西川和久の不定期コラム

キヤノン「PIXUS iX6530」
~W黒に対応しスタイリッシュでコンパクトなA3ノビ機



 少し前にキヤノンのインクジェット複合機のレビューを掲載したが、今回は同じ日に発表された、A3ノビに対応したインクジェットプリンタ「PIXUS iX6530」をご紹介する。4月上旬発売予定なので、今回は試作機によるレビューとなる。あらかじめご了承いただきたい。今時のA3ノビ機はどんな感じなのか非常に興味のあるところだ。


●PIXUS iX6530の仕様

 これまで同社のA3ノビ対応インクジェットプリンタは、自動両面/前面給紙対応の「iX7000」、画質・スピードとも優れたパフォーマンスモデルの「iX5000」の2機種だったが、今回発表されたのは、この中間に相当する「PIXUS iX6530」となる。また型番的には中間なのだが、解像度最高9,600dpi&最小1plは、他の2機種(最高4,800dpi&最小2pl)より高性能だ。この上に「PIXUS PRO」というシリーズがあるが、そちらは写真印刷に特化したモデルとなっている。主な仕様は以下の通り。

・全色独立インクタンクシステム、顔料系黒インク+染料系黒インク(W黒)+染料系CMYインク、9,600×2,400dpi/最小1pl、計4,608ノズル
・普通紙A3/写真用紙A3ノビ対応
・背面トレイ最大積載枚数 普通紙150枚/郵便はがき40枚
・A3ノビ写真印刷速度 キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド:約2分
・A4普通紙印刷速度 普通紙カラー:約8.8ipm/普通紙モノクロ:約11.3ipm
・USB×1
・549×299×159mm(幅×奥行き×高さ)/約7.6kg
・価格32,980円(直販予定価格)

 インクカートリッジは全色独立。顔料系黒インク+染料系黒インクのW黒に、染料系CYMの構成で、計5種類となる。最高解像度とインク滴サイズは先にあげた通り、9,600×2,400dpi/最小1pl。同社のA3ノビ対応機としては唯一の性能だ。また、A3ノビ対応+染料系CMY+染料系黒なので、高画質の写真プリントを大迫力のサイズで印刷することができ、写真愛好家もターゲットにしていると予想される。もちろんW黒の顔料系黒インクを使ったドキュメントの印刷は普通紙でもシャープだ。

 各色ノズル数は、C/M×各1,536ノズル、Y/BK×512ノズル、顔料BK×512ノズルの計4,608ノズル。上位機種のiX7000は、C/M×各1,024ノズル+他は512ノズルなので、先の解像度と合わせ、この部分もiX6530が上回っている。対応インクカートリッジは、BCI-326C/326M/326Y/326BK/BCI-325PGBKとなる。

 給紙は背面トレイのみ。前面給紙カセットは無い。最大積載枚数は、普通紙で150枚、郵便はがきで40枚だ。

 インターフェイスは、USB×1。メディアリーダやフロントUSBポートなどは搭載していない。ネットワークにも有線/無線共、非対応となっている。とてもシンプルな仕様といえよう。

 また、従来機種iX5000に比べ、幅で約5cm、奥行き約2cm、高さ約3.5cmも小さくなった。比較対象としてはかなり前のモデルになるが、筆者がその昔所有していた同社のA3ノビ機「PIXUS 9900i」(2004年春モデル。8色インク搭載機/約6万円)は、577×334×182mm/約9.5kgと、かなり大きいことが分かる。参考までに、先日掲載した同社の複合機「PIXUS MX883」は、491×448×218mmだ。意外と奥行きと高さがあり、逆にiX6530がコンパクトに見える。

 印刷速度は、A3ノビ写真印刷速度/キヤノン写真用紙・光沢 ゴールドで約2分、A4普通紙印刷速度で普通紙カラー:約8.8ipm、普通紙モノクロ:約11.3ipmと速い。特にA3ノビの写真印刷が約2分とは、昔使ってたモデルとは桁一つ違っている。

 販売予定価格は32,980円。複合機もさることならが、A3ノビ機も安くなったというのが個人的な感想だ。

フロント。排紙トレイを収納した状態は、非常にフラットで高さも無くコンパクト背面。左側にUSB、右側にメガネタイプのACコネクタ前面排紙トレイ。フロントパネルを開け、内部から引っ張り出す。4段階になっている。写真の用紙はA4サイズ
背面トレイA4用紙をセットするとこんな感じだ。A3ノビ対応なので、トレイにはまだ余裕があるパネルを上げたところ。インクタンク交換時にヘッドが中央に移動する一般的な構造トレイを全て伸ばしたところ。収納した状態ではコンパクトだが、さすがに全て伸ばすと奥行き約75cmと、結構な設置面積が必要となる

背面トレイにA3ノビ用紙をセット、排紙トレイに印刷済みのA4ノビ用紙があると、こんな感じとなる

 実機が届いてまず驚いたのは、箱のサイズがコンパクトなこと。先に書いたように、筆者は5年ほど前まで複数のA3ノビ機を所有していたが、とにかく送られて来た箱が巨大だったことは今でも忘れていない。加えてここのところインクジェット複合機を続けてレビューしていた関係で、事務所の中は結構なサイズの箱だらけになっていた。それらと比較しても「これでA3ノビ機? 」といった感じだ。

 仕様からもわかるように、幅だけは用紙の関係からそれなりにあるものの、奥行きと高さは物によっては複合機よりも小さい。従って梱包している箱はもちろん、実際取り出しても「幅が大きい!」より「A3ノビ機の割には小さい!」の方が先になってしまう。

 デザインは、ご紹介した「PIXUS MX883」同様、光沢黒と非光沢黒が使われ、オールブラック。スタイリッシュでかっこいい。この配色の難点はもう何度も書いているので今回は省略する。

 またコンパクトと言っても、ご覧のように、後ろトレイと排紙トレイを引っ張り出し、A3ノビ用紙を置くと大迫力。実質の設置場所はそれなりのスペースが必要となる。

 作動音に関しては、後半の動画を参考にして欲しいが、ここ最近レビューした機種の中では一番静かだ。これならホームユースで深夜プリントしてもほとんど気にならないだろう。

●セットアップ

 対応OSは、Windows XP/Vista/7と、Mac OS X 10.4.11以降。PCとのインターフェイスがUSBのみなので、特に難しい部分は無く、インストールできる。

 インストールされるソフトウェアは、「IJプリンタードライバー」、「マイ プリンタ」、「Solution Menu EX」、「Easy-WebPrint EX」(ダウンロード)、「電子マニュアル」、「Easy-PhotoPrint EX」、「Adobe RGB(1998)」。複合機と違い、純粋なプリンタなので、スキャナ関係などのアプリケーションやドライバは含まれず、その他の構成は同じとなっている。

 またこのプリンタは、ヘッド位置調整が必要で、調整時、A4の普通紙を1枚用意し、実行する。数分ほど待てば自動的にヘッド位置の調整が終了する。

インストーラ起動おまかせインストール選んでインストール
警告ダイアログへの対処のお願いインストール中Easy-WebPrint EXはダウンロード・インストール
プリンターの接続接続を認識ヘッド位置調整
ヘッド位置調整開始調整用パターン印刷中終了

●使い勝手

 インストール直後のデスクトップは、電子マニュアルとSolution Menu EXのショートカットが追加され、Solution Menu EXが起動した状態になっている。単機能のプリンタなので、Solution Menu EXが表示している項目は、「フォトプリント」、「キヤノンウェブサービス」、「ヘルプと設定」、「アプリケーションの起動」、「オンラインショッピング」、「インフォメーション」のみだ。

インストール直後のデスクトップデバイスとプリンターに「Canon iX6500 seriesが追加された」Canon iX6500 series活用ガイド

 デバイスとプリンター/Canon iX6500 seriesのパネルには、「プリンタの管理」、「Solution Menu EXの起動」、「電子マニュアル」、「サポート」、「写真の印刷」、「プリンターの状態とインクの情報」の項目がある。通常はWindows 7の作法通り、このパネルを開けば、プリンタの状態やメンテナンスは全て行なえる。

 印刷設定のパネルは、「クイック設定」、「基本設定」、「ページ設定」、「特殊効果」、「印刷設定/ユーティリティ」の5つのタブに別れている。

 「クイック設定」には、よく使う項目として、「標準印刷」、「文書印刷」、「用紙節約印刷」、「写真印刷」、「封筒印刷」が設定済みだ。また各項目でその下にある「追加機能」に表示される内容が違うので、初めて操作する時は、一通り選び、何がどう違うのかチェックした方が無難だろう。

 「基本設定」は、紙の種類/給紙方法/印刷品質/色・濃度/モノクロ印刷などの設定ができる。

 「ページ設定」は、用紙サイズ/ページレイアウトの設定。ページレイアウトは、等倍/フチなし全面/フィットページ/拡大・縮小/割り付け/分割・ポスターなどの指定ができる。特にこのiX6530はA3ノビ機なので、分割して貼り合わせれば更に大きなプリントを得ることが可能だ。

 「特殊効果」は、イラストタッチ/単色効果/VIVIDフォト/イメージデータ補正/オートフォトモード/デジタルカメラノイズリダクションなど、主に写真印刷用のファンクションとなっている。

デバイスとプリンター/Canon iX6500 series印刷設定/クイック設定印刷設定/基本設定
印刷設定/ページ設定印刷設定/特殊効果印刷設定/ユーティリティ

 動画は、A3ノビ用紙に写真をフチなしで印刷したものと、A4普通紙にモノクロ印刷したものを掲載した。給紙が始まってから、前者で約3分、後者で約6秒とそれなりに速く、特にA3ノビにフチなしプリントで約3分は速い。調子に乗ってどんどんプリントしてしまいそうな速度だ(笑)。

【動画】A3ノビ用紙に写真をフチなし印刷で約3分
【動画】A4普通紙モノクロ印刷で約6秒

 また今回、写真プリントに関しては一般的な染料系インク4色なので、あまり高画質は期待できないのではと思ったが、同時に送られて来た、「キヤノン写真用紙・光沢 プロ/プラチナグレード」を使ったところ、かなりの画質だ。作品への需要レベルは個人差もあるので、何とも言えないものの、用紙を選べば写真愛好家がA3ノビプリントして楽しむには十分な画質だ。

 A4普通紙に顔料系黒インクで印刷したモノクロプリントは、にじみも無く、グレートーンも綺麗でドキュメントプリントにも活用できる。写真がメインでたまにモノクロドキュメント(その逆も)と言う用途でA3ノビ(ただし、普通紙の場合の最大サイズはA3)が必要なユーザーにはピッタリのプリンタだ。

 参考のために、A3ノビ用紙とA4用紙、L判用紙のサイズが分かる様に並べた写真を掲載した。印刷結果だけの写真を見る限り、いつものL判プリントと変わらない様に見えるが、実のところ、こんなにもサイズが違う。お気に入りの写真をここまで大きくプリントできるのは、なかなか嬉しいものだ。

A3ノビカラー印刷A4普通紙モノクロ印刷A3ノビ用紙とA4/L判用紙とのサイズの違い

 Solution Menu EXのキヤノンウェブサービスには「ソリューションテンプレート」が用意されている。これは同社が無料で配布している、いろいろな業種に向けたMicrosoft Wordのテンプレート集だ。カテゴリとしては、「飲食店」、「販売・小売」、「オフィス」、「掲示物(地域・公共)」、「その他」の5タイプ。

 A3/A4用とB4用の2サイズが用意され、Windows用にzipファイル、Mac用にdmgファイルになっている。Webブラウザからファイルをダウンロード、展開、Microsoft Wordでテンプレートを元に編集すれば、簡単に見栄えの良いプリントが得られ、先に書いた、レイアウトの分割印刷機能を使い貼り合わせばA3ノビより大きいポスターなども作ることもできる。デザインがなかなかうまくできない時は、使ってみるといいだろう。

ソリューションテンプレート/Homeソリューションテンプレート/飲食店ソリューションテンプレート/飲食店/三角スタンドメニュー

 以上のように「PIXUS iX6530」は、染料系黒インク+顔料系黒インクのW黒なので、ビジネスにも使える上、写真愛好家ならA3ノビの大迫力プリントが約2分、フチなしでも3分で印刷できるなかなか魅力的なカラーインクジェットプリンタだ。しかもスタイリッシュでA3ノビ機としてはコンパクト。

 A3やA3ノビへのプリントが多い、もしくは撮った写真をもっと大きく印刷したいユーザーにお勧めの1台と言えよう。