西川和久の不定期コラム

iOS 5.0.1で気になるバッテリ駆動時間は伸びたか?



 iPhone 4からiPhone 4Sへ乗り換えて、性能や画質などはとても満足している筆者であるが、唯一、バッテリ駆動時間に関しては不満だった。これはiOS 5.0へアップデートしたiPhone 4でも同じだ。そんな中iOS 5.0.1が登場。バッテリ駆動時間の改善が項目に挙がっている。実際のところはどうなのか検証してみたい。


●バッテリを長持ちさせるコツ

 iPhone 3G/3GS/4、そしてiOS 4.xまでは、特に何も設定しなくても、起動時間が2日間以上はあったので、あまりバッテリ駆動時間を気にしていなかった。もちろんこれは使い方によってかなり幅があり、音楽再生を主に使っている友人などは、以前から毎日充電しているという話だった。筆者の場合は、音楽は聴かず、ネット中心、電話やカメラはたまにといった使い方で、2日に1度充電するかしないかだった。

 そこにiPhone 4SとiOS 5が登場した。iPhone 4SはデュアルコアのA5を搭載するも、公称バッテリ駆動時間はiPhone 4と大差無いのだが、あれこれ使っていると、あっと言う間にバッテリが減っていく。またOSをアップデートしたiPhone 4も以前よりバッテリが目に見えて持たなくなった。

 この件は、筆者だけでなく、ネットを見ているとあっちこっちで書かれており、高性能/高機能と引き換えに、バッテリ駆動時間が短くなってしまったようだ。

 一般にユーザーが意識するバッテリ駆動時間には2タイプあり、1つは実際に使用した時間=「使用時間」、もう1つが「起動時間」(待機時間とも言う)だ。iOS 5は体験上、使用時間が短くなっただけでなく、夜寝ている間などの起動時間も大幅に短くなっており、寝る前は90%程度だったのに、朝起きると50%切っていたこともあった。

 バッテリを消費する項目として大雑把にジャンル別けすると、プロセッサが処理している時はもちろんとして、「液晶パネル」、3GやBluetooth、Wi-Fiなどの「通信系」、「GPS」、そして「カメラ」などが挙げられる。このうち、液晶パネル/GPS/通信に的を絞って設定を調整してみることにした。

 まず液晶パネルであるが、普段の明るさを出来るだけ暗めにするのは当然として、iOS 5の新機能である「通知センター」の設定を変更した。同設定には、ロック中の画面に表示する形式と、使用中にバナーそして一覧表示する機能がある。後者はもともと使用中なのでいいが、前者は、待機中、即ち画面非表示の時でも画面がオンとなる。従って頻繁に通知があると、それなりにバッテリを消費する。当初は面白がって対応しているアプリ全てオンにして使っていたが、メールと必要なメッセージ系だけに絞り他のアプリはオフとした。

 次にGPS。これはiPhoneに限らず、他のスマートフォンでも使用するとみるみるバッテリが減っていく。できれば使う時だけオンにしたい機能だ。しかしこれが意外と難しく、アプリによって起動中は常にオンだったり、ある機能を使う時だけオンだったり、起動時のみオンだったり、その挙動はさまざま。とりあえず設定/位置情報サービスでGPS機能を必要としないアプリは全てオフにし、マップやradiko.jpなどオフだと困るものだけオンとした。

 もう1つ盲点だったのがFacebookアプリ。実はニュースフィードを更新する度にGPSが動いていたのだ。通りでFacebookで遊んでいるとあっと言う間にバッテリが減るはずだ。オフにするとチェックインなどの機能が使えなくなるものの、バッテリの持ちを優先してオフにした。ただし最近のバージョンでは修正され、近況の書込みやチェックインなど必要時のみGPSが動くようになっている。

 この件は他のアプリでもありそうなので、上部ステータスバーのGPSアイコンが出ているかどうかチェックした方がいいだろう。なお、iOS 5から搭載されたリマインダーは場所に近づいたら(もしくは離れたら)通知するので、一定間隔でGPSが動いているものと思われる。

設定/通知センター。ここで各アプリの設定ができる。必要最低限だけオンにする設定/通知センター/緊急地震速報。盲点だった緊急地震速報。オンにするとバックグラウンドでGPSが動くゆれくる/設定。緊急地震速報の代替。設定で予測地域を指定するのでGPSは動かない
設定/位置情報サービス。アプリによってGPSの挙動が違うので必要に応じてオン/オフするFacebookアプリ/近況の書込み(位置情報サービスオン)。現バージョンではGPSが必要な時のみ動いている(右上の矢印)Facebookアプリ/近況の書込み(位置情報サービスオフ)。位置情報サービスでFacebookアプリをオフにするとGPS印が非表示となる

 そして意外だったのがiOS 5の新機能の1つ「緊急地震速報」だった。これによるバッテリ消費は結構なもので、これをオフにするだけでかなり効果があった。

【お詫びと訂正】初出時に「緊急地震速報」がGPSを利用しているとしておりましたが、実際には利用しておりません。お詫びして訂正させていただきます。

 そのほか通信系や無駄にプロセッサパワーを使っていそうなところを探すと、「Siri」、「Spotlight検索」、「設定/一般/情報/診断・使用状況」の3つがあった。Siriはロック画面でも反応する機能があり、バックグラウンドで動いているらしく、待機中でも電力を使う上、音声解析はクラウド側で行なうので通信も発生する。Spotlight検索はインデックスを作るので、やはりバックグラウンドで動作する。Siriは非常に面白いのだが、現在日本語には対応していないし、Spotlight検索は個人的に全く使用していないのでオフとした。

 サーバーにより設定が異なるため、ここでは具体例を挙げていないが、メールの受信も「プッシュ」ではなく「フェッチ」(しかも短い間隔で)が主だと、一定間隔でサーバーに対して通信が行なわれるため、バッテリをより消耗する。できるだけプッシュに対応したメールサーバーを使いたいところだ。

 筆者のケースでは、iOS 4.xまでは、メインのメールアドレスに届いたメールをxxxx@i.softbank.jpへ転送。プッシュで通知だけ行なわれるので、その都度メールを手動で取りに行っていたが、iOS 5からはこれを止め、Exchangeサーバーの設定でGmailをプッシュできるように変更(サーバーにm.google.comを指定すればGmailのID/PWでメールをプッシュできる)。これにより通知センターが有効になりかなり便利になった。不要なバッテリ消耗を抑えるのはいいが、必要な機能までオフにしてしまうと、スマートフォンを使っている意味がなくなってしまうので、ある程度の味付けは必要だろう。

 最後は最近問題になっている「Carrier IQ」(スマートフォン内部に実装されたソフトウェアが、ユーザーの許可なしにプライバシー情報を記録/送信する)だが、iOSでは、ユーザーが明示的にオフにできる。「設定/一般/情報/診断・使用状況」がこれに相当する。個人的にはサービス向上のためにデータを使っても良いと思っているが、意図しない通信が増えるのでオフとしている。

Siri。音声解析はクラウドで行ない、ローカルでCPUパワーも使うためオフSpotlight検索。バックグラウンドでインデックスを作るのでCPUパワーが必要。最小限にする(もしくは必要なければオフ)設定/一般/情報/診断・使用状況

 バッテリ消耗の大きさは、チェックした範囲ではGPS、液晶、通信の順のようだ。バックグラウンドで動くアプリもバッテリを消耗するが、iOSの場合、バックグラウンドで使える機能(API)はかなり制限があるので、Androidほどは影響はでない。ただしSiriなどOSに内蔵している場合はこの限りでは無いと思われる。

 ここまで調整したiOS 5そしてiPhone 4/4Sは、具体的な数値は挙げれないものの、当初よりそれなりにバッテリ駆動時間が長くなった。iPhone 4+iOS 4以前ほどではないものの「まぁこれなら及第点かな」っと思っていたところに、バッテリ駆動時間の改善などに対応したiOS 5.0.1がリリースされたので、こちらも早速試してみることにした。

●iOS 5.0.1での変化は?
iOS 5.0.1の最大駆動時間

 iOS 5.0.1の改善点は、「バッテリ連続駆動時間に関する問題を修正」、「iCloudを介したデータ共有機能”Documents in the Cloud”機能に関する問題を修正」、「オーストラリア英語による音声入力時の認識精度が向上」、そして何故かiPad2でしか機能しなかった「指4本または5本のマルチタスキングジェスチャーの初代iPad対応」などだ。

 やはり注目すべきは「バッテリ連続駆動時間に関する問題を修正」だ。先に挙げた点を設定した上で試したところ、最大で使用時間5時間11分、起動時間2日と8時間を記録した。使用時間は大差ないものの、これまで何をしても24時間程度しか持たなかった起動時間が2日を超えるようになった。冒頭に書いたように、寝ている間見る見る減っていたバッテリ消耗が収まった感じだ。これで毎日充電することもなくなり、かなり状況は改善された。

 ただネットの情報を見ていると、iOS 5.0.1には、特有のバグがあったり、バッテリ駆動時間の改善が見られない場合もあるようで、さらなるアップデートに期待したいところだ。ちなみに、iOS 5.0.2の噂があったものの、今のところリリースされておらず、既にiOS 5.1のベータテストが行なわれている。

 最後に余談になるが、筆者は相変わらず旧式(2007年2月発売)のドコモSH703iを持ち続けている。理由は今の多機能フィーチャーフォンと比較してコンパクト(49×102×17.9mm/幅×奥行き×高さ、約105g)なこと、もう1つはiPhoneを含めたスマートフォンと比較して、バッテリの持ちが非常に良いことだ。起動時間だけなら平気で1週間以上持つ。当面これだけバッテリの持ちの良いスマートフォンは現れないだろうと考えている。

 スマートフォンに押されているフィーチャーフォンも、例えばメールと通話機能、そしてサイズだけに絞り込んで開発すれば、まだそれなりに需要があるのではないだろうか。


 以上のようにiOS 5.0.1は、使用時間に関してはあまり変わらないものの、起動時間が伸び、設定次第で、寝ている間にバッテリが極度に消耗するようなことは無くなった。ただ、バッテリ問題はまだ完全に解決しておらず、同社は依然調査中とのこと。次バージョンでどうなるかは不明だが、もっと延びることを期待したい。