西川和久の不定期コラム

ASUS「TransBook Mini T102HA」

~筆圧1,024段階のペン付属でメモリ4GB搭載した10.1型2in1

 ASUSは8月26日、2in1のTransBookシリーズをハイエンド、ミドルレンジ、ローエンドと3機種発表した。今回はその中からミドルレンジのモデル「TransBook Mini T102HA」が編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

Atom x5でメモリ4GBの実用的な構成

 過去Atomを搭載したローエンドからミドルレンジのタブレットや2in1を数多く試用してきたが、そのほとんどがメモリ2GBだった。Atomなのでプロセッサの性能もさることながら、Windows 10でメモリ2GBだと、動くには動くが、Webブラウザでそれなりの数タブを開いたり、同時にOfficeなど大きめのアプリを起動するとメモリ不足になり、結果ストレージへスワップがはじまり、全体的な性能が低下していた。

 以前、VM上のWindows環境で、割り当てるメモリ容量をいろいろ試したことがあるのだが、とりあえず4GBあれば、Photoshopで軽くRAW現像したり、OfficeやWebブラウザで複数のタブを開いても実用的なレベルに収まることを確認している。もちろん8GBあればベストだが、これだと逆に持て余してしまうケースの方が多くなる。

 このような理由で、手持ちのSurface 3は4GBモデルとなっているが、特に(処理している内容の範囲内では)不満なく使用している。ただAtom x7とは言え、4GB/128GB+キーボードとなると、それなりの価格となるため「同じようなコンセプトでもう少し安価な機種があれば……。」と常々思っていたところに、今回ご紹介するASUS「TransBook Mini T102HA」が登場した。主な仕様は以下の通り。

【表】ASUS「TransBook Mini T102HA」の仕様
SoCAtom x5-Z8350(4コア4スレッド、クロック1.44GHz/1.92GHz、キャッシュ2MB、SDP 2W)
メモリ4GB
ストレージeMMC 128GB
OSWindows 10 Home(64bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 400、Micro HDMI
ディスプレイ10.1型1,280×800ドット(光沢あり)、10点タッチ/ペン対応
ネットワークIEEE 802.11ac、Bluetooth 4.1
インターフェイスUSB 3.0、USB 2.0(Micro USB)、microSDXCカードスロット、192万画素(前面)カメラ、指紋認証センサー、ASUS Pen(筆圧1,024段階対応)、1.5W+1.5Wスピーカー、音声入出力
サイズ/重量約259×170×8.2mm(幅×奥行き×高さ)/約540g(タブレット時)、約259×170×13.9mm(同)/約790g(キーボード装着時)
バッテリ駆動時間約12.6時間(タブレット時)/約12.5時間(キーボード込み)
その他Microsoft Office Mobileプラス Office 365サービス
価格69,984円(64GB/Office365なしで59,184円)

 プロセッサはAtom x5-Z8350。4コア4スレッドでクロックは1.44GHzから最大1.92GHz。キャッシュ2MBでSDPは2W。現在Atom x5は5つのSKUがあるが、Z8350はちょうど真ん中に相当する。メモリは4GB。ストレージはeMMCで128GB。OSは64bit版のWindows 10 Home。Anniversary Update適応済みになっている。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 400、外部接続用にMicro HDMIを備える。ディスプレイは10.1型光沢ありの1,280×800ドット。10点タッチとペンに対応している。IPS式とは書かれていないが、最大輝度400cd/平方m、視野角も178度の「TruVivid」(タッチパネルと液晶層を直接貼り付ける)技術を採用とある。

 インターフェイスは、IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.1、USB 3.0、USB 2.0(Micro USB)、microSDXCカードスロット、192万画素(前面)カメラ、指紋認証センサー、ASUS Pen(筆圧1,024段階対応)、1.5W+1.5Wスピーカー、音声入出力。筆圧1,024段階対応の「ASUS Pen」やWindows Hello対応の指紋認証センサーを搭載しているのはポイントが高い。

 サイズはタブレット時で約259×170×8.2mm(幅×奥行き×高さ)、重量約540g。キーボード装着時でサイズ約259×170×13.9mm(同)、重量約790g。いずれにしても1kgを大幅に下回っており、ポータビリティは非常に良い。

 バッテリ駆動時間はタブレット時で約12.6時間。価格は今回のMicrosoft Office Mobileプラス Office 365サービス付きモデルで69,984円。ストレージが半分の64GB、Office 365なしで59,184円。購入しやすい価格帯に収まっている。

前面。パネル中央上に192万画素カメラ
背面。キックスタンドと、中央上に指紋認証センサー
左側面。音声入出力、USB 3.0、Micro USB、Micro HDMI、左スピーカー。上側面に電源ボタンとmicroSDXCカードスロット
右側面(傾き最大)。音量±ボタン、右スピーカー
キーボードはアイソレーションタイプ。主要キーのキーピッチは17mm強。左側にペンホルダー
キーボードコネクタ周辺。コネクタの接点と凹凸、加えて磁石で本体に固定
重量は実測で約543g
キーボードの重量は実測で約252g
付属のACアダプタとASUS Pen。ACアダプタは実測でサイズ約50×45×30mm、重量61g。ASUS Penは単6型(AAAA)1本使用
Surface 3(10.8型)との比較。キックスタンドやキーボード側面の固定方法などよく似ているものの一回り小さい

 マグネシウム・アルミニウム合金を使用した筐体は質感がよく剛性も確保している。本体で540gはかなり軽く、キーボード装着時でも790gはなかなか魅力的だ。

 前面はパネル中央上に192万画素カメラ。背面はキックスタンドと、中央上に指紋認証センサー。このキックスタンドはSurface 3とは違い無段階で155度まで傾けることができ、どこに置いても角度を調整可能となる。使った限り、特に剛性にも問題なく、逆になぜSurface 3が2段階なのかが不思議なほど。

 上側面に電源ボタンとmicroSDXCカードスロット、下側面にキーボードコネクタ、左側面に音声入出力、USB 3.0、充電兼のMicro USB、Micro HDMI、左スピーカー、右側面に音量±ボタン、右スピーカーを配置。左側面のコネクタ類は上側にあり、実際ケーブルを接続すると、宙に浮くためできれば下側に欲しかったが、キックスタンドの関係で無理なのだろう。付属のACアダプタはUSB式で、サイズ約50×45×30mm(同)、重量61g。出力は通常5V/2A、充電時9V/2Aとある。

 10.1型のディスプレイは、発色、視野角、明るさ、コントラスト全てにおいて良好。かなりクオリティの高いパネルが使われているようだ。またバックライト最小でも暗めの室内であれば十分操作できる範囲になっている。

 タッチは10点に対応しており、問題なくまたスムーズに操作可能だ。ASUS Penは単6電池を1本使うタイプ。ペン先が少し硬めのような気もするが、付箋などを開いてパッと手書きでメモしたり便利に使うことができる。

 キーボードはアイソレーション式で、主要キーのキーピッチは17mm強。右側が少し狭くなっているものの許容範囲だろうか。資料によるとストロークは1.5mmあり、ありがちなペタペタな感じではなく、押した感があるタイプが使われている。タッチパッドは1枚プレート型だ。幅がフットプリントの割に広めで使いやすい。

 またパームレストなどキーボード周囲は本体と同じ素材が使われており、Surfaceのキーボードのように、薄く押すと全体が(ポコポコ)たわむような感じもなく好印象。写真からも分かるように、パネル下のフチの部分へ折り曲げて付けれるため、キーボードを丁度良い角度に傾けることが可能だ(これもSurface 3/4 Proと同じ機構)。

 振動やノイズに関しては試用した範囲では皆無。発熱は、負荷をかけると、裏のキックスタンドより上(背面から見て主に右側)の部分が暖かくなるものの、問題ないレベルだろう。サウンドは左右共に外向きに付いているため、音が必要以上に広がってしまい、かつ低音が出ないので(とは言え、安っぽい音ではない)、薄っぺらい感じとなる。加えてもう少しパワーが欲しいところか。

 何度か書いているが、本製品はSurface 3/4 Proのいいところをうまく取り込み、欠点と思われる部分を改良した2in1に仕上がっている。真似と言えばそれまでだが、このようなリファインは大歓迎だ。惜しいのはキーボードバックライトがない程度だろうか。

ほどほどに使える性能

 OSは64bit版のWindows 10 Home。Anniversary Updateを適応済み。特にペンや指紋認証センサーがあるため、Anniversary Update済みかどうかで標準での使い勝手が大幅に変わる。初期起動時のスタート画面は1画面。LINEやテレBing、Office Mobileのタイルもあるが、ほぼ標準の構成だ。デスクトップは壁紙の変更のみ。左側はごみ箱のみとシンプルな構成になっている。

 使用感は、Atom x5でメモリ4GB、ストレージはeMMCと、爆速というわけではないが、ほどほどに普通に使える。普段エントリークラスのタブレットなどでは「ライトな用途」と書いているが、それよりは使える雰囲気だ。

 ストレージは「SanDisk DF4128」。C:ドライブのみの1パーティションで約115GBが割り当てられ空き99.5GB。Wi-FiとBluetoothはQualcomm製。デバイスマネージャからGPSなどセンサー類は内蔵していないことが分かる。

スタート画面(タブレットモード)。LINEやテレBing、Office Mobileのタイルもあるが、ほぼ標準の構成
起動時のデスクトップ。壁紙の変更のみ。左側はごみ箱のみとシンプル
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージは「SanDisk DF4128」。Wi-FiとBluetoothはQualcomm製
eMMCのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約115GBが割り当てられている

 プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「FarmVille:のんびり農場生活」、「パラダイス・ベイ」、「LINE」、「テレBing」など。デスクトップアプリは、「AudioWizard」、「Reltek Audio Manager」。通常同社のPCはASUSフォルダにSplendidなど独自のユーティリティが数多く含まれているのが、本機は一切入っていない。

 独自機能ではないが、Anniversary Updateで追加された機能として、「Windows Ink」が挙げられる。これにより本機を紙代わりのように使うことができる。

Windows Helloの設定1
Windows Helloの設定2
AudioWizard
Reltek Audio Manager
付箋
スケッチパッド

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home(accelerated)、BBenchの結果を見たい。参考までにGoogle Octane 2.0(Edge)とCrystalMark(4コア4スレッドで条件的には問題ない)のスコアも掲載した。

 winsat formalの結果は、総合 4.1。プロセッサ 6.1、メモリ 5.9、グラフィックス 4.1、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.8。メモリのバンド幅は9636.22115MB/s。PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)は1496。Google Octane 2.0は6389。CrystalMarkは、ALU 22275、FPU 18344、MEM 18331、HDD 16373、GDI 3281、D2D 2858、OGL 2885。

 以前にも掲載したが、参考までにAtom x7-Z8700(4コア4スレッド、クロック 1.6GHz/2.4GHz)を搭載したSurface 3は、総合 4.8。プロセッサ 6.8、メモリ 5.9、グラフィックス 4.8、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.8。メモリのバンド幅は11161.24147MB/s(4GB)。Google Octane 2.0は7987……と、ワンランク上のスコアになる。やはりこのクラスでAtom x7搭載機が欲しいところだ。

 BBenchは、キーボードを付けたまま、バッテリ節約機能ON、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残2%で55,092秒/15.3時間。仕様上の約12.5時間(キーボード込み)をはるかに超えた。これなら用途上まったく問題ないと思われる。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 4.1。プロセッサ 6.1、メモリ 5.9、グラフィックス 4.1、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.8
PCMark 8 バージョン2/Home(accelerated)。1496
PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)/詳細。クロックは1.4GHz辺りから最大の1.92GHz。ほぼ最大に張り付いている。温度は約50℃から80℃と高め
BBench。キーボードを付けたまま、バッテリー節約機能ON、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残2%で55,092秒/15.3時間
CrystalMark。ALU 22275、FPU 18344、MEM 18331、HDD 16373、GDI 3281、D2D 2858、OGL 2885

 以上のようにASUS「TransBook Mini T102HA」は、10.1型1,280×800ドットのパネル、Atom X5、メモリ4GBを搭載した2in1だ。キックスタンド、キーボード、ASUS Penなど、Surface 3に非常によく似ており、一回りコンパクトになっている。

 試用した範囲で特に欠点らしい欠点もなく、安価で実用レベルの2in1を求めてるユーザーにお勧めしたい逸品と言えよう。