西川和久の不定期コラム

エプソン「PX-673F」
~A4用紙が500枚入るFAX対応インクジェット複合機



 エプソンは2月4日、ビジネス用インクジェット複合機4機種と、写真印刷に特化したA3ノビ対応プリンタ1機種を発表した。今回はその中でFAX機能搭載など、ハイエンドモデルとなる「PX-673Fを」ご紹介する。

●PX-673Fの仕様

 同社のインクジェット複合機、最上位モデルは、染料系インクカートリッジを採用した「EP-903F」、そして今回ご紹介する顔料系インクカートリッジを採用した「PX-673F」と2タイプある。

 どちらもタッチ式の操作パネル、両面印刷やFAX搭載など、インクシステム以外は似ている部分が多いものの、前者は主に家庭用で、CD/DVDレーベルプリント機能がある代わりに、ADFは片面のみ、前面給紙カセットは普通紙専用と写真L判専用の二段となっている。対して後者は、ビジネス用だ。主な仕様は以下の通り。

・顔料系4色独立インクシステム、MACH方式/5,760×1,440dpi、カラー9.5ipm/モノクロ15ipm
・主走査:2,400dpi/副走査:2,400dpi LED光源CISセンサー搭載
・自動両面プリント/両面コピー対応
・前面給紙カセット A4:カセット1(上)/カセット2(下)共最大250枚計500枚、ハガキなど:カセット1のみ最大50枚
・L判写真プリントのスピード約56秒
・無線(IEEE 802.11b/g/n)/有線LAN(10/100Base-TX)/USB 2.0×2、メモリカードスロット
・スーパーG3・カラーFAX(PCFAXは送信のみ)
・446×368×300mm(幅×奥行き×高さ)/約9.8kg
・店頭予想価格39,980円

 インクカートリッジは、CMYK4色独立、にじみが無く水にも強い顔料系で、耐光性45年、耐オゾン性30年の「つよインク200X」。4色パック/IC4CL6165、ブラック/ICBK61、シアン/ICC65、マゼンタ/ICM65、イエロー/ICY65が用意されている。

印刷速度は、カラー9.5ipm/モノクロ15ipm。両面印刷にも対応している。スキャナは、LED光源、主走査2,400dpi、副走査2,400dpiのCISセンサーを搭載。2パス式であるが両面読込に対応したADFも標準装備だ。

 その他のインタフェースは、有線LANに10/100Base-TX、無線LANにIEEE 802.11b/g/n、PCと接続するUSBポート(左側)、デジタルカメラなどに接続するUSBポート(フロント側)、メモリカードスロット、スーパーG3・カラーFAXとなる。

 そして最大の特徴である、2段の前面給紙カセットは、普通紙なら、1段目2段目共250枚セットでき、計500枚と大容量。オプションで2段になる複合機もあるが、プラス1万円程度かかることを考えると、標準で2段なのは嬉しいポイントと言えよう。また1段目はL判の写真用紙など普通紙以外もセットできる。下側の2段目は普通紙専用だ。

 店頭予想価格は39,980円前後。このクラスの複合機としては、他社も含め標準的。特に高価と言う分けでは無い。

 なお、前面給紙カセットが1段の「PX-603F」も同時に発表・出荷された。単にカセットが1段か2段かの差だけではなく、カラーの印刷速度7.2ipm、2.5型の液晶パネルなど操作系やデザインも含め違っている。サイズは446×360×226mm(幅×奥行き×高さ)。高さが約8cmほど低くなる。店頭予想価格は1万円安い29,980円となっている。

フロント。左側にメモリカードスロットとUSBポート。二段式のカセットは迫力があるリア。右側にFAX用の電話ラインイン/アウト、その下はメガネタイプのACコネクタ前面給紙カセット。1段目はL判など写真用紙もセットできる。2段目は普通紙専用。計500枚もセット可能だ
操作パネル周辺。左側に電源ボタンとWiFiのLED。中央に3.5型のカラー液晶ディスプレイとタッチ式の操作パネルスキャナー部。左上が原点インク部。右側にインクカートリッジをセットするボックスが見える
左側面。EthernetとUSBポートがある。右側には何もないADF。普段は畳んだ状態になっている。最大A4を30枚もしくは3mmセットできる全て開けたところ。ADFと排紙トレイを開いたところ。扉の写真が閉じた状態であるが、あまり大きく感じない

 二段式のカセットが標準装備の複合機と聞いて、はじめはかなり大きいイメージを持っていたのだが、箱から出して見ると、意外とコンパクトに感じる。もちろんそれなりに大きく、高さも普通の複合機より10cmほど高いのだが、フットプリントが変わらないため、巨大と言うイメージより、逆にコンパクトと思ってしまうのだろう。またADFや排紙トレイを閉じている状態だと凸凹が無くボックス型になっているのも理由の一つだ。以前紹介した「HP Officejet Pro 8500A Plus」の方が仕様的には小さいものの、凸凹も多く大柄なので、一見「でかい!」と思ってしまう。

 加えてリアは中央の大きい四角い部分がフラットで、それ以外は奥に配置しているため、壁などにピッタリ付けることが可能だ。

 外装は“ツヤあり黒”と“ツヤ無し黒”の2パターンが使われ、面積的にはツヤあり黒の方がかなり少ない。従ってほとんど指紋あとが気にならず、一部ツヤあり黒になっていることによって高級感を醸し出している。なかなか考えられたデザインだ。

タッチ式の操作パネルは傾きが付けられるため、一番見やすい位置に固定でき便利。またインクジェット複合機は、電源ONやしばらく使わないでいると、ヘッドクリーニングなどが自動的に動き、実質使えるようになるまで少し時間がかかるのだが、比較的立ち上がりも早くイライラすることもない。

 マクロ的に見るとプラスチッキーな部分やガタつくところもあり、コストダウンの影響が見えるのだが、トータルとしてはそれを感じさせなく仕上がっているのは、さすが国内メーカーと言ったところだろう。ただ、染料系インクのEPシリーズより、若干作動音は大き目だ。この辺りは、後半に掲載した動画を参考にして欲しい。

●セットアップ

 対応しているOSは、Windows XP/Vista/7(32/64bit版)、Mac OS X 10.4.11以降となっている。

 インストールされるソフトウェアは、「スキャナドライバー」、「プリンタードライバー」、「電子マニュアル」、「ネットワークガイド」、「読んde!!ココ パーソナル」、「Epson Event Manager」、「E-Photo」、「PRINT Image Framer」、「EpsonNet Setup」、「Epsonプリンターウィンドウ!3」、「EpsonNet Print」、「FAX Utility」、「MyEPSON Connect」。ネットワークとFAXに対応している分、PX-403Aと比較してモジュールが増えているものの、これまで同社が添付しているソフトウェア群と同じ構成だ。一括インストールか、自分で選んでインストールかの選択ができる。

Install Navi Ver.5ソフトウェア一覧簡単インストール
インストール中ネットワーク接続確認ネットワーク設定が初回かの確認
無線LAN接続確認設定方法確認(ここでは本体パネルで設定を選択)本体側の設定ガイド

 LANの設定は、本体側で先に設定を済ませるか、ソフトウェアのインストール中に一旦PCとUSBケーブルを接続して自動的に環境設定する方法がある。今回は前者で行なったが、ネットワークに詳しくない人は後者の方が確実だろう。

 本体側のLANの設定は有線LANか無線LANの2パターン。排他式なので同時に使うことはできない。無線LANに関しては、SSIDを選択/セキュリティーキーを入力する「シンプル設定ウィザード」、AOSS/WPS対応の「プッシュボタン自動設定」、WPS対応の「PINコード自動設定」がある。

EpsonNet Setup/ファイアウォール警告EpsonNet Setup/プリンター検索中EpsonNet Setup/メモリカードスロットのファイル共有設定
EpsonNet Setup/設定内容送信中EpsonNet Setup/ドライバーの設定EpsonNet Setup/接続設定完了

 ネットワーク環境の設定が終った後、FAX関連の設定を行なう。ここではスキップして、後述するFAX Utilityでセットすることもできる。

続けてFAXの設定自局名と自局番号の設定自動受信設定
ダイアルトーン検出設定設定内容の確認インストール終了。リブートが必要

●単独使用/プリント

 単独使用でのプリントは写真印刷専用だ。対象はメディアスロットにあるメディアか、USBで接続された機器となる。

 モードとしては、「写真を見ながら選んで印刷」、「すべての写真を印刷」、「いろいろなレイアウトの印刷」、「すべての写真をインデックス印刷」、「スライドショーを見ながら印刷」、「写真をコピー」、「外部記憶装置からの印刷」がある。レイアウトに関しては、2面/4面/8面/20面/上半分/下半分/楕円1面/楕円上半分/証明写真/A4額縁サイズの選択ができる。

 設定や補正に関しては、「用紙と印刷の設定」用紙サイズ/用紙種類/フチなし設定/印刷品質/フチなしはみ出し量/日付表示/トリミング/双方向印刷。「写真の色補正」自動画質補正/補正モード/赤目補正/フィルター/明るさ調整/コントラスト/シャープネス/鮮やかさ調整などに対応している。

 プリントは以前紹介した「PX-403A」より、若干落ち着きがある感じだが、トーンは同じで、なかなかのクオリティ。普段使いなら十分以上だ。

写真の印刷/写真を見ながら選んで印刷枚数をセットして[スタート]で印刷開始綺麗な写真が印刷された

【動画】L判フチ無し写真プリント。[スタート]ボタンを押してから約60秒

●単独使用/スキャナ

 スキャンは大きく別けて「原稿をスキャンしてメモリカードに保存」、「原稿をスキャンしてパソコンへ」の2パターンの対応。ADFが両面対応なので、ある程度まとまった量の紙物をPDF化する時などは便利だ。

 オプションとしては、保存形式:JPEG/PDF、原稿の両面設定:片面/両面、スキャン範囲:A4/自動キリトリ/最大サイズ、原稿タイプ:文字/写真、保存品質:速度優先/画質優先、文章の向き・とじ位置:縦・長辺とじ/縦・短辺とじ/横・長辺とじ/横・短辺とじなどの設定できる。

スキャン/原稿をスキャンしてメモリカードに保存保存形式はJPEGかPDFの選択ができるメモリカードへPDFで保存された

●単独使用/コピー

 コピーは、片面/両面原稿、片面/両面印刷に対応している。ADFもあるので複数枚の原稿を一気にコピーできる。

 用紙とコピーの設定では、レイアウト(A4原稿を2アップ、B5原稿を2アップもあり)/両面/倍率/用紙サイズ/用紙種類/給紙方法/印刷品質/文章の向き・とじ位置/両面・乾燥時間/フチなしはみ出し量などの指定ができる。もちろん両面の設定は片面→片面、片面→両面、両面→片面、両面→両面と、全ての組み合わせに対応。倍率もオートフィットや定型用紙に合わせることも可能だ。

 4in1など特殊なレイアウトには対応していないが、必要十分な機能となっている。コピーのクオリティも高い。

コピー用紙とコピーの設定で両面→両面を設定両面カラーコピー完了

【動画】カラー両面コピー。[スタートボタン]を押してから約56秒

●単独使用/FAX

 FAXの送信設定は画質/濃度/両面設定。送信方法としては、手動ダイアル、短縮ダイアル(最大60件)、グループダイアル(最大30宛先)、順次同報送信(最大30宛先)、リダイアル、時刻指定送信。受信は、自動受信、手動受信、ポーリング受信。FAX機能診断やレポート印刷にも対応している。

 本体内にあるメモリは、最大約180枚もしくは30件の受信FAXを保存できる。ただし、停電など電源が落ちた場合には保持されず、加えてメモリがいっぱいになった場合は、古いものから自動的に消えていくので注意が必要だ。

 また、HP Officejet Pro 8500A Plusの受信データをメール送信したり、PCの指定フォルダへ保存するような、デジタルSEND機能は無く、PC FAXは送信のみの対応となっている。

FAX送信/メインパネル電話番号入力FAX送信設定

●単独使用/その他

 その他の機能としては、データ保存、ファイル全削除、ノート罫線機能がある。データ保存は、メモリカードのデータをフロントのUSBポートへ接続したUSBフラッシュメモリやCD/DVDメディアへバックアップできる機能だ。ファイル全削除はメモリカードのデータを削除する。

 ノート罫線は、罫線(大)/罫線(小)/罫線(マス目)/便箋・写真・罫線なし/便箋・写真・罫線ありの5タイプを印刷できる。また便箋に使う写真はメモリカードから設定する。

データ保存、ノート罫線データ保存はメモリカードのデータをバックアップできるノート罫線はいろいろなタイプの罫線をプリントできる

●PCからの使い勝手

 今回はビジネス向けFAX搭載の最上位機種と言うこともあり、E-Photo、読んde!!ココパーソナル、Epson Event Manager、PRINT Image Framerなど、同社の一般的なアプリケーションの説明は省略し、特化した部分のみピックアップする。

 まずプリンタドライバは印刷用とFAX用で2種類ある。つまりアプリケーションから見れば、紙に印刷するのもFAX送信するのも、プリンタドライバだけの違いで、印刷することには変わりない。ただし、FAX用のドライバは、モノクロ送信が主なため、一般的なカラー印刷用のドライバよりカラーがモノクロになった場合の見え方など工夫されている。

 FAX Utilityは、電話帳や本体側のFAX機能の設定、送付先設定などの機能を持つ。Outlook ExpressやWindows Mailで作成したアドレス長のデータをインポートすることも可能だ。

 EPSON Scanは、PX-403Aでは全自動モード/ホームモード/プロフェッショナルモードの3パターンだったが、全自動モードが無くなり、ホームモード/オフィスモード/プロフェッショナルモードと、主にドキュメントスキャン用のオフィスモードが加わっている。

 またネットワーク接続にも対応しているので、オンラインマニュアルは「電子マニュアル」と「ネットワークガイド」の2部構成になっている。どちらもhtml形式だ。

 フロントにあるメモリカードスロットはネットワーク共有が可能。設定でリードオンリーかリードライト可能かの設定ができる。

 他のユーティリティも含め、随分前からバージョンアップを繰り返し同梱されているソフトウェアばかりで、非常に安定して作動し、安心して運用できる。

プリンタドライバ/PX-673F(ネットワーク)プリンタドライバ/PX-673F(FAX)FAX Utility/メインメニュー
FAX Utility/PC-FAX電話帳FAX Utility/送付先設定プリンターのFAX設定
EPSON Scan(オフィスモード)フロントのメモリカードスロットをネットワーク共有Epson PX-673Fネットワークガイド

 以上のように、PX-673Fは同社の顔料系インクジェット複合機の最上位モデルに相応しく、大型液晶ディスプレイにタッチ式の操作パネル、A4最大250枚二段の計500枚も入る前面給紙カセット、両面印刷/両面コピー対応、そしてファックス搭載と、全てが入った複合機だ。PC FAXは送信のみと言うのが残念な部分ではあるが、特に普通紙が500枚セットできる前面給紙カセットにグッと来た人にお勧めの1台と言えよう。