西川和久の不定期コラム

オンキヨーUltrabook「DR6A-US31」
~独自のサウンド技術が魅力的なUltrabook



 オンキヨー株式会社は、3月19日にUltrabookやスレートPCなどを数機種発表した。今回はその中から同社初のUltrabookが編集部から送られてきたので、試用レポートをお届けする。

●Ultrabookに同社ならではの付加価値

 これまで同社は、スタンダードA4ノート、モバイルノートなど数モデルのノートPCやスレートPCを扱っていた。中には14型の「DR6A-BS25」にVestaxとコラボした「DJコントローラー」のセットモデルがあったりと、オーディオ機器メーカーらしいラインナップも存在する。そして今回、同社として初のUltrabookとして「DR6A-US31」が発表された。主な仕様は以下の通り。

【DR6A-US31の主な仕様】
CPUIntel Core i7-2637M(2コア/4スレッド、1.7GHz/TB 2.8GHz、キャッシュ4MB、TDP17W)
チップセットIntel HM65 Express
メモリ4GB/PC3-10600/1,333MHz DDR3 SDRAM 204ピンSO-DIMM(1スロット/空き0)
SSD128GB
OSWindows 7 Home Premium(64bit)SP1
ディスプレイ14型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット
グラフィックスCPU内蔵Intel HD Graphics 3000、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力
ネットワークIEEE 802.11b/g/n、Gigabit Ethernet
その他USB 2.0×3、メモリカードスロット、音声入出力、130万画素Webカメラ
サイズ/重量332×228×15.8~19.3mm(幅×高さ×奥行き)/約1.69kg
バッテリ駆動時間最大約8.6時間(内蔵リチウムイオンバッテリ/7.4V 7,800mAh)
直販価格89,800円

 プロセッサはIntel Core i7-2637M。2コア4スレッド、クロックは1.7GHz。Turbo Boostで2.8GHzまで上昇する。キャッシュは4MB。TDPは17Wとなる。チップセットはIntel HM65 Express。メモリは4GB実装済みだ。スロットが1つなので実質最大容量となる。ストレージは128GBのSSDを搭載している。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 3000。外部出力として、ミニD-Sub15ピンとHDMI出力を備える。ミニD-Sub15ピンがあると、プロジェクタなどがアナログ入力の場合に役に立つ。コネクタも標準サイズのものが使われ、薄型のUltrabookにありがちな変換ケーブルや変換コネクタは必要無い。

 液晶パネルはちょっと珍しく、13.3型でも15.6型でもなく14型だ。解像度は1,366×768ドット。少しの差ではあるものの、13.3型の窮屈さもなく、逆に15.6型の様に間延びした雰囲気も無く、意外とちょうどよく感じる。

 ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。Bluetoothは非搭載だ。その他のインターフェイスは、USB 2.0×3、メモリカードスロット、音声入出力、130万画素Webカメラ。USB 3.0が無いのが残念なところだが、必要なものはおおむねそろっている。

 サイズは332×228×15.8~19.3mm(幅×高さ×奥行き)。重量は約1.69kg。7.4V/7,800mAhのリチウムイオンバッテリを内蔵し、最大約8.6時間駆動できる。

 販売は直販サイト「オンキヨーダイレクト」で89,800円。Office Home and Business 2010搭載モデルが114,800円となる。

 なお下位モデルとしてプロセッサにCore i3-2367M、ストレージがHDD 500GBになったSlimbook「DR6A-AS31」も用意され、プロセッサとストレージ以外はハードウェア、ソフトウェア共に「DR6A-US31」と全く同じ構成で直販価格は59,800円。用途によってはお買い得と言えよう。

天板と背面。シンプルで綺麗なヘアライン加工のアルミ素材。後ろ側面には何も無い正面。液晶パネル中央上にWebカメラ。パネル保護用のダンパーが8つある底面。天板と良く似ているがこちらはマグネシウム合金。左右側面の各ポートの刻印が見える
左側面。ロックポート、ミニD-Sub15ピン、USB 2.0×2、メモリカードスロットキーボードはアイソレーションタイプ。並びやキーピッチが変な部分は無い右側面。電源入力、Ethernet、HDMI出力、USB 2.0×1、音声入出力(コンボ)
キーピッチは実測で約19mmACアダプタコネクタはミッキータイプ。長さ約10cmとそれなりに小型だ重量は実測で1,699g

 天板や全体の色はシルバーでは無く、少しブロンド色がかっており(同社の表現ではディープシルバー)、派手でもなく地味でもなく、落ち着いたセンスの良いカラーリングとなっている。質感も良く、チープさは皆無。14型のパネルサイズに全体がうまくマッチした感じだ。重量が約1.69kgあるため、片手でヒョイと持ち上がるほど軽くは無いものの、持った時のバランスは悪くない。

 液晶パネルは最大輝度で十分明るく、最小にしてもそれなりに見えるため、バッテリ駆動時も有効だ。発色はニュートラルでコントラストも高い。視野角は上下/左右とも若干狭いが、このクラスとしては一般的だ。

 キーボードはアイソレーションタイプでキーピッチは19mm。14型なので、一部狭くなっている部分もあるが、特に破綻しているわけでは無い。強く押すと気持ちたわむが、これは許容範囲だ。ストロークは少し浅く軽め。パームレストは十分広い。

 タッチパッドは少し段差があり、表面はザラザラしている。ボタンは1本式の左右に傾くタイプだ。手前にHDD LEDなどが配置されていることもあり、システムの動きが確認し易い。

 熱やノイズ、振動に関してはTDP 17WのプロセッサとSSDという構成のため、全く気にならないレベルに抑えられている。

 サウンドであるが、SRS PREMIUM SOUNDなどを搭載していない普通のRealtek HDオーディオの割りには全体のバランスや抜けが良く、非常にまとまった音質だ。最大音量も十分にあり、コンテンツを楽しむことができる。加えて後述する「Pure Direct Audio Path」(PDAP)に対応した同社オリジナルの「PureSpace MUSIC」を使えば、例えばメール着信音など、Windowsのシステム音を出さずに、音楽や映像に没頭できる。同社ならではの拘りと言えよう。

●オーソドックスで使い易い構成

 初期起動時のデスクトップは同社のオーディオ機器が壁紙となり、雰囲気を出している。左側のショートカットは若干多目だろうか。Intel HD Graphics 3000とメモリ共有ではあるが、4GBあるのでヘビーに使わない限り大丈夫。

 SSDは「Micron C400 MTFDDAK128MAM」。リカバリエリアなどがあるものの、実質C:ドライブ1パーティションで約104.59GBが割り当てられている。空きは82.8GB。用途によっては不足を感じるかも知れない容量だ。そのほか、特に珍しいデバイスなどは無く、Intel HM65 Expressで構成されたUltrabookとしては標準的な構成となっている。

起動時のデスクトップ。同社のオーディオ機器がカッコいい壁紙。ショートカットは若干多めだデバイスドライバ/主要なデバイス。SSDはMicron C400 MTFDDAK128MAM。ほかは特別珍しいデバイスなどは無く、Intel HM65 Expressとしては標準的な構成SSDのパーティション。リカバリエリアがあるものの、C:ドライブ1パーティションで約104.59GBが割り当てられている

 プリインストールのアプリケーションは、「BookLive!Reader」、「ebi.BookReader3J」、「マカフィーセキュリティセンター」、「Windows Live Essentials 2011」、「PureSpace MUSIC」、「乗換案内」、「iフィルター 6.0」、「ATOK無償使用版」(セットアップ)など。多くはお馴染みのものなので、ここでは本機の特徴でもあるPureSpace MUSICを少し説明したい。

 このアプリケーションは、先に少し触れた同社独自のPure Direct Audio Pathに対応したメディアプレーヤーだ。PDAPは、Windowsのサウンドミキサーをバイパスし、ダイレクトに信号を伝達することで、Windowsが鳴らすシステム音などをコンテンツ再生時に鳴らさないようにできる。動画や音楽を観たり聴いたりしている時にメールの着信音などが鳴ると(しかも大音量で)不愉快だが、これを防ぐだけでなく、ミキサーをパスすることで音質の劣化も防ぐことができる。

 使い方はご覧のように非常に簡単。画面キャプチャはフルスクリーンであるが、ウィンドウ表示も可能だ。PDAPがオンの時は右上のステータスが変化する。PDAPのオン/オフは、設定/再生設定のチェックボックスで行なう。

PureSpace MUSIC/ホームPureSpace MUSIC/外部メモリ・フォルダPureSpace MUSIC/再生中(PDAP ON)
PureSpace MUSIC/設定PureSpace MUSIC/設定/再生設定PureSpace MUSIC/設定/バージョン情報

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.7。プロセッサ 6.9、メモリ 5.9、グラフィックス 4.7、ゲーム用グラフィックス 6.1、プライマリハードディスク 7.9。このクラスのUltrabookとしては標準的なスコアとなる。SSDも7.9と高速で、起動や終了、サスペンドからの復帰なども高速で快適に使用できる。

 CrystalMarkは、ALU 36137、FPU 36418、MEM 23578、HDD 37215、GDI 12981、D2D 2587、OGL 3497。こちらもWindows エクスペリエンス インデックスと同様、特に気になる部分は無い。グラフィックスに関してはIntel HD Graphic 3000なので妥当なところ。一般的な用途においては問題無いだろう。

 BBenchは、省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オンでの結果。バッテリの残5%で17,772秒/約5時間。これまで筆者が扱った他社のUltrabookと似たような値だ。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合 4.7。プロセッサ 6.9、メモリ 5.9、グラフィックス 4.7、ゲーム用グラフィックス 6.1、プライマリハードディスク 7.9
CrystalMark。ALU 36137、FPU 36418、MEM 23578、HDD 37215、GDI 12981、D2D 2587、OGL 3497
BBench。省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オフでの結果だ。バッテリの残5%で17,772秒/約5時間


 以上のように、DR6A-US31は、Core i7搭載で8万円台と比較的安価で、天板はヘアライン加工のアルミ素材、底面にマグネシウム合金の筐体で質感もバッチリ。加えて独自の「Pure Direct Audio Path」も良好だ。USB 3.0非搭載が惜しい部分であるものの、特にマイナス要因も無く、万人にお勧めできるUltrabookと言えよう。