買い物山脈

ライター後藤弘茂がIngressにはまったワケ(上)

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです

ゴトウが戸外派で運動好きへと変身

 徹底したインドア派で、出不精だったゴトウが、毎日戸外に出て2時間以上運動するヘルシー人間に変わった。折りたたみ自転車を買って、休日には車に自転車を積んで大きな公園に出かける。Fitbitで記録している歩数も、毎日最低1万歩、多い時は2万歩を越えるようになった。まだ少ないと言われるかも知れないが、以前は1日2,000歩も歩ければいい方だったので劇的な変化だ。

 重大な問題だった体重もいいペースで減りつつある。体重の具体的な数字は秘守義務契約(NDA)を結んでもらえないと公開できないが、4カ月半ほどで約10kgやせた。体重が減っただけでなく、脂肪が筋肉に変わりつつある。プヨプヨが大幅に減って、その下に筋肉がきちんと感じられるようになりつつある。以前失敗した筋肉まで落とすダイエットと違い、健康的な体重減少だ。たった数カ月で、見違えるように健康になった気がする。

35年ぶりに自転車で動きまわるようになった
折りたたみ式の軽量自転車を購入
Fitbitでの計測歩数は毎日1万歩を軽く越えるように

 ゴトウの生活も変わった。肉体的に疲労することもあって、以前よりよく眠るようになった。食べ物のカロリーにも、より気を配るようになった。生活が夜型から朝型になった。遠出もするようになり、街歩きもよくするようになった。知らない街を歩く楽しみを、20年振りに再発見している。それから、信心深くなり、歩いていて神社仏閣があれば、必ず立ち寄って参拝するようになった。

 オンラインの生活も変わった。「Google+」がメインのSNSになり、Googleのチャットサービス「ハングアウト」が日常的なチャットプラットフォームになった。交友関係も一変し、今まで知らなかった異業種の人達と遊ぶようになった。行きつけのコンビニはローソンになった。緑色を見るとほっとするようになり、青色を見ると警戒するようになった(人によっては逆)。車両保険はアクサになった(これはウソ)。

 分かった人も多いと思うが、これがIngress(イングレス)現象だ。Googleの内部スタートアップNiantic Labsの位置ゲーム「Ingress」にはまって以来、ゴトウの生活は大きく変わった。引きこもりの不健康なヲタクが、戸外に出て歩きたがる健康志向の“まとも人間”に変化した。いや、変化しつつある。

 これまで、自分の生活が一辺してしまうゲームに出会ったことはなかった。それどころか、今のゴトウにとってIngressはゲームですらなく、生活の一部となっている。Ingressが生活か、生活がIngressか、区別が付かない(笑)。「ちょっと、そこの○○寺までIngressに行ってくる」、「じゃあ、帰りにローソンポータルで牛乳買ってきて」が日常の会話だ。

 Ingressは社会実験と言われているが、まさにその通りで、ゴトウもIngressによって社会生活が激変した実験結果の一例となった。

Ingressはフィットネスのゲーミフィケーション

 そもそも、Ingressをやろうと思ったきっかけは、長年の友人が米Googleに務めていて、どっぷりIngressにはまっていたからだ。その友人は、セガ→Microsoft→Apple→Googleとゲームプラットフォーム畑を渡り歩いて来た強者。彼がはまっているのを見て、急にIngressに興味が沸いた。昨年(2014年)の秋は、知人のゲーム開発者達がIngressを始めた時で、ゴトウの回りではIngressが話題となりつつあった。ダメ押しに、Ingressはともかく歩かなければならないゲームだから、健康にいいと聞かされて、ついにゴトウも始める気になった。

 それ以前から、医者からも運動して体重を落とすようにと、何度も忠告されていた。腰が弱くて、ぎっくり腰を何回もやっており、腰痛の予防からも足腰の筋肉を強める必要があると宣告されていた。それなのに、これまでは、億劫でたまに運動に出ても長続きしなかった。Ingressはその状況を変えることができるかも、という淡い期待があった。

 実際には、Ingress効果は期待を遙かに上回り、ゴトウの生活を一変させた。ともかく、運動(Ingress)したくてたまらない。その衝動を抑えることが大変だ。毎日、早朝に犬を連れて、あるいは自転車で、出かけるゴトウを見て、ウチの奥さんは「人間が変われば変わるというけど……」と絶句する。Ingressのおかげで、体を動かしたくてたまらない、という感覚を久しぶりに味わっている。

Ingressのゲーム画面
毎朝、Ingressのために外に出て行く

 こう説明すると、Ingressですごい時間プレイしているように聞こえるかも知れないが実はそうではない。現実には、1日に平均で2時間程度しかIngressで動いていない。ゴトウの貧弱な体力だと、それ以上の長時間活動ができないからだ。それ以上動くと、後の疲労感がひどい。冒頭に書いたように、休日だと2万歩以上、4時間くらい歩いたりするが、そんな日はヘロヘロになってしまう。年齢と持病、それに長年の不摂生で体力がない。今は、体力を一定レベルに引き上げるまでの辛抱と、やっている。

 この、自分が健康になって行くというのが、Ingressの最も素晴らしい点だ。これまで、ゲーム機でゲームをしていると、自分の健康を損なって行くみたいな感覚があったが、Ingressの場合は逆。ゲームをすることに対する罪悪感がない。

 また、逆説的かもしれないが、自分の体もいたわるようになった。食べ物やカロリーにも今まで以上に気を配るようになった。腰をぎくっとやってしまわないように、慎重に動くようになった。腰を痛めてIngressがしばらくできなくなるのがイヤだからだ。

スマートフォンをアームベルトで装着

 Ingressをやり始めて、身の回りでも、いろんなことが変わった。まず、スマートフォンが手から全く話せなくなった。ひどい時は、風呂にまで持ち込んでいる(風呂からリチャージされる方はたまらない)。

 常にスマートフォンが使える状態にあることが重要なので、家の外では、スマートフォン用のアームベルトを常用している。市販の汎用アームベルトだが、ちゃんとIngress用に改造している。

Ingress用に改造したアームベルト。Ingressのグリフハック用にウインドウを開けてある。写真はレベル9の時のもの

 ベルトでスマートフォンを腕につけた状態にして、歩いている時も、すぐに操作できるようにした。ハンズフリーで、スマートフォンを落とす心配もないから安全だ。時々、街の人から変なモノを見る目で見られるが、Ingressにはアームベルトが必須だと個人的には思ってる。

 ちなみに、ウチの奥さんは「スマートフォンを腕に付けるなんて、変人(ゴトウ)っぽくてイヤ」と言っていたのが、iPhone 6をIngress中に落として、ガラスにヒビを入れてしまい、アームベルトを渋々使い始めつつある。

 Ingressのために、車にもスマートフォンホルダーを1つ加えた。これまでは、カーナビ用と音楽再生用に、2つのスマートフォンホルダーを使っていた。加えて、Ingress用のスマートフォンホルダーを装備して、車内多画面環境にした。これでIngressの画面を確認しながら、運転ができる。

 といっても、運転しながらIngressをプレイしているわけではなく、ポータルの確認用だ。そもそも40km/h以上で移動中はIngressはプレイできない。ちなみに、車がやたらとボロいのは、車に全くカネをかけていないからだ。“ゲームと車のために仕事してる”と豪語するGT-R乗りじゃないので。

右にIngress用のNexus 5、左にカーナビ用のNexus 4、左下に車常備にしている音楽用のiPhone 3GS。
Ingress側のスマートフォン
カーナビ側のスマートフォンと音楽用スマートフォン

Ingress専用が加わってスマートフォンは3台持ちに

見事に1世代古いスマートフォン。左からiPhone 5s、Nexus 5、Nexus 4、モバイルバッテリ

 ゴトウが常用しているスマートフォンは、「Nexus 5」と「Nexus 4」、「iPhone 5s」だ。テクニカル系ライターのくせに全てのモバイルマシンが1世代以上古いのには、理由がある。ゴトウが64-bit ARMv8 CPUコアとFinFETプロセスになるまでは、スマートフォンを買い控えているからだ。iOSデバイスはiPhone 5sですでに64-bitなので、中継ぎ的な20nmはスキップすることにした。Androidは、20nmの64-bit CPUをどうするかは悩みだが、基本的にはこちらも64-bitでFinFETを待っている。チップとプロセッサアーキテクチャを考えると、昨年(2014年)はスマートフォンの買い時ではなかったというだけだ。

 Androidスマートフォンが2台なのは、片方をIngress専用にして常時Ingressを表示させているため。一般の用途に、Androidがもう1台必要だからだ。iOS系も通話とアプリのために必要なので、合計3台持ちとなった。左ポケットに電話用のiPhone 5s、右ポケットにデータ用のNexus 4、アームベルトにIngress用のNexus 5が現在の配置となっている。機動性の問題から画面サイズは5型までとしている。家族は、奥さんがiPhone 6、次男がNexus 4、長女がiPhone 5でプレイしている。

 車で移動する時には、このほかに、Tegra K1チップのNVIDIA「SHIELD Tablet」も使っている。これは、Ingressの情報を表示する「Ingress Intel MAP」というアプリで広域表示をストレスなく使えるチップが、手持ちではTegra K1しかないためだ。Ingress Intel MAPは、モバイル機器では冗談のように重い。だから、広いエリアを表示すると、他のスマートフォンやタブレットでは快適に利用できなかった。Tegra K1だとスルスル動くので、これも手放せなくなっている。SHIELD Tabletは出たばかりの時に買ったのだが、気に入って2台目も加えたので、1台を車載にしている。Ingressに関しては、ARMコアばかりの世界となっている。

Ingressで大活躍しているNVIDIAのSHIELD Tablet

 歩く場合も、知らない土地ではSHIELD TabletをIngressのナビゲート用に使う。仕事の時はPCを持っているので、タブレットは持たない。歩く距離が激増したので、その他の荷物は最軽量にするようになった。

 仕事で出る時も、途中の道すがらIngressをするので、仕事荷物も見直した。元々、モバイルPCは「VAIO Pro 11」で軽量だが、拡張バッテリは持たなくなった。カメラは「CyberShot RX100M2」をメインにするようになり、「NEX-5R」よりさらに軽量化を図った。余計なものは持たず、歩くのに快適な荷物作りを心がけるようになった。

Ingressのおかげで服装も変わり始めた

 面白いのは、Ingressでゴトウの身なりや態度も変わりつつあること。

 Ingressの活動は、ハタから見るとかな~り怪しげだ。神社とか観光名所とかで、スマートフォンを覗き込んで一心不乱に操作してるので、すごくヘン。他のエージェント(Ingressプレイヤー)をハタから見てると、もの凄い怪しさで、自分もそう見えると思うと不安になる。それだけならまだしも、エージェント同士の会話になると、さらに激烈に怪しい。

「そろそろ○○町を焼いた方がよくないか?」

「そうだな、最初に、△△寺を焼き払おう」

「守りも堅そうだな。前に□□会館を焼いたら“わんこ”になった」

「よし、焼き討ちに人数を集めよう。弾も600発は用意しとこう」

Ingressでは夜活動することが多く、それも怪しさの一因となっている

 他のエージェントの人たちには異論もあるかも知れないが、これに近い会話が実際に交わされる。この会話を普通の人に聞かれたら、かなりのマズいと思う(笑)。はっきり言って、怪しいというレベルは通り越して、通報レベルだ。

 そこで、ゴトウは少しでも怪しくないように心がけるようになった。まず、服装。ゴトウの本来の服装はブラック一色で、他の色は一切使わない。あからさまに怪しい。これまでは、それで全然OKだった(既にそこが問題)のだけど、Ingressを始めたら変える必要が出てきた。どこかのエージェントが夜の神社で職務質問されたとか、そういう話を聞く度に、なんとかしなきゃと思っていた。

 そんな事情で、ゴトウは服装を多少なりとも改善し始めた。大物衣類を買い替えるのはカネがかかるので、まず防寒具をクロ一色から明るい色にし始めた。こういう時に頼りになるのは長女。防寒具を買う時に娘についてきてもらう。

「どう、これなら怪しく見えないだろ?」

「いやダメ。それでウチの中学の前に立ってたらすぐ通報される」

「じゃあ、これならどう?」

「んー、なんとかかな~。まだ、かなーり怪しいけれど、ちょっとマシ?」

「このピンクは?」

「あ、だめ。それだと逆に、痛いヒトに見えちゃう」

 という感じで選んでいる。おかげで、多少は怪しげ度の低い格好になった、と思っている。普通のじーさんに見えるんじゃないかと。えっ、下の写真はまだ怪しいって? うーん、これからの進歩を期待して欲しい。もっとも、実際には、この後、黒以外のジャケットを買ったのだが、娘には「お父さんが黒以外の服着てるところって、すごく変。見慣れてないから、違和感がある」と言われてしまった(笑)。

これが元のゴトウの格好。これは非常に怪しい
怪しさが減ったゴトウのファッション

といぷーを使った犬グレスで怪しさを解消

 怪しさを和らげるため、ゴトウ自身も愛想がよくなった。神社で神職の方に会うと「ご苦労様です」と挨拶する。早朝の山寺で地元の参拝者と一緒になると「寒いですねえ」と自分から話しかける。つまり、まともな人間の態度をマネるようになった(笑)。

 というわけで、Ingressはゴトウにとっては、見かけと行動のレベルで、偏屈なヲタクオヤジから脱する、矯正プログラムの働きもしている。

 さらに、偽装のために、近所でIngressする時は、ゴトウは犬も連れて行く。「犬グレス(Inugress)」と呼んでいる。ウチの飼い犬はトイプードル(といぷー)で、ゲーム機がきっかけで娘が飼い始めたXbox 360犬なのだが、その話は長いのでここでは割愛しておく。

 不思議なことに、サンタ服を着たマヌケな顔のといぷーを連れていると、飼い主がどんなに怪しげでも、怪しく思われない。その証拠に、といぷーと一緒だと、小学生の女の子がワーッと叫びながら寄って来る(これはこれで危ないと思う)。知らない人にも、よく話しかけられるようになった。ファミレスでウエイトレスから「といぷーを飼ってらっしゃいますよね。こないだ、ワンちゃんを連れて歩しているのを見かけしました」と話かけられたこともある。

 誰もが「といぷーを連れている=いい人に違いない」と思い込むらしい(笑)。といぷー効果は絶大。このアイテムが有る限り、不審尋問されない自信がある。不審な行動の多いIngressをするには、といぷーは最適なアイテムだ。

犬グレスは不審がられないIngressの基本スタイル

 ちなみに、ゴトウが住んでる街は、やたらと犬所有率が高く、近くで殺人事件が起きた時も「目撃者はヨークシャー・テリアを連れていたらしい。飼い主に心当たりありませんか」と警察が来た。ヨークシャー・テリア殺人事件だ。そのうち、犬にプレイさせるIngressを作ったら面白いかも知れない。GPSでトラックして、ポータルが近づくと特定の音をスマートフォンから発生させて検知させる。愛犬家に受けると思う。

 ちなみに、この記事を読むエージェントの中には「こんな写真を出して大丈夫?」と思う人も多いだろう。エージェントには、現実世界での自分を特定されることを嫌う人が多いからだ。相手陣営に「この格好のヤツに要注意」といった注意が回る可能性がある。それは、現実世界の個人を特定される「身バレ」につながる可能性がある。ゴトウの場合は、名前が世間に出るライターという仕事柄、初めから諦めている部分はある。

現実世界と深くリンクしたIngressゲーム

 Ingressというゲームの概要自体は、そこら中で報じられているので詳しくは説明しない。カテゴリで言えば「スマホ向け位置ゲー」、つまり、スマートフォンを主なプラットフォームとする、位置情報を使うゲームだ。現実世界のあちこちに重なり合うように設定された、バーチャルなポータルを取り合う。ポータル同士を結び合わせて3角形を作って競う、言ってみれば陣取り合戦だ。ポータルは、史跡や建物などに設定されている。

 ポイントは、Ingressのプレイでは、現実世界でポータルが設置されている場所に行かなければならないこと。例えば、明治神宮のポータルを自分のものにしたいと思ったら、実際に明治神宮まで行かなければならない。プレイヤーはポータルを巡ってかなりの距離を移動することになる。ゴトウの例だと、Ingressのために歩いた距離は累計で900km近くに上る。昨秋までのゴトウなら、この数字を聞いただけで卒倒したと思う。Ingressがダイエットや体力作りにいいと言われるのはこのためだ。

【訂正】初出時に歩いた距離の累計が750km以上としておりましたが、より正しくは900km近くということなので、訂正させていただきます

Ingressの画面では現実世界の東京都庁がこのように見える
史跡などがポータルになっている。現実世界のポータルの場所に行くと、ポータルを操作できる
現実世界の史跡や美術オブジェなどがポータルに

 もっとも、実際には史跡や公共建物だけでなく、変なものがポータルになっている場合も多い。自宅をポータルにしたというウワサも聞こえてきたりする。そこで、ゴトウも、変な置物を買ってきて自宅玄関先に設置してポータル申請しようかと考えた。うまく通れば、無限のXM供給源が手に入ることになる。しかし、奥さんの猛反対でそれは頓挫。「毎日、スマートフォンを覗き込んだ変な人が家の前をうろつき回るようになるのはダメ」と。確かに、ご近所で、あのウチはおかしいと評判になっても困るので、自宅ポータル化は諦めた。

 ちなみに、Ingressは現実世界の場所と結びついているためプレイヤー名の扱いが非常にセンシティブだ。ゴトウはそうでもないが、場所と自分のプレイヤー名が結びつく証拠が世の中に出回ることを非常に嫌うエージェントも多い。そのため、この記事の写真やスクリーンショットからは、全てのエージェント名を削除してある。不自然な空白はエージェント名を消した部分だ。ゴトウのエージェント名も、一応は削ってあるが、こちらは、ちょっと頭をひねれば類推できる範囲だ。

人類の進化をかけて戦う(笑)Ingress

 Ingressにはバックストーリーがあり、そのストーリーに従って2つの陣営に分かれて戦う。ラフに言うと、新物質「エキゾチックマター(Exotic Matter:XM)」を使って人類を進化させようとする側が緑のエンライテンド(Enlightened)陣営。外的な要因の進化を阻止して人類を自らの進化に委ねようとするのが青のレジスタンス(Resistance)陣営。この2陣営で、世界中のポータルを奪い合う。

 と言えばかっこよさげだが、まあ、ミドリムシ対青汁の戦いみたいなものだ。ちなみに、英語だとエンライテンドのプレイヤーは「Frog(フロッグ:カエル)」、レジスタンスのプレイヤーは「Smurf(スマーフ:青小人)」と互いを蔑称で呼ぶ。こちらは、カエルと青小人の戦いだ(笑)。

 ゴトウ自身はカエルだ。それは、人類が快適に生活できる先進国の現代社会では選択圧(淘汰圧)が弱まるため、人類の進化が止まったか鈍化していると考えているからだ。遺伝子プールに選択圧がかかることで、より環境に適合した遺伝子が優勢となり、対立遺伝子の比率に変化が産まれ、それが進化となる。進化には、遺伝子の突然変異だけでなく、選択圧が必要だ。しかし、個々の人類個体の生存にクリティカルな圧力が加わらない先進国の生活では、そうした選択圧が働かない。だから人類の遺伝子の変異自体は(遺伝子プールの中で)増えても、進化は止まるか鈍化している。そう考えている。

 そのため、ゴトウは人類の進化を促すためには、外的要因による進化もあっていいと考えている。外部からの進化因子ってどうよと言われるかも知れないが、高等生物のゲノムにはそもそもレトロウイルスの痕跡が多数ある、と言われている。生物進化にレトロウイルスによる遺伝子挿入が関わって来たとすれば、XMによる進化と大して変わらない気がする(それって、理由の前半のネオダーウィニズムの選択圧の話と矛盾するのでは、という突っ込みは置いておいて(笑))。と、偉そうなことを書いたが、もちろん素人考えで、理由を付けて面白がっているだけの話だ。本気にはしないで欲しい(笑)。

スマートフォンカバーにもエンライテンドのマークを貼ってある
服にも目立たないようにエンライテンドのバッチが(笑)

ゲームプレイ自体はシンプル

 話を戻すと、ポータルは、ゲーム画面では、エンライテンドの緑ポータル、レジスタンスの青ポータル、獲られていない白ポータルの3色に色分けされて見える。ポータルに対しては、「ハック」することでアイテムを手に入れることができる。アイテムは、武器や防御アイテムなど。

 ポータルには「レゾネーター(通称レゾ)」と呼ばれる防衛のアイテムを嵌め込むことができ、自分の持つレゾネーターを自陣営ポータルに挿すことができる。敵陣営のポータルだったら、武器で攻撃してニュートラルな白ポータルにすることもできる。

 ポータルの攻撃には「XMPバースター(XMP Burster:通称XMPまたはバースター)」などの武器を使う。これを日本のプレイヤーは「ポータルを焼く」と呼んでいる。白ポータルにしたら、自分のレゾネーターを挿して(通称レゾ刺し)自分のポータルにする「キャプチャ」もできる。

攻撃の結果、ニュートラルな白ポータルになったところ。“焼かれたポータル”だ。向こう側はレジスタンスの青ポータル
攻撃兵器のXMPバースター
Jarvisヴァイラス。レジスタンスのポータルをエンライテンド側に反転させる。逆にエンライテンドをレジスタンスに転換するのがADAリファクター
ポータルを防御するシールド

 守る側は、ポータルに防衛用のシールドを装備したり、遠隔からXM(Ingressのヒットポイントに当たる)を補充するリチャージを行なうことができる。ちなみに、日本ではXMPバースターをバスター(Buster)と呼ぶ人が多いが、これは発音と意味が違う。バスターだったら、撃つと「歴史に名前が残ってしまう(byルン)」(このジョークは通じるだろうか?(笑))。

XMPを使って、相手陣営のポータルに攻撃を行う。
攻撃のダメージがポータルのレゾネータに広がるところ

 ポータルを自陣営のものにしたら、ポータル同士を「リンク」で接続する。リンクは間に他のリンクがない場合にのみ張ることができる。リンクで3つのポータルを相互接続して3角形を作ると「コントロールフィールド(CF)」となり自陣営の色で地図が染められる。ゲームの基本は、このCFを作って、地図を埋めて行くことにあり、その意味ではパズルゲームだ。巨大なCFになると日本列島やカリフォルニア州を覆い尽くす。

2つのポータルをリンクで結ぶ
3点を結ぶとCF(コントロールフィールド)が形成され、地図が緑または青で染められる。
CFをいくつもつくりその土地を自分の陣営の色に染めて行く
日本列島をカバーした巨大CF

 おっと、この記事は買い物山脈だった。Ingressのために買ったのは、折りたたみ自転車やスマートフォン用アームベルトなど。その詳細は、続く記事で、Ingressエージェントの生活の赤裸々な実態とともに説明したい。

(後藤 弘茂 (Hiroshige Goto))