イベントレポート

さらにじわりと普及の兆しが続くThunderbolt

会期:1月8日〜11日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Center/The Venetian/Pallazo

MacProを除く現行のMac製品、Ultrabook、オールインワン、マザーボード、ベアボーンなど、Thunderboltインターフェイスを搭載するMac/PCは少しずつ増えている

 2012年のレポートに続いて、2013 International CESで紹介されていたThunderbolt技術の現状を確認しておこう。Thunderboltに関しては、少しずつユーザーの認知度は上がって来ていると想像されるが、Mac Proを除いた現行のMacすべてに2ないし1つのThunderboltインターフェイスを持つApple製品とは異なり、PCではThunderboltインターフェイスが搭載されている製品の方が稀なので、最初に簡単に紹介しておく。

 Thunderboltは開発コード名「Light Peak」としてIntelが研究・開発していた高速汎用のデータ転送技術。最大転送速度は10Gbps×2(双方向)×2レーン。通信プロトコルにはPCI Express 2.0とDisplayPort 1.1aが使われている。開発名称のとおり、当初は光ファイバーを用いたデータ転送が構想されていたが、最初の規格策定に際して銅配線化とMini DisplayPort形状のコネクタが採用された。2011年2月に、AppleのMacBook Proシリーズの新モデル(当時)に搭載されたのが製品としてのローンチにあたる。2012年になって、PCにも搭載する製品が少しずつ増え始めている。

 2012年は「普及の兆しを見せつつある」とレポートしているが、率直に言って2013年も「普及の兆しを見せつつある」というのが筆者の印象だ。もちろんこの1年間で対応するMac/PC本体をはじめ、各種周辺機器は増加してはいるものの、まだ数を数えられる程度で、USB 3.0などほかのインターフェイスと比較しても増加のペースは芳しいとは言いがたい。もちろん機能面ではUSB 3.0とは異なる側面を持つので、併存できるインターフェイスであることは間違いない。

 普及が進まない原因の1つはまず価格が挙げられる。USB 3.0がIvy Bridge世代からチップセット統合を果たして本体側の導入コストを大きく下げられるようになった一方で、Thunderboltは別途ホストコントローラの搭載が必要になる。周辺機器側に対応するコントローラが必要な点はThunderboltもUSB 3.0も変わりがないが、コントローラのコストは文字どおり桁違いだ。もちろんコントローラを提供するIntelもロードマップ上で、プロセスの微細化、低価格化を進めているので、これは徐々に改善に向かうはずだ。

 加えてThunderboltはデイジーチェーン対応などのメリットを持つ代わりにケーブルのプラグ両端にも制御チップが必要で、ケーブル自体の単価が高めになる。当初Appleが純正品として発売した2mのThunderboltケーブルは4,800円(米価格49ドル)で、エンドユーザーが使うケーブルとしては異例の高額製品だった。ケーブルについては、住友電工をはじめとするサードパーティーからも出荷が始まり、Thunderbolt対応周辺機器にバンドルされる機会も増え、徐々にではあるがシステムの全体価格は低下傾向になっている。またCES 2013の翌週には、Appleが純正ケーブルの価格を改定。前述の2mを3,800円(米価格39ドル)に値下げして、0.5mで2,800円(米価格29ドル)というラインナップも追加している。

 言うまでもなく、価格が高くともそれに見合う価値を見いだせれば導入事例は増えていく。例えばノンリニア編集など単位時間あたりのデータ転送量が大きい映像分野などは、RAIDなどとあわせて積極的な採用が進む。一方で、エンドユーザーが現時点で利用できる現実解の1つである高速ストレージとして利用するには、コストパフォーマンスが良いとは言えない。昨年後半あたりから、SSDにUSB 3.0とThunderboltの両インターフェイスを搭載しているポータブルのストレージ製品が出荷されているが、RAID 0運用レベルでなければ転送速度に驚くほどの差は生まれない、ならばコストの安いUSB 3.0単体製品のほうが当面の購入対象となってしまう。

IntelブースではThunderbolt光ケーブルを使って転送デモ

Intelブースの一角に用意されたThunderbolt Technologyのデモコーナー

 大体この辺りまではネガティブ要素だが、ここから先はポジティブ要素へと話を切り替えていく。2013年もIntelのブースにはThunderboltのテクノロジーデモコーナーが設置された。2012年より若干スペースが縮小された感があるのは気がかりだが、米HPが2012年12月から販売しているUltrabook「HP Spectre XT TouchSmart」を用いてデモンストレーションが行なわれていた。Windows 8搭載製品だが、お馴染みの「Blackmagic Disk Speed Test」を使った転送速度のデモなのでデスクトップ画面が使われている。

 接続されているストレージはWestern Digital製の「VelociRaptor Duo」が2台。それぞれに10,000rpmのVelociRaptorドライブが2台ずつ内蔵されていて、コンシューマ向けHDDとしてはほぼ最速と思える構成でRAIDを構築していた。接続ケーブルは1月8日付けで住友電工が発売した「Thunderbolt光ケーブル」。VelociRaptor Duoの1台目までは光ファイバーケーブル、1台目から2台目は従来の銅配線というスタイルで、ケーブルの互換性を含めたデモンストレーションだった。ちなみに住友電工の光ケーブルは10m、20m、30mの3種類の製品があり、個人でも購入できるAmazonでの販売価格は73,500円〜94,500円。先日のCESレポートで紹介したCorningのThunderbolt光ファイバーケーブルと同様に、言わばプロ向けの道具である。

 このデモコーナーには併せて、CorningのThunderbolt光ファイバーケーブル、Promiseの「Pegasus J2」も展示されていた。Pegasus J2は、mSATA接続のSSDを2基搭載してRAID 0(ストライピング)運用が可能なポータブルストレージ。128GB×2あるいは256GB×2の構成で、最高750MB/secの転送速度を実現する。前述した“USB 3.0に比べて転送速度に驚くほどの差”を感じることができる製品の1つである。また、Thunderboltインターフェイスを備えるNCU(Next Unit of Computing)対応のIntel製超小型PCベアボーン「DC3217BY」も展示されていた。

 Intelのテクノロジーデモコーナーでは、2012年と同様にThunderbolt対応製品が一覧されたパンフレットも配布されていたので、併せて紹介しておく。2012年のパンフレットと比較してみると、対応機器が24種から58種へと増えているのが分かる。ただ、このデモコーナーに足を運ぶと、説明するスタッフからは必ず「Thunderboltを知っているか?」というフレーズで会話が始まるので、家電メインのトレードショウという側面もあるが、認知度がまだ十分ではないということは出展者であるIntel側も十分承知しているものと想像される。

Promiseの「Pegasus J2」。内部にはmSATA接続のSSDを2基搭載する。ストライピングで、最大750MB/sec程度のリードが可能。バスパワー、セルフパワーの両対応。
秋葉原などでは入手可能なIntel製のNCU(Next Unit of Computing)ベアボーン。インターフェイスの差異などで数モデルあるが、展示機はもちろんThunderboltを搭載した「DC3217BY」
Thunderbolt対応周辺機器の一覧。後述するBuffaloのストレージやBelkinのThunderbolt Express Dockなどは含まれていないので、必ずしもすべてが網羅されているわけではない。一方、発表のみで未出荷の製品も含まれている

ついに発売が近づいたBelkinのThunderbolt Express Dock

 家電の展示会であるCESという舞台の都合上、会場内で見かけるThunderbolt対応周辺機器はさほど多くない。メインストリームの1つであるノンリニア編集など映像分野に向けた製品やそれに対応するRAIDシステムなどは、おそらくNAB Show(The National Association of Broadcasters = 全米放送事業者協会による放送機器展覧会)が、展示やデモンストレーションの中心となるはずだ。

 個人向けのストレージ製品では、Western Digital、Seagate Technology、LaCieなどが併催イベントで製品展示を行なっており、既報の記事でも、いくつか紹介している。

 また、バッファローの米国法人Buffalo Technologyは、国内未発表のThunderbolt対応外付けストレージを自社ブースで展示、デモンストレーションしていた。既存モデルはSSDを内蔵するポータブル型で、Thunderboltインターフェイスが1つの終端に設置する製品だが、今回公開されたのはデイジーチェーンの中間にも設置できる2つのThunderboltインターフェイスを持つ製品だ。日本国内でも出荷を予定しているが、発表日、出荷時期、価格いずれも未定となっている。

 デモ機は256GBのSSDを2台内蔵しており、OS XのソフトウェアRAIDを使ってRAID 0(ストライピング)運用を行なっている。前述したPegasus J2同様に、リードでは750MB/secを超える転送速度を実現している。据え置き型ということで、ThunderboltによるバスパワーではなくACアダプタを使ったセルフパワーでの動作。これは実際の転送速度を優先した結果だという。前述のPegasus J2の場合はバスパワーでの動作は可能だが、転送速度を最高にするにはやはり追加でセルフパワーによる給電が必要とされている。

国内未発表のThunderbolt対応外付けストレージ。デモ機は256GBのSSDを2台内蔵している。右にあるのはUSB 3.0とThunderbolt両対応する既存のポータブルタイプ
据え置き型はThunderboltインターフェイスを2つ持つのでデイジーチェーンの中間に設置することができる。転送速度を重視してセルフパワーでの動作となる

 発表以来、製品出荷が待たれているThunderbolt対応周辺機器が、Belkinによる「Thunderbolt Express Dock」だ。開発表明からかれこれ1年半も経過しつつある。このThunderbolt Express DockはThunderboltに対応するポートリプリケータで、1つのThunderbltインターフェイスを、Gigabit Ethernet、FireWire 800、USB 3.0×3、オーディオ入力/出力へと拡張する。本体にはThunderboltインターフェイスを2個持ち、デイジーチェーンの中間に配置することが可能だ。機能的にはApple Thunderbolt Displayのディスプレイなし版といったところだが、USB 3.0に対応するなどApple Thunderbolt Displayを超えるスペックもある。

 Thunderbolt Express Dockに搭載されるインターフェイスは何度か見直しや変更がなされているが、今回CESで紹介された仕様が最終的な製品仕様となる見込み。プロトタイプにあったeSATAの搭載は見送られた。米国では299ドルで、2013年3月の出荷を目指しているとのこと。日本国内での販売も予定しており、すでに日本語サイトも用意されているが、現時点で掲載されている仕様は開発段階のもので、搭載が見送られたeSATAと、前面のThunderboltインターフェイスが残っている。プロトタイプは前面と背面に各1つのThunderboltだったが、製品版では背面に2つとなる。日本における出荷時期、価格等はまだ決まっていないとのこと。

ようやく発売へとこぎつけそうなBelkinによる「Thunderbolt Express Dock」。Thunderboltインターフェイスによるポートリプリケータだ
製品化に向けた最終仕様とされる背面のインターフェイス。Gigabit Ethernet、FireWire 800、Thunderbolt×2、音声出力/入力、USB 3.0×3。セルフパワーで動作する
ThunderboltのインターフェイスはMini Displayport互換なのでHDMI、DVI、VGAなどへの変換アダプタを使ってディスプレイ出力が行なえる

(矢作 晃)