~タフさだけでなく基本性能も大きく進化 |
パナソニックは、フィールドモバイルノートPC「TOUGHBOOK」シリーズの最新モデルとなる「TOUGHBOOK CF-31」を、11月18日に発売した。TOUGHBOOKシリーズには、A4ノートタイプやコンバーチブルタイプ、ピュアタブレットタイプなど、さまざまなモデルがラインナップされているが、CF-31は、A4ノートタイプの最新モデルとなる。従来モデルからタフさやパフォーマンスが大きく向上している。
●120cmからの落下やジェット水流にも耐えるタフさを実現ノートPCにとって、振動や衝撃、粉塵、水などは大敵だが、それらに真っ向から挑む製品としておなじみなのが、パナソニックのTOUGHBOOKシリーズだ。アメリカ国防総省が定める、物資調達ガイドラインである「MIL規格」を満たす優れた耐衝撃、耐粉塵、防滴性を実現しており、過酷な環境でも安心して利用できる“タフ”なノートPCとして、さまざまな現場で広く利用されている。
その最新モデルとなるCF-31は、そのタフさが従来モデルからさらに向上している。
従来モデルのCF-30は90cmからの落下衝撃に耐える耐衝撃性能だったが、CF-31では、120cmからの落下衝撃に耐える。ボディは、従来同様衝撃に強いマグネシウム合金を採用するとともに、Let'snoteシリーズで培った、耐衝撃性を落とすことなく軽量化する構造を応用することによって、ボディ全体の重量は200gほど軽量化し、落下時の衝撃を低減。また、液晶パネルやHDDといった、衝撃に弱いパーツは衝撃緩衝材でしっかり保護している。例えばHDDは、全体を緩衝材で包んだうえで、専用のアルミケースに入れてボディ内に取り付けられている。
また、防塵・防滴性能については、「IP65」に準拠している。これは、国際電気標準会議(IEC)が定める防塵・防滴性能を示す規格で、IP65とは、PC内部を減圧した状態で8時間粉塵の内部浸入を防ぐ耐防塵性能と、ジェット水流(直径6.3mmのノズルから1分あたり12.5Lの水を噴射する噴流水)を全方向から最低3分以上かけても水の浸入を防ぐ耐防滴性能を併せ持つことを示している。キーボード面からの水やホコリの侵入が防がれているのはもちろん、側面のポート部分は、パッキンとロック機構を持つカバーでしっかり覆うことによって、水やホコリの侵入を防いでいる。
発表会の記事の動画にもあるように、高い場所から落下させたり、本体を完全に水没させてしまっても、何事もなかったように動作する優れたタフさは、他の製品にはない大きな特徴と言える。
●優れたタフさを維持しながら、Core i5搭載による優れたパフォーマンスを実現
CF-31のもう1つの特徴となるのが、タフさだけでなく、ノートPCとしてのパフォーマンス面も大きく向上しているという点だ。CF-31では、CPUに通常電圧版のCore i5-520M(2.40GHz)が採用されている。密閉ボディを採用するTOUGHBOOKでしっかりパフォーマンスを引き出せるのか心配になるかもしれないが、CF-31では空冷ファンが搭載されており、CPUの発熱に対する対処もしっかりと行なわれている。
ただ、ここで少々疑問に思うかもしれない。空冷ファンを搭載するとなると、当然ボディ内に冷却用の空気を取り入れる吸気口と、熱を排出する排気口を用意する必要がある。しかし、そうすると、防塵・防滴性能が失われることになり、タフさが保たれない。
左側面に空冷ファンの排気口があるが、空冷ファンは密閉されている電気回路部と完全に分離して搭載され、電気回路部への粉塵や水の浸入を防いでいる |
しかし、TOUGHBOOKでは、CPUなどを搭載する基板やHDDなどの電気回路部と空冷ファンを完全に分離して搭載することで、その問題を解決している。基板やHDDといった電気回路は専用の密閉空間内に置いて外部と遮断。一方、CPUの熱をヒートパイプを利用して密閉空間外に引き出し、そこに空冷ファンを配置してCPUの熱を処理しているというわけだ。空冷ファンは外部からの粉塵や水にさらされることになるが、ファンも防塵・防滴仕様にして対処している。
TOUGHBOOKのように高い防塵・防滴性能を備えるノートPCでは、基本的に密閉構造を採用する必要があるために、内部の熱処理が非常に難しく、高性能なCPUを搭載することは難しいというのがこれまでの常識だった。そういった中で、ヒートパイプを利用することで問題を解決したCF-31は、画期的な製品と言っていいだろう。
いくら優れたタフさやパフォーマンスを備えていても、環境によって快適に利用できない場合があるようでは、せっかくのタフさも活かしきれない。CF-31では、どのような環境でも快適に利用できるよう、液晶画面にも工夫がある。それは、液晶表面に低反射処理を施すと共に、非常に高輝度なLEDバックライトを採用することで、直射日光が降り注ぐような場所でも優れた視認性を確保しているという点だ。
CF-31の液晶パネルは、バックライト輝度が最大1,100cd/平方mと、一般的なノートPCの液晶パネルとは比べものにならないほど高輝度となっている。その上で、外光の反射を低減するAR(Anti-Reflection)処理を施すことで、直射日光下でも優れた視認性を確保しているというわけだ。実際に、直射日光下に持ち出して確認してみたところ、筆者が普段利用しているノートPCでは画面の文字がほとんど視認できなくなるのに対し、CF-31では、若干視認性は落ちるものの、表示されている文字や画像が問題なく視認できた。
また、軽快な操作といういみでは、タッチパネルを搭載している点も見逃せない。タッチパネルは、従来モデルから搭載されており、手袋をした指でも操作できるように工夫されている。どのような環境でも快適に操作できるという意味で、欠かせない機能だ。
液晶パネルは、1,024×768ドット表示に対応する13.1型液晶を採用。従来モデルよりわずかに小さくなっているが、文字などの視認性はほぼ同等と考えていい。
1,024×768ドット表示対応の13.1型液晶を搭載。低反射処理と超高輝度LEDバックライト搭載で、直射日光下でも優れた視認性を確保している | 液晶パネル表面にはタッチパネルを配置。ハンドル部のスタイラスや指を利用して操作できる |
●無線機能やセキュリティ性にも優れる
いつでもどこでも利用できるという意味では、無線機能が充実している点も見逃せない。IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANが標準搭載されているのは当然として、CF-31ではFOMAハイスピード対応のワイヤレスWANも標準搭載となっている。現在では、どのような業務でも、PCを利用する場合にネットへの接続が不可欠となっている。そういった意味で、都市部はもちろん、山間部も含め、非常に広いサービスエリアを誇るFOMAハイスピード対応のワイヤレスWANを搭載しているということは、非常に心強い。
また、野外業務で主に利用されるノートPCということで、セキュリティ性も求められるが、その点もCF-31なら問題ない。HDDのパスワード保護やTPMチップによる暗号化などはもちろん、インテルvProテクノロジーによるリモート管理機能、インテルアンチセフト・テクノロジーによる盗難時のデータ流出防止機能など、さまざまなセキュリティ機能が盛り込まれている。堅牢性だけでなく、こういったセキュリティ性が実現されている点も、全世界でTOUGHBOOKが広く受け入れられている理由の1つだ。
●HDDは簡単に着脱可能、HDMI出力も搭載CPU以外の基本スペックを確認しておこう。チップセットはIntel QM57 Express、メインメモリは標準2GB搭載。本体底面のフタを開けるとSO-DIMMスロットにアクセスでき、最大6GBまで拡張できる。HDDは容量160GBの2.5インチSATAドライブを採用。このHDDは、上でも紹介したように、緩衝材で覆うとともに専用のアルミケースに封入して搭載されているが、側面から簡単に取り出せるようにもなっている。これは、HDDを取り出してデータを保護するという意味も兼ねている。
無線機能は、先ほども紹介したようにIEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANとFOMAハイスピード対応のワイヤレスWANに加え、Bluetooth 2.1+EDRを標準搭載。また、Gigabit Ethernetも搭載している。
側面ポート類は、右側面にExpressCard/54スロットとType2 PCカードスロット、SDカードスロット、オプションの光学式ドライブを搭載するマルチメディアポケット、背面にUSB 2.0×2と拡張バスコネクタ、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、ヘッドフォン・マイク端子、シリアルポートが、左側面にHDMI出力、FOMAハイスピード用のSIMカードスロット、Gigabit Ethernet、USB 2.0×2、電源コネクタが、それぞれ用意されている。
本体サイズは、302×292×73.5mm(幅×奥行き×高さ)。フットプリントは従来モデルと同じだが、高さは4mmほど増えている。前面に取っ手が付いているのは従来モデル同様だ。重量は約3.72kg。サイズや重量を考えると、モバイルノートとは呼べないかもしれないが、TOUGHBOOKシリーズは一般的なモバイルノートとは全く異なっており、このサイズと重量は欠点とはならないだろう。
フットプリントは、幅302mm×奥行き292mmと、さすがにかなり大きい | 本体正面。高さは73.5mmと、従来モデルより4mmほど増えている | 正面には、従来モデル同様ハンドルが取り付けられている |
●過酷な環境で利用するノートPCとして右に出るものなし
TOUGHBOOKシリーズにとって、基本性能は一般のノートPCに比べてそれほど重要視されないとは思うが、一応いつものベンチマークテストを行なった。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の5種類。比較用として、dynabook RX3とLet'snote R9の結果を加えてある。
結果を見ると、標準ではメモリ搭載量が2GBでシングルチャネル動作となっていることもあってか、ほぼ同等の基本スペックを持つdynabook RX3よりも若干結果が劣っている。とはいえ、低電圧版Core 2 Duo SL9300(1.60GHz)を搭載する従来モデルから大幅にパフォーマンスが向上していることは間違いなく、これだけのパフォーマンスが発揮されていれば、処理能力の重さを感じる場面は少ないと考えていい。
TOUGHBOOK CF-31 | dynabook RX3 | Let'snote R9 | |
---|---|---|---|
CPU | Core i5-520M (2.40/2.93GHz) | Core i5-520M (2.40/2.93GHz) | Core i7-640UM (1.20/2.26GHz) |
チップセット | Intel QM57 Express | Intel HM55 Express | Intel QM57 Express |
ビデオチップ | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics |
メモリ | PC3-8500 DDR3 SDRAM 2GB | PC3-8500 DDR3 SDRAM 2GB | PC3-6400 DDR3 SDRAM 2GB |
OS | Windows 7 Professional | Windows 7 Professional | Windows 7 Professional 64bit |
PCMark Vantage Build 1.0.1 0906a | |||
PCMark Suite | 5021 | 5607 | 6817 |
Memories Suite | 2560 | 3036 | 3576 |
TV and Movies Suite | 3220 | 3701 | 2817 |
Gaming Suite | 2523 | 2937 | 4333 |
Music Suite | 5151 | 5258 | 8959 |
Communications Suite | 6177 | 6642 | 6666 |
Productivity Suite | 3773 | 3994 | 9278 |
HDD Test Suite | 2791 | 3244 | 19481 |
PCMark05 Build 1.2.0 | |||
PCMark Score | 5156 | 5914 | N/A |
CPU Score | 5633 | 7219 | 4782 |
Memory Score | 6193 | 6251 | 4620 |
Graphics Score | 2558 | 2637 | 1754 |
HDD Score | 4625 | 5562 | 24405 |
3DMark06 Build 1.1.0 0906a | |||
3DMark Score | 1722 | 1929 | 1222 |
SM2.0 Score | 503 | 588 | 361 |
HDR/SM3.0 Score | 721 | 784 | 507 |
CPU Score | 2355 | 2629 | 1683 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||
Low | 4012 | 4031 | 2405 |
High | 2536 | 2616 | 1581 |
Windowsエクスペリエンスインデックス | |||
プロセッサ | 6.4 | 6.5 | 5.5 |
メモリ | 5.5 | 5.5 | 5.5 |
グラフィックス | 3.9 | 4.5 | 3.2 |
ゲーム用グラフィックス | 5.1 | 5 | 4.6 |
プライマリハードディスク | 5.3 | 5.9 | 6.7 |
次に、バッテリ駆動時間だ。まず、Let'snoteオリジナルの省電力設定「パナソニックの電源管理(省電力)」に設定し、無線機能は無線LANのみを有効にした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約12時間15分であった。重量の制約が少ないために、8.55Ahと大容量のバッテリが搭載されている結果だが、野外で利用することが基本の製品であることを考えると、この長時間駆動は非常に魅力が大きい。ちなみに、省電力設定を「高パフォーマンス」、バックライト輝度を100%に設定し、無線LANとBluetoothをONにした状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1,156kbps、640×480ドット)を連続再生させた場合には、約4時間50分だった。常にフルパワーで利用することは少ないとは思うが、それでも5時間近い駆動時間があり、非常に心強い。
バッテリ駆動時間 | |
---|---|
省電力設定「パナソニック省電力」、BBench利用時 | 約12時間15分 |
省電力設定「高パフォーマンス」、動画再生時 | 約4時間50分 |
付属のACアダプタはややサイズが大きい | 容量が8.55Ahの大容量バッテリが標準搭載されている |
TOUGHBOOKシリーズの魅力は、なんと言ってもその優れた堅牢性だが、CF-31は、その堅牢性に磨きがかかるとともに、基本性能も大きく進化し、魅力が大きく向上している。工事現場をはじめとして、非常に過酷な環境で利用するノートPCとして、現時点で右に出るものはなく、手放しでおすすめできる製品だ。ちなみに、CF-31は法人向けモデルで、直販価格は453,180円と非常に高価だ。そういった意味では、一般ユーザーが購入して利用するのは難しい。それでも、利用用途によっては、この優れた耐衝撃・防塵・防滴性能が大きな魅力となる場合もあるだろう。もし、過酷な環境で快適に利用できるノートPCを探しているなら、CF-31の導入を検討してみてはいかがだろうか。
(2010年 11月 19日)
[Text by 平澤 寿康]