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日本HP「HP ENVY Recline 23-m240jp Beats SE」

~Beats Audioコラボレーションの液晶一体型デスクトップ

日本HP「HP ENVY Recline 23-m240jp Beats SE」
発売中

価格:オープンプライス

 日本ヒューレット・パッカード(日本HPは)は、液晶一体型デスクトップの新モデル「HP ENVY Recline 23-m240jp Beats SE」を発売した。製品名からも分かるように、オーディオブランド「Beats Audeo」とのコラボレーションにより、高音質なサウンド再生能力を備えている。また、標準でタッチパネルを搭載し、机の上に設置しても楽な体勢でタッチ操作できるように、手前に引き寄せつつ、水平まで液晶面の角度を調節できる点も特徴となっている。価格はオープンプライス、実売価格は142,000円前後だ。

鮮やかな赤が目立つ本体デザイン

 「HP ENVY Recline 23-m240jp Beats SE」(以下、ENVY Recline)は、日本HPが発売する液晶一体型PCシリーズの中で、最上位に位置付けられる製品だ。これまで日本HPが発売してきた液晶一体型PCは、本体背面に開閉型のスタンドを備える、いわゆるフォトフレームスタイルに近いデザインの製品が中心だった。それに対しENVY Reclineは、より自由に液晶面の角度の調節が可能な高機能スタンドを備える、液晶ディスプレイに近いデザインの製品となっている。

 本体デザインは、液晶一体型PCとして比較的オーソドックスなものとなっている。カラーは、ブラックを基調としつつ、正面下部のHPロゴ、スタンドの側面や背面部分に鮮やかな赤を配色することで、落ち着いた中にも斬新さを感じさせるものとなっている。ENVY Reclineは、オーディオブランド「Beats Audio」とコラボレーションしていることもあり、Beats Audioのブランドカラーの赤を取り入れているわけだが、地味な印象の多い液晶一体型PCが多い中で、この配色はなかなか好印象だ。

 本体サイズは559.2×107.95~265.2×454mm(幅×奥行き×高さ)。液晶左右ベゼル部分の幅は極端な狭額縁というわけではないものの、23型液晶を搭載する液晶一体型PCとしては、標準的なサイズといえる。重量は約12.8kgとなる。

本体正面。ボディカラーはブラックで、赤のHPのロゴが目立っている
左側面。スタンド側面部は、Beats Audioのコーポレートカラーとなる鮮やかな赤を採用
背面。スタンド背面側も赤となる
右側面。本体デザインは、液晶一体型PCとして比較的オーソドックスだ
スタンド前方はブラック。Beats Audioのロゴも印刷されている

液晶面の角度を自在に調整可能

 ENVY Reclineで、フォトスタンド型ではなく、液晶ディスプレイに近いスタンドを採用しているのには理由がある。それは、自然な体勢で快適な操作を可能にするために、液晶面の角度を自由に調節できる機構を実現しているからだ。

 ENVY Reclineのスタンドは、「リクライニング・スタンド」と呼ばれている。背面のヒンジは、本体側とスタンド側それぞれに回転機構を備えることで、液晶面の角度や高さを調節できる構造となっている。本体側のヒンジは120度以上回転するようになっており、水平を超え、後方にまで倒すことが可能。それに、スタンド側の回転機構と合わせて、液晶面の角度や高さを自在に調節可能としている。基本的には、液晶の角度を、ほぼ垂直な状態から水平な状態まで、自在に変更できると考えていい。

 この液晶面の角度調整機構にはもう1つ利点がある。それは、液晶面を簡単に手前に引き出せるという点だ。通常液晶一体型PCを設置する場合には、手前にキーボードやマウスを置いたり、書類を開けるスペースを確保するのが普通だ。そのため、液晶面は机の比較的後方に位置することになる。だが、タッチ操作のみで使いたい場合には、液晶面は手前にあった方が快適だ。ENVY Reclineでは、通常のデスクトップPCとして利用する場合には液晶面を後方に、またタッチ中心で利用する場合には、液晶面を倒しつつ、手前に引き出して快適な操作性を実現することが可能となる。実際に、楽な姿勢でWebページを閲覧したり、タッチ操作のゲームを楽しむ場合など、このヒンジ機構による自在な液晶面の角度と位置の調節機構が非常に役立つと感じた。

 液晶面の角度や位置の調整に、それほど強い力は不要。また、液晶面のぐらつきもなく、強度に不安を感じることもない。

リクライニングスタンドは、本体側とスタンド下部2カ所に回転軸を備え、角度や高さを自在に調節可能
このように、本体を水平にして利用することも可能
本体側の回転ヒンジは90度以上回転し、このように後方側にまで傾けることが可能
本体を水平にして正面から見た様子。高さは、スタンド側の回転軸で調節する
本体の高さを最も低くした状態。リラックスした体勢でタッチ操作が可能だ
最も低くすると、このように本体が手前にせり出してくる。机の上でもタッチ操作しやすい位置に配置できる
スタンドがテーブルの手前にある場合には、本体がテーブルより低いところまで下がる

23型フルHD液晶を搭載

 液晶は、1,920×1,080ドット表示対応の23型パネルを採用している。最近では、ノートPCやタブレットを中心に、フルHD超の超高解像度液晶を採用する製品が増えているが、液晶一体型PCではまだ採用例が少なく、ENVY Reclineの価格帯を考えても、フルHD表示対応で大きな不満はない。

 パネル表面は光沢処理となっており、外光の映り込みが激しい点は気になるものの、発色は十分に鮮やかだ。パネルの種類はIPS方式のため、視野角が広く、液晶の角度を大きく変更しても色合いの変化はほとんど感じられない。

 発色は、標準設定では、全体的にやや青みの強い発色となっている。これは、標準設定では色温度がやや高めに設定されているためだ。標準で添付されている表示設定ツールを利用すれば、色温度の変更が行なえるため、自然な色合いを再現することも容易だ。また、明るさやコントラスト、色温度を用途に合わせて切り替えるプリセット機能も用意。ゲーム、動画、テキストなど、利用シーンに応じた表示設定の切り替えが可能な点は、一般的な液晶ディスプレイに近い使い勝手を実現するという意味でも、歓迎できる。

 液晶前面には、10点マルチタッチ対応の静電容量方式タッチパネルを搭載する。タッチの反応は申し分なく、軽快な操作が可能だった。ただし、表面と液晶パネルの距離がやや離れており、指と液晶部分との視差がやや大きいと感じる点は少々気になった。

1,920×1,080ドット表示対応の23型液晶を搭載。IPSパネルを採用し、視野角は十分に広い
標準設定では色温度が高めに設定されており、やや青みの強い発色となる
液晶の表示モードを“動画”モードに変更すると、このように自然な発色となる
表示モードは、専用ツール「My Display」で変更可能だ
液晶上部中央には、約92万画素のWebカメラを搭載

Beats Audioブランドの4スピーカーシステムを内蔵

 ENVY Reclineの特徴の1つが、Beats Audioとのコラボレーションにより、高音質なサウンド機能を搭載している点だ。Beats Audioは、ヘッドフォン接続時だけでなく、内蔵スピーカでもしっかり効果を発揮する。

 ENVY Reclineの内蔵スピーカーは、「クアッドスピーカー」と呼ばれる4ユニットのステレオスピーカーで、前面液晶下部に搭載している。一般的な液晶一体型PCの内蔵スピーカーの再生音は、ユニットが小さいことなどもあり、どうしても低音が弱く、全体的にこもったような音になることが多い。しかし、ENVY Reclineのクアッドスピーカーは、そういった印象は皆無だ。サブウーファーは非搭載ながら、しっかりとした低音が再生されるのはもちろん、中音域から高音域まで、クリアで伸びのあるサウンドが再生される。Beats Audioによる補正もあるが、非常に高音質で、よほどサウンドにこだわりがある場合を除き、外付けスピーカーは不要と言えそうだ。

液晶下部に、Beats Audioブランドの4スピーカシステム「クアッドスピーカー」を搭載。非常に高音質で、外部スピーカ不要と感じる
Beats Audioツールによるサウンドで、好みの音質に設定可能だ

HDMI入力を備え外部映像機器のディスプレイにも使える

 ENVY Reclineの基本スペックは、日本HPの液晶一体型PCハイエンドモデルと言うこともあり、なかなか充実している。

 CPUは、Core i5-4570Tを採用。液晶一体型PCでは、モバイル向けプラットフォームを採用するものが多くなっているが、このプロセッサはデスクトップ向けの第4世代Core i5で、TDPが35Wの省電力モデルとなる。2コア4スレッドではあるが、ターボ・ブースト時の最大クロックが3.6GHzと、モバイル向けCoreプロセッサに比べて高クロックで動作するため、処理能力という点では優位となる。チップセットはIntel H87 Expressを採用。メインメモリは標準で8GB(SO-DIMM×1枚)搭載。メモリスロットのSO-DIMMスロットは2本用意されており、最大で16GBまで増設が可能だ。

 グラフィックス機能は、CPU内蔵のIntel HD Graphics 4600に加え、外部GPUとしてNVIDIAのGeForce GT 730Aも標準搭載する。エントリークラスのGPUのため、3D描画能力はそれほど高いわけではないものの、統合GPUよりは描画能力が優れるため、カジュアル3Dゲームも快適にプレイできる。

 内蔵ストレージは、容量1TB、キャッシュ用フラッシュメモリを8GB搭載するハイブリッドHDDを採用。光学式ドライブは搭載せず、USB接続などの外付けドライブを利用することになる。無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANと、Bluetooth 4.0を標準搭載する。

 側面のポートは、本体側面とスタンド部の左右側面部に配置されている。スタンド部には、左側に電源コネクタ、右側にサブウーファ用の音声出力端子、USB 2.0×2、Gigabit Ethernetポートを配置。また、本体側には、右側面にUSB 3.0×2ポートを備える。

 ところで、本体左側面にはHDMI端子とヘッドフォン出力を備えるが、このHDMI端子は出力ではなく入力ポートとなっている。つまり、ゲーム機などの各種映像機器を接続し、ENVY Reclineをディスプレイとして利用可能というわけだ。PCと入力映像は、本体下部左側に用意されているボタンを押すことで切り替えが可能。大型の液晶一体型PCで外部映像機器を接続し利用できるなら、別途ディスプレイを用意する必要がなく、省スペース化にもつながる。そういった意味で、HDMI入力を標準で備える点は嬉しい。ただし、PCの電源が入っている状態でなければHDMI入力が利用できない点は少々残念だ。

 本体背面には、比較的簡単に外せる蓋があり、この蓋を開けるとメモリスロットやHDDベイにアクセスできる。液晶一体型PCながら、メインメモリの増設や内蔵ストレージの交換が簡単に行なえる点も大きな特徴と言える。

本体背面の蓋を開けると、内部HDDベイやメインメモリスロットに簡単にアクセスできる
メインメモリは、標準で8GB搭載。SO-DIMMスロットは2本用意され、最大16GBまで増設できる
内蔵ストレージは、8GBのフラッシュメモリを搭載する1TBのSSHDを採用
ワイヤレスキーボード用の無線ドングルは、この部分にあるUSBコネクタに接続されている
スタンド左側面には電源コネクタを配置
スタンド右側面には、サブウーファー用音声出力端子、USB 2.0×2ポート、Gigabit Ethernetポートを配置
本体側の右側面には、USB 3.0×2ポートを用意
本体左側面には、ヘッドフォンジャックに加えHDMI入力を用意。ゲーム機などの外部機器を接続し、ディスプレイ代わりに使える
PCとHDMI入力の映像切り替えは、本体底面左のボタンで行なう
本体底面右側にはSDカードスロットを用意
付属のキーボード。薄型のワイヤレス仕様となる
付属のワイヤレスマウス。こちらも2ボタン+ホイールの一般的な仕様の光学マウスだ
ACアダプタ。出力が大きく、かなりサイズが大きい

デスクトップPCとしてトップクラスではないが性能はまずまず

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 8 v2.0.204」「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.1.0」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」の6種類。比較用として、日本HPのノートPC最上位モデル「HP ENVY 17-j100 Leap Motion SE/CT」と、NECの「LaVie L LL850/MS」の結果も加えてある。


HP ENVY Recline
23-m240jp Beats SE
HP ENVY 17-j100
Leap Motion SE/CT
LaVie L LL850/MS
CPUCore i5-4570T(2.90/3.60GHz)Core i7-4702MQ(2.20/3.20GHz)Core i7-4700MQ(2.40/3.40GHz)
チップセットIntel H87 ExpressIntel HM87 ExpressInte HM87 Express
ビデオチップInte HD Graphics 4600
GeForce GT 730A
Inte HD Graphics 4600
GeForce GT 750M
Intel HD Graphics 4600
メモリPC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×1PC3L-12800 DDR3L SDRAM 8GB×1PC3-12800 DDR3L SDRAM 8GB×1
ストレージ1TB SSHD1TB HDD1TH Hybrid HDD
OSWindows 8.1Windows 8.1Windows 8
PCMark 8
Home Accelarated 3.02735--
Creative accelarated 3.03324--
Work 2.03621--
Storage2960--
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score403829834887
Lightweight score235814283179
Productivity score184910082866
Entertainment score321829583800
Creativity score719153617716
Computation score149921437515041
System storage score310314814377
Raw system storage score1229317-
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/AN/A
CPU Score114131184312763
Memory Score805883528433
Graphics Score358746853053
HDD Score1022252238000
3DMark Professional Edition v1.1.0
Ice Storm540515016634669
Graphics Score622845645833942
Physics Score369563601937482
Cloud Gate579976315228
Graphics Score734894635107
Physics Score333745505703
Fire Strike10321496636
Graphics Score11201565669
Physics Score483951487666
3DMark06 Build 1.2.0 1901
3DMark Score9344128575621
SM2.0 Score377451721768
HDR/SM3.0 Score351750052250
CPU Score436454776934
ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
1,280×720ドット37835699-

 結果を見ると、搭載プロセッサはハイエンドクラスではないものの、デスクトップ向けのプロセッサを搭載していることもあり、スコアの多くが比較用のハイエンドノートPCの結果を上回っている。これは、モバイル向けプラットフォームを採用する製品の多い液晶一体型PCの中では、大きな優位点と言えそうだ。なお、今回の試用機では、メインメモリはシングルチャネル動作だったため、もう1枚メモリモジュールを追加してデュアルチャネル動作にすると、さらにスコアが上昇するものと思われる。

 また、3D描画能力の結果も、まずまずのスコアとなっている。外部GPUはエントリークラスのため、それほど高性能というわけではなく、テストによってはGeForce GT 750M搭載のHP ENVY 17-j100よりも低いスコアとなっている。それでも、カジュアル3Dゲームなら十分快適にプレイできるだけの描画能力は備わっていると言っていいだろう。

AV性能重視の液晶一体型PCとしておすすめ

 ENVY Reclineは、日本HPとして最上位の液晶一体型PCだが、液晶面の角度調節の自由度の高さや、優れたデザイン性、高音質スピーカ搭載など、なかなか完成度の高い製品に仕上がっている。性能的には、さすがにゲーミングPCに匹敵するほどではないものの、デスクトップ向けプラットフォーム採用によって、他の液晶一体型PCに対して余裕がある。また、HDMI入力により外部映像機器を接続して利用できるという点も、活用の幅を拡げるという意味で嬉しい部分だ。

 国内メーカー製の製品と比べると、TV機能がないなど、機能面で劣る部分もある。それでも、14万円ほどという価格は絶妙で、コストパフォーマンスは十分に優れる。家庭で利用するメインPCとしてはもちろん、この春よりひとり暮らしを始める新入学生や新社会人にもおすすめの製品だ。

(平澤 寿康)