~Android 2.2搭載の7型タブレット |
2010年のIT業界で、注目すべきトピックの1つとして挙げられるのが、タブレットやスレートなどと呼ばれるタッチパネルベースの端末であろう。この種の端末は昔からあったが、主に業務用途で利用されており、コンシューマ向けとして注目されるにはいたらなかった。その状況も、iPadやAndroid搭載端末の登場によって大きく変わり、新たな市場が誕生したといってよい。
今回は、Android搭載タブレット端末の新製品の1つで、7型液晶を搭載したサムスンの「GALAXY Tab」を試用する機会を得たので、レビューしていきたい。GALAXY Tabについては、すでに山口氏による電子書籍端末としての詳細なレビューが掲載されているので、そちらの関連記事もご覧いただきたい。なお、今回は、UIM(SIM)なしの本体のみを借用したため、無線LAN環境のみで試用した。
●片手でも持てる絶妙なサイズ一口にタブレット端末と言っても、製品によってその大きさや重量は千差万別だ。タブレット端末の代表的な製品であるiPadは、9.7型液晶を搭載し、サイズは242.8×189.7×13.4mm(幅×奥行き×高さ)で重量は730g(WiFi+3Gモデル)だ。それに対し、GALAXY Tabは、7型液晶を搭載し、サイズは190×120×12.1~12.2mm(同)で重量は約382gだ。つまり、フットプリントは、ちょうどiPadの半分くらいで、重量もほぼ半分。そして、スマートフォンの代表であるiPhone 4は、3.5型液晶を搭載し、サイズは115.2×58.6×9.3mm(同)で重量は137gなので、フットプリントと重量はGALAXY Tabの約3分の1だ。
iPadを片手で長時間持つのは厳しいが、GALAXY Tabは片手で持てる。ただし、iPhoneのように片手で持ったままその親指だけで操作するのは難しく、基本的には両手で操作することになるだろう。シャツの胸ポケットには入らないが、コートのポケットには十分入るサイズであり、スマートフォンの小さな画面は苦手だが、iPadは大きすぎるという人には、絶妙なサイズといえる。なお、重量はiPadのほぼ半分だが、実際に持ってみると、サイズから想像するよりは重く感じた。筐体の質感は、iPhoneやiPadと比べても遜色はなく、十分に満足できるレベルだ。
●液晶の表示品位は高く、バッテリも長持ち
次にハードウェアスペックを見てみよう。CPUとして、Samsung S5PC110 1GHzを搭載。メインメモリは512MBで、フラッシュメモリは512MB+16GBと比較的大容量だ。OSは、Android 2.2であり、Flash 10.1もサポートしている。液晶の解像度は600×1,024ドットで、iPadの768×1,024ドットに比べて、短辺が168ドット少ない。7型液晶としてはバランスの取れた解像度であり、表示も鮮やかで、視野角も十分だ。表示品位は優秀といえる。
カメラは背面と表面に搭載。背面のメインカメラの画素数は約320万画素で、表側のサブカメラの画素数は約130万画素だ。右側面に、UIMカードスロットとmicroSDカードスロット、音量大/小ボタンを搭載する。また、液晶下部には、4つの操作ボタンが用意されている。
無線機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 3.0+HS、3G/GSM/GPRSに対応する。3Gについては、FOMAハイスピード(HSDPA/HSUPA)対応で、下り最大7.2Mbps、上り最大5.7Mbpsでの通信が可能だ。
iPadと同じく、バッテリの交換はできないが、容量が4,000mAhと大きく、約1,600時間の連続待受時間を実現。アプリの利用状況によっても、バッテリの減り方は変わってくるが、1日たっぷり使っても余裕で、iPhone 4やIS03のようにバッテリの残量を常に気にしながら使う必要はないのは嬉しい。
ACアダプタとUSBケーブルが付属するほか、試供品として1GBのmicroSDカードとマイク付きヘッドフォンが付属する。
●シンプルなUIで操作感は軽快
Android搭載端末は、各メーカーが独自にUIに手を加えることが可能であり、製品によってはかなり凝ったデザインを採用しているものもあるが、GALAXY Tabは、ほぼ標準のUIを採用しており、無駄なアニメーションなどがないので、画面切り替えなどの動作は軽快だ。
iPhone 4と比べると、iPhone 4の方がさらに高速に動作する印象だが、Android搭載スマートフォンであるIS03に比べると、GALAXY Tabの方が軽快に動き、ストレスを感じることはほとんどない。加速度センサーを利用した画面切り替えの速度や、フリックでのスクロール速度なども十分高速だ。マルチタッチ操作に対応したタッチパネルの感度もよく、全体的な操作感は快適だ。
画面上部のステータスバーを下に指でドラッグすると、GALAXY Tab独自の通知パネルが表示される。この通知パネルで、無線機能やマナーモードの有効/無効の切り替え、回転ロック、輝度調整などが可能なほか、メールなどの受信状況も知らせてくれるので便利だ。
入力方法は、iPhoneなどとほぼ同じで、テンキー入力やQWERTYキー入力を選択できる。搭載IMEは「Samsung日本語キーボード」で、予測変換に対応しており、変換精度もなかなか高い。テンキー入力時は、フリック操作にも対応する。縦画面で、両手の親指でQWERTYキー入力を行なうのはやや窮屈だが、横画面ならかなり高速に入力できる。
GALAXY Tabのホーム画面 | 基本操作の様子。速度は十分高速だ | 画面上部のステータスバーを下に指でドラッグすると、独自の通知パネルが表示される |
入力方法は、QWERTYタイプとケータイ(テンキー)タイプを選べる | ケータイ(テンキー)入力を選べば、フリック操作も可能 |
【動画】縦画面で入力をしている様子 |
【動画】横画面で入力をしている様子 |
●画面が大きくブラウズは快適
GALAXY Tabは、一般的なスマートフォンに比べて画面が大きいため、Webブラウズも快適だ。スマートフォン/ケータイフルブラウザ向けにデザインされたサイトはもちろん、PC用サイトも横画面にすれば、小さな文字も読みやすい。
搭載しているブラウザはFlash 10.1をサポートしており、Flashを利用しているサイトも閲覧できる。ただし、Flashの再生は、PCと同等のパフォーマンスとはいえず、ニコニコ動画はかなりコマ落ちしてしまう。YouTubeについては、専用アプリがプリインストールされており、快適に閲覧できる。
「PC Watch」のスマートフォン向けページを閲覧しているところ | 「PC Watch」の通常ページを閲覧しているところ |
YouTubeは専用アプリで閲覧できる | YouTubeの動画を再生しているところ |
●Officeアプリケ-ションやDLNAソフトなどがプリインストール
アプリケーションとしては、Android標準アプリケーションの他に、Officeアプリケーションの「ThinkFree Office」やナビゲーションソフトの「いつもNAVI」、待受け画面上で、mixiやTwitter、Facebookなどのタイムラインが見られる「SNS Browser」、DLNAクライアント/サーバーソフトの「AllShare」などがプリインストールされている。
AllShareは、GALAXY TabをDLNAクライアントまたはサーバーとして利用するソフトである。試しに、GALAXY TabをDLNAサーバーとして動作させ、PlayStation 3からアクセスしたところ、PS3側からGALAXY Tabが認識され、GALAXY Tab内の動画の再生が可能であった(PS3側で再生が可能な形式のみ)。ただし、本来は、GALAXY TabのAllShare側でも、クライアントとなるPS3が検出されるはずなのだが、筆者が試した環境では検出されなかった。
また、形状はタブレット型端末だが、ドコモが販売する端末であり、電話機能も備えているため、サイズの大きなスマートフォンとしても位置づけられる。そのため、スマートフォンと同様にAndroidマーケットからアプリを自由にダウンロードできることも魅力だ(Android搭載タブレット端末では、Androidマーケットからアプリをダウンロードできない製品が多い)。
●スマートフォンと10型クラスのタブレット端末の間を埋める製品
Androidは3.5~4型クラスのスマートフォンから、10型クラスのタブレット端末まで、さまざまなデバイスに搭載されているが、7型液晶を搭載したGALAXY Tabはその間をちょうど埋める製品であり、スマートフォンでは小さいが、10型クラスでは大きいと思っている人には最適だ。
数人で同時にサイトや写真を見たり、プレゼンテーションに使うのなら、10型クラスの端末のほうが適しているだろうが、自分1人でブラウズするのなら、GALAXY Tabのサイズはまさに絶妙だ。本製品をケータイの代わりにするには無理があるが、フィーチャーフォン+GALAXY Tabという組み合わせは、仕事にもプライベートにも威力を発揮しそうだ。スマートフォンを使ってみたいが、文字が小さくて見にくいとか、入力がしにくいといった不満がある人にもお勧めしたい。
(2010年 12月 24日)
[Text by 石井 英男]