井上繁樹の最新通信機器事情

Windows 8で変わったネットワークの設定と機能を見る
~Modern UIとの融合やホームグループによるファイル共有



Windows 8

2012年10月発売予定



 Windows 8の正式版の発売が間近になった。Windows 7と比べるとGUIが変更されたため、ネットワークまわりについても変化があったので調べてみた。調べるのに使用したのはWindows 8 Enterprise体験版で、製品版ほぼ同等のものだが、恒例になっている発売直後のアップデートで何らかの変更があるかもしれない。

●少しシンプルになった「ネットワークと共有センター」

 Windows Vistaで追加された「ネットワークと共有センター」はWindows 8でも健在だ。タスクバーのアイコンの右クリックメニューから呼び出せるので、ネットワークの設定変更やトラブルの際はお世話になることの多い機能だ。

Windows 8の「ネットワークと共有センター」。Windows 7と比べるとアイコン表示が無くなり、重複していたメニューが整理されすっきりした印象にWindows 7の「ネットワークと共有センター」。Windows Vistaのものを引き継ぎ完成形に昇華。ネットワーク形態を表示するアイコンのおかげかリッチな印象「ネットワークと共有センター」の「アダプターの設定変更」リンクから開く「ネットワーク接続」。Windows 7とGUIデザイン以外同じ
ちゃんと通信が行なわれているか手っ取り早く確認できる「イーサネットの状態」もデザイン以外はWindows 7と変わらないWindows Vistaの頃は「ネットワークと共有センター」上に表示されていた「共有の詳細設定」は、Windows 7同様左ペインのメニューから呼び出す外部と通信するアプリを使用する際何かとお世話になる「Windowsファイアウォール」。こちらもWindows 7と機能面での違いは無い

 Windows 8のネットワークと共有センターはWindows 7のものと比べると一部機能が省略されシンプルになった。左ペインのものと重複していたメニューが省略され、ネットワーク構成のアイコン表示が無くなった。それに伴ってネットワークと共有センターからはネットワーク名を変更するためのダイアログが開けなくなったほか、ネットワークマップを表示するためのリンクも削除された。

 ただし、大筋では機能には変更は無く、左ペインから呼び出せる機能もWindows 7と同じままだ。アダプターの設定も共有の詳細設定もデザインは変わったが機能は同じだ。Windowsファイアウォールやホームグループの設定についても同じままだ。最初のうちはつぎはぎGUIが気になるかもしれないが、機能も使い勝手も変更点は見当たらない。

●Modern UIに一部置き換えられた「ネットワーク設定」

 Windows 8ではModern UIと呼ばれるタッチ操作を想定した新しいGUIが導入された。従来から進化を続けてきたWindowsデスクトップのGUIと混在している状態で、ネットワーク設定もその影響を受けて一部混じった状態になっている。簡単な例がネットワークの接続設定で、Modern UIで操作を始めてもデスクトップGUIで操作を始めても、最終的には必ずModern UIで操作することになる。

Modern UIを使った無線LANの接続設定例。最初にカーソルを画面右下に移動してチャームを表示させて「設定」をクリックチャームが「設定」のものに切り替わったら「ネットワーク」をクリック。ここまでの操作はタスクバー上のネットワークアイコンクリックで置き換え可能接続したいSSIDをクリックしてオプションメニューを開き「接続」ボタンをクリック。見た目は大きく変わったが機能はWindows 7の頃と変わっていない(次の画像参照)
Windows 7の場合、接続可能なSSIDはコンパクトなリストで表示されていた暗号化キーの入力画面。入力したキーの内容はフォームの右端の目の形をしたアイコンをクリックしている間表示できる。Windows 7ではチェックボックスのON/OFFで表示するかしないか選択していた
共有設定。こちらもデザインは変わったが、機能的にはWindows 7の時と同じ接続が完了した。以上でWindows 8における無線LANの接続設定は終わりだ

 Modern UIは一般に文字が大きく色使いもシンプルで目に優しく感じるが、全画面を見ることが少ないワイド画面の大型スクリーンで使う場合は、視点移動が多くなるので最初のうちは戸惑うかもしれない。少々心配なのは見た目が変わってしまったことでやはり戸惑う人が出てくるだろうこと。PC Watch読者諸氏がおそらくボランティアでやっている草の根サポート稼業はWindows 8発売後しばらく忙しくなるのではないだろうか。

●利用が進むことが予想される「ホームグループ」

 ホームグループはWindows 7で追加された機能で、LAN内のファイル共有を簡単にするための仕組みだ(よく似た機能はVistaにもあった)。ファイル共有を設定する際、閲覧専用なら特に難しい設定もいらないが、読み書き自由にするとアカウントの管理やアクセス権限の設定を考える必要がある。ホームグループではデフォルトで作成されるピクチャ、ビデオ、ドキュメント、ミュージックの4フォルダとプリンタを共通のパスワード1つで共有できる。自由度が無い代わりに簡単に設定できるのが特長だ。

Windows 7で追加されたシンプルで簡単なファイル共有方法「ホームグループ」。パスワード1つで設定できるのでやり方さえ覚えてしまえば設定に時間がかからないホームグループの設定画面。「ネットワークと共有センター」のサイドバー等から呼び出せる。共有プリンタのドライバは接続設定が終わっているPCから読みだしてインストールできる
接続設定が終わっているPCからプリンタのドライバをインストールする際に表示される警告ダイアログ共有できるのはデフォルトで作成されるピクチャ、ビデオ、ミュージック、ドキュメントの4つフォルダとプリンタ。項目別に共有のON/OFFを切り替えられる

 Windows XP以前からWindowsのファイル共有を使ってきたユーザーの中にはこの機能の存在自体知らなかった人もいるかもしれない。無理に使う必要は無いが、簡単な分PCに詳しくない人への説明も楽なので覚えておいて損は無い。特に家族で写真画像を共有したい時や、1人で複数台のPCを使ってファイルを各PC間でやりとりしながら作業をする時に重宝するはずだ。

●オンラインストレージ「SkyDrive」が最初から利用可能

 Windows 8ではMicrosoftアカウント(Windows Live IDアカウント)使ってログインすると、SkyDriveも同時に利用できる。スタート画面からModern UIのアプリを使ってSkyDriveにアクセスできるほか、デスクトップ用アプリをインストールすればエクスプローラーからもSkyDriveにアクセスできる。SkyDriveは無料で7GBまで利用できるほか、課金することで最大107GBまで容量を増やせる。

Modern UIからSkyDriveにアクセスしたところ。MS OfficeのファイルをWeb上で閲覧・編集できる。ファイルを共有して共同作業も可能。容量は無料で7GBデスクトップアプリを使うとSkyDriveを自動バックアップフォルダとして使える。アイコンのチェックマークは同期(SkyDrive側へのコピー)済みのファイル

 SkyDriveはWindows 7以前のOSでも利用できるので、Windows 8にアップグレードする際の、ユーザーファイルのバックアップ先としても使える。ただし、インターネット経由でのアクセスになるので、容量が大きいファイルを扱おうとすると時間がかかる。日々少しずつ増えるファイルを貯めておくのに向いた(出し入れに時間のかかる)倉庫の様なものとして扱うのがおすすめだ。

●その他変わらなかった機能

 ここまで変更のあった機能のみ紹介してきたが、ここではそれ以外のネットワーク系の機能で使い勝手に変更が無かったちょっと便利なネットワーク系の機能を2点紹介しておく。まずはリモートデスクトップ。自宅とノート、会社と自宅など、使えると何かと便利な機能だが、使い勝手に大きな変更点は見当たらなかった。

リモートデスクトップの接続画面。ここもGUI以外の変更点は見当たらないWindows 8からWindows 7にリモートデスクトップ接続している様子エクスプローラーを使ってFTP接続している様子。GUIが違う以外は使い勝手は従来通り

 それから、存在自体忘れている人も多いかもしれない、エクスプローラーのFTP接続機能。エクスプローラーのアドレスバーに「ftp://」で始まるアドレスを入力すれば利用できる簡単でシンプルなFTP接続機能だ。別途ソフトをインストールせずに使えるのがポイントだ。こちらについても使い勝手に大きな変更は見当たらなかった。

●まとめと感想

 以上、Windows 8のネットワーク設定やネットワーク周りの機能について見てきた。Windows 8ではGUIの変更という大きな変化があったが、ネットワーク設定については大きな変化はなかった。GUIが新しいものに置き換えられたものもあるが、操作手順には大きな変化は無いので、乗り換え直後でもそれほど戸惑うことはなさそうだ。本文では触れなかったがドライバの手動インストールについても従来通りで、トラブルで鍛えられたノウハウは従来通り通用する。

 ネットワークまわりの機能についてだが、やはり大きいのはSkyDriveが使いやすくなったことだろうか。MicrosoftアカウントのIDとパスワードさえあればインターネット経由でどこからでもアクセスできるオンラインストレージが標準で利用できるようになったことは大きい。Googleドライブを始めとした他のオンラインストレージと共存もできるのでうまく活用していきたい。

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(2012年 9月 3日)

[Text by 井上 繁樹]