2014年10月31日

2014年10月30日

2014年10月29日



工人舎「PM」
〜ワイシャツのポケットに入る超小型Windows PC



PM

10月上旬 発売
価格:59,800円



 工人舎は、モバイルノートPCに特化したユニークなPCメーカーとして有名である。その工人舎が発表した「PM」は、4.8型ワイド液晶搭載の超小型Windows PCである。もちろん、重量も驚異的に軽く、わずか約345gしかない。PDAやスマートフォンに近いサイズでありながら、フルスペックのWindows XPが動作するれっきとしたPCであることが、PMの最大の魅力だ。

 今回、PMを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。ただし、試用したのは試作機であり、製品版とは細部や性能が異なる可能性がある。

●mBook M1をベースに改良が行われた完成度の高い製品

 PMは、今年春に韓国のUMID社から発売された超小型PC「mBook M1」をベースに、日本語ローカライズや改良が行なわれた製品だ。mBook M1は、重さ315gを実現したポケットサイズの超小型PCであり、高い注目を集めた。

 mBook M1は、本体の完成度は高かったが、ヒンジの耐久性が低かったり、ACアダプタが大きく重いという欠点があり、キーボードも韓国語/英語のみであった。工人舎は、mBook M1をPMとして日本で発売するにあたって、ヒンジのパーツの改良を行ない、一般的なノートPCと遜色のない耐久性を実現。また、大きくて不評だったACアダプタも一新され、ネットブックと同程度のサイズになり、携帯性が大きく向上。もちろん、キーボードも日本語化され、OSも日本語版Windows XP Home Edition SP3がプリインストールされている。

 PMのサイズは、158×94.2×13.5〜22mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約345gである。官製ハガキのサイズよりやや大きい程度で、ジーンズやコートなどのポケットにも十分入る大きさだ。シャープが先日発表したモバイルインターネットツール「NetWalker」のサイズは、161.4×108.7×19.7〜24.8mm(同)、重量は約409gであり、PMのほうが一回り小さく、軽いことになる。

 ボディカラーは光沢のあるホワイトで、質感も良好だ。ヒンジもスムーズに回転し、フリクションも適度である。ただし、ヒンジは、最大でも約130度までしか開かない。机の上に置いて使う場合は、これだけ開けば十分だが、膝の上に置いたり、立って使う場合などは、もう少し開いてくれたほうが便利だろう。ヒンジの可動範囲については、NetWalkerのほうが広い。

PMの上面。ボディカラーは光沢のあるホワイトで、中央にはKOHJINSHAロゴが入っている。質感も良好だ 「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。PMの小ささがよくわかる iPhone 3G(上)とのサイズ比較。iPhone 3Gより二回りほど大きい
官製ハガキとのサイズ比較(ハガキの上に角を合わせて重ねたところ)。横幅はハガキよりも10mm大きいが、奥行きはハガキよりも小さい 長3封筒とのサイズ比較。長3封筒は、ソニーのVAIO type Pとほぼ同じサイズだ シャープのNetWalker(左)とのサイズ比較。NetWalkerよりもPMのほうがコンパクトだ
NetWalkerの上にPMを重ねたところ。横幅はほとんど変わらないが、奥行きはPMのほうが小さい NetWalkerとの液晶を開いたところの比較。キーピッチはNetWalkerのほうが広く、キーの数も多い NetWalkerとの厚さの比較。最厚部の厚さはわずかにPMのほうが薄い
液晶を最大に開いたところ。ヒンジの制限によって、これ以上は開かない 液晶の開き具合をNetWalker(右)と比較。NetWalkerのほうがより水平に近い角度まで開くことができる
PMの底面。スロットのカバーなどはなく、シンプルだ PMの重量を実測したところ、公称よりも多少軽い336gであった

●Atom Z510と16GB SSD、タッチパネル液晶を搭載

 PCとしての基本スペックは、いわゆるネットブックに近い。CPUとしてAtom Z510(1.10GHz)を、チップセットとしてIntel US15Wを搭載する。メモリは512MB固定で、増設はできない。Atom Zシリーズはネットブックよりも小型のMID向けのCPUであり、チップセットとの合計消費電力がネットブックやネットトップで使われるAtom Nシリーズに比べて低いことが特徴だ。

 VAIO type Pの店頭モデルには1ランク上のAtom Z520(1.33GHz)が搭載されているが、CPUのパフォーマンスはそれより1ランク落ちるレベルだと考えればよいだろう。ストレージとしては、16GBのSSDが搭載されている。試用機のSSDの空き容量は8GB弱であった。Windows XPを動かすには、必要にして十分なスペックである。

【9月17日訂正】記事初出時、Hyper-Threading搭載としておりましたが、正しくは搭載しておりません。お詫びして訂正します。

 PMは、タッチパネル液晶を搭載していることも特徴だ。それ以外のポインティングデバイスは搭載しておらず、ポインティング操作はすべてタッチパネルで行なうことになる。タッチパネルは感圧式で、付属のスタイラスペン(本体へ収納できる)や指先などで操作が可能だ。

 液晶サイズは4.8型ワイドで、解像度は1,024×600ドットである。解像度も通常のネットブックと同じだが、液晶サイズはネットブックの半分程度しかないので、ドットピッチが狭く、文字はかなり小さく表示される。表示品位自体は満足できるが、視力の弱い人は、DPI設定を変えるなどして文字を大きくしたほうがいいだろう。

液晶は4.8型ワイドで、解像度は1,024×600ドットだ。タッチパネル液晶としてはコントラストが高く見やすい 標準状態での「マイ コンピュータ」アイコンの文字の横幅は7.5mm程度だ

●キーボードの配列は特殊だが、入力は快適

 PMのような超小型PCは、サイズに制限があるため、キーボードの使い勝手が犠牲になりがちだ。しかし、PMのキーボードは、キーの数を思い切って削減することで、このサイズとしてはトップクラスの快適さを実現している。

 一般的なノートPCのキーボードは、6列配置になっているが、PMでは、1列少ない5列キーボードを採用している。キーの数は全56キーと少ないため、1つのキーに割り当てられている機能が多い。例えば、「_」(アンダーバー)を入力するには、Fnキーとシフトキーと「.」キーの3つを同時に押す必要がある。このあたりの記号入力にはやや慣れが必要だろう。

 主要キーのキーピッチは約12mmで、キートップがぐらぐらせず、ストローク感もしっかりあるので、両手で本体を持って両親指で快適にタイピングできる。慣れれば両親指だけでもかなり速く打てそうだ。もちろん、やや窮屈ではあるが、手の小さい人なら机の上に置いてタッチタイプをすることも不可能ではない。

 前述したように、PMはタッチパネル付き液晶を搭載しており、それ以外のポインティングデバイスは搭載していない。タッチパネルの精度も十分で、スタイラスペンは本体左手前に収納できるので便利だ。

PMのキーボードは、ボディが小さいため、一般的なノートPCのキーボードよりも、1列少ない5列キーボードとなっている。そのため、シフトキーとFnキーとの同時押しで入力しないと、入力できない文字がある 主要キーのキーピッチは約12mmだ
NetWalker(右)のキーボードとの比較。NetWalkerのキーボードはボディの横幅をフルに使っているので、キーピッチはPMよりも広い。また、NetWalkerのキーボードはPCと同じ6列だが、上の2列のキーは縦がかなり小さい NetWalkerのキーピッチは約14mmで、PMよりも広い。キートップの形状は横長になっている
両手の親指でタイピングをしているところ。筆者がPMを触り始めて数時間で、この動画を撮影したので、慣れればもっと速く打てるようになりそうだ
付属のスタイラスペンは本体左手前に収納できる スタイラスペンは2段伸縮式になっている。スタイラスペンを縮めたところ スタイラスペンを伸ばしたところ

●miniUSB 2.0やmicroSDカードスロットを搭載

 インターフェイスも必要最小限のものは搭載している。本体右側面に、miniUSB 2.0と専用ステレオイヤフォン端子を備えているほか、正面右側にmicroSDカードスロットを搭載。miniUSB 2.0や専用ステレオイヤフォン端子、microSDカードスロットには樹脂製カバーが装着されているので、利用時にはカバーを外す必要がある。このカバーのヒモの部分の耐久性がやや気になるところだ。

 miniUSB 2.0ポートを標準サイズのUSB Aポートに変換するケーブルのほか、専用ステレオイヤフォン、専用ステレオイヤフォン変換ケーブルが付属していることも嬉しい。USB変換ケーブル経由で、Windows XP対応のUSB機器ならなんでも利用可能だ。ただし、NetWalkerは標準サイズのUSB Aポートが搭載されているので、USB変換ケーブルが不要だ。ボディサイズの問題もあるだろうが、PMも標準サイズのUSBポートを搭載して欲しかったところだ。

 なお、本体に搭載されているスピーカーはモノラルだが、専用ステレオイヤフォンを接続すれば、ステレオ再生を楽しめる。液晶右側には、130万画素カメラが搭載されており、マイクも内蔵しているので、ビデオチャットなどに利用できる。

 ワイヤレス機能として、IEEE 802.11b/g準拠の無線LAN機能とBluetooth Ver.2.0+EDRをサポートしていることも評価できる。また、ワイヤレススイッチも用意されており、無線LANとBluetoothの有効/無効をワンタッチで切り替えられる。

左側面には、ポート類は用意されていない 右側面には、miniUSB 2.0と専用ステレオイヤホン端子、電源端子が用意されているが、miniUSB 2.0と専用ステレオイヤフォン端子にはカバーが装着されている miniUSB 2.0と専用ステレオイヤフォン端子のカバーを外したところ
正面右には、マイクとmicroSDカードスロットが用意されている マイクとmicroSDカードスロット部分のアップ。microSDカードスロットにもカバーが装着されている microSDカードスロットのカバーを外したところ
液晶右側には130万画素カメラが搭載されている キーボード右上には、ワイヤレススイッチと電源スイッチが用意されている miniUSB 2.0ポートを標準サイズのUSB Aポートに変換するケーブルが付属
USB変換ケーブル経由で、USB対応のデータ通信アダプタを接続したところ 専用ステレオイヤフォン変換ケーブルも付属 専用ステレオイヤフォン変換ケーブルを本体に接続したところ
専用ステレオイヤフォンも付属。変換ケーブルを使わずに、直接イヤホンでステレオ再生を楽しめる 専用ステレオイヤフォンを本体に接続したところ

●2セルバッテリで公称7時間の長時間駆動を実現

 PMのようなモバイル機器では、バッテリの持ちが重要なポイントとなる。PMは、消費電力の小さいAtom Zシリーズの採用によって、2セルバッテリで公称約7時間という長時間駆動を実現しており、バッテリ駆動時間についても文句はない。実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、4時間35分の駆動が可能であった(電源設定は「ポータブル/ラップトップ」に設定し、バックライト輝度は中)。 一般的なネットブックよりも、バッテリ駆動時間は長いといえる。

 また、ファンレス設計で、SSDを搭載しているため、ゼロスピンドル仕様になっていることも魅力だ。ほぼ無音で動作するので、静かな場所でも他人の迷惑にならない。その代わり、長時間連続で利用していると、底面の温度が高くなってくる。動作自体は安定していたが、手でもって使うことも多いと思われるので、気になるところだ。ベースとなったmBook M1では、ACアダプタが巨大で重いことが不評だったが、PMでは、ACアダプタが一般的なネットブックとほぼ同じサイズのものに変更されており、ACアダプタについての不満は解消されている。

PMのバッテリ。バッテリを取り外せないNetWalkerとは異なり、着脱が可能だ バッテリは7.4V/2600mAhの2セル仕様だ
CDケース(左)とバッテリのサイズ比較 バッテリの重量は、実測で103gと非常に軽い
ベースとなったmBook M1のACアダプタは巨大で評判が悪かったが、PMのACアダプタは、一般のネットブック用ACアダプタと同程度のサイズなので、気軽に携帯できる CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 ACアダプタの重量(ケーブル込み)は、実測で260g

●パフォーマンスはスペック相応だが、使用感は快適

 参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較対照用にBrule「Viliv S5」、NEC「LaVie Light BL350/TA」、NEC「VersaPro UltraLite タイプVS」、日本HP「HP Mini 2140 Notebook PC」、デル「Inspiron Mini 10」の値も掲載した。

【表】PMのベンチマーク結果


PM Viliv X70 Viliv S5 LaVie Light BL350/TA VersaPro UltraLite タイプVS HP Mini 2140 Notebook PC
(1366×768ドット液晶)
Inspiron Mini 10
CPU Atom Z510(1.1GHz) Atom Z520(1.33GHz) Atom Z520(1.33GHz) Atom N280(1.66GHz) Atom Z540(1.86GHz) Atom N270(1.6GHz) Atom Z530(1.6GHz)
ビデオチップ US15W内蔵コア US15W内蔵コア US15W内蔵コア Intel 945GSE内蔵コア US15W内蔵コア Intel 945GSE内蔵コア US15W内蔵コア
PCMark05
PCMarks N/A N/A N/A N/A 1850 1566 N/A
CPU Score 787 1207 1240 1521 1739 1482 1469
Memory Score 1411 1957 2005 2453 2456 2350 2233
Graphics Score N/A N/A N/A N/A 319 546 N/A
HDD Score 2113 2586 3204 8939 18226 5713 3819
3DMark03
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) 計測不可 計測不可 計測不可 N/A(1024×600ドットでは638) 445 718 計測不可
CPU Score 計測不可 計測不可 計測不可 N/A(1024×600ドットでは240) 200 242 N/A(1024×576ドットでは121)
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH 計測不可 計測不可 計測不可 N/A 347 1010 N/A
LOW 計測不可 計測不可 計測不可 1459 550 1386 N/A
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP 17.8 7.1 16.27 31.97 8.2 36.9 6.23
HP 32.77 7.33 6.9 88.2 31.2 75.97 10.4
SP/LP 67.5 99.43 98.87 99.37 99.93 99.97 99.53
LLP 98.8 99.7 99.87 99.93 99.97 99.97 99.93
DP(CPU負荷) 99 46 50 81 50 68 50
HP(CPU負荷) 98 44 45 80 53 68 47
SP/LP(CPU負荷) 90 37 40 64 42 42 37
LLP(CPU負荷) 57 24 26 38 34 32 26
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード 54.00MB/s 73.01MB/s 71.55MB/s 83.31MB/s(Cドライブ)、56.50MB/s(Dドライブ) 107.4MB/s 未計測 未計測
シーケンシャルライト 23.51MB/s 35.21MB/s 34.11MB/s 40.39MB/s(Cドライブ)、54.63MB/s(Dドライブ) 112.4MB/s 未計測 未計測
512Kランダムリード 53.58MB/s 72.45MB/s 71.40MB/s 79.24MB/s(Cドライブ)、31.25MB/s(Dドライブ) 103.6MB/s 未計測 未計測
512Kランダムライト 4.683MB/s 24.58MB/s 23.45MB/s 29.44MB/s(Cドライブ)、31.23MB/s(Dドライブ) 102.8MB/s 未計測 未計測
4Kランダムリード 12.21MB/s 8.402MB/s 8.281MB/s 12.43MB/s(Cドライブ)、0.560MB/s(Dドライブ) 11.03MB/s 未計測 未計測
4Kランダムライト 0.040MB/s 1.272MB/s 1.181MB/s 1.928MB/s(Cドライブ)、1.551MB/s(Dドライブ) 10.36MB/s 未計測 未計測
BBench

4時間35分 5時間3分 9時間25分 7時間8分 未計測 未計測 未計測

 Atom搭載ネットブックと比べたときのベンチマークスコアは、PMのほうがクロックが低いのでやや劣るが、実際の使用感はネットブックと比べてもほとんど遜色はなかった。PMに搭載されているSSDもあまり高速なものではないが、512Kランダムリードは2.5インチHDDよりも速いので、そのことも貢献しているのであろう。ちなみに、シャットダウンからのWindowsの起動にかかる時間は約51秒で、スタンバイへの移行は約3.5秒、スタンバイからの復帰は約4.2秒、ハイバネーション(休止)への移行は約22秒、ハイバネーションからの復帰は約18秒であった。スタンバイへの移行や復帰はかなり高速なので、空き時間にちょこちょこ使うという場合は、スタンバイの積極的な利用をお勧めする。

「EIOffice2009」がプリインストールされている。WordやExcel、PowerPointのファイルをそのまま読み込め、ユーザーインターフェイスもMicrosoft Officeによく似ている

 またPMには、統合ソフトの「EIOffice2009」がプリインストールされている。EIOffice2009は、Microsoft Officeとの互換性が高く、Officeの文書ファイルの読み込みや編集が可能なので、仕事にも役立つだろう。


●フルスペックのPCをポケットに入れて持ち運べるという快感

 このように、PMは、ポケットサイズのWindows PCとして、高い完成度を誇る製品だ。できれば価格をもう少し下げて欲しかったところだが、Atom ZシリーズとWindows XPを搭載していることを考えると、これでも頑張った価格であろう。

 PDAやスマートフォンとは異なり、フルスペックのWindowsが動作するPCが、ポケットに気軽に入れて持ち歩けるサイズになったということは、A4ファイルサイズ、重さ3kgくらいでも喜んでいたノートPCの黎明期を知る筆者にとって、技術革新の素晴らしさを感じさせてくれる。Windows PCならではの汎用性をポケットサイズに凝縮したPMは、PCを肌身離さず持ち歩きたい人間にとって、まさに待望の製品といえる。

バックナンバー

(2009年 9月 17日)

[Text by 石井 英男]

【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp
お問い合わせに対して、個別にご回答はいたしません。

Copyright © 2014 Impress Corporation. All rights reserved.