~Android 2.2実装で国内販売が決まった5型タブレット |
1月のInternational CESで披露され、その後、夏に欧州で発売。国内販売を待ちわびたユーザも多いと思われるデルのAndroidタブレット「Streak」が、12月上旬にソフトバンクモバイルから発売されることが決定した。海外モデルのアップデートに先駆け、Android 2.2を実装したことでも注目される国内モデルを紹介しよう。
●ハードウェアは海外モデルと同様Streakは、海外ではAndroid 1.6を搭載した5型タブレットとして登場した。その簡単なレビューは、すでに過去記事で行なっている。ハードウェアについては海外モデルと国内モデルでほぼ同一と見られる、上記記事と重複する部分もあるが、まずはハードウェアからチェックしておきたい。
本製品にはカーボン(黒)モデルと、チェリーレッドモデルが用意されるが、今回借用したものはチェリーレッドモデルである。といっても全面が赤色になっているわけではなく、背面部分のパーツがカーボンモデルとは異なる格好となる。
裏面はカバーが装着されており、これを取り外すことでバッテリ、SIMカード、microSDカードの脱着が可能だ。ちなみに、このカバーの脱着はシステム上でも認識されるので、正常に装着されていないと警告が出る。電気的な接点と見られるものが2カ所設けられており、こちらで判定しているようだ。
SIMとmicroSDはバッテリを取り外さないと抜き差しできないようになっている。なお、本稿では日本通信のb-mobile SIM U300を装着してテストしているが、ソフトバンクから発売されるモデルはSIMロックがかけられるそうで、ソフトバンクのSIM以外での利用はできない。
カラーバリエーションモデルは背面のカラーリングが異なる。本製品はチェリーレッドモデルである | 背面のカバー内には、バッテリ、SIMカード、microSDカードが装着されている |
SIMカード上部および、バッテリの下部分に電子接点がある。これでカバーの開閉をチェックしているようだ | SIMカードとmicroSDのスロットへはバッテリを取り外してアクセスする。SIMカードは横向きに装着する格好だ |
このほか背面には、500万画素のカメラが内蔵される。脇にはLEDによるフラッシュも内蔵されている。前面にもカメラが内蔵されており、自分撮りも可能だ。ただし、こちらのカメラは30万画素相当となる。前面と背面のカメラは、ソフト上で切り替えできる。
背面には500万画素のカメラが内蔵される。脇にはLEDを用いたフラッシュが装備される | 前面にも30万画素カメラを内蔵 | 前面カメラと背面カメラはソフトウェア上で切り替えが可能 |
上面と下面にそれぞれインタフェースを備える。上面には電源スイッチ、カメラスイッチ、音量スイッチ、ヘッドセット端子を備える。ただ、カメラスイッチはシャッターを切ることはできずオートフォーカスのみが作動する状態となっており、有用性には疑問が残る。シャッターが切れるよう改善が必要だろう。
音量スイッチについても動作に不満がある。というのは、横位置で使用する場合、スイッチがある方を上に向けて利用するのが一般的だと思うが、その場合に画面に表示される音量バーとボタンの動作が逆になるのだ。OS上の音量バーは右に伸びるほど音量が大きくなるという一般的なものだが、音量スイッチは左を押すと音量が上がり、右を押すと音量が下がるようになっている。
ただし、縦位置で使用した場合は、ボタンが右側に位置し、上側のスイッチを押すと音量が上がり、下側のスイッチを押すと下がる。おそらく、ほかのスマートフォンにおける縦位置の設計を踏襲した結果、横位置使用時に逆の動作になってしまっているのではないかと思う。縦位置/横位置の画面切り替えとともにスイッチの動作を逆にするように自動設定するか、いっそ、縦位置時に下ボタンで音量が増すのはそれほど違和感がないので、スイッチの動作を逆にしてしまうといった対処を期待したい。
縦位置/横位置の話に付け加えると、本製品は縦位置を0度とした場合に、90度、270度での横位置表示が可能だ。180度回転はできないようになっており、液晶脇のメニューや設定ボタンが下または横に来る状態でのみ利用できる。
各種スイッチ類の反対側には、電源供給用の端子を備える。一見、iPod端子に似ているが、異なるものである。この端子とUSBとを接続するケーブル、およびACアダプタが付属する。ACアダプタはプラグの部分が取り外せるようになっており、各国対応のプラグへの交換が可能なようだが、製品には国内対応のもののみ付属していた。
USB給電については条件があるようで、手持ちの一般的なUSB-ACアダプタでの充電は可能だったが、eneloop mobile boosterでの充電は行なえなかった。必ずしもコンセントからの給電が必要かは不明だが、エネループでの充電が出来ないのは惜しく思われる。
このほか、カナル型イヤフォン付きヘッドセットと、ソフトケースが付属。本体重量は実測で217gとまずまず軽量だが、5型タブレットという本体サイズから、Yシャツの胸ポケットなどへの収納はつらい。ソフトケースの付属はありがたいところだ。
●Android 2.2をベースに独自ガジェットを用意
ここからは、ソフトウェアを中心に、本体の使用感について言及していきたい。まず、本製品は海外モデルとは異なり、Android 2.2を採用するのが大きな特徴となる。起動時には、デルロゴのほか、ソフトバンクロゴも表示される。
液晶は800×480ドット。ゴリラガラスと呼ばれる強化ガラスを表面に備えることを特徴とする。液晶の見栄えは良く、直射日光下でも輝度を上げれば視認性は悪くない。ただ、表面に光沢があるため、ある程度の反射はある。
OSはほぼAndroid 2.2そのままといった印象。標準以外で目立ったアプリケーションは、AccuWeather、Evernote、QuickOffice、RadioTime、Wi-Fiスポット設定といったところだ。
メイン画面は7つのデスクトップを切り替えて使用可能。一見独自のUIが採用されているかのような画面が並ぶが、実態はAndroid標準のデスクトップに、デル独自のウィジェット「Stage Widgets」を表示させたものだ。
Stage Widgetsはデスクトップ1枚を占有する設計が特徴となっており、用途によっては使い勝手がよい。例えば、写真ウィジェットでは新しい写真がデスクトップに表示されるし、POP/IMAP/Exchange対応のメーラーと連動したメールウィジェットは新しいメールのタイトル確認を容易にする。WebウィジェットはGoogle検索のほかに標準ブラウザアプリでブックマークされたWebサイトの画面をキャッシュして表示してくれる。いちいち必要なアプリを起動せずとも多くの情報が表示されるのは便利だ。
ただ、このウィジェットを除いては基本的にはAndroidの標準的な機能のみが提供されるだけ。レビューされた海外版にあったカメラやギャラリーアプリなど、さまざまな独自アプリは削られたようだ。
Android 2.2の本製品では、カメラ、ギャラリーなどはいずれも標準アプリを利用している。このあたり、デルのPCに似た雰囲気という印象も受ける。標準に近い形からどんどんアプリをインストールして使い勝手を向上させていきたい人には好ましいだろうし、初期から使い勝手のよいアプリのプリインストールを望むと惜しく感じる人もいるだろう。
以下、横位置表示でのデスクトップ画面 | ||
以下、縦位置表示でのデスクトップ画面 | ||
ただし、日本語IMEについては、iWnn IMEがプリインストールされており、初期状態でも日本語入力が可能だ。もちろんsimejiやOpenWnnなど、ほかのIMEをインストールして利用することもできる。
Webブラウザは標準ブラウザのみが付属。Android 2.2に対応したAdobe Flash Player 10.1はプリインストールされており、Web上のFlashコンテンツをすぐ楽しめる。ただ、写真で示したようなシンプルなFlash動画の再生でも幾度かコマ落ちが発生するほどで、快適と呼べるほどではないので過度の期待は避けた方が良い。
とはいえ、不満を感じたのはFlashの再生程度で、そのほかの動作はほかのAndroid機と比べても遜色ないし、Android 1.6~2.1を搭載した安価なタブレットとは格段の差がある。パフォーマンスについては及第点以上のものを持っていると言って良いだろう。
最後にバッテリ駆動についてだが、本製品では720p動画が再生可能でなので、これを液晶輝度最大でループ再生した場合の駆動時間を調べたところ、おおよそ5時間15分~30分の駆動時間となった(この15分の誤差は、バッテリ切れの瞬間を見逃してしまったため、ストップウォッチを確認した時間の範囲を示したもの)。
バックグラウンドど自動同期は有効にした状態なので、駆動中にも定期的なWi-Fiアクセスは発生している。液晶輝度は最大で、バッテリ駆動時間計測中は、平常時よりも本体に温もりを帯びるというCPUへの負担も大きい状態でのテストであり、気温が低めという点を除けば、ほぼワーストケースといってもいい駆動時間と考えている。
それで5時間持つというのは、バッテリサイズを考えるとまずまずの結果といえるのではないだろうか。これだけのバッテリ駆動が可能であれば、eneloop mobile boosterでの充電がでないことをデメリットと思わない人もいると思われる。バッテリの交換も可能なので、単体発売されれば、予備を持つことでバッテリ駆動時間に対する不満を持つことは、ほとんどなくなるのではないだろう。
Androidスマートフォンやタブレットが注目を集めるなか、5型液晶という特徴を持って日本市場に投入される本製品。海外版に比べてUIの独自性は薄らいでいるが、ウィジェットの使い勝手は良好。むしろ、操作性がAndroidそのままでニーズに合わせてウィジェットを配置できるという点では、好印象を受けた。
スマートフォンより一回り大きい5型というのサイズを持つ製品は多くなく、スマートフォンの画面では小さいと思っている人のニーズを満たすだろう。秋葉原などでは、これよりも大きいタブレットもあるが、リファレンスデザインに沿ってとりあず作ってみただけという感が拭えないものが多い。その点からも本製品は、PCとスマートフォンの中間のデバイスが欲しい人の購入筆頭候補に挙げていい。
(2010年 11月 22日)
[Text by 多和田 新也]