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Intel、Haswellの設計を行なったマレーシアの製造/開発拠点を公開
(2013/7/8 00:00)
米Intelはマレーシア時間の5日、マレーシアペナン島にある同社拠点において「Designed in Asia」と称したイベントを開催。これまであまり表だってアピールされてこなかった、マレーシア拠点の役割や実績などについて説明を行なった。
ペナン島は、マレーシアの北西に位置する小さな島。日本からは、飛行機で約7時間かけクアラルンプールを経由し、そこから国内線を乗り継ぎ約50分で到着する。ペナン島にあるジョージタウンは、昔イギリスの植民地であり、多民族の文化が残されていることなどから2008年にユネスコ世界文化遺産に登録された。
そんな観光名所のジョージタウンに隣接する形で、ペナン島にはIntelの製造拠点が存在する。同社がマレーシアに拠点を構えたのは約40年前で、1977年には、米国以外で初の製造拠点がペナン島に建設された。当初は100人程度の規模だったが、現在は同社全世界社員数のおよそ1割にあたる9,000人が従事し、この40年間での投資総額は40億ドルに達するなど、Intelの海外拠点で最大規模のものの1つとなっている。
ペナン島施設の、現在も続く当初からの役割は、組み立てと検証である。Intelの製造拠点というと、CPUなどの半導体ウェハのFabを思い浮かべると思うが、ペナン島にはこのFabは存在しない。ペナン島で行なっているのは、ウェハから実際のチップ(CPUおよびチップセット)にするパッケージング、そしてその検証と出荷で、いわゆる後工程と呼ばれるものだ。
そして、1991年からはデザインセンターを設立し、チップの設計も行なうようになった。マレーシアデザインセンタージェネラルマネージャのクリス・ケリー氏によると、当初はチップセットを主体に開発していたが、10年ほど前から、モバイルCPU、Atom、SoCなどCPUの設計にも携わるようになり、特にIvy BridgeとOak Trailの世代からはオレゴンのチームと一緒に、CPU開発においても中心的な役割を果たすようになった。
先だって出荷が開始されたHaswellに関しては、全世界で延べ3,000~4,000人のスタッフが開発に関わっているが、このうち600人程度がマレーシアデザインセンターのスタッフである。そして現在では、目下次世代のBroadwell CPUを開発している。
また、マレーシアデザインセンターでは、次世代PCのコンセプト作りも行なっている。その1つが、NUC(Next Unit of Computing)で、マレーシアのスタッフがこの小型PCの開発を行ない、発売に至った。また、MicrosoftのSurfaceに似た、背面スタンド付きのWindowsタブレットのコンセプトモデル「Bright Lake」も紹介された。Bright Lakeはゼロからたったの4カ月で作り上げたという。Intelがあまり子細に渡ってプラットフォームの枠組みを決定してしまうと、PCメーカーの自由度が減るというデメリットもあるが、ほかならぬIntelが将来の方向性を示すことで、新しいフォームファクタや利用シナリオが生まれていくのも事実であり、その一端を担っているのが、このマレーシアデザインセンターなのだ。
マレーシアデザインセンターで大きくなったのは規模だけではない。開発/製造の能力も常に拡大している。例えば、Haswellでは、前世代からグラフィック能力を最大2倍に引き上げつつ、消費電力については、世代間で最大の削減を行なうなど、多岐に渡る改善が盛り込まれた。また、TICK-TOCKモデルで知られるとおり、2世代ごとにプロセスルールを縮小しており、次世代Coreプロセッサでは14nmを採用する。しかしながら、実際に開発を行なった担当者によると、Ivy BridgeとHaswellとでは、チームの規模は変わっていないのだという。Intelは設計ツールも自前で開発しているが、そのツールの改善や、さまざまな自動化を試みることで、同じ規模でもより高レベルな開発ができるよう体制を改善しているという。
また、サプライチェーンについても、迅速化が図られている。TMG担当副社長兼組み立て検証製造共同ジェネラルマネージャのロビン・マーティン氏によると、顧客の注文から、Fabでのウェハ製造、パッケージング、検証、出荷までの時間は、2009年からの2年間で4割短縮。特に、マレーシアデザインセンターが受け持つ検証にかかる時間は、それまで2週間ほど要していたものが、数日にまで短縮されたという。Gartnerの調査でも、世界の全企業(IT以外も含む)のサプライチェーントップ25のリストにおいて、Intelは2009年は25位だったが、徐々に順位を上げ、2013年には、Apple、McDonald's、Amazon.com、Unileverに次ぐ5位にまで登りつめた。
このようにIntelにとってマレーシアの拠点の重要度が増す中、同社は地元の企業市民活動にも力を入れている。同社がマレーシアの雇用に寄与しているのはもとより、教育向上や、各種の環境、ボランティア活動なども行なっている。CPU開発チームも9割はマレーシア出身だという。
また、Intelではマレーシアだけでなく、アジア全域での事業も強化しており、1995年以降、台湾、インド、中国、ベトナムなどに開発/製造拠点を設立。中国には、アジア初のFabも建設している。
イベントの名称にもあるとおり、このようにIntelがアジアに注力するのは、この地域に世界の人口の約7割が存在し、優秀な人材の確保と、市場としての魅力性を兼ね備えているからである。
主なプレゼンテーションの後には、検証ラボの見学も行なわれた。紹介されたのは、互換性検証ラボの一部。互換性検証ラボでは、CPUやチップセットなどの、電気的な互換性や信頼性などに問題がないかを検証するのだが、現在ではプラットフォームレベルでの機能性についても検証を行なっている。
例えば、CPUが想定通りの性能を出すかといったことだけでなく、WiDiが機能するかといったことや、スマートフォンプラットフォームのカメラのオートフォカースや、ARの認識といったことなどについても、自前の治具やスクリプトを用いて検査している。何かしらの問題が起きた際は、マレーシア側で対応できるものはデバッグを行ない、そうでないものについては、アーキテクチャチームなどにフィードバックを行ない、解消するのだという。
最後に、施設の入り口にこれまでの製品を通じたパッケージングの歴史が実物で展示されていたので、写真で紹介しよう。