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東芝 「dynabook Tab VT484/26K」

~国内メーカー初の8型Windowsタブレット

東芝「dynabook Tab VT484/26K」
発売中

価格:オープンプライス

 東芝は、国内メーカーとして初となる8型液晶搭載のWindows 8.1タブレット「dynabook Tab VT484」を2013年11月末に発売。2013年末に相次いで登場した、Bay Trail-T搭載Windows 8.1タブレットとして、いち早く国内で発売されたことでも話題となった。発売から2カ月ほど経過しているが、今回改めて取り上げたいと思う。dynabook Tab VT484シリーズには、ストレージ容量やプリインストールされるOfficeの種類の違いで3モデルが用意されるが、今回は64GBのストレージを搭載し、Office Home and Business 2013をプリインストールする最上位モデル、「dynabook Tab VT484/26K」を取り上げる。価格はオープンプライスで、実売価格は59,800円前後。

8型Windows 8.1タブレットとして仕様は標準的

 「dynabook Tab VT484/26K」(以下、VT484)は、Bay Trail-TことAtom Z3740を搭載する、Windows 8.1タブレットだ。Atom Z3740は、Clover Trailこと従来モデルのAtomプロセッサと比べ、CPUコアが4コアとClover Trailの2コアから倍増するとともに、命令の実行処理効率に優れるアウト・オブ・オーダー実行エンジンを採用するなど、CPUコアのアーキテクチャを一新。これにより、CPU処理能力が大幅に向上している。また、統合GPUも、演算ユニット数こそ4個と少ないものの、それ以外の仕様は第3世代Coreプロセッサとほぼ同じIntel HD Graphicsを採用。従来では起動すらできなかった3Dグラフィックスアプリも動作するようになっている。加えて、製造プロセスが22nmと微細化されたことで、性能が大きく向上しているにもかかわらず、Atomプロセッサらしい優れた省電力性もしっかり維持されている。従来からの大幅な性能向上に加え、省電力性にも優れることから、Bay Trail-Tを採用するWindows 8.1タブレットは、登場直後から高い人気を誇っているが、当然VT484も競合製品と変わらない魅力を備えている。

 プロセッサを含めた基本的な仕様面は、競合製品とほぼ同等だ。メインメモリは、LPDDR3-1066を2GB標準搭載(増設は不可)、内蔵ストレージは64GBのeMMCを採用するというように、他のBay Trail-T採用Windows 8.1タブレットと横並びの仕様となっている。スペック面で飛び抜けた特徴はないものの、このクラスの製品としては標準的で不満はない。

 本体のデザインは、タブレットとしてオーソドックスなものとなっている。角は大きなラウンド形状で、背面も側面付近がラウンド形状を採用しており、全体的に柔らかい印象を受けるとともに、dynabookシリーズらしいデザインという印象だ。カラーは、液晶面がブラック、背面がシルバーとなっており、こちらもdynabookシリーズのカラーを踏襲している。背面は側面付近を除いてフラットとなっているが、細かなエンボス加工が施されていることで、手触りは悪くない。

 本体サイズは、135.9×213×10.7mm(幅×奥行き×高さ)となっている。競合製品ではよりフットプリントが小さく、薄い製品もあるが、VT484が他と比べて特別大きいというわけではなく、片手で持つことも十分に可能だ。

 重量は公称では約445gとなっているのに対し、実測では434gと公称よりも11g軽い。ただ、競合製品では重量400gを切るものが多く、中には350gの軽さを実現しているものもあり、重量という点では見劣りする。実際に手に持っても、ずっしりと重く感じてしまい、長時間手に持って使うのはややつらい印象だ。このあたり、もう少し軽量化を突き詰めてほしかったように思う。

本体正面。四隅が大きなラウンド構造となっている点がデザイン的な特徴だ
レノボの8型タブレット「Miix 2 8」(右)との比較。フットプリントは135.9×213mm(幅×奥行き)と、競合製品とほぼ同等の大きさだ
下部側面
高さは10.7mmと10mmを切ってはいないが、特別厚いということはない。ただ、8.35mmのMiix 2 8(右)と並べると厚く感じる
左側面
上部側面
右側面
背面。背面は側面付近がラウンド形状となっているが、全体的にはフラット。カラーはシルバーとなっている
背面は細かなエンボス加工が施されており、手触りがいい
重量は、公称で約445g、実測では434gだった。ややずっしりとした重さで、長時間手に持って使う場合にはやや疲れそうな印象だ

広視野角液晶を採用

 VT484に採用されている液晶は、1,280×800ドット表示対応の8型液晶だ。サイズ、表示解像度は一般的な8型Windows 8.1タブレットと同じ。解像度自体はそれほど高いわけではないが、8型というサイズのため、表示される文字などはそれほど荒いと感じることはない。もちろん、フルHD液晶などと比べると表示できる情報量は少ないが、8型というサイズでは解像度が高まると文字サイズも小さくなり視認性が落ちることを考えると、この解像度でも大きな不満はない。

 採用するパネルの種類は、HFFS方式のパネルを採用。広視野角でコントラストに優れる表示が可能な点が特徴のパネルで、IPSパネルを採用する競合製品と比べても、視野角や表示品質で劣るとは感じない。表面が光沢処理のため、やや外光の映り込みは気になるものの、発色も鮮やかで、表示品質も満足できる。ただ、スクロール時などやや残像を強く感じる点は気になった。

 タッチパネルは、5点マルチタッチに対応する静電容量方式タッチパネルを採用。タッチパネルの操作性は非常に軽快で、Windowsストアアプリメニューとデスクトップ画面双方で快適な操作が可能だった。

1,280×800ドット表示対応の8型HFFSパネルを採用
表面は光沢処理で外光の映り込みは気になるが、発色は鮮やかで視野角も十分広い

豊富なアプリをプリインストール

 VT484は、国内メーカー製らしく、豊富なアプリがプリインストールされているという点も大きな特徴となっている。写真管理アプリ「思い出フォトビューアー」や電子書籍リーダー「mediabook EXPRESS」など、dynabookシリーズで広くプリインストールされているアプリはそのまま採用。また、フォトレタッチソフト「Corel PaintShop Pro for TOSHIBA」や、ビデオ編集ソフト「Corel VidelStudio X6 VE for TOSHIBA」など、画像・映像処理ソフトもプリインストール。もちろん、Office Home and Business 2013もプリインストールされており、ビジネスシーンでの活用も可能。さらに、民生用HDDレコーダーなどで録画した番組の再生や持ち出しが行なえる「RZスイート express」も用意されており、購入直後からさまざまな用途に活用できる点は、競合製品にはない魅力と言える。

国内メーカー製らしく、豊富なプリインストールアプリが搭載されている
写真管理アプリ「思い出フォトビューアー」など、dynabookシリーズでおなじみの独自アプリを豊富に搭載
フォトレタッチソフト「Corel PaintShop Pro for TOSHIBA」がプリインストールされ、写真の編集も自在だ
ビデオ編集ソフトの「Corel VidelStudio X6 VE for TOSHIBA」もプリインストール。タブレットながら優れたAV機能を有する

HDMI出力など外部ポートも充実

 基本スペックは、冒頭で紹介したように8型Windows 8.1タブレットとして標準的なものとなっている。それに対し、そのほかの機能面や外部ポートはまずまず充実している。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANおよびBluetooth 4.0を標準搭載。無線機能に関しては標準的ではあるが、5GHz帯域の無線LANに対応するのは嬉しい。センサーは、GPS、電子コンパス、加速度センサー、ジャイロセンサー、照度センサーを搭載。GPSを標準搭載する点は、競合製品に対する優位点と言える。カメラは、約800万画素の裏面カメラと、約200万画素の前面カメラを搭載する。

 側面のポートは、左側面にmicroSDカードスロット、上部側面にヘッドフォン・マイク共用ジャック、Micro HDMI出力、Micro USB 2.0ポートを備える。競合製品ではHDMI出力が省かれているものも多いが、標準で用意されている点は優位点と言える。右側面には、電源ボタンとボリュームボタンを配置。また下部側面にはステレオスピーカーも備える。ステレオは縦位置でのみの対応となり、音質も特別優れるわけではないが、しっかり搭載している点はポイントが高い。

左側面には、microSDカードスロットを配置。64GBのmicroSDXCカードも利用可能だ
上部側面には、ヘッドフォン・マイク共用ジャック、Micro HDMI出力、Micro USB 2.0ポートを備える
右側面には、電源ボタンとボリュームボタンを配置
下部側面にステレオスピーカーを搭載。縦位置のみでの利用となるのは少々残念
裏面には約800万画素のカメラを搭載
液晶面にも約200万画素のカメラを搭載する
液晶面のWindowsボタンはタッチセンサー式
付属のACアダプタ。コンパクトで携帯性に優れる
充電は、ACアダプタを本体のMicro USBポートに接続して行なう。一般的なUSB ACアダプタを利用した充電も可能だ

性能は標準的でバッテリ駆動時間も十分に長い

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。今回利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark Vantage Build 1.2.0」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.1.0」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」の5種類。比較として、Acerの「Iconia W4」、レノボの「Miix 2 8」、富士通の「「ARROWS Tab QH55/M」」の結果も加えてある。

 dynabook Tab VT484/26KIconia W4Miix 2 8ARROWS Tab QH55/M
CPUAtom Z3740 (1.33/1.86GHz)Atom Z3740 (1.33/1.86GHz)Atom Z3740 (1.33/1.86GHz)Atom Z3770 (1.46/2.40GHz)
ビデオチップIntel HD GraphicsIntel HD GraphicsIntel HD GraphicsIntel HD Graphics
メモリLPDDR3-1066 2GBLPDDR3-1066 2GBLPDDR3-1066 2GBLPDDR3-1066 4GB
ストレージ64GB eMMC64GB eMMC64GB eMMC64GB eMMC
OSWindows 8.1Windows 8.1Windows 8.1Windows 8.1
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score2437250524862518
Lightweight score1394141422691430
Productivity score1041104218291090
Entertainment score1710170417481670
Creativity score4265449544064501
Computation score5343590355686141
System storage score3789378337663700
Raw system storage score1326131612891213
PCMark Vantage Build 1.2.0
PCMark Suite5346535148214935
Memories Suite2824285228222915
TV and Movies SuiteN/AN/AN/AN/A
Gaming Suite4004427139202800
Music Suite5476535858076379
Communications Suite6203630761726166
Productivity Suite5002536053144174
HDD Test Suite9910133371121211470
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/AN/AN/A
CPU Score3787379337914687
Memory Score2872291628363267
Graphics Score1130N/AN/A1203
HDD Score14098122581360610360
3DMark Professional Edition v1.2.2503DMark Professional Edition v1.1.0
Ice Storm16050147741501310451
Graphics Score16083145091479710000
Physics Score15938157781582212415
Ice Storm Extreme9728897197466227
Graphics Score8770800287885457
Physics Score15756155741576512303
3DMark06 Build 1.2.0 1901
3DMark Score2078203720821712
SM2.0 Score691675693574
HDR/SM3.0 Score823808825653
CPU Score1860184118572005

 結果を見ると、スペックが横並びのため当然ではあるが、競合製品と比べ、ほぼ同等のスコアを記録していることが分かる。実際に、アプリを使った時の挙動も、競合製品と全く変わらず、Bay Trail-T搭載Windows 8.1タブレットとして快適に利用可能だ。

 次にバッテリ駆動時間だ。VT484の公称のバッテリ駆動時間は約11時間とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を40%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約10時間14分の駆動時間を計測した。競合製品も、実測で10時間を超える駆動時間を記録しているが、それらと比較しても全く見劣りせず、バッテリ駆動時間に関してもほぼ同等と言える。これだけの駆動時間なら、1日の外出でもバッテリ残量を気にすることなく使えるだろう。

価格の高さがやや残念

 VT484は、Bay Trail-T搭載8型Windows 8.1タブレットとして標準的な仕様となっており、性能やバッテリ駆動時間、使い勝手など、競合製品と比べても見劣りする部分はない。その上で、外部ポートにMicro HDMI出力を備えたり、GPSを標準搭載するなど、優位点もいくつかあり、完成度は十分に高いと言える。さらに、国内メーカー製らしく、豊富なアプリがプリインストールされている点も、大きな特徴と言える。上級者にとっては、豊富なアプリが不要という意見もあるとは思うが、より多くのユーザー層に対応できるという意味では、豊富なアプリのプリインストールも重要な選択ポイントになる。

 仕様面では不満はないものの、VT484にはかなり気になる部分がある。それは価格だ。競合製品では5万円を切る価格のものが中心となっているのに対し、VT484は大手量販店での実売価格が59,800円前後と、競合製品に比べてかなり高い。大手量販店ではポイントが付くとは言え、それを考慮してもかなり高いという印象だ。

 なお、VT484を3月30日までに購入すると、日本マイクロソフトのBluetoothキーボード「Wedge Mobile Keyboard U6R-00022」がもれなくプレゼントされるキャンペーンが行なわれている。このキーボードは実売価格が5,500円前後なので、VT484/26K自体は量販店でのポイント還元があれば50,000円程度になる。豊富なプリインストールアプリの存在や、国内メーカーらしい手厚いサポートが受けられる点などをどう評価するかはユーザー次第だろう。価格重視なら、競合製品が魅力かも知れないが、プリインストールアプリの充実やサポートの良さを重視するなら、VT484は選択肢として考慮すべき製品と言える。

(平澤 寿康)