西川和久の不定期コラム

Android 3.0 SDKでHoneycombの画面を見る



 日本時間の2月23日、Android 3.0 SDKが公開された。このバージョンは、Honeycombのコードネームで呼ばれ、これまで主にスマートフォン用だったAndroidのタブレット版に相当する。SDKには仮想デバイスが含まれているので、画面キャプチャを中心に、これから登場するであろう、次世代Androidタブレットのイメージを先取りしたい。

●仮想デバイスを使うための準備

 すでに、Android 2.xを搭載したタブレットマシンがいろいろあるが、これらのバージョンはスマートフォン用であり、使ってみると、タブレットと言うより、画面の大きいスマートフォンを触っていると言う方が近い表現となる。特に日頃iPadを使っているだけに、余計にそう思うのだろう。

 一番の差は、(アプリにもよるが)大きくなった画面を縦にしても横にしても、表示している内容に違いがないこと。例えば、iPadのメールアプリは、縦にすれば1ペイン、横にすれば左側は件名一覧、右側にその内容の2ペインと、表示形式は変わる。だが、Android 2.xは縦でも横でも、まず件名一覧が表示され、タップすると内容表示へスライドするだけで、大画面を生かし切れていない。一方、Android 3.0はタブレット用最適化が図られている。

 Androidはアプリケーション開発用SDKが公開されており、誰でも使うことができる。試しに仮想デバイスを動かすだけであれば、JDKとSDKさえあれば良い。現在、Windows版、Mac OS X版(Intel CPUのみ)、Linux版(同)がある。セットアップ方法などは、今回の趣旨から外れるので簡単に解説するのみとするが、JDKと該当するOSのSDKをインストール、使用するパッケージを選択/ダウンロードするだけの簡単なもだ。

 Windows版であれば、「SDK Manager」を起動、Mac OS X版であれば、zipを展開すると「android-sdk-mac_x86」と言うフォルダが出来るので、その中のtools/androidコマンドを起動すれば、「Android SDK and AVD Manager」が立ち上がる。初期状態では何もパッケージが入っていないので、該当するパッケージを選びインストールする。今回は3.0の仮想デバイスが目当てなので「SDK Platform Android 3.0,API 11,revision 1」があればよい。

Android SDK and AVD ManagerVirtual devicesCreate new Android Virtual Device

 Virtual devicesは、仮想デバイスの一覧。画面キャプチャは、既に3.0の仮想デバイスを設定済みであるが、[New]で新規に作成できる。「Create new Android Virtual Device」の画面キャプチャがその作成画面だ。Targetを「Android 3.0 - API Level 11」として、後はSD Cardの容量、画面サイズ、仮想デバイスに搭載するハードウェアを選択する。画面サイズはWXGA/1,280×768ドットが標準になっている。

 この時、Hardwareの右側にも[New...]が見えるが、この一覧を眺めると、Android 3.0が対応しているハードウェアの概要が分かり、

SD Card support、DPad support、Accelerometer、Camera support(Maximum horizontal/vertical camera pixels)、Audio playback support、Track-ball support、Proximity support、Battery support、Audio recording support、Touch-screen support、GPS support、Keyboard support、GSM modem support

などのキーワードが見える。これらを適当に設定し、[Start...]ボタンを押すと、仮想デバイスが起動する。良く使うボタン、例えば[Home]は[Home]キー、[Menu]は[PgUp]キー、[Back]は[ESC]キー、[Power]は[F7]キー、縦横回転は[Ctrl-F11/F12]などに割当てられている。

Homeスクリーン右下のステータスをタップすると、パネルがポップアップ左から3番目のアイコンはタスク切替

 まず、Android 2.xと大きく違うのは、[Home]、[戻る]など、物理的なボタンは必要なくなり、画面左下に、[戻る][Home][タスク切替]の順でタッチパネルから操作するようになった点。

 右下の時間/電波状況/バッテリー残量を表すステータスは、タップすると、パネルが分離し、明るさなどの調整が可能だ。右上の[Apps]はアプリ一覧画面、[+]はHomeスクリーン設定画面に切り替わる。

 ただ、この仮想デバイス、Androidコミュニティでも話題になっているが、とにかく重く遅い。起動してHome画面が出るまで数分かかり、画面の切替に数秒、スクロールや画面の表示も書き換えているのが目に見えるほど。実機ではGPUで描画している部分をCPUで描画するなど、いろいろ遅くなる要因はあるのだが、とても実用的に試せる環境でないことを付け加えておく。

●タブレット用に生まれ変わったHoneycomb

 まず先にあげた[Apps]をタップするとアプリ一覧が表示される。SDKに入っている仮想デバイスなので、製品に含まれるものとは一部違いがあると思うが、左上から順に、「API Demos」、「Browser」、「Calculator」、「Camera」、「Clock」、「Contacts」、「Custom Locale」、「Dev tools」、「Downloads」、「Email」、「Gallery」、「Gestusers Builder」、「Messaging」、「Music」、「Search」、「Settings」、「Spare Parts」、「Speech Recorder」、「Widget Preview」の計19アプリ。

 「Settings」は、左側にカテゴリ、右側にその項目と、2ペインになり、見やすくなっているのがわかる。Android 2.xでは、それなりの項目があるため縦スクロールしながら目的の設定を選ぶため、その差は歴然だ。

 5面あるHomeスクリーン設定も広い画面を活かしたレイアウトに変更され、パッと見て、何がどうなっているのか直感的に扱えるようになっている。「Widgets」、「App shortcuts」、「Wallpapers」、「More」と、4つに分類、また黒もしくはグレーとブルーをベースにした配色もなかなかクールだ。「Widgets」に関しては画面キャプチャに加え更にもう1画面ある。スワイプで横スクロールすると、「Home screen tips」、「Music」、「Pictire frame」、「Search」が現われる。

 「Widgets」画面の下に「1x1」や「2x2」の文字が並んでいるが、これはこのWidgetsをHomeスクリーンに配置した場合、使用するグリッド(升目)数だ。Homeスクリーンには通常非表示のグリッドがあり、そこへショートカットやWidgetsなどを配置できるため、微妙に位置がずれたりせず、きっちり縦/横に並ぶようになっている。

 いずれにしてもこれら全てを自由にHomeスクリーンへ配置し、カスタマイズの幅が広いのも魅力の1つと言えよう。

アプリ一覧Settings仮想スクリーン設定/Widgets
仮想スクリーン設定/App shortcuts仮想スクリーン設定/Wallpapers仮想スクリーン設定/More

 ソフトウェアキーボードは、英語の場合計3種類。アルファベット/(主に)数字/(主に)記号、と切り替わる。左下に「:-)」(スマイルマーク)キーがあるのがお茶目だ。その左横のダイアルのようなキーは「Input options」で、入力言語やキーボードセッティングができる。実機ではないため、実際にこのキーボードから入力できないのは残念であるが、使い易そうな雰囲気だ。

ソフトウェアキーボード/ANKソフトウェアキーボード/数字ソフトウェアキーボード/数字(more)

 Webブラウザはタブに対応。システムには日本語フォントも含まれているのでコンテンツの表示は問題無い。試しにPC Watchのトップページにアクセスしたところ、初めはモバイルモードとなった。userAgentがAndroidと言うことでモバイルモードへ切り替えていると思われるが、今後は、バージョン3.0を判断して、PC版を表示するサイトも徐々に増えると思われる。

 PCモードはもちろん、縦でも横でも問題無く綺麗に表示される。ただ、仮想デバイスにはFlash Playerが入っていなかったので、動画などは再生できなかった。この点については製品版に期待したい。

Webブラウザ横表示。PC Watchでは標準でモバイルモードで表示されるPCモードWebブラウザ横表示同Webブラウザ縦表示

 さて、ここまで言語設定を「English」にしていたので、アプリ名や表示など英語表記になっているが、「Settings」の「Language & input」で「日本語」を選択すれば、アプリ名も含め、主要な部分は全て日本語に切り替わる。また、日本語IMEとして「OpenWnn」が入っているので、そのまま日本語入力も可能だ。

日本語表示へ変更アプリ一覧が日本語になったOpenWnnで日本語入力対応

 そのほか主なアプリとしては「Gallery」、「Music」、「Camera」、「Calculator」、「Clock」などがある。「Gallery」は画面キャプチャから分かるように、写真と動画をまとめて扱う仕様だ。「カメラ」は動画にも対応。画質の設定やGPSの情報を書き込むオプションもある。「Gallery」や「Webブラウザ」の画面右上にメニューのようなアイコンがあるが、正しくメニューで、設定などの変更できる。この辺りはUIのルールになっているようだ。

 また、先にFlash Playerが入っていないので、Flashコンテンツは再生できないと書いたが、YouTubeに関してはWebブラウザで再生可能だった(と言っても仮想デバイスの作動が重いので、音は正常に再生されるものの、映像は紙芝居状態)。いずれにしてもこの辺りは、もっと使い易いアプリが製品に入っているか、ダウンロードして自分の好みの環境に仕上げたいところだ。

GalleryMusicWebブラウザ/YouTube
CameraCalculatorClock

 最後に「メール」も横位置では2ペインになり、広い画面を有効活用するタブレットらしいものになっている。プロトコルは設定を見る限り、POP3/IMAP/Exchangeに対応。この作動の重い仮想デバイス上でもそれなりに動いたので実機ではかなり快適に使えそうだ。

 また、このメールもそうだが、全体的にHoneycombは、メニューやボタンなども含め、見せ方は出来るだけシンプルになるよう作られている。iOSはどちらかと言えば部分的に立体感を出し、少し飾り立てゴージャスにしているのとは対照的だ。もちろんこの辺りは、製品になる時、各メーカーのカスタマイズによってまた違った雰囲気になる可能性もあるため、一概には決め付けられない部分でもある。

メール設定1メール設定2横では2ペインのView
縦では1ペインのViewアカウントの設定メール作成

Homeスクリーンをスワイプすると弧を描くように3Dっぽくページングする

 以上、仮想デバイスに標準で含まれるアプリを中心に、Android 3.0/Honeycombの概要をご紹介した。ご覧のように、Android 2.xとは雰囲気が変わり、画面の大きいタブレットに最適化され、縦でも横でも操作性が向上しているのが良く分かる。

 仮想デバイスと言うこともあり、GPUパワーをフルに使う3Dっぽい表示を動画でお見せできないのは残念であるが、それは実機が出るまでの楽しみとしたい。多くのAndroid 3.0搭載機はTegra 2を採用しているので、高速作動が期待できる。


「Optimus Pad」発表資料のHome画面と出来る範囲で同じにしてみた。仮想デバイスには、ドコモマーケットと、カレンダーが無く、ギャラリーのアイコンも違う

 ちょうどこの原稿を書いている最中に、NTTドコモからAndroid 3.0採用のタブレット「Optimus Pad」 が発表された。写真を見る限り、今回掲載したアプリに加え、独自のアプリを追加しているようだ。3月下旬発売と言うことなので、もう少しすれば実機でAndroid 3.0が触れるようになる。iPadの次バージョンもそろそろとの噂だし、タブレットに関してはますますエキサイティングな年となりそうだ。