西川和久の不定期コラム
日本HP「Z2 Mini G3 Workstation」
~216mm四方、高さ58mmのコンパクトなワークステーション
2016年12月13日 11:00
株式会社日本HPは12月13日、業界初を謳う筐体サイズが216mm四方、高さ58mmのミニワークステーションを発表した。製品版とは仕様が異なるものの、編集部から試作機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。
216mm四方、高さ58mmの超コンパクトなワークステーション
PCアーキテクチャのデスクトップワークステーションと聞くと、XeonやQuadroを搭載し、いかにも的なタワーの筐体を思い浮かべるが、HPは過去に「Z Workstation」シリーズとして一体型のマシンを販売したこともあり、ワークステーションとしては少し風変りなものを提供していた。Z Workstationシリーズではメンテナンス性を重視しており、ワンタッチで内部にアクセスできるという、これも興味深い構造だった。
そして今回ご紹介する「Z2 Mini G3 Workstation」は、さらに従来のワークステーションのイメージを覆すものである。本体サイズはなんと216×216×58mm(幅×奥行き×高さ)と言う、普通のコンパクトデスクトップPCと変わらないサイズだ。もちろんワンタッチで内部にアクセスできる機構も継承されている。
主な仕様は以下の通りだが、今回手元に届いたのは試作機であり、製品版とはプロセッサやネットワーク系、インターフェイスの仕様が異なる。予めご了承いただきたい。
【表】日本HP「Z2 Mini G3 Workstation」(試用機)の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i7-6700(4コア/8スレッド、クロック 3.4GHz/4GHz、キャッシュ8MB、TDP 65W) |
チップセット | Intel C236 |
メモリ | 16GB(8GB×2 SO-DIMM) / DDR4 2,400MHz(最大32GB) |
ストレージ | 256GB M.2 SSD+1TB HDD/7,200rpm |
OS | Windows 10 Pro(64bit) |
グラフィックス | NVIDIA Quadro M620/2GB、DisplayPort 1.2×4 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2、シリアルポート |
インターフェイス | USB 3.1 Type-C×2、USB 3.0×4 |
拡張ベイ | 2.5インチHDD×1(搭載済)、Type 2280 M.2×1(搭載済) |
サイズ/重量 | 216×216×58mm(幅×奥行き×高さ)/約2.08kg(標準構成時) |
価格 | 135,000円~(試作機はこの価格ではない) |
プロセッサはCore i7-6700。4コア8スレッドでクロックは3.4GHzから最大4.0GHz。キャッシュは8MBで、TDPは65W。チップセットはLGA1151(Skylake)に対応したIntel C236。
メモリは8GB×2で計16GB。2スロット(SO-DIMM/DDR4 2,400MHz)あり最大32GBまで対応している。試作機ではストレージにM.2 SSD 256GBと1TB/7,200rpmのHDDを搭載していた。OSは64bit版Windows 10 Proだ。
グラフィックスはNVIDIA Quadro M620/2GB。DisplayPort 1.2が4ポート、最大6画面同時出力に対応している。
ネットワークは、Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2、シリアルポート。そのほかのインターフェイスは、USB 3.1 Type-C×2、USB 3.0×4。USB 3.0の内1ポートはPowered USBとなる。
拡張ベイは、2.5インチHDD×1と80mm M.2×1だが、仕様からも分かるように、今回の構成ではどちらも埋まっている。サイズは216×216×58mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.08kg(標準構成時)。価格は試作機なので不明だ。
冒頭で書いたように、今回手元に届いたのは試作機であり、実際の製品とは仕様がかなり異なる。まず製品でなくなるのは「IEEE 802.11ac対応」と「シリアルポート」。そして異なるのはプロセッサで、Core i7ではなくXeon E3-1225v5(4コア/4スレッド、クロック3.3GHz/3.7GHz)か、Xeon E3-1245v5(4コア/8スレッド、クロック3.5GHz/3.9GHz)となる。税別直販価格は135,000円からだ。
従って、後半に掲載するベンチマークテストは、グラフィックスとストレージは同じとは言え、肝心のプロセッサがCore iかXeonかで全く異なるため、あくまでも参考値としてご覧頂きたい。
メモリの構成は、8GB(8GB×1)、16GB(8GB×2)、32GB(16GB×2)。ストレージはSATA SSD 256GBか、M.2の256GBもしくは512GB。HDDは1TB 7,200rpmと同じだ。OSは64bit版Windows 7 Professional(Windows 10 Proからのダウングレード)、64bit版Windows 10 Pro、OSなし(FreeDOS)を選択できる。
216mm四方、高さ58mmの筐体は、写真にある2.5インチのHDDや手からおおよそ分かるようにかなりコンパクトだ。各部金属で覆われ質感も高い。ただ重量は2kgほどあるため、持ち上げると結構ズッシリ重く感じるが、ノートPCのように、あっちこっちへ持ち運ぶことは少ないと思われるので、特に問題にならないだろう。
ここまでコンパクトにできるのは、電源がACアダプタだからだ。内容が内容なのでサイズは約170×95×25mm(幅×奥行き×高さ)、重量814gとかなり大きく重い。出力は19.5V/10.3Aの200W。筐体サイズよりも、これが気になる人もいるかも知れない。
上部はロゴのみ、ボトムは長細いゴム足が4つ。前面はロゴと電源ボタン。右側には何もなく、左側にUSB 3.0×2と音声入出力。下のUSBポートがPowerd USBとなっている。背面は、電源入力、ロックポート、DisplayPort×4、シリアルポート、USB 3.1 Type-C×2、Gigabit Ethernet、USB 3.0×2。DisplayPortが4つもあるのは壮観だ。なおシリアルポートは製品版ではなくなっている。
冒頭に書いたように、このシリーズはメンテナンスが容易になっており、背面の中央上にあるレバーを引くと簡単にトップカバーが外れる構造で即内部にアクセスできる。冷却ファンは写真からも分かるように片側だけの半固定で、ネジなどを外す必要もなく、そのまま手で持ち上げれば下に2つのメモリスロットとWi-Fiモジュール(製品版では非搭載)が現れる。M.2のSSDは確認していないが、おそらくHDDの下にあるのだろう。
試用中、振動は特に感じられず、ノイズも若干あるものの机の上に置いても許容範囲。発熱はベンチマークテスト中に天板を何度が触れてみたが、温かくなる程度でうまく熱を処理できている。
総じてワークステーションというイメージからはいい意味でかけ離れており、この筐体にCore i7(製品版ではXeon)とNVIDIA Quadro M620が入っているのかと思うと、PCも進化したな……と感慨深い。
winsat formal全て8越えのハイパフォーマンス!
OSは64bit版のWindows 10 Pro。既にAnniversary Update適応済みになっている。スタート画面(タブレットモード)は、グループ名はないが「HP Touchpoint Manager」と「HP Performance Advisor」が追加されている。デスクトップは壁紙の変更と左側にショートカット2つとシンプルだ。
最大4GHzのCore i7、M.2のSSD、そしてメモリ16GB搭載だけあって、とにかく何をしても快適に作動する。このサイズならワークステーション的な使い方のみならず、予算が許せばクリエイティブな用途にもバッチリはまるだろう。
ストレージはメインのC:ドライブがNVMe/M.2の256GB「Samsung MZVPW256HEGL」。C:ドライブのみの1パーティションで約223.56GBが割り当てられ空き182GB。ただし、英語版のMicrosoft Officeなどが入っているので、製品版では空き容量が異なると思われる。HDDは1TB/7,200rpmの「HGST HTS721010A9E630」。こちらは未フォーマット状態だった。
Gigabit Ethernet、Wi-Fi、Bluetooth全てIntel製。Quadro M620は「NVIDIAコントロールパネル」からメモリを2GB搭載していることが分かる。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは「HP Touchpoint Manager」。デスクトップアプリは、「HP Performance Advisor」と「HPヘルプとサポート」フォルダに「HP Documentation」、「HP Recovery Manager」、「HP Recovery Media Creation」。そのほかには「NVIDIAコントロールパネル」や「Intel Management and Security Status」などのシステム系だ。
デスクトップにある「Install HP RGS」ショートカットは、「HP Remote Graphics Software」サイトのURLで、実際はここからダウンロードしてインストールする形となる。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home accelerated、3DMark、CrystalDiskMark。またCrystalMarkの結果も掲載した(4コア8スレッドと条件的に問題あるので参考値)。
winsat formalの結果は、総合 8.2。プロセッサ 8.4、メモリ 8.4、グラフィックス 8.2、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 8.95。メモリのバンド幅は27824.65276MB/s。PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは4378。3DMarkは、Ice Storm 122685、Cloud Gate 17409、Sky Diver 10530、Fire Strike 3123。
CrystalDiskMarkは、Seq Q32T1 R:3181/W:1518、4K Q32T1 R:678.0/W:603.2、Seq R:984.4/W:1505、4K R:50.22/W:188.6(MB/s)。CrystalMarkは、ALU 82213、FPU 74183、MEM 98624、HDD 54466、GDI 18182、D2D 17102、OGL 107022。
winsat formal全スコアが8越えで揃っており、かなり速いことが分かる。メモリのバンド幅27824.65276MB/sは一般的なPCではあまり見かけない値。PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは4,000オーバー、CrystalMarkのOGLはけた違いだ。GeForceではないのでゲーム向きではないとは言え、3DMarkのスコアもそこそこ出ている。NVMe/M.2 SSDでCrystalDiskMarkの値も爆速だ。
プロセッサ、メモリ、ストレージ、グラフィックス……と、主要コンポーネントが高速な上にバランスしている。製品版はプロセッサがXeonに変更されるので、更なる性能が期待できそうだ。
以上のようにHP「Z2 Mini G3 Workstation」は、216mm四方、高さ58mmのコンパクトな筐体にXeon、NVIDIA Quadro M620、NVMe/M.2 SSDなどを詰め込んだワークステーションだ。その性能はベンチマークテストの通り。比較的高価なマシンだけに、用途や予算に応じて、プロセッサ、メモリ、ストレージ、OSなどの構成を選べるのも嬉しいポイントだと言える。
ACアダプタが巨大なのは少し気になるものの、省スペースでハイパワーのワークステーションやクリエイティブ用途のデスクトップを求めているユーザーにお勧めしたい製品だと言えるだろう。