パナソニック「Let'snote F9」
~Core i5搭載でさらに進化したパフォーマンスモバイルPC



パナソニック「Let'snote F9」

2月17日 発売

価格:オープンプライス(実売199,800円前後)



 パナソニックから発表されたLet'snote春モデルは、Intelの最新CPU「Core i5/7」を搭載し、基本性能が大きく向上した。今回は、Let'snote春モデルの中で、最もサイズが大きなLet'snote F9を試用する機会を得たので、早速レビューしたい。

 なお、今回試用したのは試作機であるため、製品版とは細部やパフォーマンスが異なる可能性がある。

●CPUがCore i5になり、液晶解像度も1,440×900ドットに戻る

 Let'snoteシリーズは、軽くて頑丈でバッテリ駆動時間が長い、モバイルノートPCとして、高い評価を得ている製品だ。現在、Let'snoteシリーズのコンシューマ向けモデルとして、Fシリーズ、Sシリーズ、Nシリーズ、Rシリーズの4つのラインナップがあるが(法人向け限定として、従来のWシリーズやTシリーズ、Yシリーズも用意されている)、14.1型ワイド液晶を搭載するFシリーズは、その中で最もサイズが大きな製品だ。

 Fシリーズは、可動式のハンドルを備えていることが特徴で、初代となるLet'snote F8は、2008年10月に発売された。F8の初代モデルは、1,440×900ドット表示可能な14.1型ワイド液晶を搭載していたが、2009年5月に発売された2009年夏モデルでは、液晶解像度が1,280×800ドットに変更されたほか、CPUが通常電圧版のCore 2 Duo SP9300(2.26GHz)からCore 2 Duo SU9400(1.40GHz)に変更されており、スペックは低くなってしまった(直販サイト限定のマイレッツ倶楽部モデルでは、1,440×900ドット液晶と通常電圧版のCore 2 Duo SP9400(2.40GHz)搭載モデルが用意されていた)。

 2009年10月に発売されたWindows 7搭載の秋冬モデルでも、液晶やCPUの仕様には変更がなかった。14.1型ワイド液晶を搭載していながら、二回り小さな12.1型ワイド液晶搭載のLet'snote N/Sシリーズと同じ1,280×800ドットというのは、解像度的にやや不満があったのだが、今回発表されたLet'snote F9では、CPUがCore i5-520M(2.40GHz)に変更されただけでなく、液晶解像度も1,440×900ドットに戻り、大画面モバイルPCというLet'snote Fシリーズのメリットを十分に享受できるようになった。

 ボディは、前モデルのLet'snote F8と同じで、天板にお馴染みのボンネット構造を採用している。CPUは、標準電圧版のCore i5-520M(2.40GHz)を搭載。Core i5は、デュアルコアだが、Hyper-Threadingテクノロジーをサポートしているため、4スレッドの同時実行が可能だ。また、自動オーバークロック機能のTurbo Boostテクノロジーも搭載しており、最大2.93GHzまでクロックが上昇する。Core i5-520Mは、GPUやメモリコントローラも統合しており、組み合わせるチップセットがサウスブリッジ相当のものだけで済むため、実装スペースの点でも有利だ。メモリはオンボードで2GB実装しており、SO-DIMMスロットが1基用意されているので、最大4GBまで増設が可能だ。HDDの容量は、250GBである。なお、直販サイトのマイレッツ倶楽部では、CPUがワンランク上のCore i5-540M(2.53GHz)、HDDが500GBになり、Bluetoothが追加されるモデルの購入も可能だ。

 光学ドライブとしては、DVDスーパーマルチドライブを搭載している。パナソニック独自のシェルドライブを採用し、パームレスト部分が跳ね上がることが特徴だ。このDVDスーパーマルチドライブも、従来のLet'snote F8のドライブ(約50.5g)よりも2gの軽量化を実現した新型ドライブ(約48.5g)に変更されている。

 Fシリーズの特徴である可動式のハンドルは、Let'snote F9でもそのまま受け継がれている。オフィスの自分の机から会議室にノートPCとメンバーに配布する資料を持って行く場合など、ハンドル付きのLet'snote F9なら、ノートPCを小脇に挟まずに片手で持って運べるので、誤って落としてしまう心配がなくなる。もちろん、従来通り、100kgf加圧振動試験や76cm落下試験もクリアしているので、ヘビーモバイラーも安心して使える。なお、本体のサイズは前モデルと同じだが、重量は前モデルの約1.65kgから約1.61kgへと40gほど軽量化されている。

 店頭モデルのOSは、Windows 7 Preffesional 32bit版だが、ハードディスクリカバリ機能を利用することで、32bit版と64bit版を選択することが可能だ。

Let'snote F9の上面。ボディのデザインは、Let'snote F8と同じだ。ハンドルも目立たない形状になっており、違和感がない「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。F9のほうが二回りほど大きいLet'snote F9の底面。左上にHDDが、右上にバッテリが配置されている。中央上はメモリスロットのカバー
メモリスロットとして、SO-DIMMスロットが1基用意されている。オンボードで2GBのメモリが実装されており、最大4GBまで増設が可能だ2.5インチ250GB HDDを搭載。特性の異なる数種類の衝撃吸収材が周囲に貼られており、HDDに伝わる衝撃を減らしている
パームレスト右側にDVDスーパーマルチドライブを搭載。パナソニック独自のシェルドライブ採用で、重量も従来より2g軽い48.5gとなっている正面右側に光学ドライブの電源スイッチが用意されている
ハンドル収納時の様子。可動式のハンドル部分とその両側の固定部分がなだらかな曲線を描いており、一体感のあるデザインだハンドル部分を引き出したところ。ハンドルを引き出すことで、手の大きな人でも楽にハンドルを握ることができるハンドルを片手でもって、本体を持ち上げたところ。ハンドルの強度は十分で、安心して持ち運べる

●新たにLEDバックライトを採用し、低消費電力を実現

 液晶ディスプレイとして、14.1型ワイド液晶を搭載する。前述したように、Let'snote F8の初代モデルでは1,440×900ドット表示の液晶が採用されていたが、2代目以降の店頭販売モデルでは、解像度が1,280×800ドットになってしまっていた。今回登場した春モデルで再び1,440×900ドットに戻ったことは嬉しい。1,440×900ドットでは、一度に表示できる情報量は1,280×800ドットの約1.27倍になり、一度に複数のウィンドウを開いても、快適に作業が行なえる。

 また、Let'snote F8の液晶バックライトは冷陰極管を採用していたが、Let'snote F9では、新たにLEDバックライトを採用し、低消費電力を実現。バックライトの寿命も長くなった。最近では少なくなったノングレアタイプの液晶なので、鮮やかさという点では光沢タイプに見劣りするが、外光の映り込みが少なく、長時間使っていても目の疲れが少ないことが利点だ。

 キーボードは前モデルと同じで、ボディの横幅が大きいため、キーピッチは約19mmと余裕がある。キー配列も標準的なので、快適にタイピングが可能だ。もちろん、従来通り、キーボード全面防滴も実現している。ポインティングデバイスとして、Let'snoteシリーズではお馴染みの円形ホイールパッドが搭載されている。ホイールパッドの操作性も良好だ。

Let'snote F9の液晶は14.1型ワイドで、解像度は1,440×900ドットだ。ノングレアタイプの液晶なので、外光の映り込みが少ない。LEDバックライトの採用により、省電力化を実現横幅が大きいので、キーボードにも余裕がある。キーピッチは約19mmで、キー配列も標準的であり、タイピングしやすいポインティングデバイスとして、Let'snoteシリーズではお馴染みのホイールパッドを搭載。パッドの周囲を指でクルクルとなぞることで、連続的なスクロール操作が可能

●WiMAXモジュールの通信速度も向上

 インターフェイスも、前モデルのLet'snote F8と同じだ。USB 2.0ポートを3基備えるほか、ミニD-Sub15ピンやGigabit Ethernetなどを備えている。なお、初代Let'snote F8では、ミニポートリプリケーターコネクタが用意されていたのだが、CPUや液晶解像度などのスペックがダウンした2009年夏モデルからは、ミニポートリプリケーターコネクタが省略されている。USB 2.0ポートの数は十分だが、すべてが右側面に配置されているので、周辺機器接続時の取り回しなどを考えると、左側面にも1ポート欲しかったところだ。また、カードスロットとして、PCカードスロットとSDメモリーカードスロットを備えている。他社のノートPCの多くは、PCカードスロットを搭載せず、代わりにExpressCardスロットを備えているものが多いが、Let'snoteシリーズは、PCカードスロットにこだわっている。PCカードスロット対応の通信カードなどを使う際にはありがたいが、さすがにPCカードスロットが必要な場面も減ってきたと思われる(ExpressCardスロットもあまり利用されているとは言いがたいが)。

 ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANとWiMAXをサポート。今回発表された春モデルでは、WiMAX/WiFiモジュールが新型の「Intel Centrino Advanced-N+WiMAX 6250」に変更され、通信速度も2009年秋冬モデルに比べて向上した。具体的には、秋冬モデルの受信(下り)は最大13Mbpsだったが、春モデルでは最大20Mbpsに、秋冬モデルの送信(上り)は最大3Mbpsだったが、春モデルでは最大6Mbpsに高速化された。もちろん、これは理論的な最大速度であり、実効的な速度は電波状況によっても左右されるが、WiMAXの真価をさらに引き出せるようになったことは評価できる。正面左側には、ワイヤレススイッチが用意されており、ワイヤレス機能の有効/無効を素早く切り替えられるので便利だ。なお、無線LANとWiMAXは排他利用であり、同時には利用できない。

左側面には、マイク入力、ヘッドフォン出力、PCカードスロット、SDメモリーカードスロットが用意されている右側面には、USB 2.0×3、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernetが用意されている正面左側にワイヤレススイッチが用意されており、ワイヤレス機能の有効/無効を素早く切り替えられる

●バッテリに最新の3,100mAh高容量セルを採用

 Let'snoteシリーズは、バッテリ駆動時間が長いことでも定評がある。Let'snote F9では、バッテリパックに使われているリチウムイオン電池が、従来のLet'snote F8で使われていた2,900mAhのものから、最新の3,100mAhセルに変更されており、バッテリ容量が7%ほど増加している。公称バッテリ駆動時間は約9時間であり、秋冬モデルの約10時間より1時間短くなっているが、秋冬モデルでは超低電圧版のCore 2 Duo SU9400を搭載していたことを考えれば、バッテリ駆動時間についても十分満足できる。ACアダプタは、従来のFシリーズのものと同じで、Let'snoteシリーズの中では最も大きい。

バッテリパックは、10.8V/6,200mAhの6セル仕様で、最新の3,100mAh高容量リチウムイオン電池を採用。旧モデルは2,900mAhリチウムイオン電池だったので、7%ほど容量が増加しているCDケース(左)とバッテリパックのサイズ比較
ACアダプタは従来のFシリーズのものと同じで、やや大きめだCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●Core 2 Duo搭載機に比べてパフォーマンスは大きく向上、駆動時間も長い

 参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較対照用にパナソニック「Let'snote F8」(初代モデル)、レノボ「ThinkPad T400s Windows 7モデル」、日本HP「HP Pavilion dm3i」、NEC「LaVie M」の値も掲載した。

 PCMark05の総合スコアの値は5424で、標準電圧版のCore 2 Duo搭載機よりも1~2割以上高い。CPU Scoreを見ても、定格クロックが同じCore 2 Duo SP9400を搭載するThinkPad T400sと比べて、15%ほどスコアが高くなっている。アーキテクチャ自体が進化していることに加え、Turbo BoostテクノロジーとHyper-Threadingテクノロジーが効いているのであろう。グラフィック性能も、3DMark03の結果から見ると、Intel GS45内蔵コアに比べて向上しているといえるが、単体GPUのGeForce G 105Mには遠く及ばず、Windows 7の利用には問題はないが、最新ゲームを遊ぶには力不足であろう。

 BBenchによるバッテリ駆動時間のベンチマーク結果(無線LAN常時ON、バックライト輝度中)は7時間24分で、非常に優秀だ。

□Let'snote F9のベンチマーク結果
 Let'snote F9Let'snote F8ThinkPad T400s
Windows 7モデル
HP Pavilion dm3iLaVie M
CPUCore i5-520M(2.4GHz)Core 2 Duo SP9300(2.26GHz)Core 2 Duo SP9400(2.4GHz)Core 2 Duo SP9300(2.26GHz)Core 2 Duo SU2300(1.2GHz)
ビデオチップCore i5-520M内蔵コアIntel GS45内蔵コアIntel GS45内蔵コアGeForce G105MIntel GS45内蔵コア
PCMark05
PCMarks54244864448050422826
CPU Score70005780609256042966
Memory Score57025022527650163066
Graphics Score23722491205734481397
HDD Score47924447447150514948
3DMark03
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)3515未計測249384782048
CPU Score1101未計測9801535495
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH2422未計測248756761995
LOW3801未計測386886601367
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP99.9799.999.9399.9776.43
HP10099.9799.9399.9799.97
SP/LP99.9799.9799.9799.9399.97
LLP10099.999.9799.9799.97
DP(CPU負荷)3050485068
HP(CPU負荷)1319192742
SP/LP(CPU負荷)810101928
LLP(CPU負荷)6771722
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード66.45MB/s未計測47.04MB/s76.27MB/s60.31MB/s
シーケンシャルライト66.11MB/s未計測48.16MB/s72.82MB/s66.25MB/s
512Kランダムリード30.99MB/s未計測26.89MB/s34.69MB/s27.50MB/s
512Kランダムライト33.03MB/s未計測30.03MB/s32.72MB/s31.19MB/s
4Kランダムリード0.467MB/s未計測0.450MB/s0.516MB/s0.369MB/s
4Kランダムライト1.229MB/s未計測1.049MB/s1.025MB/s0.984MB/s
BBench
Sバッテリなしなしなしなしなし
Lバッテリ(標準バッテリ)7時間24分未計測4時間18分5時間1分3時間39分
Xバッテリなしなしなしなし7時間26分

●パフォーマンスモバイルPCとしての完成度は高い

 今回発表されたLet'snoteシリーズは、全モデルがCore iシリーズを搭載し、大きくパフォーマンスを向上させているが、その中でも前モデルからの進化が大きいのが、Let'snote F9である。2009年夏モデルや秋冬モデルでは、CPUが超低電圧版になり、サイズの小さなN/Sシリーズとパフォーマンスが逆転してしまったが、再び通常電圧版CPUを搭載したことで、N/Sシリーズとパフォーマンスが並んだ。

 N/Sシリーズの完成度も高いが、解像度の高い大画面液晶を搭載したLet'snote F9は、モバイル専用機としてではなく、メインマシンとしても使いたいという人には魅力的だ。バッテリ容量も増え、LEDバックライトを採用したことで、パフォーマンスを大きく向上させながら、無線LAN常時ONでも軽く7時間を超える駆動時間を実現。約1.61kgという重量も、14.1型ワイド液晶搭載ノートPCとしては、トップクラスの軽さで、十分持ち歩ける範囲に収まっている。店頭予想価格は20万円前後とされており、2009年秋冬モデルの店頭価格が当初22万円前後であったことを考えれば、コストパフォーマンスも向上したといえる。パワフルでバッテリが長時間持ち、液晶解像度の高いモバイルノートPCが欲しい人には、有力な選択肢となるだろう。

バックナンバー

(2010年 1月 26日)

[Text by 石井 英男]