西川和久の不定期コラム
フォースメディア「BeCool」
~AAC/apt-Xに対応したコンパクトなBluetoothスピーカー
(2013/4/1 00:00)
フォースメディアは、香港iUi Design製のBluetoothスピーカー「BeCool」を、3月中旬より直営の「フォースメディアダイレクト 楽天市場店」で発売した。AV Watchでリリース記事を見たときに興味を持ったので入手した。早速試用レポートをお届けしたい。
コンパクトでAAC/apt-X対応のBluetoothスピーカー
「BeCool」は、フォースメディアのJ-Forceブランド製品となっている。このブランドは、ミュージックプレーヤーやスマートフォンのアクセサリ、各種デジタルグッズを扱っており、ラインナップを見ると、デジタルフォトフレーム、Bluetooth対応ワイヤレスFMトランスミッタ、Bluetoothキーボード、iPad用のドッキングステーションといったところから、面白いところでは住宅用紫外線除菌器、お風呂まるごとスピーカー(ただし生産完了)など、ちょっと気の利いたアイテムまで並んでいる。
筆者はかなり前に購入した充電式のコンパクトなBluetoothスピーカーを2種類所有しているのだが、対応しているオーディオコーデックがSBCのみなのと、音質や遅延にやや問題があった。とは言え、当初は再生するほとんどが音楽でBGM的な聴き方だったこともあり、この2点は気にならなかった。
ところが最近、ちょっとした時にnasne+Twonky Beamで動画を観ることが多くなり(もちろんYouTubeも)、遅延によって映像と音が合わないのが不満点となっていた。音質も気になるな、思っていたところにAV Watchのニュース記事が目にとまり、購入した次第だ。主な仕様は以下の通り。
フォースメディア「BeCool」の仕様 | |
---|---|
Bluetoothバージョン | Bluetooth 2.1+EDR |
Bluetoothプロファイル | A2DP(Wireless Stereo Bluetooth)、AVRCP(Bluetooth Remove Control)、HFP(Hands-free Profile) |
オーディオコーデック | SBC、AAC、apt-X |
通信距離 | 約10m(見通し距離) |
内蔵マイク | コンデンサマイク |
リアインターフェイス | Micro USB、3.5mmステレオミニジャック |
アンプ | 実用最大出力3W+3W(ステレオ)、S/N比90dB以上 |
スピーカー | 直径35mmフルレンジ防磁型×2、パッシブウーファー×1 |
その他 | マルチポイント接続対応 |
電源 | 内蔵リチウムイオン充電池(1,150mAh、最大連続10時間再生) |
外形寸法 | 約118×108×55mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 230g |
直販価格 | 8,800円(送料込) |
BluetoothのバージョンはBluetooth 2.1+EDR。対応するプロファイルは、A2DP(Wireless Stereo Bluetooth)、AVRCP(Bluetooth Remove Control)、HFP(Hands-free Profile)。ライン入力にも対応する。
内蔵スピーカーは直径35mmフルレンジ防磁型×2。防磁型なので周囲の機器に影響を与えない。パッシブウーファは、2基あるフルレンジの音圧を使って低音を増強する仕掛けだ。従って電気的な接続はなく、2.1chのシステムとは性格が異なる。アンプは3W+3W。
電源は1,150mAhのリチウムイオン充電池を搭載し、最大連続10時間再生が可能だ。充電は、リアパネルにあるMicro USBを使って行なう。
サイズは約118×108×55mm(幅×奥行き×高さ)、重量230gと、丁度手のひらに乗る感じのコンパクトさ。持ち運びも容易だ。
マルチポイント接続は2台のBluetooth機器を同時接続し、切り替えて使うことが可能だ。ただし通話用途に限られ、A2DPでの接続は再ペアリングが必要となる。
搭載しているオーディオコーデックは、SBC、AAC、apt-X。SBCはA2DPに必須で昔から使われているコーデックであるが、遅延が200~250ms。とてもオーディオ向きではない。加えてA2DPは、例えば元の音源がAACの場合、一旦非圧縮へ展開してから、SBCへ再圧縮、非圧縮の後に展開と、圧縮/展開を繰り返す。どちらも非可逆圧縮なのでデータ劣化は避けられない。
AACも非可逆圧縮であるが、オーディオコーデックがAACに対応していれば、トランスコードする必要なく、そのまま転送できるので、音質劣化が避けられる。apt-Xは、遅延が約32ms、SBCの5倍のビットレートで圧縮率は4分の1と、高音質が期待できるコーデックだ。
【お詫びと訂正】初出時にapt-Xの圧縮率を20分の1としておりましたが、4分の1の誤りです。お詫びして訂正させて頂きます。
もちろんAACとapt-Xを利用するには、対応したデバイスが必要になる。前者はiOS(4.3.1以降)機全般、後者は最近のAndroidスマートフォンやタブレットの一部のほか、apt-X対応のUSB接続Bluetoothアダプタを使えばPCなどからも利用できる。また、iPhone 4SやiPad 3までの旧タイプのDockコネクタ用にapt-X対応Bluetoohアダプタがあるようだ。この辺りはキーワード検索ですぐ見つかるので興味のある人は調べて欲しい。
価格は8,800円(送料込)。もっと安価なBluetoothスピーカーも山ほどあるが、特別高価でもないし、購入し易い価格帯だと思う。
届いた時、一番驚いたのはその質感だ。失礼ながら、ニュース記事に掲載されていた写真を見た印象は、筐体が安目なプラスティックで覆われたツヤありのブラック……と思っていた。ツヤありのブラックには違いないが、実物に安物な感じは微塵もない。手に持った感じも見た目の割にズッシリ感があり、全体的に好印象だ。写真からも分かるように、パッケージもかなりしっかり作られている。
前面には状態を表すLED、上面には丸い印と[-]、[+]、左下に小さいマイクのへこみ。左右は前面から回り込んだスピーカー用メッシュで覆われている。背面は、電源スイッチ、充電用のMicro USB、外部入力がある。裏側は柔らかめのゴム板が前後広めに配置され、机などでグリップする。
操作方法は非常に簡単だ。フロントにあるLEDは、充電時に青く点滅、充電完了でLEDが消える。作動中は、青点灯で「電源ON/バッテリ残40%以上/SBC接続(もしくはBluetooth接続無し)」、紫点灯で「「電源ON/バッテリ残40%以上/AACまたはapt-X接続」、赤点滅で「バッテリ残40%以下」となる。
充電は付属のACアダプタとUSB→Micro USBケーブルを使う。Nexus 7を持っていることもあり、コネクタ形状が全く同じなので、Nexus 7側のACアダプタで充電した。
ペアリングは電源をオンにして、上面の丸い印の部分を長押しすると「Discovering」と、音声ガイドが聞こえるので、機器側で「BeCool」を選択すればOKだ。音量調整は上面の[-]、[+]部分をタッチする。
また機器のコントロールは、丸い印の部分と[-]、[+]部分を2本の指で平行に+側へ滑らすと次のトラックを再生(指を離した場合)/再生中のトラックを早送り(指を離さない場合)、-側へ滑らすと逆の作動となる。このほか、指1本で滑らせば着信拒否やマイクミュートができる。
音声ガイドは、先の「Discovering」に加え、「Your device is connected」、「Your device is disconnected」、「Good bye」など、女性の声で行なわれる。
AACとapt-Xで高音質再生
今回テストした環境は、iPad 3とMac mini(Mid 2011)。前者はAAC、後者はapt-X接続となる。Mac mini(Mid 2011)は(同時期の同じBluetoothチップセットを使っているMacBook Proなど以降も含むと思われるが未確認)、apt-Xに対応しているがデフォルトではオフになっている。
オンにするにはターミナルを使い、BeCoolがオフの状態で以下の1行を入力する。本当にapt-Xになっているかの確認は、Optionキーを押しながら、ステータスバーのBluetoothメニューをクリック、BeCoolを選択すると「有効なコーデック」がapt-Xになっている。
defaults write com.apple.BluetoothAudioAgent "Enable AptX codec" -bool true
標準に戻すには以下の1行を入力する。先の方法で状態を確認するとSBCになっているはずだ。
defaults delete com.apple.BluetoothAudioAgent "Enable AptX codec"
さて肝心な音質の差であるが、これはもう誰が聞いても明らかにapt-Xの方が格段に上だ。加えて、SBCではBluetoothキーボードやマウスと併用すると、プチプチとノイズが乗ったりするが、apt-Xではエラー回復機能があるため、ノイズも乗らない。
ピュアオーディオ的な高域や低域まで延びているわけではないものの、バランスがよく、非常に聴きやすいサウンドでチープさはない。最大音量も十分。ボーカルは前に出て、各楽器の粒立ちも明瞭。低音もフルレンジのそれに自然に加わった感じだ。筐体全体が振動して低音を出していることもあり、机など音が振動しやすい場所に設置した方がボリューム感は増す。唯一惜しいのは元々幅が無いためステレオ感には乏しいこと。とは言え、1万円未満でこれだけ鳴れば満足度は高いだろう。
iPad 3はAAC接続で、nasne+Twonky Beamを使い、いろいろ動画を再生してテストした。音質に関しては、どちらもAACに固定され、AAC接続とSBC接続を切り替えて視聴できないので何とも言えないが、遅延は少し改善されており、音のズレはさほど気にならないレベルになっている。
AACでこれだけ改善されるなら、前半で書いた旧Dockコネクタ用のapt-X対応Bluetoothアダプタを是非使ってみたいところだ。ただ、iPhone 5やiPad 4のLightningコネクタタイプのアダプタは、検索した限りでは見つからなかった。iOS機でもapt-Xに標準対応すると嬉しいのだが。
なお、手元にある他の機器で試したところ、iPhone 4SはAAC、Nexus 7とモトローラXOOM、一般的なPC用USB接続Bluetoothアダプタは全てSBCでの接続となった。
以上のように、BeCoolは、AAC/apt-Xに対応したコンパクトなBluetoothスピーカーだ。3W+3Wの出力に加え、パッシブウーファを搭載しているのでサイズの割に低音も自然で豊か。赤く浮かび上がるタッチ操作系やフロントのLEDもイルミネーションっぽくいい雰囲気を醸し出す。
対応した機器が必要となるものの、音質も向上し、比較的購入しやすい価格帯と言うこともあり、従来のSBCで不満のある人は試してみる価値がある1台だ。