買い物山脈

ソニー「VAIO Pro 13 red | edition」

~速い、軽い、美しいの3拍子揃ったワインレッドのハイエンドUltrabook

品名
ソニー「VAIO Pro 13 | red edition」
購入価格
256,930円
購入日
2013年6月10日
使用期間
2.5カ月
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです

 ソニーの「VAIO Pro 13 | red edition」を買った。注文したのは6月10日で、約2週間後に到着。業界用語で言うところの「いっちゃんええ」仕様にし、購入金額は256,930円だった。本製品についてはこちらですでにレビュー済みなので、ここでは個人的に気になった点などについて、VAIO Zとの比較を中心にかいつまんで紹介したい。

 この夏は、モバイルPCの“当たり年”だったと思う。IntelがUltrabookを提唱してから2年が経過し、薄型化に向けた技術が洗練され、そのUltrabookを想定して開発されたHaswellプロセッサが投入されたことで、“MacBook Airもどき”ではない、独特な製品が各社から発売となったからだ。

 店頭などでの実売については数字を持ち合わせていないが、各社の新製品が一斉に発表されたCOMPUTEXの週は、弊誌のページビュー数がいつもの1.5倍に達したことからも、ユーザーの関心度の高さが伺える。

 具体的な製品としては、3,200×1,800ドットの超高解像度IGZO液晶ディスプレイを搭載した富士通の「LIFEBOOK WU1/L」を始め、ソニーの「VAIO Pro 13」、「VAIO Pro 11」、「VAIO Duo 13」、パナソニックの「Let'snote AX3」、レノボの「ThinkPad X240s」など、いずれも従来機よりも薄型化/軽量化を図りつつ、性能を向上させ、バッテリ駆動時間も延長させている。

 そんな中、VAIO Pro 13 redを購入に至ったのは、競合製品を含め、最上位に近いスペックを持ちながらも、圧倒的な軽さと、バッテリ駆動時間を両立させてきたからである。

相変わらず性能は求めるが、今回は軽さの方を重視

 それまで筆者は、ソニーの「VAIO Z」(VPCZ11)をメインマシンとして利用していた。常に持ち歩き、家でも会社でも、公私問わずこのPCで作業している。過去記事を見てもらうと分かる通り、これまで筆者はVAIOシリーズをおよそ2年おきに3代に渡って買い替えてきた。だが、VAIO Zは、3年半に渡り使い続けてきた。その理由は、その後継のVAIO Zが個人的需要を満たさなかったからだが、ここへ来て、ソフトウェアの不具合や、バッテリの持ちが悪くなったなど、VAIO Zにガタが出てきた。

 そのタイミングで、Haswell機が発売されたのは、まさに渡りに船だった。PCが不調で25万円からの出費を強いられてるということは、一般の方には災難とすら思われるかもしれないが、PCをリフレッシュすることで、作業効率が上がるだけでなく、気分もリフレッシュされ、精神衛生上もプラスな面が多く、費用対効果はかなり高いと言える。とは言え、OSを入れ直すなりすれば、まだまだ使えるかもしれないという可能性には目をつむりつつ、買い替えに走るのは、一種の職業病だと自覚している。

【表】今回購入を検討した主なPCの仕様の比較
VAIO ZVAIO Pro 13VAIO Pro 11LIFEBOOK WU1/Ldynabook KIRA V832
CPUi5-540Mi7-4500Ui7-4500Ui7-4500Ui7-3537U
メモリ8GB8GB4GB8GB8GB
ストレージSSD 512GBSSD 512GBSSD 256GBSSD 256GB/ハイブリッドHDD 500GBSSD 256GB
GPUGeForce GT 330MIntel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4000
解像度1,920×1,080ドット1,920×1,080ドット1,920×1,080ドット3,200×1,800ドット2,560×1,440ドット
タッチ非対応対応対応対応対応
光学ドライブDVDなしなしなしなし
重量約1,360g約1,060g約870g約1,360g約1,350g
バッテリ駆動時間約7.5時間約13時間約11時間約11.1時間約9.5時間
備考購入モデル購入モデル。約13時間、290gのシートバッテリあり最高仕様。約12時間、290gのシートバッテリあり最高仕様。有線LANつき最高仕様

 さて、筆者がモバイルPCに求める仕様は、基本的には以前から大きく変わっておらず、軽いこと(1.3kg以下くらい)、バッテリが持つこと(実作業をして最低でも4時間くらい)、性能が一定レベル以上(ミドルハイ以上のCPUとフルHDの液晶)、ということを満たしていることだ。

 ただし、性能と軽さについては、優先度の比重が変わってきている。これまでは、ゲーム用途から外部GPUを必須要件としていたが、ゲームをする機会がほぼなくなったのと、Haswell内蔵のIntel HD Graphics 4400でもそこそこの性能になってきたので、外部GPUは必須ではなくなった。

 Haswell Ultrabookで外部GPUを積んだものは存在しないので、検討する必要はないのだが、個人的に性能には液晶解像度を含めている。製品情報を見ながら、テキストエディタで記事を書き、写真編集ソフトで写真を編集し、希にTwitterなどのタイムラインを確認するという作業を平行して行なうため、解像度の高さはそのまま仕事効率に直結するからだ。

 過去使ってきたマシンがフルHDだったので、これは必須要件としているのだが、ここへ来て、13型前後でも先に挙げた富士通のLIFEBOOK WU1/Lや、東芝の「dynabook KIRA V832」など、フルHDを超える解像度のものが出てきた。視力が良いので、高解像度化は大歓迎だ。以前であれば、これらの製品は購入候補の筆頭になっていただろう。

 だが、結論として今では、フルHD超よりも、軽さを重視している。筆者はVAIO Zをメインマシンとして使う傍ら、NECパーソナルコンピュータの「LaVie Z」をサブマシンとしてそこそこ持ち歩いて使っていた。このマシンは13.3型で875gという、圧倒的な軽さを実現している。VAIO Zと比べると約500g違う。毎日持ち歩くだけに、この差は大きい。なにせペットボトル1本分だ。

 というわけで、約1.3kgのLIFEBOOK WU1/Lやdynabook KIRA V832ではなく、約1.06kgのVAIO Pro 13を選んだ(ちなみに、dynabook KIRA V832はHaswellでないという点でも候補から落ちていた)。

 その意味では、もちろんVAIO Pro 11も検討した。11型ではあるが、フルHD液晶を備え、タッチ非対応なら約770gと、LaVie Zより軽い。そこそこ悩んだのだが、決め手となったのは、VAIO Pro 13にBTOオプションで512GB SSDが用意されている点だった。それまでのVAIO Zで、常に300GB近く使用していたので、256GB SSDだと、一部を非ローカルに移すなど面倒なことになってくる。

 さらに、VAIO Pro 13の512GB SSDは接続がPCI Expressネイティブで、非常に高速である。軽さを追求したからと言って、VAIO Pro 13はスペックに妥協していない。PCI ExpressネイティブSSDという点では、他社に先駆けてWindows PCに投入している。レビュー結果にもある通り、本製品の512GB SSDはシーケンシャルリードで1GB/secという爆発的な速度を叩き出す。

 ただ、この恩恵を受けられるのは、大量データコピーなどに限られる。普段の体感速度に直結するランダムアクセスも、本製品は高速な部類だが、従来製品の数倍とまでは行かず、アプリの起動時間などはVAIO Zと大差ないという感じだ。そのため、もしVAIO Pro 13の512GB SSDにSATA接続とPCI Expressネイティブの選択肢が追加あったなら、コストの観点からSATA SSDを選んでいたかもしれない。

 参考までに、ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編と、Dragon Quest X ベンチマークを実施してみた。いずれも標準画質の1,280×720ドットで計測し、前者が2,195(普通)、後者が3,612(普通)となった。フルHDではきついが、解像度を落とせば、ある程度の3Dゲームも遊べる実力がある。

ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編の結果
Dragon Quest X ベンチマークの結果

美しすぎるUltrabook

 冒頭でさらりと書いて流したが、今回買ったのは通常モデルではなく「red edition」だ。PCの購入基準に美しさは入れてないが、普段から持ち歩くだけに、できれば格好いい方が良い。この外観は、色合いと仕上げの美しさから、目を引く。PC業界の編集者やライターでも、VAIO Proシリーズを発表と同時に購入した人は少なくないが、red editionユーザーは少ないので、優越感に浸れる。また、写真を見た瞬間、「ああ、これこれ。俺のファッションセンスがPCに求めていたのはこれなんだよ」という、半ば使命感に近い運命も感じた。

 ただ、購入後すぐに、左側のパームレストのあたりにうっすらとした傷をみつけた。最初は、指紋を拭いた時に自分で傷付けてしまったのかと思ったが、指でなぞってみると表面は平らなので、アクリル仕上げの下の地の部分に最初から傷が入っていたようだ。また、ヒンジ部分の黒いところは、角の塗装が剥げやすい。使い込むうちにだんだんと傷が付いていくのはしょうがないことだが、前者については出荷前からということで品質管理に若干疑問を持つし、外観を売りにしたモデルなのだから、もう少し耐久性があってもいいのではと思う。なお、残念ながら、VAIO Pro 13についてはすでにred editionは販売終了となっている。

天板
底面にもうっすらとVAIOロゴ
正面
背面はアクセントでブラック
左側面
右側面

 キーボード(日本語配列)の打鍵感は満足している。カーソルキーだけは、他のキーより一回り小さいことが影響してか、押したつもりが、押し切れてないことが極希にあるものの、コリコリとしたスイッチ感はVAIO Zよりも気に入ってる。

 これまで筆者はタッチパッドのタップ操作になじめず、常にボタンでクリックしていた。しかし、本製品がそうであるように、最近はボタンが分離してない1枚板タイプのタッチパッドが増えてきたこともあり、試しにとタップ操作で使ってみたのだが、他の機種で過去に体験していた誤操作はほぼ皆無であり快適に使えている。VAIOの設定の入力デバイスで、マルチタッチやジェスチャーのオン/オフができる。左右端からのスワイプによる、チャームの表示と、アプリの切り替えだけは意図しない暴発が時々発生するので、オフにした。

 液晶の画質については、特に厳密な比較を行なったわけではないが、VAIO Zシリーズ譲りで、視野角は広く、品質も高い。ただ、オプションで液晶保護フィルムを付けたのだが、これがあると若干ざらついた感じに見える。保護フィルムを付けたのは、タッチ仕様にしたからであり、タッチ仕様にしたのは、個人的には即必要な状況はなかったが、業務上タッチ専用アプリを評価することもあるだろうとの判断からだが、今のところはそういう状況にはなってない。見栄えについてはすぐに慣れたが、タッチも保護フィルムもいらなかったかもと感じつつある。

 ファンの騒音については、Webブラウズや写真編集程度の作業では負荷が上がらないため、至って静か。ただし、高解像度動画の閲覧や、ゲームプレイ、動画エンコードなどを行ない、CPU負荷が高まるとそこそこの音量でファンが回る。

 音質については、異常に音量が小さかったVAIO Zと比べると、体感で数倍の音量が出る。同じ13.3型でこうも変わるものなのかと感心する(どちらかというとVAIO Zの音量が小さすぎるのだが)。音質については、もっさりして、どんしゃり感もあるが、カジュアルな音楽/動画再生なら、十分実用に耐えるといったところだろう。

キーボード。実はこれまでVAIOでは、海外ゲームのプレイを理由に英語キーボードを選択していたが、その機会もなくなったので日本語にした
PCのWebカメラは普段使われないと思うが、後述する顔認証は非常に便利だ。保護フィルムはこの部分を避けるよな形状になっている
液晶はここまで開く。タッチ対応だが、真っ平らにはならないので、タブレットのように操作することはできない
インターフェイス類は右側面に並べられ、SDカードスロット、ヘッドフォン、USB 3.0×2(内1つはスリープ時も充電可能)、HDMI出力
左側面はACと排気口
かなり大事に扱ってきたのだが、黒い部分の縁は塗装が剥げやすいようだ

VAIO Pro 13+シートバッテリ=バッテリにもなるモバイルPC

 もう1つ、VAIO Proを選んだのにはバッテリ駆動時間がある。VAIO Pro 13の公称バッテリ駆動時間は約13時間。実利用でも6時間以上は期待できる。これについては、他社製品にも近い、あるいは上回るものもあるが、VAIO Pro 13は、オプションのシートバッテリを利用することで、駆動時間を倍に延ばせるのだ。これは非常に大きい。

 普通、13時間あれば、それだけで丸1日持ち歩いて使い切れないと思うだろう。だが、この13時間はJEITAバッテリー動作時間測定法(Ver.1.0)に基づいて計測されたものだ。JEITA 1.0のスコアは、画面の輝度を大きく下げた状態にし、320×240ドットのMPEG-1の動画再生時と、何もさせない状態の2パターンでの駆動時間の平均から算出される。つまり、かなり負荷が軽いのだ。後者に至っては、一切の無線を切っていても構わない。これは、実際の利用とかけ離れている。経験的に、おおむね約半分が、一般的な実利用状況での駆動時間だと思っている。

 そこで先ほどもさらっと“実利用でも6時間以上は期待できる”と書いたわけだ。6時間でも、日常的な取材時間を大きく超えている。だが、イベント取材などでは6時間近くPCをバッテリ運用させることもある。そのため、シートバッテリがあると、余裕を持って取材に臨めるのだ。

 ここで1つ抑えておきたいのが、バッテリ駆動時間が長いと、いたわり運用が現実的になるというのがある。VAIOシリーズでは、以前より、「いたわり充電モード」というのが用意され、これをオンにすると、バッテリをフル充電せず、50%、あるいは80%までの充電に留める。これによって、バッテリの充電能力の低下が遅くなり、寿命が延びるのだ。以前のVAIO Zでは、3G 無線WANを使っていたこともあり、実利用時間が3時間程度だった。これでいたわり充電をオン(80%)にすると、実利用時間が2.4時間程度になる。取材が2時間程度に及ぶことはザラなので、バッテリ切れを恐れ、これまではいたわり充電を使わないでいた。だが、6時間持つなら、8割でも4.8時間使えるため、いたわり充電モードを常用できるようになるのだ。

 そして、バッテリに余裕があると、PCから多の機器へ充電しながら利用できるようにもなる。これまで、継続的にVAIO Zシリーズを使っていたのは、無線WAN機能を搭載しており、取材先からも記事の更新が可能だからというのがあった。VAIO Pro 13には無線WANはないが、今はWiMAXルーターを持ち歩き、スマートフォンもテザリングができるため、PCに内蔵させる必要はなくなった。ただ、PCが10時間以上バッテリ駆動できても、ルーターやスマートフォンはそこまでもたない。そんな時、VAIO Pro 13+シートバッテリの構成なら、それらにUSB給電しながら作業できるのだ。つまり、余った容量をモバイルバッテリの代わりにできるということだ。

 実際、こちらの取材でマレーシアに行った際、セッションが午前から夕方までみっちり詰まっていて、本体を充電する機会がなかったのだが、3Gルーターに給電させながら、最後まで余裕を持って作業することができた。また、2泊3日でお盆に帰省した際は、ACアダプタを使う必要がなかった。

 しかも、シートバッテリは約290gで、これを加えてもVAIO Zとほぼ同じ重量であり、厚みこそ増すものの、日常的に持ち歩ける重量に収まっているのは驚異的と言っていい。

シートバッテリ。底面に取り付ける
VAIO Zとの比較
厚みはほぼ半分になり、重量は約300g軽量化。

総括

 本製品に、敢えてケチを付けるとしたら、Wi-FiがIEEE 802.11acに対応していない、無線WANを搭載していない、指紋センサーがない、競合にはより高解像度な製品がある、といったところだろう。

 このうち、指紋センサーについてはVAIO Zでかなり活用していたので、なくなったのは痛かったが、こちらの記事で紹介している顔認証ソフト「FastAccess」で代用している。そのほかのものは、個人的になくても困らない。

 他方、性能は必要十分で、同サイズの一般的製品より数百g軽く、バッテリは1日もつなど、モバイルPCとして死角が見当たらない。本製品はWeb媒体編集者が常日頃持ち歩くモバイルPCとして、要求をほぼ完全に満たしてくれる。VAIO Pro 13ではもう選択できないものの、赤にするかどうかは個人的な嗜好の問題として、製品の中身は、自宅でも会社でも外出先でもばりばりPCを使いたいというユーザーに、広く手放しでお勧めできると言っていい。

(若杉 紀彦)