西川和久の不定期コラム

USBデバイスサーバー アイ・オー「ETG-DS/US」レポート2
~2種類のスキャナ共有を試す



ETG-DS/US

 前回は地デジTVチューナを「ETG-DS/US」へ接続し、VPN経由で事務所で観ると言った、ちょっと特殊な用途をご紹介したが、今回はもっと一般的なUSB周辺機器である、スキャナを接続してみたい。うまく行けば、オフィスなどで1台のスキャナを共有する時に非常に有効な活用方法となりそうだ。2台のスキャナを試したので、そのレポートをお届けする。


●「ETG-DS/US」のおさらい

 前回は地デジをVPN経由で事務所で観るという、ちょっと変わった使い方だったので、その部分に特化する機能のみの紹介だった。「ETG-DS/US」は、まだまだいろいろな機能を持っているので、ここでもう一度、全機能をおさらいしたい。

 まず本体は、Gigabit Ethernet×1、USB 2.0×2、そしてリセットスイッチと、とてもシンプルな構成になっている。USBポートは、バスパワーを使う周辺機は1台のみの対応だ。USB Hubを使ってポート数を拡張でき、最大15インターフェイスまで接続することができる。この15インターフェイスと言うのは、USB機器が15台という意味ではなく、1台でも複数のロジックを持っている機器があるため、このような表現になっている。

 接続可能なUSB周辺機は、カードリーダーやHDD、DVDドライブなど、ストレージ系はもちろん、プリンタ、外付けグラフィック(DisplayLink)、Webカメラ、TVキャプチャ、iPod、USBシリアル変換アダプタ、Bluetoothなど、おおよそUSB周辺機と名の付くものはほぼ全て網羅している。この辺りが、USBポートを搭載した無線ルーターやNASとは大きく違うところだ。

 対応しているOSは、Windows XP/Vista/7の32bit及び64bit版、Mac OS X 10.4~10.6までと幅広い。実際、PCから「ETG-DS/US」を経由して、USB機器を接続するには「net.USBクライアント」と呼ばれるソフトウェアを使い、一覧から選択して、接続/接続解除が可能だ。該当するデバイスを使うドライバから見ると、PC本体のUSBポートに接続されたのと等価になるため、特に「ETG-DS/US」用に対応する必要は無い。

フロント。USB2.0ポートが2つ。ボディはかなりコンパクトだ背面。Gigabit Ethernet、電源入力、リセットボタン

 またプリンタに関しては、「net.USBクライアント」経由での接続だけでなく、「プリンタサーバー」機能も持っており、一般的に使用されているRawモード、LPR、IPP印刷などに対応している。違いは、前者の場合、PCのUSBポートにプリンタが接続されているのと同じイメージなので、インク残量やプリンタのステータスなど、プリンタの機能が全て使えるが、複数人からの同時印刷要求には対応できない(OS側でプリンタ共有するケースを除く)。一方、後者の場合は、細かいステータスなどは対応できないものの、複数のPCから同時に印刷が可能になる。どちらを使うかはケースバイケースだろう。

 「ETG-DS/US」のネットワーク設定やステータス表示などは、Webブラウザから操作ができる。方法は簡単で「ETG-DS/US」に割当てられているIPアドレスをそのまま「http://xxx.xxx.xxx.xxx/」で入力。ID/PWを要求されるので、初期設定ではroot/無しを入力すれば管理画面が表示される。

 管理画面は「ステータス表示」、「ネットワーク設定」、「メンテナンス情報」と3つに別れている。ステータス表示は、接続されているUSB機器及び、プリンタサーバーの情報を表示、ネットワーク設定は、各種ネットワーク関連の情報を表示/設定できる。初期設定はDHCPサーバーからIPアドレスを得るようになっているが、固定IPアドレスも可能だ。

 システム情報は、MACアドレス、ファームウェアバージョンの表示、そして管理者パスワード設定、リセット、ログ情報、アップデートなども行なえる。ファームウェアのアップデートは、このアップデートを使用する。同社のHPから最新版をダウンロードし、ここからそのファイルを選べばOKだ。

 リセットに関しては、前回試しにWindows Media Centerで地デジチューナーが動かないかとセットアップしたところあえなく失敗。その後、mAgicTV Digitalを起動してもうまく動かなかったことがあったが、このリセットを行なうと元に戻ったという経験がある。「ETG-DS/US」のところまで行き(この時は自宅と事務所なので行くのも面倒)、電源ON/OFFしなくてもネットワーク経由でリセットできるのは結構便利である。

ETG-DS/US設定画面のステータス表示。接続されているUSB機器及び、プリンタサーバーの情報を表示するネットワーク設定画面。各種ネットワーク関連の情報を表示/設定が可能だ。固定IPアドレスも設定できるメンテナンス情報。MACアドレス、ファームウェアバージョン表示、リセットやアップデートもここから行なえる

 「ETG-DS/US」の用途は、大きく別けて2パターン考えられる。1つは、1人で多くのUSB機器を使うケースだ。デスクトップPCの場合は、基本的に据え置きなので、多少USBケーブルが蛸足配線になってもあまり気にならないが、ノートPCの場合は移動するのでそうも行かない。また、ポート数が2~4つの事が多く、不足する場合も考えられる。そこで「ETG-DS/US」とWi-Fiを併用すれば、ノートPCには全くケーブルが無く、最大15インターフェイスまでUSB機器を接続でき、非常にスッキリした環境を構築できる。

 もう1つは、自宅もしくは事務所などで、複数のPCそして人でUSB機器を共有するケースだ。基本的に共有機能は排他式なので、誰か他のPCもしくは人が使っている場合、デバイスに接続できなくなるが、「net.USBクライアント」には、誰かが使用中のデバイスに対して切断要求する機能を持っている。実際には画面キャプチャをご覧頂きたいが、「他の人が使用中」になっているデバイスに対して「USBデバイス切断リクエスト」を行なう。すると、デバイスを使用している人の画面に「USBデバイス切断リクエスト」が表示され、「はい/いいえ」で答えればOKだ。

デバイス使用中のユーザーに切断要求。同じデバイスを複数のPC/人で共有するときに、この切断要求は便利だ切断要求を受けたユーザー。ここで「はい」を選ぶと自動的に該当デバイスが切断される。「いいえ」の場合は、切断せずに、先方に切断できないとのメッセージを表示する

 惜しい点としては、切断要求で「いいえ」を選択した場合、簡単なメッセージが送れないことだ。例えば「あと5分待って!」など、ショートメッセージを送れれば、更に円滑な運営ができる。技術的に可能であれば、ぜひ対応して欲しい部分だ。

●スキャナを接続

 複数のPCや人でUSB機器を共有する場合、まず考えられるのがプリンタ、そしてスキャナではないだろうか。プリンタに関してはあまりにも一般的で、OSのプリンタ共有や、無線ルーター、NASなどでもプリンタサーバー機能を持っているので特に「ETG-DS/US」固有と言うものでもないので、今回はスキャナを試して見たい。

 テスト1台目は「PFU ScanSnap S1300」を用意した。このスキャナは最大A4まで、自動給紙方式(ADF)、両面同時読み取りなどの機能を持ち、強力なアプリケーション、「ScanSnap Organizer V4.1」、「名刺ファイリングOCR V3.1」を同梱している。特に「名刺ファイリングOCR V3.1」はなかなか良くできており、名刺をADFを使って複数読込ませ、OCR機能を使い、一気に名前や電話番号などを文字データ化できる優れものだ。

 セットアップは、先に使用するPCへCD-ROMからドライバとアプリケーションをインストールする。後は、「ETG-DS/US」のUSBポートへスキャナを接続、net.USBクライアントから選択すると、自動的にドライバが組み込まれ、アプリケーションが使用可能な状態になる。速度的には全く問題無く、まるでローカルのUSBポートに接続しているかのようにScanSnap S1300が使用できた。

富士通 ScanSnap S1300。ご覧のようにコンパクトでUSBバスパワー駆動もできるScanSnap S1300のドライバインストール中。net.USBクライアントではじめて接続するとプラグアンドプレイでドライバがインストールされるScanSnap Organizer。スキャンしたデータを効率的に管理できる、非常に多機能なアプリケーションだ
ScanSnap Organizerビューア。一覧でクリックするとPDF化したデータを拡大表示する名刺ファイリングOCRで読込み中。名刺の厚みにもよるが、ADFを使って複数枚一気に読込むことができる名刺ファイリングOCRで完璧に読込めた。筆者の名刺は非常にシンプルなので、全ての文字を正常に認識しデータ化できた。これはなかなか便利だ

 次は一般的なフラットベッド式のスキャナ、「キヤノンCanoScan 5600F」をテストした。白色LED搭載高性能CCDモデルで4,800dpiの高解像度スキャナだ。このスキャナは非常にスタンダードなものなので、今更説明するまでもないだろう。

 試した環境は、Windows 7とMac OS X。スキャナ自体が両OSに対応していることもあり、net.USBの作動チェックも兼ねている。またMac OS Xへnet.USBをインストールした時は、一度リブートが必要だ。

 Mac OS XへはCanoScan 5600F同梱のドライバをインストールした。またWindows 7でのトピックスとしては、同梱のドライバ類などを一切インストールしなくても、OS側でWIAドライバを持っており、本体を接続するだけで即利用可能となった。色補正やPDF化など、細かい機能は無いものの、とりあえず画像を取り込むだけなら、このままでも十分使用できる。

 結果的にはどちらのOSも問題無くスキャナが使えた。事務所内はGigabit Ethernetなので、速度的に遅いと言ったこともなく、ごく自然に運用可能だ。ただし、ScanSnap S1300も同様だが、スキャナへ原稿を出し入れしなければならないので、設置場所があまりPCから離れていると面倒だと言うことだ。

キヤノン「CanoScan 5600F」。白色LED搭載高性能CCDモデル。35mmフィルムなど、透過原稿にも対応しているMac OS X(10.6.2)で使用中。ドライバをインストールする時、対応していないOSのバージョンとの表示が出たが、問題無く使えているWindows 7はWIAでも使用可能。ETG-DS/USでCanon CanoScan 5600Fを選択しただけで、自動的にWIAドライバが組み込まれた

 この手のスキャナは四六時中使うわけでもなく、また1人1台持つのはコストがかさむため、小規模オフィスなどに、この「ETG-DS/US」と組み合わせるのは、有効な手段だ。もちろんネットワーク経由での接続なので、デスクトップPCで使うにしてもノートPCで使うにしても、USBケーブルが増えて邪魔になることはない。「ETG-DS/US」の用途として非常に有効だと思われる。

Windows XP Modeで作動確認。net.USBクライアントも含め、問題無く動いている。地デジTVチューナは、グラフィックスがオーバーレイに対応していないのでNG

 さて、一通りテストが終わったところで、Windows 7のWindows XP Modeでnet.USBクライアントが使えるかをチェックした。画面キャプチャにあるように、問題無く「Canon CanoScan 5600F」が動いている。この手の環境をWindows XP Modeへ組み込んで意味があるのかは正直不明であるが、例えば、メインのPCにいろいろなドライバを入れると作動が不安定になったりするのはよくある話だ。そこであまり使わないドライバ類は、仮想PCの上で動くWindows XP Modeへ分離して、なるべくメインの環境はシンプルにするなど、ある程度の効果はあると思われる。

 その1の地デジチューナ、今回のスキャナと、ETG-DS/USは、応用範囲が広くUSB機器をネットワーク経由で利用できるシステムだ。価格も安く、OSはWindows 32bit/64bit、そしてMac OS X対応で、ほとんどのPCをカバーする。今回ご紹介したように、複数のPCでUSB機器を共有したい時も非常に有効な手段となる。筆者が最近試した周辺機の中ではイチオシのアイテムと言えよう。