西川和久の不定期コラム

レノボ・ジャパン「Erazer X700」

~オーバークロックに対応したゲーミングPC

レノボ・ジャパン「Erazer X700」

 レノボ・ジャパンは3月12日、同社初のゲーミングデスクトップPC「Erazer X700」を発表、15日から販売を開始した。Core i7-3820とGeForce GTX 660を搭載。オーバークロックにも対応したハイパワーPCだ。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けする。

Core i7-3820とGeForce GTX 660を搭載し、オーバークロックにも対応

 プロセッサはCore i7-3820(3.6GHz)で、4コア/8スレッド、クロックは3.6GHz。Turbo Boost時は3.8GHzに上昇する。キャッシュは10MB。強力なCPUだが、それだけにTDPは130Wとなる。チップセットはIntel X79 Express。メモリスロットが4つあり、4GB×2の計8GBを実装済だ。OSは64bit版のWindows 8。

 ストレージは、7,200rpmのHDDと、光学ドライブとしてDVDスーパーマルチドライブを搭載。3.5型HDD×6(空5)と5.25型×3(空2)の拡張ベイがあり、またホットスワップに対応したHDDベイも2基備えている。主な仕様は以下の通り。

レノボ・ジャパン「Erazer X700」の仕様
CPUCore i7-3820(4コア/8スレッド、クロック3.6GHz/TB 3.8GHz、キャッシュ 10MB、TDP130W)
チップセットIntel X79 Express
メモリ8GB(4GB×2) PC3-12800 DDR3 SDRAM(4スロット、最大16GB)
HDD1TB(7,200rpm)
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ
OSWindows 8(64bit)
グラフィックスGeForce GTX 660(1.5GB)
ネットワークGigabit Ethernet
その他USB 3.0×3(前面×1/背面×2)、USB 2.0×7(前面×1/背面×6)、マルチカードリーダ、S/PDIF光出力/Coaxial出力、音声入出力、DVI-D×2、HDMI出力、DisplayPort
拡張スロットPCI Express x16×2(空1)、同x1×2(空1)
ストレージベイ5.25インチ×3(空2)、3.5インチシャドウ×6(空5)
サイズ/重量210×475×455mm(幅×奥行き×高さ)/約18.5kg
店頭予想価格17万円前後

 グラフィックスはKeplerアーキテクチャを採用したGeForce GTX 660(1.5GB)。GPU BoostやAdaptive V-Syncなどの特徴を持つ、NVIDIAのデスクトップ用GPUのミドルレンジだ。出力は、DVI-D×2、HDMI出力、DisplayPortを搭載する。最大4つのディスプレイへ出力可能だ。

 インターフェイスは、Gigabit Ethernet、USB 3.0×3(前面×1/背面×2)、USB 2.0×7(前面×1/背面×6)、マルチカードリーダ、S/PDIF光出力/Coaxial出力、音声入出力。拡張スロットは、PCI Express x16×2(空1)、同x1×2(空1)。

 サイズは210×475×455mm(幅×奥行き×高さ)。重量約18.5kg。同社初のゲーミングPCということもあってか、BTOには非対応。店頭モデルもダイレクトモデルも同じ仕様で、単一モデルとなっている。

 店頭予想価格は17万円前後だが、直販サイトのレノボ・ショッピングでは、150,150円からと少し安い(キーボード、マウスなし)。「バイオハザード6 推奨PC」、「シムシティ 推奨PC」、「コール オブ デューティ ブラックオプスII 推奨スペックPC」と言うのがなかなかそれらしい。

 なお、オーバークロックに関しては、後述する「Erazer Control Center」が、確実に作動可能な範囲でしか設定できないため、オーバークロック動作による故障などについても通常の保証が適用される。

前面。ゲーミングPCらしいデザイン。中世騎士をイメージしているとのこと
パネルを開いたところ。カードリーダ、DVDスーパーマルチドライブ、ホットスワップ対応のHDDベイ×2
背面。上に電源ユニット、グラフィックスボード、各コネクタ、CPUクーラー用のファン
背面を拡大。音声入出力、USB 3.0×2、Gigabit Ethernet、USB 2.0×6、S/PDIF光出力/Coaxial出力
上部。[engine start]が電源ボタン、上に[overclock]ボタン。その後ろにUSB 2.0、USB 3.0、音声入出力
上部の後方。USB 3.0 B端子。ここに専用オプションを搭載可能だが国内発売は未定
左側面。中央のメッシュの奥も青く光る
内部全体。水冷CPUクーラー(レノボリキッドクーリングシステム)搭載
CPU周辺。CPUの左右にメモリスロットが2本ずつ。4GB×2が実装済み
ビデオカードはGeForce GTX 660(1.5GB)。DVI-D×2、HDMI出力、DisplayPortを搭載

 マシンが届いた時、まずそのパッケージの大きさに驚いた。本体は先に書いた通り210×475×455mm(幅×奥行き×高さ)、重量約18.5kgと、普通のタワーPCなのだが、パッケージサイズは440×725×750mm(同)、重量約33kg。ここ数年で扱った物としては最大級で、1人で持ち上げるのはつらいサイズだ。

 筐体は未来的な中世騎士をイメージしているデザインらしく、黒をベースに前面下部、パネルの下、そして右サイドのメッシュの中が青く光り、雰囲気を盛り上げている。ただ前面の下部以外はあまり輝度が高くなく、室内の照明をオンにしてもオフにしても、うまく写真は撮れなかった(冒頭の写真)。

 前面の上の部分に[engine start](電源ボタン)、その上に[overclock]ボタンを配置。ワンタッチでオーバークロックが可能となる。またその後ろに、USB 2.0、USB 3.0、音声入出力があり、さらに裏側にUSB 3.0 B端子がある。ここは専用オプションを搭載可能なのだが国内発売は未定となっている。

 前面のパネルを開くと、カードリーダ、DVDスーパーマルチドライブ、ホットスワップに対応したHDDベイ×2が現れる。

 背面側は、GeForce GTX 660(1.5GB)の出力となる、DVI-D×2、HDMI出力、DisplayPort。そのほかのインターフェイスは、音声入出力、USB 3.0×2、Gigabit Ethernet、USB 2.0×6、S/PDIF光出力/Coaxial出力を装備する。これだけあれば特に困ることはないだろう。電源ユニットに主電源オン/オフのスイッチはない。

 内部は、レノボリキッドクーリングシステムと呼ばれる水冷CPUクーラーが圧巻だ。ファンはこの部分と、チップセット、そして電源部分に付いている。起動時は少し音がするものの、落ち着いてしまえば、オーバークロックをしつつベンチマークテストを実行しても、気にならない程度のノイズしか出ないのには驚いた。これなら十分に一般家庭の室内で使用可能だ。発熱に関しては背面の水冷CPUクーラー付近がそれなりに暖かくなる。

簡単にオーバークロックの設定ができるErazer Control Center

 OSは64bit版Windows 8。メモリを8GB搭載しているので動きには余裕がある。ストレージは、1TB/7,200rpm/SATA 6Gbps/キャッシュ64MBの「ST1000DM003」。2パーティションでシステムドライブに約98GB、もう1つのドライブに約807GBが割り当てられている。初期起動時の空きは約50GB。DVDスーパーマルチドライブは「PLDS DVD-RW DH16ACSH」を搭載。Gigabit EthernetはRealtek製だ。

 スタート画面は、Lenovoアプリ以降がプリインストール。Windowsストアアプリとデスクトップアプリが混在している。デスクトップは最近扱った中では多めのショートカットで計18個。また日本語変換ソフトがBaidu IMEになっている。

スタート画面。Lenovoアプリ以降がプリインストール
起動時のデスクトップ。最近扱った中では多めのショートカットで計18個。Baidu IME採用
デバイスマネージャ/主要なデバイス。HDDは1TB/7,200rpm/SATA 6Gbps/キャッシュ64MBの「ST1000DM003」。DVDスーパーマルチドライブは「PLDS DVD-RW DH16ACSH」。Gigabit EthernetはRealtek製
HDDのパーティション。C:ドライブに約98GB、D:ドライブに約807GBの2パーティション

 プリインストールのアプリケーションは、Windowsストアアプリが、「AccuWeather for Windows 8」、「Evernote」、「Kindle」、「Lenovo Companion」、「McAfee Security Advisor」、「PowerDVD for Lenovo Idea」、「rara.com」、「Support」、
「SUUMO」、「Yagoo!オークション」、「楽天gateway」など。特に本機専用のものはない。

アプリ画面1
アプリ画面2
Lenovo Companion/メインメニュー
Lenovo Companion/Lenovoサービス
Lenovo Companion/アクセサリー
Lenovo Companion/ゲームズ

 デスクトップアプリケーションは、「Baidu IME」、「バイオハザード 6/バイオハザード 6 Benchmark」、Intel系ツール、「Kingsoft Office」、「PowerDVD10」、「Power2Go」、「Erazer Control Center」、「Lenovo Rescue System」、「Steam」など。下に示すバイオハザード 6 Benchmarkの結果はx41.0のオーバークロックでのスコアだが、通常クロックでもランクはSだった。

 本機専用アプリケーションとしては「Erazer Control Center」が挙げられる。画面キャプチャからも分かるように、ハードウェアモニターとCPUモニター、そしてオーバークロックの設定が可能だ。

 ただし、ベースクロックは100MHz固定で変更できず、CPU倍率を12倍から43倍まで1刻みで設定可能だ。また42と43は設定自体は可能であるものの、数値の部分が赤色になっている。もともとCore i7-3820は36.0倍(3.6GHz)なので、37.0倍(3.7GHz)~43.0倍(4.3GHz)までが実質のオーバークロック範囲となる。

Stream
Erazer Control Center/CPU倍率を41.0倍(4.1GHz)へ
Erazer Control Center/オーバークロックの説明
バイオハザード 6 Benchmark
Lenovo Rescue System
NVIDIAコントロールパネル

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 7の結果を見たい。参考までにCrystalMarkの結果も掲載した(本機は4コア8スレッドなので、CrystalMarkで対応できない。参考まで)。

 標準作動時、Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 8.1、メモリ 8.1、グラフィックス 7.9、ゲーム用グラフィックス 7.9、プライマリハードディスク 5.9。PCMark 7は4177 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 83090、FPU 79816、MEM 57955、HDD 17719、GDI 19208、D2D 17309、OGL 35840。

 オーバークロック時(4.1GHz)のWindows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 8.1、メモリ 8.1、グラフィックス 7.9、ゲーム用グラフィックス 7.9、プライマリハードディスク 5.9。PCMark 7は4267 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 86011、FPU 78921、MEM 62354、HDD 18237、GDI 22215、D2D 17497、OGL 39770。

 ストレージがHDDなので、それに引っ張られるのは仕方ないとして、標準作動時とオーバークロック時で比較すると、Windows エクスペリエンス インデックスは変化なし。PCMark 7は100程度上昇。CrystalMarkも全般的に上昇しているのが分かる。もともとパワーのあるCPUなので、標準作動時でも十分速く、体感的にオーバークロック時との差は分からなかった。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合 5.9。プロセッサ 8.1、メモリ 8.1、グラフィックス 7.9、ゲーム用グラフィックス 7.9、プライマリハードディスク 5.9
Windows エクスペリエンス インデックス(OC時)。総合 5.9。プロセッサ 8.1、メモリ 8.1、グラフィックス 7.9、ゲーム用グラフィックス 7.9、プライマリハードディスク 5.9
PCMark 7。4177 PCMarks
PCMark 7(OC時)。4267 PCMarks
CrystalMark。ALU 83090、FPU 79816、MEM 57955、HDD 17719、GDI 19208、D2D 17309、OGL 35840
CrystalMark(OC時)。ALU 86011、FPU 78921、MEM 62354、HDD 18237、GDI 22215、D2D 17497、OGL 39770

 以上のようにレノボ・ジャパンの「Erazer X700」は、Core i7-3820とGeForce GTX 660を搭載し、オーバークロックにも対応したゲーミングPCだ。レノボリキッドクーリングシステムと呼ばれる水冷CPUクーラーの効果で音もかなり静か。家での使用も全く問題ない。ストレージがHDDなのでファイルアクセス速度はいま一つだが、拡張ベイも豊富でSSDなどを簡単に増設できる。

 ゲーミングPCとしてはもちろん、家庭でもハイパワーなPCを使いたいユーザーの候補になりうる1台と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/