西川和久の不定期コラム

手帳サイズでWindows 7搭載「富士通 LOOX U」



LOOX U

 携帯可能なノートPCと言えば1.5kg前後が大半。「1kg程度のものがあればより楽なのに……」と思っている筆者であるが、その基準をはるかに下回る“手帳サイズ”で“約500g”のノートPC、「LOOX U」が発表された。驚きのサイズと重量だ。量産試作機が届いたので、早速その使用感などレポートしたい。


●CPUにAtom Z550も選択可能

 「LOOX U」は、CPUにAtom Zシリーズを使用しているので、アーキテクチャ的にはネットブック相当となる。直販モデルを含めると選べるCPUは3種類。Atom Z520(1.33GHz)、Atom Z530(1.6GHz)、そしてZ550(2.0GHz)だ。一般的にAtom ZシリーズはZ520とZ530はよく見かけるものの、CPUクロック2.0GHzのZ550はあまり搭載例が無く、少なくともクロック比分のパフォーマンスアップが期待できるので、多少高価になるにしても選択できるのはありがたい。

 チップセットはお馴染みのIntel US15W。GPUとして動画支援機構を持つGMA500を内蔵している。グラフィックメモリはメインメモリと共有し、最大762MB使用。メインメモリはWindows 7モデルで2GB、Windows XPモデルで1GB。オンボードなので、交換や増設はできないものの、この容量なら用途的に特に問題にならないだろう。ストレージはSSDのみで0スピンドルだ。約30GBと約62GBの2タイプがある。各モデルの仕様は以下の通り。

【表】LOOX U仕様


FMVLUG90N2FMVLUG90N3FMVLUG90N5FMVLUG90NH
OSWindows 7 Home Premium(32bit)Windows XP Home Edition
CPUIntel Atom Z520(1.33GHz)Z530(1.6GHz)Z550(2.0GHz)Z530(1.6GHz)
チップセットIntel US15W
メモリ2GB(DDR2/2GB×1/オンボード)1GB(DDR2/1GB×1/オンボード)
HDD/SSD約30GB/約62GB約30GB
ディスプレイ5.6ワイドスーパーファイン液晶(LEDバックライト・タッチパネル)、1,280×800ドット、内蔵GPU GMA500
ネットワーク100BASET-TX/10BASE-T、IEEE 802.11a/b/g/n無線LAN、Bluetooth、WiMAX
その他USB 2.0×2、Webカメラ、メディアスロット、microSDカードスロット、音声入出力、LAN/CRT変換コネクタ(オプション)、スタイラスペン付属
サイズ/重量204×106.5×23.8mm(幅×奥行き×高さ)/約495g
バッテリ内蔵バッテリパック、内蔵バッテリパック(L)
カラーモカブラック、ルビーレッド、ヴィンテージゴールド、GREEN CAMO、BLACK CAMO

※タッチパネルはWindowsタッチ対応。ただし、Windows XPインストール時はシングルタッチのみの対応
※内蔵バッテリパックと内蔵バッテリパック(L)は同時使用不可

 Windows XPモデルのみCPU Z530、ストレージ約30GB、メモリ1GB固定となってしまうが、Windows 7モデルはCPUとストレージが選択できる。

 共通仕様で興味深いのは、LEDバックライトでタッチパネル対応の「5.6ワイドスーパーファイン液晶」。解像度は1,280×800ドット(WXGA)だ。競合機種になるであろうソニーの「VAIO type P」は、8型の1,600×768ドット。液晶パネルのサイズや解像度が違うが、タッチパネル仕様ではなく、タッチパネルの有無は大きなポイントとなりそうだ。

 ネットワーク機能はWiMAXにも対応し、どこでも高速なネットワークが利用できる。無線LANとBluetoothは本体のみで使えるが、有線LANについては、オプションの「LAN/CRT変換コネクタ」が必要だ。

 カラーバリエーションはモカブラック、ルビーレッド、ヴィンテージゴールドの3種類+GREEN CAMO、BLACK CAMOの2種類。後者に関しては、Web限定「A BATHING APE」とのスペシャルコラボレーションモデル。本体梱包箱も同じデザインが採用されると言ったこだわりようだ。

 バッテリ駆動時間は内蔵バッテリパックで4時間、内蔵バッテリパック(L)で7.8時間。長時間持ち歩くユーザーとしては、少し重たくなってしまうが、内蔵バッテリパック(L)を使いたいところだ。

天板。非常にシンプルなデザインで結構高級感もある液晶パネル。周囲に拡大、電子辞書、電力モード切替などのタッチ式ボタンがある正面。USB 2.0×2、LAN/CRT用拡張コネクタ、メディアリーダなどが並ぶ
本体底面のバッテリを外した状態左側面。ヘッドフォン端子、ロックポートキーボードは75キー。[TAB]や[_]キーの位置などが変則的。キータッチは悪くない
右側面。電源端子を備えるキーピッチは約16mmバッテリ、ACアダプタ、スタイラスペン。バッテリはボディの底一面に入る感じで結構薄い。ACアダプタのサイズは36×85×25(幅×奥行き×高さ)mm。スタイラスペンは本体に収納するスペースは無い
重量は実測で484g。スペックを考えるとかなり軽いことが分かる筆者の手は小さい方なので片手でギリギリ持てるといった感じだiPhone、Eee PC 901-Xとの比較。iPhoneよりは大きく、8.9型パネル搭載のEee PC 901-Xよりはかなり小さい
VHSテープとの比較身の回りで一番サイズの近いものを探したところ、VHSテープだった。高さ奥行きはほぼ同じで幅だけVHSテープの方が約15mm短い

 今回、手元に届いた試作機は、CPU Z520、SSD約30GB、メモリ2GBのWindows 7モデル。色はモカブラックだ。従ってWindows 7搭載機としては、このシリーズで一番下のスペックとなる。

 本体サイズは実測で約205×105×23(幅×奥行き×高さ)mmとかなり小さい。掲載した写真からも分かるように、iPhoneよりは大きく、8.9型のパネルを搭載したEee PC 901-Xよりは数段小さい。

 身の回りで一番サイズの近いものを探したところ、VHSテープだった。ご覧のように、奥行きと高さはほぼ同じで、幅だけ約15mmほど長くなっている。超小型ノートPCの代名詞とも言えるVAIO type Pは、245×120×19.8mm(同)/588g(最小構成時)。高さだけ若干劣るものの、フットプリントではLOOX Uが更に上を行く。いにしえの小型ノートPC「東芝Libretto 100」のサイズは210×132×35mm(同)/950gだったので、やはりLOOX Uの方が一回り小さいことになる。

 加えて重量は実測で484gと、500gを切っている。これに関しても、先にあげたVAIO type PやLibretto 100より軽いことになる。このサイズと重量なら普段持ち歩くにしても何の問題もないだろう。カバンが無くとも、ジャケットのポケットなどにも入りそうだ。ボディの質感も安っぽさは無く丁寧な仕上げでお洒落。カフェなどで使っても雰囲気はマッチする。

 解像度1,280×800ドットの5.6ワイドスーパーファイン液晶パネルはグレアタイプ。壁紙の色にもよるが、黒っぽいものだとそれなりに映り込む。またこのサイズでこの解像度は、文字がかなり小さく、個人差もあるだろうが、筆者的には見づらかった。ただこの様な場合は、パネル左側に解像度変更のタッチ式ボタンがあるので、これを押せば1,024×600ドット、800×480ドット、そして1,280×800ドットと、3段階に解像度が切り替わる。

 キーボードは75キーを採用。主要なキーは無難に並んでいるが、[TAB]キーが[ESC]キーの右側にあったり、[_]キーが[ひらがな]キーの右側にあったり、[Delete]キーと[BackSpace]キーが縦に並んだりと、一部変則的な配置が見られる。キーピッチは約16mm。普通の両手入力も慣れればギリギリできそうな雰囲気だ。キータッチ自体は全体的に少したわむものの、この手の小型PCとしては良い方だろう。

 ポインティングデバイスは、キーボード左側上部にマウスの左右ボタンに相当するボタンを配置、右側上部に感圧式デバイスがある。マウスの動き自体は、レノボのトラックポイントに若干似ている感じだ。また、デバイス上でタップするとマウスの左ボタン相当になる。

 スピーカーはモノラルで、[スペース]キーの真下、本体のほぼ中央に付いている。サイズ的に高音質は期待できないものの、音量はこの手の小型マシンとしてはある方だ。

 本体裏のバッテリを外すと内部に小型のファンがあるものの、ノイズなどは聞こえず、また今回のCPUがZ520なので、発熱もほとんど無い。どちらかと言えばTDPが2.4WのZ550対策用(Z520とZ530はTDP 2W)だと思われる。

 気になる点があるとすれば、本体前面にある「LAN/CRT変換コネクタ」と「本体に収納できないスタイラスペン」だ。前者に関しては位置がほぼ中央なので、ここに変換コネクタがあると、コネクタ経由でケーブルを接続した場合、どう考えてもキー入力や取り回しに問題が生じる。左右の側面はスペース的に厳しいのなら、正面でもせめて端へ寄せて欲しかった。ただこの変換コネクタを使う場合は、外部モニタ、そしてキーボードとマウスを使うことを想定しているのかも知れない。

 スタイラスペンは収容できないため、本体とは別に持ち歩く必要があり、面倒なのと、紛失する可能性が高くなる。一般的な棒状にして、パネルやボディの端に収納したいところだ。

●意外と動くWindows 7

 今回試用している実機は量産試作機と言うこともあり、ベンチマークテストは禁止となっている。本連載で扱ったPCで、ベースとなっているIntel Atom Z520(1.33GHz)+Intel US15Wを採用したものと言えば、ストレージと画面解像度が違うが一番近いのは「Aspire One 751」となるだろうか。ただこの時はWindows XPだったので、直接の比較にはならないものの、参考程度にはなると思われる。

 実際触った感じは「意外と動く」だ。もっとモタモタするかと思っていたが、サクサクとまでは行かないまでも、それなりの速度。Z520でこの状態なので、更にクロックの高いZ530やZ550だと、結構行けそうな感じだ。

 実際、参考までに見た現状のWindows エクスペリエンス インデックスは、総合1.9。内訳はCPU 1.9、メモリ 4.2、グラフィックス 4.6、ゲーム用グラフィックス 2.3、プライマリハードディスク 5.9。CPUとゲーム用グラフィックスが遅いものの、他のスコアは予想以上に良い。CPUに関しては上位プロセッサで更に向上することが期待でき、ゲーム用グラフィックスに関しては、本機の用途を考えると、この程度のスコアでも問題無い。また、製品版でも試してみたいところだ。

起動時のデスクトップ。右端に見えるのがタッチパネルを意識したランチャー。また、アイコンの名前が「ワンクリックで開く/アプリケーションを起動する」モードになっているデバイスマネージャー。SSDは東芝製のTHNSNB030GMSJ。SATAコネクタ接続型で、最大転送速度がリード時で180MB/Sec、ライト時で70MB/SecWindows エクスペリエンス インデックスは総合1.9。CPU 1.9、メモリ 4.2、グラフィックス 4.6、ゲーム用グラフィックス 2.3、プライマリハードディスク 5.9。ネックとなっているCPUに関しては、上位のZ530やZ550を搭載することによって向上が期待できる

 「LOOX U」固有のアプリケーションとしては、画面右端にあるタッチパネル操作を意識したランチャーだ。ユーザー定義も可能になっている。ボタンは少し大きめなので、付属のスタイラスを使わなくても、指先でキック可能だ。また同社固有の初期出荷状態、「ワンクリックで開く/アプリケーションを起動する」モードも、タッチパネル式の場合は、扱いやすい。

 その他としては、同社ではお馴染みの「明鏡国語辞典」や「ジーニアス英和辞典」など各種辞書ソフト、そして「ノートン インターネット セキュリティ 2010 90日体験版」、「ノートン インターネット セキュリティ 2010 15カ月版」、「ノートン インターネット セキュリティ 2010 24カ月版」、「Microsoft Office Personal 2007 SP2」などを選択できる。SSDが約30GBもしくは約62GBと、容量が小さいものの、動画を扱わない限りは、少々データを詰め込んでも大丈夫だろう。

タッチ操作パネルの設定画面。カスタマイズも可能になっている同社ではお馴染みの「明鏡国語辞典」など、各種辞書ソフトが入っている1080pのMP4も動画支援機構でスムーズに再生。Intel US15Wは動画支援機構を持っているので、CPUパワーとは無関係に、1080pのH.264が再生できる

 内蔵GPUのIntel US15Wは動画支援機構を持っているので、1080pのMP4動画を再生しても液晶パネルの解像度的にフルサイズ表示できないものの、コマ落ちも音切れも無く、再生できている。テキストや写真だけでなく、動画などのコンテンツプレーヤーとしても、十分機能するので、用途の幅が広がる。

 デザインは美しく、手帳サイズで約500g。そして無線LANやBluetoothはもちろん、WiMAXまで搭載し、いつでもどこでも高速ネットワークと、Windowsマシンとしては、非常にコンパクトに仕上がっているこのLOOX U。近年、iPhoneをはじめとするスマートフォンの登場により、この手の小型PCとの競争も激しくなっているものの、Windowsアプリが必要なユーザーにとっては嬉しい存在となりそうだ。Windowsマシンで携帯性を重要視するユーザー注目の1台と言えよう。

【お詫びと訂正】初出時にタッチパネル液晶がシングルタッチのみと読める記述がありましたが、Windows 7搭載時はWindowsタッチに対応します。XP搭載時のみシングルタッチとなります。お詫びして訂正させていただきます。