受け時間に関しては確実に伸びている。もちろん残30%と1%との比較なので、前者の方がまだかなり余裕がある。

 やはりスマートフォンは全機能ONにした状態で使わないと、その面白さや便利さは半減する。iOS 5.1未満のバージョンでは、これらをONにした場合、アプリなどを使わない起動時間にも影響していたが、iOS 5.1ではこれがほぼ影響しなくなり、2日を超える起動時間が可能だ。感覚的にはiOS 5.0.xでは毎日充電していたが、iOS 5.1では2日に一度のペースとなった。

 この点は使い方にもよるだろうが、全般的にバッテリ駆動時間は目に見えて長くなったと思っている人が多いのではないだろうか。電話とメール、ちょっとネット……的な使い方であれば2日以上持ち、よりフィーチャーフォンに近くなったと言えよう。

iOS 5.1の今のところ最高記録(残30%)。SiriやGPSなど全ての機能をONにして、使用時間2時間30分/起動時間2日10時間iOS 5.0.1の最高記録(残1%)。SiriやGPSなど全ての機能をOFFにして、使用時間5時間11分/起動時間2日8時間

 このほか、Siriの日本語対応以外に関しては細かい修正なので、使っていて「あっ! これは便利になった」と、あえて特筆すべきものは無いが、KDDI登録者向けのFaceTimeおよびiMessageのサポートは、KDDI版のiPhoneをお持ちの方には朗報だろう。当時この機能を諦め、出荷をSoftbankと同じにしたが、今回のiOS 5.1によってやっと機能的に足並みが揃った格好だ。

 特にiMessageは、Apple ID間でメッセージのやり取りができ、iPhone同士なら従来のメッセージを使うことがほぼ無くなり、最近では2台持ちのドコモの携帯からのiモードメールすらしなくなるほど便利だ(ほとんどの相手がiPhone)。iモードサービス開始直後からメルアドは変わっていないが、そろそろ@docomo.ne.jpの役目も終わりそうな雰囲気だ。

 しかし、iOS 5.1ではMMSに関して仕様変更があった。SoftbankのFAQによると「iOS 5.1にアップデートしたiPhoneでMMSを送信した際、相手先の携帯電話によっては絵文字が表示されないことがございます。詳細につきましては現在確認中です。(iOS 5.0以下でお使いの場合は問題ありません。)」とのこと。iPhoneから他の携帯電話へ絵文字付きのMMSするケースは多く、早いタイミングでの対応を望みたい。

 iTunes Matchに関しては、国内でも今年2012年後半から展開されると言う話なので、サービスの開始に合わせて必要であればレポートをお届けする。

●Siriの日本語対応

 iPhone 4Sのレビューを掲載した時(2011年10月20日)、「未来を感じるSiriで遊ぶ(遊ばれる?)」と言う内容で記事を書いているが、この時は日本語には未対応だった。英語などと比較して日本語は結構複雑。対応はかなり遅くなるのではと思っていたが、嬉しい誤算で、たった半年ほどで日本語が使える様になってしまった。

 Siriの音声自体は若干不自然(機械的、もしかするとあえて狙ってこうしているかも知れない)で、ちょっとナマリがあるような気がするものの、十分以上に聞き取れる。驚くべきは音声認識度で、掲載した程度の内容ならほぼ100%だ。CMであるような用途だと確実に実用範囲と言えよう。

 ネットにはiOS 5.1リリース直後から、Siriに色々問いかけ、その受け答えなどが載っているので、今更解説するまでもないが、このSiriは、「メールの確認」とか「明日の予定は?」などに対して的確に答えるのはもちろん、「眠い」とか「今日は疲れた」とか愚痴など単にSiriへ話しかけると、「しかたないですよ。とにかく危ないことはしないでくださいね。」、「よく聞いてください。今すぐこのiPhoneを置いて少し寝てください。私はここで待っていますから」など、人間的な反応をするところがウケているようだ。また、この手の反応は一定期間でアップデートされているらしく、リリース直後から随分パターンも増えている。

 以前書いたように、ボイスパターンをオプション(有料でも)で選べれば爆発的に利用者が増えるのではないだろうか。

11時にアラームセットと話しかけたところ。時計アプリを起動して設定するより明らかに楽できる昨日届いたメールの数は? このケースはメールアプリを起動し、日付を見ながら数えるより楽だ愚痴を言うとこんな感じに。「今日は疲れた」→「運転中じゃないですよね?」と言うパターンもある

 余談になるが、筆者の友人の祖父(恐らく80歳以上)が、このSiriを紹介をしているCMを見て、iPhoneを欲しいと言い出したそうだ。筆者のようにパソコン歴が長い人であれば、手書きはもちろん、音声認識より、キーボードを打った方が速いと思ってしまうが、その筆者でさえも掲載したような簡単な指示や入力ならSiriの方が楽と思ってしまうほどの完成度。キーボードには無縁だった層に「これは!」と思わせる説得力と魅力は十分にある。昔から観ていたSFの世界に一歩近づいた格好だ。

 とは言え、新型iPadの記事でも書いたとおり、このSiriに関しては現在iPhone 4S限定の機能。ハードウェア的にはほとんど同じiPad 2そして新型iPadで未対応なのは、デバイス利用者の拡大と言う意味では不自然。逆にMac OS Xでの対応も含め、同社は何か考えているのでは? と勘ぐってしまう。

「渋谷近辺のラーメン屋」はNG。日本固有のロケーションには未対応。「お店や会社、地図、渋滞情報を検索できるのは、米国内で、アメリカ英語を使っているときだけです。」との答え

 残念なのは、日本語に対応したものの、現時点では例えば、場所や駅、会社や店、渋滞情報など日本固有のロケーションに関する事までは対応していない。

 この点が米国でのサービス並みになると、ぐっと利用範囲は広くなる。基本的にSiriはクラウド側で処理を行なっているので、気が付くと使えるようになっている日もそう遠くないのではないだろうか。その日が来るのを今から楽しみにしている。

 以上のようにiOS 5.1は、SiriやGPSをONにしたままでもバッテリ起動時間の向上、Siriの日本語対応、カメラ関連の機能向上など、iOS 5.0.x系の完成形とも言える仕上がりぶりだ。ただ一部のユーザーでアップデート時ループに陥るなど、不都合があったのは残念な部分であるが、間違いなくお勧めのアップデートだ。