西川和久の不定期コラム

iPad 2は2011年1番になれるか!?



 日本時間の3月3日、iPad 2が発表された。これで少なくとも今年(2011年)前半競い合うであろうタブレットの代表格が勢揃いした。去年(2010年)はiPad一色だったが、今年はそんなにうまく行くのだろうか? 思いつくままを書いて見たい。


●iPadのライバルたち

 iPad 2以外のタブレットと言えば、Android 3.0「Honeycomb」を搭載した、NTTドコモ「Optimus Pad L-06C」、KDDI「モトローラXOOM」がもうすぐ日本でも発売になる。まだ実機を触ったことはないものの、最近いろいろ公開されている動画などを見る限り、レスポンスも良く、かなり高速で動くのがわかる。

 プロセッサはどちらもTegra 2/1GHzでメモリ1GB。パネルと解像度は若干異なり、前者は8.9型/1,280×768ドット。後者は10.1型/1,280×800ドット。前面/背面カメラや加速度センサー、ジャイロセンサーを備える。

 次に山田祥平氏がコラムで触れた、webOSを搭載するHP「TouchPad」。プロセッサは、1.2GHzデュアルコアSnapdragonでメモリ1GB。9.7型のパネルで解像度は1,024×768ドット。前面カメラは無く背面カメラのみ。加速度センサー、ジャイロセンサーを搭載する。

 そしてBB Tablet OSを搭載するRIM(BlackBerry)「PlayBook」。プロセッサは、1GHzデュアルコアのOMAP4430。7型/1,024×600ドットのパネルだ。前面/背面カメラや加速度センサーを搭載している。

 後半の2機種に関しては現在日本では未発表であるが、ワールドワイドで見ると、ビックネーム2社がそれぞれOSも含め開発しているタブレットだ。素性の悪いはずが無い。実際公開されているデモ動画などを見ると良くできているし、ルックスもなかなかだ。個人的にはかなり気になっている。

 対するiPad 2は、Apple A5/1GHzのデュアルコアで、パネルは9.7型/1,024×768ドット、前面/背面カメラや加速度センサー、ジャイロセンサーを備える。メモリに関しては現在のところ不明だ(初代iPadは256MBだった)。

 発表前にいろいろな噂が出たものの、結局最低限の範囲のアップデートに留まっている。関連する新しいサービスなども特に発表されず、当日ネット経由でリアルタイムで発表会を見ていた筆者は「エッ、これだけ!?」と思ってしまった。

 余談になるが、その噂の中にiPhone 4と同様の「Retina ディスプレイ」が含まれていた。iPadの場合、解像度が4倍になると2,048×1,536ドット。個人的にはこれは絶対に無いと予想していた。理由はハードウェア的にはできるかも知れないが、コンテンツ制作サイドがパニックになるからだ。動画をドットバイドットにしようとすると少なくともフルHD以上が必要、写真も300万画素相当だ(ピンチによる拡大に対応すると更に高解像度が必要)。ネット経由で配信するにもアプリ内に内蔵するにもかなりの容量が必要な上、クオリティも相当上げなければならない。数年後は分からないものの、今年は無いと踏んでいた。

NTTドコモ「Optimus Pad L-06C」 KDDI「モトローラXOOM」
HP「TouchPad」 BlackBerry「PlayBook」

 本題に戻って、OSのアーキテクチャが違うので直接比較してもあまり意味は無いかも知れないが、ここで注目したいのはどれも1GHz程度のデュアルコア・プロセッサ、1,024×600〜1,280×800ドット程度の解像度を持つ7〜10.1型のパネル、前面/背面カメラ(背面カメラが無いものもある)、無線LANはもちろんBluetooth、加速度センサー、ジャイロセンサー(無いものもある)などを搭載し、ハードウェア的に見ると、ほぼ横並びの状態。プロセッサが全て違うため少し強引な表現になるが、多分処理能力は五十歩百歩。センサー類もほぼ同じ。できることに大差ないだろう。

 逆に言えば、初代iPadでは明らかにハードウェア的に不利だった。このタイミングでのiPad 2の発表は、どこよりも早く出荷し、出鼻をくじく作戦を取ったのだと思われる。

 さてハードウェア的にできることがあまり差が無いのだとしたら、デザインはもちろん、OSやアプリ、とりまく環境、販売チャンネル、サポートまで含めたサービス/ソフトウェア面が勝負の分かれ道になるのは明白だ。

 現時点では、iPad 2のハードウェアは同等でも、少なくとも初代iPadで1年先行している分、他社製品に勝っているのは当たり前。しかもiPad 2では厚みをiPhone 4より薄い8.8mm、軽量化にも成功するなど、より魅力的なスペックに仕上げ他を圧倒している。が、これは現時点での話だ。同社が1年でできたことを、他社が1年で追いつき追い越す可能性がゼロとは言い難い。

●iPadの強み

 1年先行している以外でiPadの強みは、iPod+iTunesからスタートし、何年もかけて地盤を整え、iPhoneを登場させ、そして爆発的な人気を築き上げたことに成り立っていることにある。ここまでの経緯も加えると1年どころの話ではないため、ライバルはそう簡単に追い越せない。ただ、もともとiTunesからスタートしたと言うのがキーポイントとなる。

 パーソナルユースを考えた場合、音楽、動画、Web、メール、ゲームなど(最近だと電子書籍も)は欠かせないものであり、その中心となるコンテンツをiTunesで一元管理できるのが、iOS搭載機の強みだ(逆に面倒な部分でもあるのだが)。更にアプリに関しては同社の厳しい審査が入るため、変なもの(ただ日本で普通に売られているものも内容によっては販売できない)が入り込む余地は少なく、基本的に安心して利用できる。

 従って普段自分が生活している環境にiTunesで管理しているコンテンツが既にあるのなら、タブレット購入を考えた場合、かなりの割合でiPad 2を選ぶことになる。

 もう1つの強みは、Apple 1社で、OS、ハードウェア、ソフトウェア、システム、アプリの審査に至るまで、1社で全てコントロールすることによって、(良くも悪くも)独自の世界観を出していること。先日の発表イベントでもスティーブ・ジョブズ氏が他のタブレットと比較してこの点を優位にあると説明している。

●iPad以外で困ることは!?

 だがもしiTunesが無い場合、もしくはiTunes(=Apple)に縛られるのが嫌で、できることや処理能力に大差無いなら他の選択肢も十分に考えられるというわけだ。HP「TouchPad」とRIM(BlackBerry)「PlayBook」に関しては情報が少なく分からないが、Android 3.0「Honeycomb」に関しては、iPadと比較して、アプリやコンテンツの自由度はかなり高い。

 余談になるが、これまでコンテンツクリエイターから、Android Marketでコンテンツ販売するのは敬遠されがちだった。理由はクーリングオフが24時間以内だったからだ。24時間もあると、例えば写真集や電子書籍など、ものによっては時間内に読み終わる。そこから返品されても困るわけだ。この点は、2010年12月13日に15分以内に改善され、にわかに制作サイドがまた活気付き始めている。

 1社で全ての点は、Android以外は同じスタンス。ビジネスかパーソナルかどちらに軸足を置くかの違いはあれど、きっと統合的な環境を作り上げるだろう。
Android 3.0。3Dデスクトップ的な動きが特徴的 webOS。カードと呼ばれるアプリケーション BB Tablet OS。シンプルでクールなUIだ

 さて、実際筆者が自宅で使っているiPadの用途の99%は、Webブラウザ、メール、写真/動画再生、電子書籍(主にマガジン系)。文字入力はメールとネットへの書き込み程度。音楽に関してはiPhoneもあるためデジタル出力のあるドックからAV機器へ、動画に関しては最近Apple TVで再生することが多くなった。もちろん面白そうなアプリは片っ端からダウンロードしているものの、使用頻度はあまり高くない。

 もちろんこの例はあくまでも筆者個人の使い方であり、ゲームが中心だったり、ビジネスが中心だったり、人によって使い方はさまざまなので、iPadでなければならないケースもあるだろう。とはいえ一般的にはWebブラウザやメールなどネット系+写真・音楽・動画+αの、αの部分が何に重心を置くのか程度の違いとなる。

 こうして見るとiPadでなければなからい理由は特になく、他のタブレットでも十分対応できる範囲だ。従って安くて、カッコ良くて、軽い&薄い、液晶パネルが見易い、バッテリも持ちが良い、タッチの反応が良い、USBなど他のインターフェイスに接続しやすい……など、何か複数の要素でiPadを上回るものがあれば乗り換える可能性は十分ある。iPad 2に関する他の記事などを見ていると、既にiPadを持っている場合、iPad 2は様子見(もしくは見送り)と書いているケースが多く、これは初代iPadからの差分にあまりグッと来ていない証拠でもある。

 従って、まだまだiPad以外のタブレットが入り込む余地は十分にあり、競合他社はiPad 2の発表を見ていろいろ策を練っていると思われる。まずは厚みと重さを改善する検討をしているのではないだろうか。

 以上のように、まだiPadが出てからたった1年。これまでは競合がほぼ無い状態と言うこともあり、iPadだけに注目が集まったが、今年以降はAppleが想像を超えた必殺技でも出さない限り、そうは簡単に行かないことが予想される。

 現状のスペックだとiPad 2が有利なのは違いないが、他社の次モデルは、iPad 2の発表を受けて相当気合の入ったものとなるだろう。いろいろなメーカーが競い合えば、より良いタブレットがより早いタイミングで投入される様になり、ユーザーとしては嬉しい限りだ。

 このままiPadが逃げ切るかどうかは、まだ誰にもわからない。