西川和久の不定期コラム
Ryzen 7 1700X採用のマウスコンピューター製デスクトップ「LM-AG350XN1-SH5」
~メモリも32GB搭載
2017年7月25日 06:00
マウスコンピューターは6月20日、Ryzen 7 1700Xを搭載したハイエンドデスクトップPC「LM-AG350XN1-SH5」を発表した。
強力なプロセッサに加え、GeForce GTX 1060、メモリ32GB、SSD+HDDなど、高性能で大容量。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。
これだけのスペックで約17万円
LM-AG350XN1-SH5に搭載されているプロセッサはRyzen 7 1700X。現在Ryzen 7のSKUは、規定のブーストクロックを超えるXFR(Extended Frequency Range)対応の1800X(3.6~4GHz)と1700X(3.4~3.8GHz)、1700(3~3.7GHz)の3タイプがあり、今回の製品はちょうどその真んなかの1700Xとなる。
【お詫びと訂正】初出時に、Ryzen 7 1700をXFR非対応としていましたが、誤っていたため該当箇所を修正いたしました。お詫びして訂正させていただきます。
クロックは3.4GHzから最大3.8GHz。8コア16スレッド、キャッシュ16MB、TDP 95Wとなる。執筆時点での価格は4万円ちょっと。IntelのKaby Lakeでの同価格帯だとCore i7 7700K(4コア/8スレッド、クロック4.2~4.5GHz)辺りになるだろうか。
純粋にコア数だと1700X、クロックだと7700Kとなるが、アーキテクチャも異なり、アプリケーションの特性によって優劣が異なると思われる。実際にCINEBENCH R15のベンチマークでは、Single Core性能は7700K、All Core性能は1700Xが優位という結果になっている(「Ryzen 7 1700」は高コスパな8コアCPUとなりえるか?参照)。動画エンコードなどの比較も載っているので、興味のある方は上のリンク先をご覧いただきたい。
マウスコンピューターによれば、『同じ8コア/16スレッドのCore i7-6900Kを搭載した「DAIV-DGX710S1-SH5」より10万円以上安く、多コアが活かせる動画圧縮でCore i7-6900Kに肉薄する性能を実現する』という(マウス、Ryzen 7 1700Xを搭載したハイエンドPC参照)。
6月にIntelがハイエンドCPU「Core X」を発表し、最上位のCore i9-7980XEは驚きの18コア/36スレッドで、性能的にはRyzen 7を吹き飛ばしてしまったものの、価格も驚きの2,000ドルとRyzen 7のほうが庶民に優しいと言える値段付けだ。
主な仕様は以下のとおり。
LM-AG350XN1-SH5 | |
---|---|
プロセッサ | Ryzen 7 1700X(8コア/16スレッド、3.4~ |
3.8GHz、キャッシュ16MB、TDP 95W) | |
チップセット | AMD B350 |
メモリ | DDR4-2400 32GB(最大64GB) |
ストレージ | SSD 480GB、HDD 2TB |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
グラフィックス | GeForce GTX 1060(3GB) |
インターフェイス | PS/2×2、USB 2.0×2、USB 3.0×4、USB 3.1×2、Gigabit Ethernet、DisplayPort×3、HDMI、DVI、音声入出力 |
拡張スロット | PCIe x16×1、PCIe x1×2 |
電源 | 500W(80PLUS Silver認証) |
サイズ/重量 | 170×403×36mm(幅×奥行き×高さ)/約7.9kg |
税別価格 | 169,800円 |
Socket AM4対応で、チップセットはAMD B350。Ryzen 7が使えるチップセットとしてはX370、B350、A320の3種類があり、PCI Express、USB 3.0、SATA 3.0、オーバークロックの有無、CrossFire/SLI対応などが異なっている。
ゲームをしないなら機能的にはB350で十分だろう。写真からもわかるように、マザーボードはASUS「PRIME B350M-A」を採用。今回の構成では未使用だが、M.2 x4にも対応している。
メモリはDDR4-2400(PC4-19200)で、8GB×4の大容量。ここまでのメモリを必要とするのは、かなりかぎられたアプリケーションになるだろうから、16GBでもよかったような気もする。ストレージはSSD 480GB、HDD 2TBの高速&大容量。OSは64bit版のWindows 10 Homeを搭載する。
グラフィックスは、ミドルレンジクラスのNVIDIA GeForce GTX 1060(3GB)。2スロットを占有し、外部出力として、DisplayPort×3、HDMI、DVI。なお、DVI-HDMI変換コネクタも付属している。
インターフェイスは、PS/2×2、USB 2.0×2、USB 3.0×4、USB 3.1×2、Gigabit Ethernet、音声入出力。拡張スロットはPCIe x16×1、PCIe x1×2。電源は80PLUS Silver認証500Wタイプだ。
サイズは、170×403×36mm(幅×奥行き×高さ)、重量約7.9kg。税別価格は169,800円。単純にPCとして見ると高価だが、8コア/16スレッド、メモリ32GB、SSD 480GB、HDD 2TBと考えると、ずいぶん安くなったものだと感心してしまう。
筐体はつや消しブラックのミドルタワー。構成も含めシンプルで一般的なので、机の上でも下でも設置は容易だ。
前面は、音声入出力、USB 2.0×2、電源ボタン。パネルが開き光学ドライブなどを収納できるベイもある。背面は、PS/2×2、未使用のVGA/DVI-D/HDMI、USB 3.0×2、USB 3.1×2、Gigabit Ethernet、USB 3.0×2、音声入出力。
マザーボードは、PCIe x16×1、PCIe x1×2、加えてM.2スロット。ただしPCIe x1の一方はGeForce GTX 1060にふさがれるため使用できない。M.2スロットは未使用。ドライブベイは5インチ×2が空き、3.5インチ×2は1つ使用で空き1。2.5インチはSSDで埋まっている。このように結構まだ空きがあるので、500Wの電源容量が許すかぎり増設は容易だ。
GeForce GTX1060はインターフェイスとして、DisplayPort×3、HDMI×1、DVI×1を備えている。またDVI-HDMI変換コネクタが付属するので、DVIをHDMI化することもできる(ただしこの場合はHDMIの音声信号は未対応となる)。
発熱や振動はとくに気にならないレベルに収まっている。後半のPCMark 8 バージョン2/Home acceleratedの結果でもCPUの温度は60℃から72℃程度と低めだ(GPUも40℃から60℃程度の範囲)。ファンなどのノイズも内容のわりには静か。これなら机の上に置いてもうるさくないだろう。
総じてゲーミングPCのような派手さはないものの、一般的なPCケースに綺麗にまとめられた1台に仕上がっている。比較的長く使うデスクトップPCは、この手のものが無難で扱いやすい。
Ryzen 7 1800X+GeForce GTX1080のスコアよりは劣るものの高性能PC
OSは64bit版のWindows 10 Home。マシンのスペックが高いので何をしても快適だ。初回起動のスタート画面(タブレットモード)は1画面。「ユーザーサポート」グループに「Windows 10ユーザーガイド」と「ハードウェアマニュアル」が追加されている。デスクトップは壁紙の変更のみ。リソースモニターに見える16のCPUが壮観だ。
SSDは480GBのADATA「ASU800SS-480GT」。C:ドライブのみの1パーティションで、約446.42GBが割り当てられ空き412GB。HDDは2TB/7,200rpm/64MBのSeagate「ST2000DM006」。D:ドライブも1パーティションで約1,862.89GBが割り当てられすべてフリーになっている。Gigabit EthernetはRealtek製。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリはなし。デスクトップアプリは「マカフィーリブセーフ」とデバイス系のツール。マザーボードは先に書いたとおりASUS「PRIME B350M-A」であるが、ユーティリティなどはインストールされていない。
以下、メーカーとしてはサポート対象外だが、ASUSのサイトから該当するユーティリティ「AI Suite 3」をダウンロードして試したところ問題なく動作した。
この「AI Suite 3」は、プロセッサやメモリ、ファンなどのコントロール、不要なファイルのクリーナー、アップデートなど、総合的なユーティリティだ。ひととおり画面を掲載したので参考にしてほしい。ただし、実際のインストールは自己責任でお願いしたい。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home accelerated、3DMarkとCrystalDiskMark。またCPU-ZとGPU-Zの画面キャプチャも合わせて掲載する。なおカッコ内は以前掲載したRyzen 7 1800X+GeForce GTX 1080のスコアとなる。
winsat formalの結果は、総合 8.2。プロセッサ 9.2、メモリ 9.2、グラフィックス 8.9、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 8.2。メモリのバンド幅は27,808.55621MB/s。
PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは4,705(4,894)。3DMarkは、Ice Storm 157,216(179,991)、Cloud Gate 38,522(46,193)、Sky Diver 31,204(40,940)、Fire Strike 10,849(17739)。
CrystalDiskMarkは、Seq Q32T1 Read 561.7/Write 521.5、4K Q32T1 Read 248.6/Write 210.7、Seq Read 533.8/Write 497.4、4K Read 31.53/Write 83.92(MB/s)。
総じてRyzen 7 1800X+GeForce GTX 1080のほうが高スコアとなるが、クロックもGPUのランクも違うので当たり前の話。それでもかなり高いレベルにまとまっているのがわかる。
以上のように、マウスコンピューターの「LM-AG350XN1-SH5」は、Ryzen 7 1700X、GeForce GTX 1060、32GB、SSD/HDDと、現在考えられるPCとしてかなり上位ランクのPCだ。
単にネットやOffice中心などシングルタスク的な使い方だとほとんどのパワーが眠ったままになる。ゲームはもちろんだが、多くの仮想マシンを起動したり、現像や動画編集などマルチスレッドが生きるアプリケーションを使いたいところ。
試用した範囲でとくに気になる部分もなく、性能を考えると比較的安価でマルチスレッドでガンガンにアプリケーションを動かしたいユーザーにお勧めの1台と言えよう。