買い物山脈

ベルキン「Thunderbolt Express Dock」でMacのインターフェイスを拡張

品名
ベルキン「Thunderbolt Express Dock」
購入日
2013年5月31日
購入価格
29,800円
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです

 既報の通り、ベルキン株式会社はThunderboltに対応するドッキングステーション「Thunderbolt Express Dock」(型番:F4U055jaAPL)を日本でも発売した。

 ニュースリリースでは6月1日の発売が案内されていたが、事前に家電量販店のインターネット通販で予約をしたところ、前日の5月31日には配送された。価格はオープンプライスとされているが、筆者の購入したヨドバシカメラの場合、販売価格が29,800円で、同店のポイントが10%付いた。ほかにApple StoreやAmazonでも29,800円で販売されており、現時点の市場価格は3万円を切る程度。ちなみに、約1カ月先行して発売された米国では299ドル(税抜き)となっているので、為替レートを考えれば、日本国内の実勢価格はわずかながらリーズナブルなものになっている。

 製品の概要は前述のニュースに加え、展示会レポートなどでも数回に渡って紹介している。開発表明後、初めてプロトタイプが紹介されたのは2012年1月に開催されたInternational CESでのことで、およそ1年半前のことになる。期待していたユーザーにとっては待望の販売開始と言っていいだろう。

拡張されるインターフェイスの規格をほぼ満たした仕様。対応OSは限定

 Thunderbolt Express Dockは、MacProを除く現行のMac製品に搭載されているThunderboltインターフェイスに接続して使用する。パッケージにはDock本体とACアダプタが同梱されているが、Thunderboltケーブルは含まれていないので別途用意する必要がある。Apple純正品の場合は、0.5mで2,800円、2.0mで3,800円だ。ケーブルはようやくサードパーティの製品も出揃いつつあるが、さほど入手性が高いわけでもなく、純正品との価格差も小さめだ。

最低限のインストラクションだけが書いてある、最近のApple向け製品には多いパッケージの作りとも言える
利用にあたっては、最低1本のThunderboltケーブルが必要になる。写真はApple純正ケーブルで長さは2.0mのもの

 本体には、USB 3.0×3ポート、FireWire 800、Gigabit Ethernet、音声出力、音声入力、そしてThunderbolt×2で計9つのインターフェイスが全て背面に付いている。Thunderboltについては、Mac本体との接続に1つを利用し、もう一方をその先のデイジーチェーンに利用する形だ。2つのThunderboltに上り/下りの区別はなく、どちらに繋いでも機能的には変わらない。

 Thunderboltは規格上10W(5V/2A)をバスパワーで供給できるが、本製品を利用する際には付属のACアダプタを接続してセルフパワーで使う必要がある。接続した機器にも給電しなければならないというドッキングステーションという製品の性格上、これは致し方ないだろう。

 ほかのインターフェイスについても、基本的にそれぞれの規格に準拠した仕様となっている。ただしUSB 3.0については規格上の接続速度は最大5Gbpsだが、本製品では2.5Gbpsに制限されている。これはThunderboltの転送速度10Gbps(1レーン分)に合わせるためと推測される。仮にインターフェイスを全て利用した場合、USB 3.0が計3ポートで7.5Gbps、Gigabit Ethernetが文字どおり1Gbps、FireWire800が0.8Gbps、合わせて9.3Gbps。これに音声信号を加えて、10Gbps以内に収めたということだろう。もちろん、これらはいずれも理論値であり実効値ではない。またUSB 3.0が最大2.5Gbpsに制限されるとはいっても、この制限が実際の利用面でネックとなるケースは現時点では限定的と考えられる。そのあたりは後述する。

 本体サイズは237×119×31mm(幅×奥行き×高さ)で、それなりに大きい。ポータブル製品でもっとも小さい11インチMacBook Airのフットプリントが300×192mmなので、それよりは一回り小さいが、高さは倍近くあり、重量も約1.3kgとMacBook Airよりも重い。本体カラーはMac製品とよく似た感じのシルバーで、側面と背面パネルに黒い樹脂パーツが用いられている。底面にはスリットがあり、数本のコードなら通せるようになっている。例えばiOSデバイス用のLigtningケーブルなど、機器とケーブルの着脱が行なわれる可能性が高いものを前方に引き出すための工夫と思われる。

背面インターフェイスの配置。左からGigabit Ethernet、FireWire 800、Thunderbolt×2、スリットをはさんで、音声出力、音声入力、USB 3.0×3、電源入力
本体底面には四方に滑り止めのゴム足。中央にはスリットがあり、ケーブルをマネージメントして前面へと引き回せる
スリットの利用例。全部は無理だが、細めのケーブル数本であればこうした形でケーブルの一端を手前側に引き出すことができる

 この製品に限ったことではないが、商品イメージ写真などではなかなか登場しないためか、実物を見て驚かされるのはACアダプタの大きさだ。おおよそ138mm×58mmのフットプリントがあり、重量は電源ケーブルを合わせて500gを超える。このACアダプタから12V/6.0Aを出力している。パッケージには12カ国語が併記してあり、世界仕様なのか、電源ケーブルのコンセントは北米向けのアースが付いた3芯のものが付属してきた。利用にあたっては2芯の日本仕様へのアダプタを用いるか、3芯対応のテーブルタップなどを使う必要がある。最近のApple向け製品のトレンドに近く、マニュアル類は最小限の内容だ。

付属する電源アダプタ。5V/6.0Aの出力に対応しており、大きくて重め。下はサイズ比較用のiPhone 5で、こちらはやや大きめのケースに入っている
パッケージ底面。ワールドワイド共通のものらしく、英語を始め、日本語を含む全12カ国語で説明が記載されている
電源ケーブルのコンセント部分。米国向けのアース付き三芯のものが同梱されている。国内コンセントで利用する場合には、右のようなアダプタを別途用意する必要がある

 対応するOSは、Mac OS X 10.8.3以降。日本語のサイトでは発表時の10.6.8以降と表記されたままだが(6月4日時点)、英文サイトは更新され、製品のパッケージにも10.8.3以降と記載されている。Thunderboltインターフェイスを搭載したMacが出荷時に搭載していたOSを基準にして10.6.8(Snow Leopard)や10.7.x(Lion)でも使えるはずだったが、現行ではないOSに対して周辺機器用のEthernetドライバや、ファームウェアの更新をAppleが行なっていないため「Thunderboltファームウェア・アップデート v1.2」を適用できる10.8.3のみが安定動作の確認がとれる事実上の対応OSになっている模様だ。義務ではないのかも知れないが、10.7.xはわずか1年前には最新だったOSである。Windows XPが発売から12年を経て、これから1年後に延長サポートを止めるという発表に対して、自治体などから批判めいた無茶な声が聞こえる一方で、ハードウェアの要件は満たしているのに、1年前のOSが動作対象にならないというのは、なかなか納得しかねる部分とも言える。

パッケージには、対応OSとして、OS X 10.8.3以降が必要という記載があった
Thunderbolt Express Dockを接続してシステム情報を表示。本体側、Dock側ともに1つのポートが利用されている。Thunderboltの場合、ケーブルにもコントローラが入っている

バスパワー駆動の不安にファイナルアンサー

 これまでも何度か書いてきたが、インターフェイスを拡張するという製品の方向性としてはApple純正のApple Thunderbolt Displayとの共通性がある。接続することで拡張できるインターフェイスもほぼ同じだ。ディスプレイがないのは当然だが、一方でApple Thunderbolt DisplayのUSBポートはUSB 2.0で、Thunderbolt Express DockではUSB 3.0と上位となる部分もある。パネルサイズ、画面のキャリブレーションや複数系統入力などを目的に自由にディスプレイを選びたいというニーズにも応えるといったところだろうか。

 単にGigabit Ethernetを使いたい、FireWire対応の周辺機器を使いたい、あるいは、現状以上の数のUSB 3.0対応周辺機器を接続したいというニーズには、それぞれ「Apple Thunderbolt - ギガビットEthernetアダプタ」、「Apple Thunderbolt - FireWireアダプタ」、そしてUSB 3.0対応のHubを利用すればいいわけだが、これらが複合的に関わるとなれば、Thunderbolt Express Dockの方が圧倒的に使いやすい。何より2つの純正アダプタは、単独の用途でMac本体のThunderboltインターフェイスを占有してしまうので、Thunderboltが1つしかないMacBook AirなどではほかのThunderbolt対応周辺機器や外付けディスプレイなどの可能性を排除してしまうことにもなるからだ。

Appleが発売するApple Thunderbolt Displayのインターフェイス。Macとはディスプレイから直接生えているThunreboltケーブルで接続するので、写真のThunderboltは、デイジーチェーンに利用する。FaceTimeカメラ、マイク、スピーカーを内蔵する
「Apple Thunderbolt - ギガビットEthernetアダプタ」、「Apple Thunderbolt - FireWireアダプタ」、そしてUSB 3.0対応のセルフパワー型Hub。4ポートHubなので、本体のUSBポートを1個占有すると考えれば、システム全体の総数ではThunderbolt Express Dockの3ポートと変わらない

 発売直後、米国のApple Storeのユーザーレビュー欄には、Thunderbolt Express Dockにおいて「USB 3.0のインターフェイスに給電されないため返品した」などといった書き込みが数件見られ、それが国内にも意訳されて伝わったため、購入を検討していたユーザーには(筆者も含めて)不安が拡がったようだが、これは必ずしも事実とは言えない。こうしたレビューを行なったユーザーは、給電されないデバイスとしてApple純正のApple USB SuperDriveを使用しているか、あるいはiPadが充電できないことを主な理由に挙げていた。

 Apple USB SuperDriveは、1本のケーブルで利用できるのがセールスポイントだが、要求される電力仕様は5V/1.1A程度。実はMac製品のUSBポートは、このドライブが登場したMacBook Air以降の製品において、USB 2.0の5V/500mA、USB 3.0の5V/900mAという基準を上回る電力を供給できるように設計されている。それゆえMac本体に関しては1本のUSBケーブルで接続するだけで動作するわけだが、仮にUSB Hubなどを介した場合は動作しないことがほとんどだ。

 また、iPadには2.1Aの充電アダプタが付属している。前述の通り、Macに繋ぐ限りは1.1Aレベルの給電があるので、実はスリープや画面を暗くして負荷の少ない状態であればじわじわと充電が進んでいる。しかし、やはりHubなどを介してしまえば、同期こそできるものの、充電が行なわれることはまずない。

 こうした状況が、Thunderbolt Express Dockでも起こりうる。USB 3.0の各ポートには5V/900mAのUSB 3.0基準を満たした給電はあるのだが、Apple USB SuperDriveを動作させたり、iPadを充電するには十分ではないからだ。仕様としてみれば仕方がない部分だが、エンドユーザーには、こうしたAppleが独自に拡張したUSB給電力などは伝わりにくく、加えてこのThunderbolt Express Dockを早々に買うようなユーザーがSuperDriveやiPadなどApple製品を所持しているケースが多いというスパイラルで、誤解に繋がってしまったようだ。

2つのUSB 3.0対応ポータブルHDDと、バスパワー駆動型のUSBモニタを接続。このLenovoのUSBモニタはUSB 2.0なら2本束ねて電力を供給するタイプだが、USB 3.0ポートからなら、1ポートだけでも写真のように稼働する

 結論を言えば、一般的に「バスパワーで動作可能」とされている周辺機器であれば、5V/500mAあるいは5V/900mAを前提としているので、Thunderbolt Express Dockを使ってバスパワー動作をさせることは支障がない。3つあるUSB 3.0ポートには5V/900mAがそれぞれ供給されている。実際、筆者の所有している2.5インチのポータブルHDD数台、ポータブルBlu-rayドライブ、USBカードリーダ、加えてUSB接続のディスプレイまで、それぞれ個別に、そして3台同時接続時にもバスパワーのみでの動作を確認している。

 対策は、要求電力の少ない周辺機器やセルフパワーがあるUSB対応周辺機器をThunderbolt Express Dockの接続へとまわし、Apple USB SuperDriveやiPadはMac本体のUSBポートに直接繋ぐことだ。ちなみにiPhone 5であれば、Thunderbolt Express DockのUSBポートに繋いでいても、同期・充電が問題なく行なえる。

各インターフェイスの対応状況を検証する

音声入出力

 続いて、各インターフェイスを見ていこう。まず音声の入出力だが、Thunderbolt Express Dockには3.5mm径のステレオミニジャックが入力、出力それぞれ用意されている。Mac本体とは排他で、例えばThunderbolt Express Dockにスピーカーを接続して、Mac本体にヘッドフォンを繋いだ場合、同時に両方の端子へ出力することはできない。出力先を指定することで、Thunderbolt Express Dock使用時でも、Mac本体側からだけ出力することはできる。システム環境設定では「USB PnP Sound Device」として表示され、内部的にはデジアナ変換を行なってUSBで転送していること分かる。

システム環境設定のサウンドを確認すると、Thunderbolt Express Dockに接続した音声出力と音声入力は、「USB PnP Sound Device」として認識されている

FireWire 800

 FireWire 800はレガシー機器の接続に利用する。筆者の手元にあるのはデータ倉庫代わりに利用しているRAIDのストレージ「Drobo SG」と、10年物のiSightカメラぐらいしか残っていなかったが、いずれも問題なく動作することを確認できた。FireWireのデイジーチェーンでこの2製品が同時に動作するし、iSightカメラを直接Thunderbolt Express Dockに繋いでも動作することから、バスパワーで給電が行なわれていることも確認できる。

 Drobo SGはスケーラブルに容量を増やしたり、分散記録によるデータ保護を行なうには便利なストレージだが、転送速度自体はまったく期待できない。「Apple Thunderbolt - FireWireアダプタ」とThunderbolt Express Dockで、転送速度の比較は試みたものの、ボトルネックがストレージ側にあるので、有意義な数値はでなかった。実際、ThunderboltやUSB 3.0が高速インターフェイスとして登場している中、最大800MbpsのFireWire800に今から速度的な期待を寄せるのはナンセンスだろう。あくまで互換維持、所有する旧製品の継続利用ための機能と割り切って考えたい。

現実的な使い方ではないが、FireWire 800対応のストレージ「Drobo SG」の先に往年のiSightカメラをデイジーチェーンして、FaceTimeを起動してみる
FireWireに関するシステムレポート。このようにFireWireもデイジーチェーンできる。余談だが、iSightカメラの製造元が当時のApple Computer表記になっているのが懐かしい

Thunderbolt

 Thunderboltのインターフェイスは、デイジーチェーンでThunderbolt Express Dockのほかに最大5個までのThunderbolt周辺機器が接続可能だ。だが、魅力的かつコスト面で手が届く機器がまだ少なく、なんと筆者の手元にはストレージなどの機器がない。とりあえず、Thunderboltストレージの転送速度検証は今後の宿題にさせてもらいたい。前述したRAIDのストレージであるDroboも、Thunderbolt対応のDrobo 5G、Dorbo miniなどに更新しているので、これらの導入が視野に入ってくる。

 代わりといっては何だが、前述のiShigtカメラを「Apple Thunderbolt - FireWireアダプタ」に取り付け、Thunderbolt Express DockのThunderboltインターフェイスに接続したところ、これまた問題なく動作したことを付け加えておく。

 また、Thunderboltのインターフェイスは、ディスプレイを接続することができる。Thunderbolt対応ディスプレイであれば、デイジーチェーンの中間に置くことも可能で、DisplayPortとしての出力であれば終端に1台のディスプレイが置ける。今回はMini DisplayPort to DisplayPortのケーブルを使って、EIZOの「FlexScan SX2262W」に出力したほか、Mini DisplayPort to DVI-Dのアダプタを使って前述のSX2262W、そしてソニー製のTV「BRAVIA」に出力して、いずれも問題なく表示することを確認した。

 Thunderboltにおけるディスプレイ表示のための通信プロトコルはDisplayPort 1.1aで、適切なアダプタさえ使えば、HDMIやDVIを搭載するディスプレイに出力することができる。前述の通り、非Thunderboltのディスプレイは終端にしか設置できないが、Mac本体に2つのThunderboltインターフェイスがあるモデルであれば、両方の終端にディスプレイを設置することで外部に多画面の表示が行なえる。

Thunderboltのもう一方にEIZOの「FlexScan S2243W」をMini DisplayPortケーブルで接続した。Mac本体側からはHDMIポートからDVI-Dに変換してSX2262Wへ出力。これで外部2画面になる
リッドクローズドモードをやめて本体側のパネルを開けば、3画面モードになる。本体はRetina解像度だが、デスクトップとしては1,680×1,050ドット相当に設定してあるので、配置のプレビューは小さい

Gigabit Ethernet

 MacBook AirやMacBook Pro Retina Displayモデルなど、本体に有線のEthernetポートを持たないモデルでは、有線接続のために必要となる。サードパーティ製でUSBポートを利用するアダプタもあり、USB 2.0なら100Base-TX、USB 3.0なら1000Base-T対応というのが一般的だ。とはいえ、USBポートを1つ占有することに変わりはないので、Thunderbolt Express Dockに統合できるなら、それに越したことはない。

 Appleからは、「Apple Thunderbolt - ギガビットEthernetアダプタ」が出荷されていて、単機能でよければこれをThunderboltに接続するのが手軽な手段だ。出張などにも向いている。この製品はMac OS X 10.7.4以降に対応しており、同様の機能を持つThunderbolt Express Dockの動作対象OSからMac OS X 10.6.8が削られた要因の1つと想像される。Apple Thunderbolt - ギガビットEthernetアダプタとThunderbolt Express Dockのそれぞれで有線によるネットワークへの接続検証を行なってみたが、接続速度の顕著な違いは確認できなかった。

USB 3.0

 そして最も利用機会が多いと思われるのが、USB 3.0のインターフェイスだ。USB 2.0対応機器を含めて多種多彩な周辺機器を利用できる。前述した通り、USB 3.0基準の5V/900mAの給電力もあるので、対応製品であればバスパワーでも動作する。またUSB 2.0対応機器の中には、Y字形状のUSB接続ケーブルを使って1.0A相当の電力を2つのポートから取り出してバスパワー駆動させる周辺機器もあるが、こうした機器が通常のケーブルで動く可能性もある。筆者の持ち物の中では、先に紹介したようにLenovo製のUSBディスプレイが該当した。

 周辺機器はあげて行くとキリがないので、一番利用されると思われるHDDに絞って検証していく。まず、昨今のポータブル型HDDであれば、多くはバスパワーでの動作を前提にしている。そこで、USB 3.0のバスパワー対応製品であるWestern Digital製「My Passport 2TB」(2012年5月購入)で試してみた。動作はもちろんだが、Mac本体のUSBポートとThunderbolt Express DockのUSBポート、どちらに接続した場合でも、明確な速度差は発生しなかった。リード/ライトともに75MB/sec前後の数字なので、前述した2.5Gbpsの制限に到達するまではかなり幅がある。

15インチのMacBook Pro Retina Displayモデルに直接、Western Digital製「My Passport 2TB」を接続。Blackmagicdesign Disk Speed Testを実行した
こちらは、同じドライブをThunderbolt Express Dock側のUSB 3.0ポートに接続したもの。リード/ライトともに75MB/sec程度で、誤差以上の違いはない

 やや古いWestern Digital製のバルクHDD「WD Scorpio Blue 500GB」(WD5000BEVT)を、USB 3.0対応、USB 2.0対応のケースに順次入れ換えてそれぞれ計測したところ、前者は75MB/sec前後、後者は40MB/sec前後の計測結果が出た。これもMac本体側、およびDock側の両方で試してみたが、USB 2.0とUSB 3.0の差は見えたものの、接続先においては誤差以上の違いは見えてこなかった。中身がSATA 6Gbps対応の高速なドライブであれば、USB 3.0接続ではもう少し上の結果を出せそうだが、おそらくそこでもバスパワーの2.5インチHDDであれば、本体側とDock側の違いは見えてこないだろう。先にはさらにポータブルSSDという選択肢もあるが、残念ながらまだ筆者の持ち物にはなく、検証までは至っていない。

バスパワーで駆動する2.5インチのHDD「WD Scorpio Blue 500GB」で試す。SATA 3Gbpsに対応。これをUSB 3.0対応ケースに入れ、MacBook Proに直接接続した
上記と同じドライブを、Thunderbolt Express Dock側のUSB 3.0ポートに接続したもの。やはりリード/ライトともに75MB/sec程度で、誤差以上の違いは感じられない
同じHDDを使って、USB 2.0に対応するロジテック製のキットケースに変更してみた。同様にMacBook ProのUSBポートに直接接続している
同様の条件で、接続先をDock側に変更した。40MB/sec前後まで転送速度は落ちたが、USB 3.0と2.0の違いが明確になった程度で、本体側とDock側での違いには結びつかない

 セルフパワーになる3.5インチHDDであれば、7,200rpmから最速10,000rpmクラスのものもあり、こうした製品をUSB 3.0で繋げば、2.5Gbps制限の影響が数字として目に見えるものになるかも知れない。計測数値でいけば150~160MB/sec以上といったところか。とは言え、通常利用では始終ベンチマーク並みの負荷をかけるわけでもないので、あくまでこのあたりという指標程度に考えて欲しい。もちろん、ノンリニア編集などベンチマーク並みの負荷が常時かかるような作業であったり、RAIDによるストライピング運用などの明確な基準があれば、Mac本体側のUSB 3.0ポートを利用するなり、Thunderbolt接続へと移行するなりの検討が必要だ。こうした移行が可能という意味でも、Dock側にUSB 3.0とThunderboltの両インターフェイスがあることは有効と言えるだろう。少なくとも量販店で売られている量産型のHDD製品では、まず意識することのないのが、2.5Gbpsの壁と考えていいのではないだろうか。

Thunderbolt Express Dockに繋いでも、システム上ではリンク速度が最高5Gbpsと表示される。利用可能な電流は900mAでUSB 3.0の標準。必要電流量が少ないので、USB 3.0対応製品ではあるが、パフォーマンスより経済性を重視したモデルだったのだろう
ありがちな事故の例。外付けのHDDをマウントしたままで、根元のThunderboltケーブルをMacから抜いてしまうとエラーが発生する。HDDによらず、アンマウントが必要なデバイスは、事前に適切な操作をしておくこと

 全般として気をつけなければならないのは、周辺機器の取り付け、取り外しだ。例えば、ThunderboltケーブルとMac本体を切り離す前には、Thunderboltを経由してマウントしているHDD、カードリーダなどは接続するインターフェイスの種類を問わず、あらかじめデスクトップを操作してアンマウントしておく必要がある(個々のケーブル自体を抜く必要はない)。

 もし、いきなり根元のThunderboltケーブルのみを抜いたりすれば、最悪の場合はデータ破損にも繋がりかねない。デイジーチェーンのメリットの1つは配線のシンプル化だが、動作させながら中間の機器だけを取り外すことはできないデメリットもある。ただ、Thunderbolt Express Dockの場合は、Dock本体の取り外し以外は、接続した機器やインターフェイスごとに適切な手順を踏めば動作中でも任意に取り外したり取り付けたりすることが可能だ。

接続ケーブルが半減。消費電力と本体の発熱には課題も

 最後に、Thunderbolt Express Dockを導入することで筆者の作業環境がどのように変化したかということを紹介して、まとめにしたい。

 筆者が日常的に使うMacは「15インチMacBook Pro Retina Displayモデル」の1台だけで、いわゆるリッドクローズドモードと呼ばれる上蓋を閉じて外部ディスプレイとBuletooth接続のキーボードとトラックパッドを中心に作業をするスタイルだ。せっかくのRetina解像度が惜しいと思われるかも知れないが、デスクトップの広さとしては、1,920×1,200ドットの外部ディスプレイを2枚接続した方が快適なため、在宅での作業では主にこのスタイルを選んでいる。出張時や、MacBook Proを持ち出す必要のある外出取材時には、本体+αを持ち歩く。

 外部ディスプレイ2枚への出力は、HDMI to DVI-D変換と、一方のThunderboltをDisplayPortとして利用することで実現しているが、その場合は、利用可能なThunderboltが残り1つとなり、EthernetアダプタとFireWireアダプタは排他にせざるを得ない。絶対的な速度を無視すればEthernet接続はサードパーティのUSB接続Ethernetアダプタや、あるいはWi-Fiでも代替は可能なため、FireWireアダプタを優先した。そのほか、机上に設置してあるスピーカーへ音声出力端子を繋ぎ、左のUSB 3.0にはUSB 3.0のHubをつけ、右にはポータブルタイプのUSB 3.0対応HDDとポータブルBDドライブを必要に応じて付け替えるという運用を行なってきた。電源をあわせて本体から伸びるケーブルは7本。本体に空いている穴はSDXCスロットだけという状態である。そして、持ち出す際にはこれらを全て外し、帰宅したら元に戻していたという次第だ。

 Thunderbolt Express Dockの導入で、FireWireとGigabit Ethernet、そして音声ケーブルの接続はDock側へと移動した。USB 3.0のHubは一旦片付けて、Dock側のUSB 3.0ポートに前述のポータブルHDDと、Androidの同期とUSB充電を兼ねるMicro USBケーブルなどを設置。外部ディスプレイの1つも、デイジーチェーンの終端として、Dockに接続した。本体左のUSB 3.0ポートに、iOSデバイス同期と充電を兼ねるDock/Lightningケーブルを繋いでおく。右側のUSBポートはフリーにしておいて、CDのリッピングや、撮影した写真のバックアップディスク作成など必要に応じてポータブルBDドライブを繋ぐ。こうすると、在宅時のケーブル接続数は電源を含めて4本に減った。電源必須と考えれば、実質半減したことになる。Thunderboltが1つ空いたので、リッドクローズドのままで外付けディスプレイの3画面化も視野に入る。

【使用前】奥にPCサーバなどもあるので雑然としているが、電源を除き、左に4本、右に2本のケーブルがMac本体に繋がっている。赤いのがポータブルBDドライブで、必要な時に上においたHDDと差し替えて使用していた。本体側にUSBの空きがないので、通常時以外のUSB対応機器が利用しにくい
【使用後】Thunderbolt Express Dockの配置に悩める感はあるものの、Mac本体の接続ケーブルが電源をのぞき左2本、右1本へと半減。本体側のUSB 3.0がフリーアクセスになっているのがポイント。必要な時だけBlu-rayドライブを繋ぐというスタイルは変わらないが、HDDは常時接続になった。使用前には登場していない有線のEthernetケーブルが加わった
Thunderbolt Express Dockの表面をさわるとほんのりと暖かい。38度程度になる

 気になる点と言えば、Thunderbolt Express Dockには電源スイッチがなく、常時電源が入っていることだ。本体側をスリープさせたりシャットダウンすることで消費電力は下がるがゼロにはできない。これは以前のUSB 3.0対応Hubでも抱えていたことで、Hubには5V/4AのACアダプタが付いていた。Thunderbolt Express Dockでは、単純に1.5倍といった感じになる。さすがに毎日は無理だが、出張時などはACアダプタ自体をコンセントから抜いていくのは、USB HubでもThunderbolt Express Dockでも変わらない。

 あとは、スリープからの復帰時や、本体とThunderbolt Express Dockを切り離すときに、Dock側に繋いだスピーカーに通電音が乗る。本体側ならプラグの抜き差しはともかく、スリープからの復帰時に鳴ることはないので、慣れるまでは気になるかもしれない。本体の表面温度も高めで、38度前後になる。触ればほんのり暖かく、夏は辛いが冬は暖房を補助しそうだ。

 トータルでは、待ったなりの価値はありそうという印象。期待から始まって、直前に不安がわき上がったりしたが(実際、キャンセルや様子見まで検討した)、当面の不安は解消している。まだ使用期間は5日間にも満たないので、今後何か新しい発見や万が一の不具合も起きるかもしれないが、多々積まれた高速ストレージの検証という宿題も含めて、今後機会を見つけてお知らせしたいと考えている。

(矢作 晃)