~VAIOブランド初のCULVノート |
ソニーから、VAIOブランドとして初となる、CULV CPUを採用する低価格モバイル「VAIO Y」シリーズが登場した。どうしても似通った仕様の製品が多いネットブックでも、他とひと味違う魅力を実現する製品を投入したソニーが、CULVノートを作るとどうなるのか。今回は、VAIO Yシリーズの市販モデルとなる「VPCY119FJ/S」を試用する機会を得たので、じっくり見ていきたいと思う。
●落ち着いたデザインの薄型ボディではまず、本体デザインからチェックしていこう。
CULVノートの多くは、比較的薄型のボディを採用するものが多くなっているが、その点はVPCY119FJ/Sでも同じだ。本体の厚さは23.7mm~32mm。CULVノートでは、10mm前後と極端な薄さを実現する製品も存在しているが、VPCY119FJ/Sも申し分ない薄さを実現している。また、本体周囲に曲面を取り入れてさらに薄くしているとともに、手前側の角が丸く切り取られていることもあり、鞄への出し入れもスムーズに行なえるだろう。しかも、本体の隅を持って持ち上げてもたわむことはなく、剛性も十分優れている。
フットプリントは326×226.5mm(幅×奥行き)と、やや大きいものの、13.3型液晶を搭載することを考えると、納得できるサイズだ。重量は実測で1,714gと、2kgを大きく下回っている。ただ、常に携帯するモバイルノートとしてはギリギリ我慢できる範囲内の重量ではあり、できればもう少し軽いと嬉しい。
本体カラーは、天板やキーボード面などの目に付く部分がシルバーで、キーボードのキートップと本体底面がブラックのツートンカラーを採用。天板のVAIOロゴこそやや目立つものの、それ以外には目立つ装飾もなく、非常に落ち着いた印象だ。ちなみに、VAIOシリーズでは、豊富なカラーバリエーションを用意するモデルが多い中で、VPCY119FJ/Sは1色のみの展開となる。
本体正面。本体は端が曲面で、側面に行くほど細く、数字以上に薄く感じる | 左側面。高さは23.7~32mmで、奥がやや高くなっているが、この薄さは十分魅力的だ |
背面。他のVAIOシリーズ同様、後部ヒンジ付近は丸くなっている | 右側面。シルバーとブラックのツートンカラーで落ち着いた印象だ |
フットプリントは326×226.5mm(幅×奥行き)。13.3型液晶を搭載していることもあり、やや大きい | DOS/V POWER REPORT誌との比較でも、VPCY119FJ/Sのほうが一回り大きい | 重量は、実測で1,714g。モバイルノートとして考えると、もう少し軽いと嬉しい |
●13.3型ワイド液晶を搭載
液晶ディスプレイには、1,366×768ドット表示に対応する、13.3型ワイド液晶を採用している。最近では、ネットブックでも1,366×768ドット表示の液晶を搭載する製品がかなり多くなっているが、液晶サイズが大きいこともあり、文字などの視認性はかなり優れる。また、LEDバックライトの採用により、液晶パネル部の薄型化と消費電力の低減も実現している。
パネル表面は光沢処理となっており、発色は非常に鮮やかで、明暗のコントラストも高い。反面、天井の照明など周囲の映り込みは若干気になる。液晶上部中央には、31万画素のWebカメラ、「MOTION EYE」が搭載されている。
1,366×768ドット表示対応の、13.3型ワイド液晶を搭載。サイズが大きいため、文字などの視認性はかなり優れる | 表面は光沢仕様で、発色やコントラストは優れるものの、天井の照明などの映り込みはやや激しい | 液晶上部中央には、31万画素のWebカメラが搭載されている |
●64bit版Windows 7を標準採用
基本スペックは、CULVノートとして標準的ではあるが、細かく見ると、他の製品と一線を画す部分がいくつか存在している。
CPUは、動作クロック1.40GHzのCore 2 Duo SU9400と、CULVノートとしておなじみのものを採用しているが、メインメモリは標準で4GB(最大8GB)と大容量となっている。しかも、OSとして64bit版のWindows 7 Home Premiumが採用されており、大容量メモリを余さず活用できる。また、2GBのメモリモジュールが2枚搭載され、標準でデュアルチャネル動作が実現されている。
チップセットは、Intel GS45 Expressを採用し、グラフィックス機能はチップセット内蔵機能「GMA 4500MHD」が利用される。GMA 4500MHDの3D描画能力はそれほど高くないものの、HD動画の再生支援機能が盛り込まれ、H.264形式などのフルHD動画も余裕で再生できる。また、ハードウェアアクセラレーションをサポートする、Flash Player 10.1 beta2を導入してみたところ、YouTubeに掲載されている1080pフルHD動画も、50~60%ほどの低CPU負荷率でスムーズに再生できた。こういった点は、ネットブックに対する大きなアドバンテージとなるだろう。
HDD容量は500GBと大容量ドライブを搭載。無線機能としては、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANやBluetooth 2.1+EDRも標準搭載。ポート類は、ExpressCard/34スロット×1、Gigabit Ethernet、USB 2.0×3、IEEE 1394、メモリースティックスロットおよびSDカードスロットと非常に豊富。また、映像出力として、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)に加えHDMI出力も標準で用意されている。
左側面ヒンジ部には、電源コネクタを配置 | 左側面手前には、アナログRGB出力、HDMI出力、USB 2.0×1、IEEE 1394、マイク・ヘッドフォンの各端子を用意 |
右側面手前には、ExpressCard/34スロットを用意 | 右側面奥には、USB 2.0×2とGigabit Ethernetポートを用意。ヒンジ部には電源ボタンが配置されている |
本体手前左には、メモリースティックスロットとSDカードスロットが独立して用意されている | メインメモリは、標準で2GBモジュール×2、計4GB搭載。メインメモリ用のSO-DIMMスロットは、本体底面からアクセスできる | 内蔵HDDの容量は500GB。こちらも、本体底面から簡単にアクセス可能だ |
●FeliCaポートを標準搭載
キーボードは、VAIOシリーズでおなじみの、キーが独立したアイソレーションキーボードを採用。キーピッチは約19mmとフルサイズを確保。ストロークは約2mmと、ノートPCとしてほぼ標準的だが、適度な堅さとクリック感があり、ピッチが狭くなっていたり変則的な配列もほとんどなく、扱いやすさはかなり優れている。
ポインティングデバイスは、パッド式のタッチパッドを採用。十分な面積があり、こちらも扱いやすい。また、指2本を利用したジェスチャー機能もサポートされており、Webアクセス時などに有効活用できる。
パームレストは、キーボードのキートップと同じ高さになるようにかさ上げされている。また、表面に凹凸処理が施されており、長時間利用してもべたつかないように配慮されている。加えて、タッチパッド右のパームレスト部にFeliCaポートを標準搭載している点も魅力。ネットショッピングはもちろん、FeliCaポートを利用したログオン認証などにも活用でき、セキュリティ性を高めるという意味でも魅力がある。
●実測で8時間を超えるバッテリ駆動時間を確認
VPCY119FJ/Sでは、標準で10.8V/5,000mAhと、比較的大容量のバッテリが搭載されている。実は、バッテリだけで重量が310gほどあり、やや本体重量が重くなっている要因でもある。その代わり、バッテリ駆動時間は、カタログスペックで約9時間とかなり長くなっている。
実際に、Windows 7の省電力設定を「高パフォーマンス」に設定するとともに、液晶輝度を最大に設定し、無線LANおよびBluetoothを動作させた状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1,156kbps、640×480ドット)を連続再生させてみたところ、約4時間22分とかなり長時間の駆動が確認された。
また、Windows 7の省電力設定を「省電力」に設定するとともに、バックライト輝度を40%に設定し、無線機能は無線LANのみを有効にした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、こちらでは約8時間25分と、カタログ値にかなり近い結果が確認された。
バッテリ駆動時間 | |
---|---|
省電力設定「省電力」、BBench利用時 | 約8時間25分 |
省電力設定「高パフォーマンス」、動画再生時 | 約4時間22分 |
省電力設定時で8時間半近く、省電力設定がほぼOFFの状態かつ液晶輝度最大という、比較的過酷な条件でも4時間を優に超える駆動時間が確保されているというのは、モバイル機としてかなり魅力的。特に、軽量CULVノートの多くは、どちらかというとバッテリ駆動時間が犠牲になっているものが多く、このバッテリ駆動時間の長さはVPCY119FJ/Sの優位点となるだろう。
標準で、容量5,000mAhの大容量のバッテリを搭載し、長時間のバッテリ駆動を実現 | バッテリだけで実測310gあり、これが本体重量の重さに影響している |
小型・軽量のACアダプタが付属する | ACアダプタは、電源ケーブル込みで実測198gと軽く、本体と同時に持ち歩いても苦にならない |
●価格重視ならWeb直販モデルがおすすめ
では、ベンチマークテストの結果をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 0906a」と「PCMark05 Build 1.2.0」、「3DMark06 (Build 1.1.0 0906a)」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の4種類。比較用として、ASUS UX30の結果も記載してあるが、OSが異なる上に、PCMark Vantageと3DMark06はバージョンが異なっているため、あくまでも参考値として見てもらいたい。
VAIO Y VPCY119FJ/S | ASUS UX30 | |
---|---|---|
CPU | Core 2 Duo SU9400(1.40GHz) | Core 2 Duo SU9400(1.40GHz) |
チップセット | Intel GS45 Express | Intel GS45 Express |
ビデオチップ | GMA 4500MHD | GMA 4500MHD |
メモリ | PC3-6400 DDR2 SDRAM 4GB | PC2-6400 DDR2 SDRAM 3GB |
OS | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows Vista Home Premium SP2 |
PCMark Vantage Build 1.0.1 0906a 64bit | ||
PCMark Suite | 3027 | 2373 |
Memories Suite | 1988 | 1340 |
TV and Movies Suite | 2201 | 2076 |
Gaming Suite | 1780 | 1388 |
Music Suite | 3570 | 2459 |
Communications Suite | 3096 | 2318 |
Productivity Suite | 2316 | 2146 |
HDD Test Suite | 3573 | 3020 |
PCMark05 Build 1.2.0 | ||
PCMark Score | N/A | 3366 |
CPU Score | 3645 | 3475 |
Memory Score | 3590 | 3372 |
Graphics Score | 1687 | 1454 |
HDD Score | 5157 | 4711 |
3DMark06 Build 1.1.0 0906a | ||
3DMark Score | 910 | 657 |
SM2.0 Score | 289 | 206 |
HDR/SM3.0 Score | 358 | 256 |
CPU Score | 1281 | 1213 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||
Low | 2554 | 2179 |
High | 1739 | 1492 |
Windowsエクスペリエンスインデックス | ||
プロセッサ | 4.4 | 4.6 |
メモリ | 4.9 | 4.9 |
グラフィックス | 4.1 | 3.2 |
ゲーム用グラフィックス | 3.5 | 3.3 |
プライマリハードディスク | 5.5 | 5.5 |
結果を見ると、CULVノートとして標準的なパフォーマンスが発揮されていることがわかる。Webアクセスはもちろん、各種アプリケーションの起動もキビキビとしており、ネットブックとはレベルの違う快適さが実現されている。もちろん、ハイエンドノートに比べると快適さは劣るが、モバイルノートとしては十分満足できるパフォーマンスが発揮されるていると考えていいだろう。
VPCY119FJ/Sは、VAIO Yシリーズの中でも市販モデルに位置付けられており、実売価格は115,000円前後、ポイントを考慮すると105,000円前後となっており、CULVノートとしては比較的高い部類に入る。ただ、8時間オーバーの長時間バッテリ駆動、ほぼフルスペックと言ってもいいほどの優れた拡張性、VAIOシリーズならではの優れたデザイン性や細部にわたる品質の高さ、ユーザーサポートなどを考えると、この価格でも十分納得できる。特に、持ち歩いて長時間利用したいモバイルノートを探している人におすすめしたい。
ちなみに、Web直販サイト「ソニースタイル」の直販モデルでは、CPUやメモリ容量の選択はもちろん、SSDの選択も行なえるうえに、価格も79,800円からと、市販モデルよりもかなり安価な設定となっている。1月29日15時まで、Celeron SU2300からCore 2 Duo SU9400へのアップグレードが1万円引きのキャンペーンも実施されている。もし価格を抑えて購入したいのであれば、Web直販モデルをチェックしてみてもらいたい。
(2010年 1月 22日)
[Text by 平澤 寿康]