Hothotレビュー

Skylake世代のCPUに刷新された「MacBook」

~処理速度向上、動作時間延長して順当に進化

アップル「MacBook」ローズゴールド

 アップルは4月19日、Skylake世代のプロセッサを新たに採用した「MacBook」を発表し、4月20日より販売開始した。コンシューマ向けノートPCとして初めてUSB Type-Cコネクタを搭載した初代モデルが発表されたのが2015年3月9日。約1年経過して、初めてのアップデートを迎えたことになる。

 今回のアップデート最大のポイントは、CPUが第5世代(Broadwell)から、第6世代(Skylake)の「Core m」に変更されたこと。これによって処理能力の向上とともに、低消費電力化が図られている。また内蔵GPUが「Intel HD Graphics 5300」から「Intel HD Graphics 515」に変わることで、グラフィック描画性能も向上している。

 メモリもLPDDR3-1600からLPDDR3-1866へと動作クロック周波数が引き上げられており、データ転送速度が向上することで基本性能が底上げされているはずだ。さらにインターフェイスはPCI Expressのままで変更がないものの、新しい世代のSSDが採用されており、ストレージのリード・ライト性能も向上しているという。

 今回発表されたMacBookの本体色は、スペースグレイ、ゴールド、シルバー、ローズゴールドの4色が用意されている。パーツ構成としては「Core m3-6Y30(1.1/2.2GHz)」/メモリ8GB/SSD 256GBを搭載する下位モデルと、「Core m5-6Y54(1.2/2.7GHz)」/メモリ8GB/SSD 512GBを搭載した上位モデルが用意されており、下位モデルと上位モデルのどちらもCPUを「Core m7-6Y75(1.3/3.1GHz)」に変更可能だ。

本体カラーは従来のスペースグレイ、ゴールド、シルバーに加えて、iPhone、iPadでお目見えしているローズゴールドが新色として用意された

 キーボードは下位モデル、上位モデルともに「JIS(日本語)」、「US」、「アラビア語」、「英語-英国」、「デンマーク語」、「フランス語」、「韓国語」、「スペイン語」の中から選択可能で、「JIS(日本語)」と「US」以外は製品マニュアルも各国語のものとなる。

【お詫びと訂正】初出時に、「上位モデルのみCPUを「Core 7-6Y75(1.3/3.1GHz)」に変更可能だ」としておりましたが、下位モデルも変更可能です。お詫びして訂正させていただきます。

【表1】新型MacBookのラインナップ一覧
CPUCore m3-6Y30(1.1/2.2GHz)Core m5-6Y54(1.2/2.7GHz)Core m7-6Y75(1.3/3.1GHz)Core m7-6Y75(1.3/3.1GHz)
TDP4.5W
メモリ8GB
ストレージ256GB SSD(PCIe)512GB SSD(PCIe)256GB SSD(PCIe)512GB SSD(PCIe)
GPUIntel HD Graphics 515
ディスプレイ12型(2,304×1,440ドット、226dpi)
OSOS X El Capitan バージョン10.11.4
価格160,704円199,584円193,104円219,024円
Core m7-6Y75/メモリ 8GB/SSD 512GBという構成で税込み価格は219,024円となる。キーボードを変更しても価格は変わらない

 今回、このレビュー記事用にアップルから借用できたのはCore m3-6Y30/メモリ8GB/SSD 256GBを搭載する下位モデルだ。MacBookシリーズの特徴をおさらいしつつ、新モデルがSkylake世代のプロセッサを搭載することで、具体的にどの程度性能が向上したのかレビューしていきたい。

アップル製品ならではのパッケージを開ける喜び

 アップルの新製品が発売されると各メディアが恒例行事として実施するのが「開梱の儀」。借用品だとしても、パッケージから最新製品を取り出すのは気持ちいいものだ。とは言っても今回の新型MacBookのパッケージや、内容物などは従来と変わらない。

 パッケージの中に収められているのは、本体、29W USB-C電源アダプタ、USB-C充電ケーブル(2m)、クイックスタートガイド、「MacBook情報」、「PCリサイクルについて」、アップルロゴのシールだ。アップルロゴのシールを本体色に合わせているのは当然として、クイックスタートガイドなどを入れる紙製書類ケースにまで、ローズゴールドで文字が印刷されていることには、デザインに対するアップルの執念を感じさせられる。

MacBookのパッケージ外観。本体色と同じ製品写真が表面に印刷されている。製品写真は薄さを強調し本体を前面から撮影したもの
本体は半透明のフィルムで保護されている。フタを開けるとすぐに製品本体が見えるのはアップル製品の伝統的な演出
本体以外に同梱されるアクセサリは、29W USB-CアダプタとUSB-C充電ケーブル(2m)のみ。有線LANアダプタやUSBハブなどは別売となる
紙製書類ケースには、クイックスタートガイド、「MacBook情報」、「PCリサイクルについて」、アップルロゴのシールが収められている
紙製書類ケースには本体色に合わせた色で「Designed by Apple in California」と印字されている
未使用品を開梱した直後のバッテリ残量は86%だった

外観の変更はなし、USB Type-Cは5Gbpsにとどまる

 新型MacBookに外観上の変更点はまったくない。本体背面に刻印されている「Model A1534」というモデルナンバーはシリーズで共通。何年式のモデルなのかを調べるためには梱包箱または領収書で確認するか、MacBookを起動してOS上から「このMacについて」を開いて詳細情報を見るまで分からない。ちなみに2015年モデルの機種IDは「MacBook8,1」、モデルは「MacBook(Retina,12inch,Early 2015)」、2016年モデルの機種IDは「MacBook9,1」、モデルは「MacBook(Retina,12inch,Early 2016)」と表示される。

 スペック上の本体サイズ/重量は280.5×196.5×3.5~13.1mm(幅×奥行き×高さ)/0.92kgと2015年モデルと2016年モデルで変わりはないが、実際に計測したところ2015年モデルが925.5g、2016年モデルが927gとごくわずかではあるが差が生じていた。Skylake世代のプロセッサ搭載にともないロジックボードが新たに設計されているので、グラム単位で実測重量が変化したのだろう。

 左側面にUSB Type-C、右側面に3.5mmヘッドフォンジャック(Apple iPhoneリモート&マイク付きヘッドセット対応)のみという割り切ったインターフェイスの構成も変わらない。Thunderbolt 3(理論転送速度40Gbps)に対応したWindowsノートPCが登場している現在、せめてUSB 3.1 Gen 2(理論転送速度10Gbps)をサポートして欲しかったところだが、2016年モデルでも5Gbpsにとどまっている。ケーブルからの解放を謳う12インチMacBookシリーズにとって注力ポイントではないのかもしれないが、周辺機器を増設できる唯一の有線インターフェイスだけに将来的にボトルネックとならないか心配だ。

 なお無線機能もIEEE 802.11ac/a/b/g/n、Bluetooth 4.0対応と変更はない。Wi-Fiのアンテナ数も従来と同じく2本アンテナ仕様の2ストリームなので、最大通信速度は866Mbpsとなる。

背面の刻印部分アップ。「Model A1534」というモデルナンバーはシリーズで共通
「このMacについて」を開くと、モデル名「MacBook(Retina,12inch,Early 2016)」を確認できる。機種ID「MacBook9,1」はシステムレポートのなかでチェック可能だ
2015年モデルのロジックボード
2016年モデルのロジックボード。シャーシに変更はないが、拡大して見るとSkylake世代のプロセッサ搭載にともない新たにロジックボードが設計されているのが分かる
本体上面
本体底面
本体前面
本体背面
本体右側面には、デュアルマイクロフォンと、3.5mmヘッドフォンジャック(Apple iPhoneリモート&マイク付きヘッドセット対応)を配置
本体左側面。USB Type-C端子は理論転送速度5Gbps対応
底面パネルを止めるペンタロープネジ。本体筐体に馴染むようにローズゴールド色の専用ネジが使われている

慣れれば快適な薄型キーボード、感圧タッチ対応アプリは普及途上

 キーボードとトラックパッドについては、2015年モデルをこれまで1年間使ってきたユーザーの立場からレビューしたい。まず、組み立て部品が40%薄型化されたキーボードの浅いストロークについては、当初は違和感があったものの、今ではすっかり慣れてしまった。MacBookのキーボードで快適にタイピングするためのコツは、指の腹で打つこととあまり力を入れないこと。触れるようなタッチでタイピングすればキーが強く底打ちしないし、結果的に指の疲労も少ない。今ではMacBookのキーボードに慣れてしまったせいで、逆にMacBook Proのキーボードに違和感を覚えるほどだ。

 感圧タッチトラックパッドは、従来のトラックパッドの延長線上の入力デバイスとしては非常に気に入っている。水平方向の動きでクリック感を擬似的に感じさせる「Taptic Engine」(リニアアクチュエータ)は、これまでの物理的に沈み込むダイビングボード構造のトラックパッドと使い勝手はまったく変わらない。

 しかし肝心の「感圧タッチ」はすっかり使わなくなってしまった。「Chrome」など「強めのクリック」をサポートしているアプリは登場しているものの、単語の辞書表示には対応していても、リンク先のサムネイル表示はできないといった具合に挙動が異なっている。どのアプリでどの機能が対応しているのか調べるのも、覚えるのも正直面倒だ。機能としては優れていても、初代MacBookが発売されて1年経過した現在も、サードパーティーアプリの感圧タッチへの対応は普及途上と言わざるを得ない。

標準で用意されるのはJIS(日本語)キーボード
キーストロークはきわめて浅いが、軽いタッチでタイピングすれば快適に文字入力できる
それぞれのキーの下にLEDが実装されているので、キーボード全体が均一の明るさで発光し、またキーキャップの周囲から漏れる光も最低限だ
トラックパッドの面積は実測112×69.5mmと広く操作しやすい。圧力を感知する感圧センサーとクリック感を伝える「Taptic Engine」(リニアアクチュエータ)により、従来のダイビングボード構造のトラックパッドよりも薄型化されているため、コンパクトな筐体のMacBookでも広い面積が確保されている
「OS X」の標準ブラウザ「Safari」では、リンクを「強めのクリック」するとリンク先のサムネイルが表示されるが、「Chrome」には同機能は実装されていない

必要十分な解像度、素直な色合いのディスプレイ

 MacBookが搭載するディスプレイは、12型のIPS液晶で、解像度は2,304×1,440ドット(226dpi)。最近ノートPCで増えている15.6型の4K(3,840×2,160ドット、282dpi)に画面解像度は及ばないが、226dpiでも十二分すぎる解像感だ。

 今回の試用機では発色がほんのわずかに暖色系寄りに感じたが、階調表現は豊かで色むらなどもなかった。もし標準のカラーバランスに違和感を覚えるのであれば、「ディスプレイキャリブレータ・アシスタント」でホワイトポイントを調整するといいだろう。個人的にはもう少し暖色系に調整したほうが目の疲労が少なくて好みだが、試用機では色温度を「6750K」前後に設定したほうが白さはより強調された。

12型2,304×1,440ドット(226dpi)と十二分に精細なディスプレイ。画面サイズが物理的に狭いので実用的かどうかは別にして、ブラウザのウィンドウを横に並べて表示しても、細かい文字まで判読できる
ディスプレイの色域は公表されていないが、赤系、緑系の色のどちらも豊かな階調で発色できているという印象だ
試用機ではやや暖色系寄りに感じた。ディスプレイには個体差があるので、カラーバランスに違和感があるなら、「ディスプレイキャリブレータ・アシスタント」でホワイトポイントを調整しよう

処理性能を着実に向上させつつ、低消費電力化を実現

 今回、ベンチマークスコアを計測するにあたって、Core M-5Y51(1.2/2.6GHz)を搭載する2015年モデル(MacBook Early 2015)、Core m3-6Y30(1.1/2.2GHz)を搭載する2016年モデル(MacBook Early 2016)を使用した。Broadwell世代のミドルレンジ、Skylake世代のローエンドのCore mプロセッサを搭載したMacBookの比較となるので、それを踏まえて参考にしていただきたい。

 ベンチマークには「Geekbench 3.3.4」、「CINEBENCH R15」、「GFXBench GL 3.1.10」、「JetStream 1.1」、「Octane 2.0 Java Script Benchmark」、「Kraken JavaScript Benchmark(version 1.1)」、「Blackmagic Disk Speed Test」を使用した。また、実際のアプリケーションの性能を比較するため「Finder」上でのファイルコピー、「Adobe Photoshop Lightroom」、「Adobe Premiere Pro CC」も使用している。最後に連続動作時間を計測するため、SafariでYouTube動画を連続再生するテストを実施した。

【表】ベンチマーク結果
 MacBook Early 2016MacBook Early 2015
CPUCore m3-6Y30(1.1/2.2GHz)Core M-5Y51(1.2/2.6GHz)
GPUIntel HD Graphics 515Intel HD Graphics 5300
メモリLPDDR3-1866 SDRAM 8GBLPDDR3-1600 SDRAM 8GB
ストレージ256GB SSD(PCI Express)512GB SSD(PCI Express)
OSOS X El Capitan バージョン10.11.4OS X El Capitan バージョン10.11.4
Geekbench 3.3.4 Intel(32-bit)
Single-Core Score23081952
Single-Core Score Integer22181969
Single-Core Score Floating Point19981979
Single-Core Score Memory31091864
Multi-Core Score44854046
Multi-Core Score Integer49454522
Multi-Core Score Floating Point46164564
Multi-Core Score Memory33032058
Geekbench 3.3.4 Intel(64-bit)
Single-Core Score25162355
Single-Core Score Integer24432602
Single-Core Score Floating Point23862380
Single-Core Score Memory29251815
Multi-Core Score49954834
Multi-Core Score Integer54205684
Multi-Core Score Floating Point54245346
Multi-Core Score Memory32872114
CINEBENCH R15
OpenGL20.23 fps18.87 fps
CPU215 cb194 cb
JetStream 1.1※Appleが開発したJavaScriptベンチマーク、数値が大きいほど高速
トータルスコア128.65117.66
Octane 2.0 JavaScript Benchmark※Googleが開発したJavaScriptベンチマーク、数値が大きいほど高速
トータルスコア1808515403
Kraken JavaScript Benchmark(version 1.1)※Mozillaが開発したJavaScriptベンチマーク、数値が小さいほど高速
トータルスコア1784.4 ms1962.0 ms
Blackmagic Disk Speed Test
WRITE 1回目675.4379.1
WRITE 2回目618.8382.8
WRITE 3回目667.4401.9
WRITE 4回目664.2398.3
WRITE 5回目673.7396.5
WRITE 平均659.9391.72
READ 1回目924.5784.8
READ 2回目923.9784.2
READ 3回目923.1782.1
READ 4回目841.3734.4
READ 5回目924.7775.9
READ 平均907.5772.28
4,094枚(10GB)の画像をファイルコピー
SSD→SSD35秒5247秒18
「Adobe Photoshop Lightroom」で50枚のRAW画像を現像
4,912×3,264ドット、自動階調3分49秒684分12秒91
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し
1,920×1,080ドット、30fps15分33秒0017分1秒67
YouTube動画を連続再生した際の動作時間
ディスプレイの明るさは「6/16」9時間49分56秒7時間6分48秒

 Broadwell世代のミドルレンジ、Skylake世代のローエンドに位置するCore mプロセッサを搭載したMacBookの比較にもかかわらず、全体的にMacBook Early 2016のスコアが上回っている。特にブラウザのJavaScriptの実効速度を計測する「JetStream 1.1」、「Octane 2.0 Java Script Benchmark」、「Kraken JavaScript Benchmark(version 1.1)」において性能向上が顕著だ。

 内蔵GPUがIntel HD Graphics 515に変更されたことによるグラフィック描画性能の向上は、CINEBENCH R15の「Open GL」では確認できなかった。わずか1.63 fpsの差にとどまっているので、CPUの性能向上に引きずられて、Open GLのスコアがアップしている可能性もある。

 一方、「Blackmagic Disk Speed Test」のライト/リード速度、Finder上でのファイルコピー所要時間も大幅に高速化されていることが確認できた。ストレージのシステム情報を見てみると、MacBook Early 2015はリンク速度5.0GT/secなのに対して、MacBook Early 2016はリンク速度8.0 GT/secに向上しているので、その効果がストレートに表われた結果と言えよう。

 着実にMacBook Early 2016の処理性能が向上しつつも、連続動作時間はMacBook Early 2015を2時間43分上回っている。MacBook Early 2015のバッテリ劣化はもちろん考慮しなければならないが、MacBook Early 2016がYouTube動画を連続再生し続けながら9時間49分動作したのは注目すべき事実だ。

Appleが先取りする利用スタイルを受け入れてしまえばPCライフが快適に

 Skylake世代のプロセッサに刷新し、それに合わせて「OS X」を最適化することで処理性能の向上と、低消費電力化を実現した新型MacBookは、モバイルノートPCとして非常に魅力的なモデルだ。しかし性能が向上したとは言え、50枚のRAW画像の現像に3分49秒かかるので、クリエイティブ系のアプリケーションに向いているマシンではない。また、メモリカードを直接挿せず、周辺機器を複数接続するためにはUSB Type-Cに対応したハブが必要な点も弱点として考慮しておかなければならない。

 しかし、Wi-Fi接続可能なデジタルカメラがスタンダードになっている現在、外出先でMacBookに接続しなければならない周辺機器は決して多くはない。ワイヤレス環境に特化したMacBookに合わせて、携帯するデジタル機器もワイヤレス化して、メモリカードやケーブルに煩わされない快適なPCライフに移行してはいかがだろうか?

(ジャイアン鈴木)