■西川和久の不定期コラム■
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は10月18日、AMD E-450搭載の11.6型モバイルノートを発表。翌日の19日から出荷を開始した。編集部からHDDモデルとSSDモデル両方が送られてきたので、違いなどにも触れながらご紹介する。
●AMD E-450を搭載した11.6型モバイルノート
プロセッサは、“Fusion APU”と呼ばれるGPU統合型のAMD E-450。何度か記事を掲載したAMD E-350の上位版だ。2コア、キャッシュ512KB×2、TDP 18Wなのは同じだが、クロックが1.6GHzから1.65GHzへ、内蔵GPUが「Radeon HD 6310」から「Radeon HD 6320」へ、メモリがDDR3-1066からDDR3-1333へと、少しずつであるがパワーアップした。E-350とどれだけ差があるのか気になるところだ。
対となるチップセットはAMD A50M FCH。ただし本機のSATAは3Gbpsまでしかサポートしない。メモリは標準で4GB搭載。2スロットあり、1スロットのみ使用、1スロットは空きとなっている。従って+4GBの計8GBへは無駄なく増設可能だ。
【11月17日追記】記事初出時、SATAは6Gbpsサポートとしておりましたが、日本HPとしては3Gbpsまでしかサポートしておりませんとのことでした。お詫びして訂正します。
CPU | AMD E-450(2コア、1.65GHz、キャッシュ512KB×2、TDP18W) |
チップセット | AMD A50M FCH |
メモリ | 4GB(4GB×1)/2スロット空1 |
HDD | 640GB(5,400rpm) |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit)SP1 |
ディスプレイ | 11.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット |
グラフィックス | CPU内蔵Radeon HD 6320、HDMI、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0 |
その他 | USB 2.0×3、2in1メディアスロット、マイク入力、ヘッドフォン出力、 HP TrueVision HD Webcam(約102万画素) |
サイズ/重量 | 292×216×20.5~34.5mm(幅×奥行き×高さ)/約1.53kg |
バッテリ駆動時間 | 最大約9.5時間 |
直販価格 | 39,900円 |
液晶パネルは11.6型の光沢タイプでHD解像度の1,366×768ドット。HDMIとミニD-Sub15ピンの出力を備える。このクラスでHDMIに対応しているのはポイントが高い。
ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n、そしてBluetooth 4.0。安価な機種では有線LANが100BASE-TXまでなのが多い中、GbEなのは嬉しい限りだ。
その他のインターフェイスは、USB 2.0×3、2in1メディアスロット、マイク入力、ヘッドフォン出力、約102万画素のHP TrueVision HD Webcam。USB 3.0が1ポートも無いのは残念だが、もともとA50M FCHに含まれておらず、別途用意するとコストアップにつながるため、仕方ない部分だろう。
サイズは292×216×20.5~34.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.53kg。6セルのバッテリを使用し、駆動時間は最大約9.5時間となる。直販価格は驚くことに4万円を切る39,900円。OSにWindows 7 Home Premium(64bit)SP1を搭載しているにも関わらず、Atomプロセッサを搭載した一般的なネットブックより安価となる。
参考までに今年(2011年)の3月、AMD E-350を搭載した11.6型モバイルノート「dm1-3000」の記事を掲載しているが、メモリ4GB、HDD 500GB(7,200rpm)の店頭モデルで予想価格6万円前後だったことを考えると、一気に2万円も安くなったことがわかる。
なお、上位機種として160GB SSDモデルもも用意され、バッテリ駆動時間が約10.5時間、直販価格は56,700円。速度やバッテリ駆動時間の違いなどは、後半のベンチマークテストで検証したい。
ボディは同社の「HP Imprint」技術が使われ、独特の光沢感がある。価格を考えるとなかなかクオリティは高い。トップカバーは(ほぼ黒にも見える)ダークグレー。キーボードと液晶パネルのフチはブラック、その他の部分はシルバーとシンプルなデザインだ。重量約1.5kgは少し重めだが、持ったときのバランスは良い。参考までにSSDモデルとの重量差は10g。実測でHDDモデルが1,520g、SSDモデルが1,510gだった。
特筆すべきは裏側のパネルで、ネジなど一切無く手で少し引っ張ると簡単に外れ、メンテナンス性は抜群だ。メモリやHDDに容易にアクセスできる。
液晶パネルは光沢タイプで180度倒すことができる。視野角は上下と比較して左右が若干狭い感じだ。発色は派手でもなく地味でもなく、割とニュートラルでクラスを考えれば十分。最大輝度は若干暗めだが、実用的には大丈夫。逆にバックライトをOFFにしてもそれなりに見える。
キーボードはアイソレーションタイプで、たわみも無く、キータッチは少し軽めだが悪くない。キーの並びはどこも破綻せず、キーピッチは約19mm確保されているので、入力しやすい。
パームレストは11.6型と言うこともあり、狭いものの、操作上は問題なし。タッチパッドは段差無がく、ツルツルのパームレストからいきなりザラザラした質感となる。左上に見える凹みはダブルタップするとタッチパッドのON/OFFができ、OFFの時に上にあるLEDが点灯する仕掛けになっている。
サウンド関係は、正面から見た写真から分かるように、「Beats Audio」に対応。手前側面にあるステレオスピーカーから臨場感ある音が再生可能だ。最大出力も十分あり、音楽やムービーも楽しめる。特別音質が良いとまでは言わないが、価格を考えると頑張っている方だろう。
●普段使いなら十分なパフォーマンスOSは、64bit版のWindows 7 Home Premium SP1。内蔵グラフィックスとメモリ共有しているため、4GB搭載しても実質は3.6GBとなる。プロセッサはデュアルコアだがHyper-Threadingには非対応なのでデバイスマネージャ上で見えるのは2つだ。
HDDは640GB、5,400rpmの「WDC WD64 00BPVT」。ユーザーエリアとしてはC:ドライブのみで約580GB中、空き557GB(SSDモデルは「Intel SS DSA2BW160G3H」を搭載し133GB中111GB空き)。用途にもよるが、通常これだけあれば特に困ることは無いだろう。
Bluetoothは「Atheros AR3012 Bluetooth 4.0」、GbEは「Realtek PCIe GBE Family Controller」、Wi-Fiモジュールは「Atheros AR9485 802.11b/g/n」が使われていた。
プリインストールされているアプリケーションは「ノートン・インターネットセキュリティ2012(60日間試用版)」、「Windows Live」、「Skype」、「Evernote」、「CyberLink YouCam BE」、「CyberLink PowerDVD 10」、同社のツール系と割とあっさり目だ。
今回初めて見たのは「HP Launch Box」。タスクバーの上に、カテゴリを別けて設定した複数のアプリケーションを1つのアイコンにまとめて置ける機能だ。画面キャプチャからもわかるように、これなら邪魔にもならず、Windows 7のインターフェイスに溶け込み違和感も無い。
「CoolSence」はONにすると、PCが静止した状態かを自動的に検出し、パフォーマンスやファンなどを調整、表面温度が最適な状態に保てるツールだ。その他「HP 3D DriveGuard」など、御馴染みのものも入っている。
個人的には使ってないので知らなかったが、「Bing Bar」がFacebookなどに対応して、以前とは随分変わり今風になっている。これまで評価したPCでは見たことが無かったので、最近変わったのだろう。初対面と言う意味で画面キャプチャを掲載した。
HP Launch Box/Windows Live | HP Launch Box/HP推奨 | HP Launch Box Manager |
HP CoolSence | HP beatsaudio | Bing Bar |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。カッコ内はSSDモデルの値を参考までに掲載している。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 3.9。プロセッサ 3.9、メモリ 5.9、グラフィックス 4.6、ゲーム用グラフィックス 5.9、プライマリハードディスク 5.9(7.5)。E-350と比較して、プロセッサ +0.1、メモリ +0.4、グラフィックス +0.4、ゲーム用グラフィックス +0.2と少しずつではあるが、全てにおいて向上した。安価なAPUとしては頑張っている。
CrystalMarkは、ALU 12598、FPU 9964、MEM 8723、HDD 10628(29795)、GDI 4725、D2D 2385、OGL 10916。こちらも同様にパワーアップしている。特にOGLの1万台はなかなかのスコアと言えよう。またSSDモデルはHDDモデルと比較してアクセスが約3倍速いことがわかる。
試しにYouTubeで1080pの動画を再生させたところ、全くコマ落ちせず、スムーズに再生された。デジカメのRAW現像などCPUパワーを使う処理などを行なわない限り、普通に使える印象だ。
BBenchは、HP省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ON、Bluetooth/OFFでの結果。バッテリの残4%で16,016秒/4.4時間(17,897秒/5時間)。スペック上最大約9.5時間なので何と半分しか持たなかった。数度試したものの、ほぼ4.4時間前後と同じ。バッテリの状態なのか個体差なのかは分からないが、以前「dm1-3000」のSSDモデルでは本当に9.8時間動いている。SSDモデルも約半分だ。残念ながらBBenchの結果は、スペック通りとはならなかったが、それでも同クラスと比較すれば平均的なバッテリ駆動時間なので、そう言った意味では特に問題は無いだろう。
以上のようにPavilion dm1-4000は、AMD E-450を搭載し、普段使いには十分なパワーを持ったモバイルノートだ。メモリも簡単に増設でき、HDMI出力があるのもポイントが高い。そして何と言ってもこれだけの機能を持ったモバイルノートが驚きの39,900円! デザインなども無難にまとめられ、グッと来た人も多いのではないだろうか。
今回試した結果、実測のバッテリ駆動時間がスペックの約半分、USB 3.0が無いなど、気になる部分もあるにはあるが、それを差し引いてもコストパフォーマンスは非常に高い。11.6型のモバイルノートで安価なものを探しているユーザーにお勧めできる製品といえる。